若君様と町娘とご家老様

雪夜叉

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第2章

ご家老様の苦悩 一巻

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とある城の
若君付きのご家老様。

今日も朝から
城内を走り回っております。

「若君!若君はどこじゃ!」

ご家老は
ぜぇぜぇ息を切らしながら
すれ違う家来達に
若君の所在を聞くも
誰ひとりとして
知るものは居ませんでした。

そんな時

「じぃや。
姉上なら朝早くから
城を出ていったよ」

と、
若君の弟君が声をかけた。

「な、なんと!?
光成様
それは誠にございますか!?」

ご家老はへなへなと座り込み
幼き光成を見つめた。

「うん、姉上がね。
僕は今からじぃと鬼ごっこをするから
光はじぃが城で騒ぎ出したら
ヒントをあげなさいって」

満面の笑みで言う光成。
ご家老はふつふつと
怒りが込み上げるのを
なんとか抑える。

「光成様
ご助言ありがとうございました。
じぃは若君を探しに
行ってまいります故
何かございましたら
女中達にお申し付けくだされ」

ご家老は立ち上がると
一気に駆け出した。

「おい!
バタバタうるさいだろ!」

そんなご家老を
一喝する声がする。

ご家老はピタリと立ち止まり
後ろを振り返った。

「これはこれは
義政様
大変失礼を致しました」

ご家老は深々と頭をさげる。
若君の兄 義政が
大きな態度で廊下を歩いてきた。

ご家老が仕える城の城主には
三人の御子がいる。

義政



光成

城主の跡目には
第一子の皇子なのだが
この義政
文武共に家来よりも劣っていて
城主である上様からも
見放される始末。

第二子の皇子 光成は
まだ幼く病気がちで
頭が良いのだが
武術の方は家来達ほどの器量しかなかった。

そして跡目には
異例の姫君である雪が
抜擢される。
文武共に誰にも引けを取らず
優秀なのだが
それはもう自由奔放。
上様さえも手に負えないのであった。

姫君には跡目は荷が重いと
結婚をさせようとするが
逃げる。

かと言って
黙って跡目を継ぐ気は
さらさらなく
日々城下町の団子屋の
末娘優に会いに行くのである。

「またあの女逃げたのか?」

義政はニヤニヤとしながら
聞いてくる。

「逃げた訳ではなく
お戯れになって
おられるだけにございます」

ご家老は頭を下げたままで
反論する。

「ふん!なにがお戯れだ。
兄を差し置き
跡目などと囃し立てら
調子に乗ってるだけだろうが!」

義政はドン!と壁を殴りつけた。
そしてご家老を押し退けると
ドカドカと足音を立てて去っていった。

ご家老は義政が去った後
頭を上げてため息を吐く。

(本当に仲の悪いことよ……
雪様と光成様は仲が良いのに
義政様の人を妬む所は
どうにかならんものかのぉ)

そう思いながら
ご家老は城下町へ降りるため
1人馬舎へ向かった。
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