仕事を解雇されたら、愛する彼女に監禁されました

れん

文字の大きさ
上 下
10 / 11

10、

しおりを挟む
走りながら、走るのに支障がない程度に衣服を整える。整えすぎると怪しまれるので、慌てて逃げてきたように見せるのが重要だ。

かけられたら汚汁も拭き取りたかったがあえてそのままにして、事前に確認しておいた交番に向かって走る。

ホテル街にはトラブルが付き物だから、交番がすぐ近くにあるのはありがたい。

「た、助けてください!」
「ど、どうされたんですか!?」

常駐していた2人の男性警察官が驚きながら対応してくれた。

衣服の乱れた女性が駆け込んできたら、普通驚くよね、うん。

「上司に、お酒で酔わされて……わた、私……」
「……もう大丈夫です。早く中へ。すぐに女性警官を呼びます」

駆け込んで、涙ながらに酔わされてホテルに連れ込まれたと訴えると、私の対応をしていない警察官がどこかに連絡し、それからそれほど待たずに女性警察官が着てくれた

「すみません、お待たせしました……これは、酷い……怖かったですよね。もう大丈夫ですから。ゆっくりで大丈夫なので、お話、聞かせて貰って良いですか?」

誰になにをされたのかなど、質問されたことを話をして、汚汁のかかった服や下着の写真を撮られる。

「この写真は捜査以外には絶対に使用しませんので」
「……はい。それと、これも……」

スマホのデータと、偶然持っていたボイスレコーダーで録音した音声データを提出し、被害届を提出。

「あの人、他の人にも手を出していたみたいで……それだけじゃなく、私の恋人をパワハラで追いつめて、彼は精神を病んで……」

余罪があることも忘れずに伝える。

「なんて非道な……解りました。絶対捕まえて、裁きを受けてもらいます!」


警察の心証は最悪になり、取り調べるために職場にも来るだろう。

これであの男は職場にいられない。折角築いた社会的信頼も、立場も、明るい未来も、ぜーんぶ潰してやった。

私の最愛を追いつめて、酒で酔わせて部下の恋人を寝取ろうとする強姦ゲス野郎には豚箱がお似合いだ。

いや、それは豚に失礼か。豚は鳴き声以外は食べたり肥料にしたりと有効利用できる。あの男は百害あって一利なし。煙草のように一時の快楽も与えてくれない、害しかないのだから。

「その、汚された衣類なんですが、証拠物として提出していただきたいのですが……今は着替えなんて持っていませんよね。後日で良いので、提出していただけませんか?」

「はい……わかり、ました」

「長々お話してすみません。疲れましたよね? 遅い時間なので、家まで送ります。何かありましたら、遠慮なく連絡してください。こちらからもなにかあれば連絡しますので……その、職場の方にもお話がいくかもしれませんが、ご了承を」

家まで送ってくれるというので、それに甘えて車に乗り込む……パトカーとか乗りたくないと言ったら、覆面パトカーに乗せられた。

たしかに、見た目は普通車だけどさ……。

「疲れた……」

早くツムに会いたい。癒してほしい。頑張ったって、褒めてほしい。

重い体を引きずってドアの前で深呼吸。
気持ちを切り替えてドアを開けると彼のニオイがする……ああ、やっと帰ってこれた。

「ごめんねー、ツムたん……遅くなっちゃった~」
「ああ、お帰り」

酔った振りして明るく振る舞う。

知られないならそれに越したことはない。
汚物の処理は目に見えない場所で。汚いものをわざわざ見せる必要性も知らせる必要もない。

彼は鎖で繋いでいるから、玄関までは来てくれないけど、お帰りと言ってくれる相手がいるのは嬉しい。

「今日も、飲んできたんだ」
「うん……ごめんね、職場の人がどうしてもっていうから」
「大丈夫だよ。付き合いも大事だから」

作り笑いでも、笑顔で迎えてくれた。
そんな彼の胸にダイブする。

「ツムたん……アヤメ、疲れちゃった……」
「ああ……お疲れ様。今日もいっぱい、頑張ったね」

なにも聞かず頭を撫でて、私を労ってくれる。

「んんー、ツムの手、気持ちいい……撫で撫で、落ち着く。ニオイも好き……ああ、癒されるー」

思いっきり彼のニオイを吸い込みながら顔をこすりつけて甘える。ああ、幸せ……このために、頑張ったんだ。ツムとあの男。生物学上は同じ男なのに、どうしてこんなに違うのだろう。

