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後、異世界人と魔王と世界

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『なら、お前の望みは何だ? 何故魔王である俺と対峙する。俺を討伐して、人族の国に凱旋するのが目的じゃないのなら、いったいなんのために来たのだ……』

「ああ、それはな……単純に土地と後ろ盾がほしいんだよ」

『土地に、後ろ盾? どういうことだ?』

「俺の認識とこの世界の認識の差が酷いのは言ったよな?」

『ああ……人族は我々を醜いと言い、問答無用で攻撃してきたり、駆逐しようとしてくるな。俺たちからしたら美しいと思う容姿をしたものを醜いとか、魔族の混血とか言って迫害しているとか……』

この世界の人族は贅肉は富の象徴。贅肉がついていればいるほど勝ち組とされ、貧富の差がとても大きい。

奴隷制度もあれば浮浪者も多い。人族にとって醜いとされる者は魔族に似た容姿をしているため、迫害の対象になっている。

「俺からしたら、この世界の人族は醜い。容姿も性格も最悪だ。そんな連中がトップの世界に勝手に呼び出されて、ハズレと言われて問答無用でポイ捨てされて、独りで生きろって言われて絶望した……さまよい歩いてたそんなとき、人狩りに巻き込まれたんだよ」

人狩りは醜いと捨てられた老若男女の奴隷を広い平野に放ち、それを狩る。

殺した人数を競ったり、泣き叫ぶ声を堪能したり、傷つける行為を楽しむ、裕福層の娯楽。

「通りかかった俺まで標的にしてきたから、全員返り討ちにしたんだけどな……そしたら、救世主だとか英雄とか勇者とか言われて懐かれっちまった。見捨てないでと縋ってくるアイツらを見捨てても寝覚めが悪いから、全員連れて移動することにしたんだよ」

大変だったわと若者が苦笑いをしながら語る内容に、魔王は顔をしかめる。

『……同族殺しを娯楽にするなど、屑の所行』

「まぁな……それには同意する。幸い、俺のスキルで食料や水はごまかせた。襲ってくる魔物には武器に魔物特効を付与して撃退もできた。奴隷の中には戦闘できるやつや家事スキルの高いやつも居たから、独りの時より快適だった……なにより、寂しいと感じなくなったのはデカかった……けどな、人の世じゃ奴隷は人間じゃない。主の所有物。成り行きで主になった俺は、金がなければ街に入るための身分証もない。盗賊や奴隷商に襲われることもしばしばあって、返り討ちにして戦利品を集めて移動して、運良く通りかかった行商人に多めの額を渡して品物を売ってもらってまた移動して……次々と、雪だるま式に奴隷が増えていってな……疲れっちまった。それで、人族が居ない場所を求めていくうちに、魔族領に入ってた」

『そうか……奴隷たちは?』

「勝手をして悪いとは思ったが、村を作らせてもらった。森の近くで川の流れてる場所がちょうどあったからさ……四天王とかお前の配下が村を潰しに来たんだけど……」

魔族からしたら急に人族が現れて無断で村を作り始めたのだから、警戒もするし即時立ち退くように言ってくるのも当然である。

「最初は話し合おうとしたんだよ? でもな、どうにも『魔王が認めない限り、この村の存在は認められない』の一点張りで話が通じなくてな……肉体言語で語り合った。ああ、ちゃんと棒に不殺は付与したからな? いくら叩いても死なないけど、痛みはきっちり伝わる優れもので、解ってもらえるまで尻を叩き続けただけだから」

『ちょっと待て』

「今じゃ俺をご主人様と言って、村の番人と世話役をしてくれてる。子供の世話とかもしてくれるし、良い奴らだな。美人だし、最高」

『お前、俺の配下を寝盗ったな!?』

「とってない。まだ床は一緒にしてない。健全などつきあい。あくまで、自主的。本人の意志決定。俺、ただ棒で殴っただけ……途中から艶っぽい声出されたときは新しい扉が開きかけたぞ。危うく男だけど喰いそうになったわ……ギリギリだった」

どつきあいに健全などあるのかはさて置き、叩かれている側は既にその扉の向こうにイって、新しい世界……沼に堕ちている。男女とも、だ。

それを聞かされた魔王は『oh……』と言いながら、目を覆った……陰部を隠していた手で覆ったので、魔王の息子さんが再びボロンしたが、若者はこれをあえてスルー。

「魔王が認めれば万事解決。だから、奴隷を四天王に任せて単身でお願いに来たんだよ。俺の要望は、村を認めてほしい。認めてもらうまで、俺はお前と戦う覚悟がある。お前をドMの豚野郎に開拓してヒィヒィ言わせてでも認めさせる……できれば、そうなる前に話し合いで解決したい」

『はぁ……俺はドMになるつもりもないし、理由も解った。突っ込みどころが多々あるが……もう疲れた……解った、認める。認めるから、もう帰ってくれ……あと、四天王返して』

「それは本人に言ってくれ。それと、商人と大工と、街づくりに詳しいのも送って。それと資材に働き手もほしい。できれば住み込みで発展させるの手伝ってくれると嬉しい。文官みたいな人もほしいなー。あと、魔王との連絡役とかも」

若者が次々に要望を言う。

勝手に住み着いておいて、遠慮の欠片もない物言いに、魔王は頭痛と胃痛で大ダメージを受けていた。

『もう、好きにしてくれ……俺は身体が冷えてきたから、風呂にいく。細かいことは執事に言ってくれ……』

「よっしゃ、魔王から言質取ったぜ!!」

全裸魔王は若者を取り込むことを諦めて退場。
若者は魔王が指名した執事と共に奴隷村の開拓を始めた。

魔王城や街から商人や職人、その家族が村へ移住。

若者が集めた奴隷の村は元四天王を中心とした魔族と人族の融和の街として発展し、逃げてきた奴隷を受け入れてさらに拡大。

虐げられてきた奴隷は自分達の居場所を守るために毎日せっせと働き、村を訪れる行商や他の魔族と交流を重ねていった。

街が拡大するに連れ、醜い人族の襲撃が度々起こったが、これを若者たちが撃退し続けた結果、傲慢で醜い人族は徐々に衰退していった。

いつしか街は新しい人族の中心地となり、魔族と人族は手を取り合って生きていく、平和な世界が生まれた。

若者は和睦の英雄となり、最初に助けた奴隷達を妻として迎え、ペット(新たな扉を開いた元四天王)とその間に授かった子供たちに囲まれて、幸せな生涯をおくったと記録されている。

『結局、あの異世界人……世界の半分どころか、良いところを全部持って行ってしまったな……』

長命な魔王は一人玉座に座ったまま、今日も平和な世界を見つめていた。





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