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赤の村にて 初戦闘とかみ合わない二人 前編
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食べ終わって戦おうと思ったら、戦う事以外何も聞いてない事に気づいた。赤の竜人流にやるはずだけど、まったく知らない。……とりあえず聞けば良いか。
「イギギさん、赤の竜人流の決闘方法って決まりとかある?」
「……あるにはあるが、お前本当にクトーと戦うつもりか?」
「そうだけど何で?」
「いや、お前は……そのなんだ」
「ああ、僕が欠色で身体も魔力も弱いって事を気にしてるんだ」
「…………わかってるならやめろ」
「戦い方はいろいろあるから問題ないよ。というか、たぶん僕の予想が当たってたら一瞬で勝つと思う」
「てめえ!!」
「それで、ここでやるの? それとも移動する?」
「そこだ!!」
「了解」
クトーが広場の真ん中を指したから、そこに歩いて行った。真ん中に着いて振り返るとクトーは歩いてきてなかった。……何で?
「ねえ、戦わないの?」
「た、戦うに決まってるだろ!!」
「それなら準備してよ」
まったく、自分で戦うって言っといて何で準備してないの? 僕が首をかしげているとクトーが目を血走らせながら走ってきた。
「絶対に、てめえはぶちのめす!!」
「そうか、頑張って。ところで一つ聞きたいんたけど」
「この野郎!! いまさら命乞いか!! 無駄だ!!」
「そんなする必要のない事はしないよ。イギギさんが言ってた赤の決闘方法の決まりって何?」
「お互いが全力で力を能力を使って戦う事だ!!!」
「……他には?」
「それだけだ!!」
「禁止行為は?」
「それだけだと言った!!」
なんか禁止なしのケンカだね。それならそれでわかりやすくて良いか。
「わかった。それじゃあ戦おう。先手は譲るよ」
「俺はお前みたいな弱いくせに調子に乗ってる奴が大嫌いなんだ!! 絶対ぶちのめす!!」
へえー、言ってる意味は全くわからないけど、さすが大口叩くだけあってかなりの魔力量だね。強化魔法の魔光が身体を覆って炎のように揺らめいてるのがはっきり見える。兄さんや姉さんと同じくらいかも。
「潰れろ!!」
クトーが三ルーメ(前世いう三メートル)ぐらいを一瞬で詰めて僕の目の前で右腕を振りかぶった。これが振り抜かれて直撃したら、僕の身体のどこに当たっても良くて瀕死の重傷ってところかな。まあ、素直に当たる必要もないから僕は魔法を発動させた。
「緑盛魔法・超育成・硬金樹」
僕がつぶやくと僕の目の前の地面――クトーの足下とも言う――から、すごい勢いで芽が生えてクトーを巻き込みながら成長していく。その後、二十秒くらいして成長が止まると、クトーが幹の途中に埋まった高さ四ルーメくらいの幹の表面が黒光りする金属みたいな樹になった。
この植物の力を借りる魔法を使えるようになったのが、今まで僕自身に起きた変化の中で一番大きなものだ。ある日、散歩してた時に落ちてた種を拾って何の種かわからないから、ふと花が咲いてるところが見たかったなってつぶやいたら種が手の中で緑色の光に包まれて花に成長した。どうやら僕の願いを聞いた種自身が僕の魔力をきっかけに成長して花を咲かせてくれたらしい。本当になんで植物達は僕に優しくしてくれるんだろ? 謎だ。
「ああ、そういえば、もう一つ聞く事があったの忘れてた。ねえ、イギギさん、この決闘の決着はどうやって決まるの?」
「…………」
「イギギさん?」
「おっ、おう!! どっちかが動けなくなったら、それで終わりだ」
「それじゃあ、この勝負は僕の勝ちだね」
「ふざけんな!! 勝手に決めるんじゃねえ!! まだ俺は負けてねえ!!」
クトーは硬金樹の幹に身体が埋まった状態で叫ぶと強化魔法を強めて脱出しようと力み始めた。無理なんだけど、どうしよう? 忠告だけはしておこうかな。
「一応、言っておくと、お前はこの硬金樹から脱出できないよ」
「こんな樹に巻き込んだくらいで俺に勝った気になるな!!!」
「それだったら、さっさと脱出したら良い。待ってるからさ」
僕はそう言って硬金樹の根元に座り、全然体力は消耗してないけど休憩を始めた。硬金樹に触れている背中にはクトーが脱出しようともがいて伝わってくる僅かな振動がきて、耳にはクトーのうめき声や歯ぎしりの音が聞こえていた。早く諦めて負けを認めてくれないかな?