安心して気が緩んだ私はウトウトしてしまい、それを察した彼にベッドに横にされた。

いつものように、ツムが私を着替えさせるために服を脱がしていくと、「え、これ……」という声が聞こえた……ああ、そういえば、あれに汚汁、かけられたんだっけ。

「なんだ、これ……」

彼が狼狽えていると、私のスマホが震えた。

あの男がメッセージを飛ばしてきたのだろうか……ブロックすると怪しまれて行動がエスカレートすることもあるからと警官に言われ、そのままにしていたっけ。

寝たふりをしながら様子をうかがうと、彼は震えながら私のスマホを手に取った。

最近あの男が盗み見しようとするからロックしてあるんだけど……パスワード、解けるかな?

すごい唸ってる……解除するのを躊躇しているのか、単純に解らないからか……あ、解除できたみたい。やっぱり、ツムの誕生日じゃ解りやすかったかな。少し嬉しそう。

さぁ、あの男のメッセージを見て、ツムはなにを感じて、どう動くんだろう。怒りと嫉妬で犯されて、服従させようとするかな? それはそれでありかもしれないけど、首輪をつけられて飼われるような人だからなぁー。

「アヤメ……」

いろいろと確認を終えた彼が私を呼んだ。

「なぁーに、ツムたん?」
「…………え?」

呼ばれたから起きたのに、彼は驚いた顔でこちらを見ている。

「なんでツムたんがアヤメのスマホを持ってるのかなー? ロックも解除してるし、勝手に中まで見ちゃって……いけないなーー」
「いや、これは、」

にやにや笑いが止まらない。

慌ててるのと、怒られると思って顔を青くしてるツムたん……いい。すごくいい。可愛い。

「最近アヤメの帰りが遅かったり、飲んで帰ってくる回数が多くなったのが心配になっちゃった? 相手が男だったらとか、嫉妬してくれてる? 嫉妬は嬉しいんだけど、アヤメはツム一筋なのに……疑われるのは悲しいなー。それと、悪いことしたツムにはお仕置きをしないとね」

ああ、壊したいほど可愛い。

本当はもう少し落ち着いた時にするつもりだったけど……ドッキリ作戦、今からヤっちゃおっか。

「お仕、置き?」

「そう……えーっと、たしか……あ、あったあった。これを今から、ツムにつけちゃいます!」

大型犬がつけるような革製の首輪と、散歩用のリードを見せる。

「これをつけて、これから夜のお散歩に出ようと思います! もちろん、お仕置きだから拒否権はないよ?」

顔をひきつらせて逃げたそうにしているのに、逃げようとしない。従順で、可愛い。

「うん、似合うよツムたん……ああ、なんだか凄くグッとくる。良いね、すごく良い」

年上の恋人が首輪着けられて俯いているの、スゴクイイ。

あの男に汚されて、溜まりに溜まった鬱憤を晴らすためにこのまま可愛がってあげたいけど、ぐっと我慢する。

時刻は日付が変わる少し前。
あまりハードなことは自重しなきゃ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レンタル彼氏がヤンデレだった件について

名乃坂
恋愛
ネガティブ喪女な女の子がレンタル彼氏をレンタルしたら、相手がヤンデレ男子だったというヤンデレSSです。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ホストな彼と別れようとしたお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。 あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。 小説家になろう様でも投稿しています。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

処理中です...