仕事を解雇されたら、愛する彼女に監禁されました

れん

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目が覚めると、身体が思うように動かない。
飲み過ぎたせいかなと思ったが、体に感じる違和感がそれを否定する。

「な、なんだ、これ」

まず、手足に手錠がつけられ、ベッド柵に繋がれている。

体をひねるが、鎖がこすれるガチャガチャという耳障りな音が響くだけ。

手にミトン型の手袋がつけられていて、手袋の中で指を動かしても手首で固定されていて抜けない。しかも、ボタンでロックされている。

「ツムたん、起きたの?」
「アヤメ? これは、いったい、」

菖が俺を見下ろしながら、楽しそうに微笑む。
可愛い彼女の笑顔なのに、俺は恐怖を感じた。

「ツムたん、のど乾いてるよね? お水、飲ませてあげる」

俺の上半身を起こして、口にプラスチック製の水挿しを近づけてくる。

素直に水挿しを咥えると、菖がゆっくりと水を流し込み始めた。

咽せないように少量ずつ流し込まれる水を飲み下す。

器の半分ほど飲んだところで、もういらないと舌先で飲み口を押し返すと、それに気づいた菖が水挿しを抜いて口を拭いてくれた。

「アヤメ……なんで、俺は縛られているんだ?」
「なんでって、ツムが悪いんだよ? アヤメはずーっと一緒にいたいのに、別れようとか、その方がアヤメのためだからって、勝手なこと言うから」

「勝手って……俺は、菖の幸せのために、」
「ツムは分かってない。アヤメの幸せは、ツムと……大好きな人と一緒にいること。将来性とか安定性とか関係ない」

微笑みを消した無表情で菖が淡々と言う。

「ツム、愛してる。愛してるから、アヤメの前からいなくなるの、許さない。離さない。だから、離れられないようにしたの」
「そんな……」

「アヤメがツムを養ってあげる。お世話も全部してあげる。ご飯も、お風呂も、おトイレも……全部アヤメがしてあげる。大丈夫、ちゃんと資格は持ってるし、経験もあるから。ツムの排泄物の処理にも抵抗はないから。安心して、ね?」

菖の口角がつり上がって、歪な三日月のように弧を描く。
ズボンに手をかけられ、下着と一緒に引きずりおろされ、陰部が外気に触れる。

「な、なにを……」

「んー? ツムたん、今自分がどういう状態かわかってる? ベッドに鎖でつながれたまま、どうやっておトイレ行くの? もしかして、ツムたんはアヤメのベッドを自分に排泄物で汚しちゃいたいの?」

楽しそうに菖が問いかけてくる。

鎖の長さはベッドから降りれる程度。寝返りを打ったり、関節の曲げ伸ばしはできそうだが、トイレに行くには長さが足りない。

手錠を繋ぐ鎖は肩幅程度。足はもう少し開くが、思うようには動かせそうにない。

これでは、背中を掻くのも苦労しそうだ。

「痒いところも、アヤメが掻いてあげるから安心して。孫の手なんて使わないで。アヤメを使ってよ」

考えていることを読んだような回答が返ってきた。

「ツムの考えてることはわかるよ。それじゃあ、現状がわかったよね?」

菖がベッドの下から大人用のオムツと尿取りパッドを取り出した。

「ア、アヤメ、それは……」
「これをつけたら、おトイレの心配はなくなるよ? ちゃんとお股がかぶれないように、きれいにしてあげるから。かぶれないように、ワセリンもあるよ?」

「そういう問題じゃない!」
「オムツかぶれの心配じゃないの? まぁ、オムツって、気持ち悪いもんね。アヤメも研修でしたことあるから、わかるけど……ツムがオムツの中にオシッコ出してるところ、見てみたいな~」

思わず声を粗げてしまったが、人に見られながらの排泄というのは抵抗が強い。
自分が汚物をひり出す様を、最愛の相手の目の前でするなんて、無理だ。

そのうえ、オムツなんて……。

「さすがに、アヤメにそんなこと……」
「むぅ……なら、仕方ない」

オムツを引っ込め、不服そうに次の案を出してきたが、アヤメが引っ張ってきたものは、部屋に置く簡易トイレ。

目隠しの仕切もない、置くだけのもの。

「こっちで妥協してあげる」

ベッドの横に設置された便座のふたがあげられる。
中にはバケツが納められているだけ。

「おトイレを甘く見ちゃだめなんだよ? 排泄物って、その人の状態を知る大事なものなんだよ? おしっこの量とかニオイ、色、濃さ。便の色、形状、ニオイ、量、回数。健康状態がすぐにわかるんだよ? ツムの体は、これからアヤメがしっかり管理してあげる。お仕事中は一人にしちゃうけど、これでちゃーんと、ミテルカラ」

テーブルの上に置かれたカメラ。
たしか、この前テレビで紹介されてたペットの様子が端末でみれるって言うやつだっけ。

録画機能も付いていて、通話もできるとか……これって、俺がしているところも録画されるんじゃ……。

「使うのが嫌だからって、アヤメのベッド汚したりしないでね? ツムも自分ので汚れた布団で寝るのって、嫌だよね?」

俺に与えられた選択肢はない。

排泄行為は我慢しようと思ってできるものでもないし、我慢したらしただけ自分の体に負荷がかかる。

「ねぇ、ツム……そろそろ、オシッコしたいんじゃない?」

言われて、尿意を意識してしまった。
一度意識してしまうと、尿意がこみ上げてくる。

「使っていいんだよ? ほら、アヤメのことは気にしなくて良いから。出してすっきりしちゃいなよ。我慢は体の毒だから。排泄物は出すためにあるんだから。ねぇ、楽になろ?」

楽しそうに、菖が俺をじっと見ながら笑う。
これから排泄しようとする俺を見ている。

「ア、ヤメ……その、向こうに」
「行かないよ。気にしないで良いから。ほら、ツムたんがちゃーんとオシッコできるかどうか、アヤメが見ててあげる。ほら、しぃしぃ、しよ♪」

便座を叩いて、座れと催促してくる。
尿意はもう限界。膀胱は決壊寸前だ。
陰部を露出したまま、俺は便座に座る。

陰茎を手で押さえて、はみださにようにし……そして、バケツの中に、黄色い液を排出した。

溜め込んだそれは流れ出すと止まらず、バケツの壁を叩いて中に汚水溜まりをつくる。

それを菖は嬉しそうに、楽しそうにみている。

「アヤメ……頼む、みないで、くれ……」

「はは、恥じらうツムたん……可愛い。可愛すぎ。いつもの頼りになるツムも格好良くて大好きだけど、彼女の目の前でオシッコして恥ずかしがっちゃうツムたん本当に可愛い! こんな姿、アヤメしか知らないんだよね? 見られたのも家族以外じゃ初めて? ツムたんの初物、アヤメがもらっちゃった?」

俺の願いは菖には届かなかった。
こんな恥ずかしい体験、初めてだ。
穴があったら入りたい。そしてそのまま消えてなくなりたい。

「ツムたん、穴があったらとか、消えたいとか考えてた? でも、ツムたんは繋がれてるから逃げられないよ? 隠れることもできない。消えることは許さないから。ツムはずっとずっと、アヤメと一緒にいるの。離さないから」

便座に座ったまま頭を抱える俺を、菖は幼子をあやすように、慰めるような優しい声で語り掛けながら頭を撫でてくる。

俺はそれを払いのけることができず、小さくなったまま。

排泄物と共に、大切なものも一緒に流してしまったような、そんな喪失感に沈んでいった。
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