「ガアアアーーー!! なんでだ!? なんで、こんな樹ごときが……」
「ただの樹じゃなくて、この硬金樹は大神林に生えてる奴だよ」
「関係あるか!! たかが樹に俺が捕まるわけがあるか!!」
「お前がどれくらい強いとか関係ない。この樹は黒の間で硬金樹って呼ばれてる奴で、ここまで育った硬金樹を折ったり破壊できるのは、大神林でも数種類の高位の魔獣だけっていうぐらい硬く丈夫な樹なんだ。赤の村周辺の植物は詳しく知らないけど確実に言えるのは、破壊猪の全力の突進でも簡単には折れないっていう事だね。ほぼ動けない状態から破壊猪以上の力が出せる? 出せないよね? じゃあね」
「どこに行く!?」
「散歩」
「決闘の途中だ!!」
「脱出してから言ってよ。それにお前が認めないだけで、お前は動けないんだから決着は着いてるでしょ?」
「まだ気絶もしてねえ!! 死んでねえ!!」
「……なるほど動けなくなるっていうのは、そう言う意味か。じゃあ、水に溺れるのと樹に圧迫されるのとどっちが良い? それぐらいは選ばせてあげるよ」
僕の言った事が理解できなかったみたいで一瞬呆けた顔をしたけど、次の瞬間には最悪の想像が浮かんだのか赤い鱗で覆われている顔の血の気が引いて赤みが薄くなった気がする。これじゃあ完全に弱いものイジメだから、さっさと終わらせよう。
「緑盛魔法・超育成」
「グゲッ……、ゲボッ」
僕が硬金樹を成長させていくとクトーが埋まっている辺りから、メキッとかギシッていう音が聞こえてきた。ふーん、硬金樹の成長の圧力に耐えれるのはすごいな。……って、あまり観察してもしょうがないから駄目押しいくか。
「水生魔法」
「ガボッゴボッ」
僕は魔法で発生させた水を操ってクトーの鼻と口を覆う。当然クトーは溺れる。あらかじめ息を止めてたら、もっと耐えられるだろうけど現在進行形で硬金樹に圧迫されてるから、まともに息を溜めれてるわけがない。あとはクトーが溺れたり、気絶するのを待てば良い。このやりたくもない決闘の時間を終わらせたいから早く落ちてほしいよ。…………あれ水が?
クトーの顔を覆っていた水が、何かに引っ張られるように離れていった。どうやら完全に水生魔法の水が支配されて奪われたみたい。水が離れていく方向を見ると、青の竜人の子供が右手をこっちに向けていた。
「そこまでにしてもらえないかな?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「イギギさん、赤の竜人流の決闘方法って決まりとかある?」
「……あるにはあるが、お前本当にクトーと戦うつもりか?」
「そうだけど何で?」
「いや、お前は……そのなんだ」
「ああ、僕が欠色で身体も魔力も弱いって事を気にしてるんだ」
「…………わかってるならやめろ」
「戦い方はいろいろあるから問題ないよ。というか、たぶん僕の予想が当たってたら一瞬で勝つと思う」
「てめえ!!」
「それで、ここでやるの? それとも移動する?」
「そこだ!!」
「了解」
クトーが広場の真ん中を指したから、そこに歩いて行った。真ん中に着いて振り返るとクトーは歩いてきてなかった。……何で?
「ねえ、戦わないの?」
「た、戦うに決まってるだろ!!」
「それなら準備してよ」
まったく、自分で戦うって言っといて何で準備してないの? 僕が首をかしげているとクトーが目を血走らせながら走ってきた。
「絶対に、てめえはぶちのめす!!」
「そうか、頑張って。ところで一つ聞きたいんたけど」
「この野郎!! いまさら命乞いか!! 無駄だ!!」
「そんなする必要のない事はしないよ。イギギさんが言ってた赤の決闘方法の決まりって何?」
「お互いが全力で力を能力を使って戦う事だ!!!」
「……他には?」
「それだけだ!!」
「禁止行為は?」
「それだけだと言った!!」
なんか禁止なしのケンカだね。それならそれでわかりやすくて良いか。
「わかった。それじゃあ戦おう。先手は譲るよ」
「俺はお前みたいな弱いくせに調子に乗ってる奴が大嫌いなんだ!! 絶対ぶちのめす!!」
へえー、言ってる意味は全くわからないけど、さすが大口叩くだけあってかなりの魔力量だね。強化魔法の魔光が身体を覆って炎のように揺らめいてるのがはっきり見える。兄さんや姉さんと同じくらいかも。
「潰れろ!!」
クトーが三ルーメ(前世いう三メートル)ぐらいを一瞬で詰めて僕の目の前で右腕を振りかぶった。これが振り抜かれて直撃したら、僕の身体のどこに当たっても良くて瀕死の重傷ってところかな。まあ、素直に当たる必要もないから僕は魔法を発動させた。
