月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚

浦出卓郎

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第一部

第四話 一人舞台(3)

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「へっ! なぜ燃えているのか良く分かんねえけどよ。ざまあみやがれってんだ!」

「ああ! 前から気に入らなかったんだよ! 俺たちを馬鹿にしやがって!」

「少し賢いからって威張ってんじゃねぇぞ!!」

 チンピラたちが騒ぐ。
 リーダー格の男は、人望がなかったようだな。
 組織としてこの集団のリーダーを任されているのではなかったのだと思われる。
 あくまで、本来は同格の4人の中で勝手に仕切っていた感じか。
 魔法やアルコールへの知識を見る限り、実際に4人の中では上位の能力を持っていたのだろうが……。
 組織としてそのあたりをちゃんと定めていなかったのであれば、他の者が不満を持ってしまっても仕方がない面もある。

(しかし、このタイミングで仲間割れ? 救いようがないな……)

 普段の不満はどうあれ、謎の球体に男が触れた途端に謎の炎上をしてしまったのは事実。
 奴らからすれば、その謎は解明すべきことだろう。
 この中では比較的マシな知的水準を持つ男を生かすことは、優先度が高いはずなのに。

「お、お前らああぁっ! ゆ、許さん! 許さんぞおおおぉっ! ごうなっだら道連れだああぁっ!!!」

「ぎゃあああっ! 火が! 火が俺の服にもっ!」

「ひいいぃっ! お、お前ら、こっちに来るんじゃねぇ!」

「こっちに来たら殺す! 勝手に燃えてろ!!!」

 ヤケになったリーダー格の男は、他のチンピラに接触して道連れにすることを選んだようだ。
 何の生産性もない行為だが、気持ちは分からんでもない。
 自分が助からないのなら、せめて他の奴を道連れにしたくなるのが人情というものだからな。
 1人はあっさりと火をもらってしまった。
 残りの2人は、燃え盛る2人から必死に距離を取っている。

(くくく……。人間はなんと醜いものなのか……。これはこれで面白いが、さて……)

 俺は次の一手を打つべく、考えを巡らせるのだった。
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