「緑盛魔法・超育成・硬金樹」
僕がつぶやくと僕の目の前の地面――クトーの足下とも言う――から、すごい勢いで芽が生えてクトーを巻き込みながら成長していく。その後、二十秒くらいして成長が止まると、クトーが幹の途中に埋まった高さ四ルーメくらいの幹の表面が黒光りする金属みたいな樹になった。
この植物の力を借りる魔法を使えるようになったのが、今まで僕自身に起きた変化の中で一番大きなものだ。ある日、散歩してた時に落ちてた種を拾って何の種かわからないから、ふと花が咲いてるところが見たかったなってつぶやいたら種が手の中で緑色の光に包まれて花に成長した。どうやら僕の願いを聞いた種自身が僕の魔力をきっかけに成長して花を咲かせてくれたらしい。本当になんで植物達は僕に優しくしてくれるんだろ? 謎だ。
「ああ、そういえば、もう一つ聞く事があったの忘れてた。ねえ、イギギさん、この決闘の決着はどうやって決まるの?」
「…………」
「イギギさん?」
「おっ、おう!! どっちかが動けなくなったら、それで終わりだ」
「それじゃあ、この勝負は僕の勝ちだね」
「ふざけんな!! 勝手に決めるんじゃねえ!! まだ俺は負けてねえ!!」
クトーは硬金樹の幹に身体が埋まった状態で叫ぶと強化魔法を強めて脱出しようと力み始めた。無理なんだけど、どうしよう? 忠告だけはしておこうかな。
「一応、言っておくと、お前はこの硬金樹から脱出できないよ」
「こんな樹に巻き込んだくらいで俺に勝った気になるな!!!」
「それだったら、さっさと脱出したら良い。待ってるからさ」
僕はそう言って硬金樹の根元に座り、全然体力は消耗してないけど休憩を始めた。硬金樹に触れている背中にはクトーが脱出しようともがいて伝わってくる僅かな振動がきて、耳にはクトーのうめき声や歯ぎしりの音が聞こえていた。早く諦めて負けを認めてくれないかな?
「ガアアアーーー!! なんでだ!? なんで、こんな樹ごときが……」
「ただの樹じゃなくて、この硬金樹は大神林に生えてる奴だよ」
「関係あるか!! たかが樹に俺が捕まるわけがあるか!!」
「お前がどれくらい強いとか関係ない。この樹は黒の間で硬金樹って呼ばれてる奴で、ここまで育った硬金樹を折ったり破壊できるのは、大神林でも数種類の高位の魔獣だけっていうぐらい硬く丈夫な樹なんだ。赤の村周辺の植物は詳しく知らないけど確実に言えるのは、破壊猪の全力の突進でも簡単には折れないっていう事だね。ほぼ動けない状態から破壊猪以上の力が出せる? 出せないよね? じゃあね」
「どこに行く!?」
「散歩」
「決闘の途中だ!!」
「脱出してから言ってよ。それにお前が認めないだけで、お前は動けないんだから決着は着いてるでしょ?」
「まだ気絶もしてねえ!! 死んでねえ!!」
「……なるほど動けなくなるっていうのは、そう言う意味か。じゃあ、水に溺れるのと樹に圧迫されるのとどっちが良い? それぐらいは選ばせてあげるよ」
僕の言った事が理解できなかったみたいで一瞬呆けた顔をしたけど、次の瞬間には最悪の想像が浮かんだのか赤い鱗で覆われている顔の血の気が引いて赤みが薄くなった気がする。これじゃあ完全に弱いものイジメだから、さっさと終わらせよう。
「緑盛魔法・超育成」
「グゲッ……、ゲボッ」
僕が硬金樹を成長させていくとクトーが埋まっている辺りから、メキッとかギシッていう音が聞こえてきた。ふーん、硬金樹の成長の圧力に耐えれるのはすごいな。……って、あまり観察してもしょうがないから駄目押しいくか。
「水生魔法」
「ガボッゴボッ」
僕は魔法で発生させた水を操ってクトーの鼻と口を覆う。当然クトーは溺れる。あらかじめ息を止めてたら、もっと耐えられるだろうけど現在進行形で硬金樹に圧迫されてるから、まともに息を溜めれてるわけがない。あとはクトーが溺れたり、気絶するのを待てば良い。このやりたくもない決闘の時間を終わらせたいから早く落ちてほしいよ。…………あれ水が?
クトーの顔を覆っていた水が、何かに引っ張られるように離れていった。どうやら完全に水生魔法の水が支配されて奪われたみたい。水が離れていく方向を見ると、青の竜人の子供が右手をこっちに向けていた。
「そこまでにしてもらえないかな?」
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◎後書き
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