上 下
314 / 318

決戦にて 揺るがない弱者と動揺する強者

しおりを挟む
 キリキリキリキリ……、発射。キリキリキリキリ……、発射。キリキリキリキリ……、発射。キリキリキリキリ……、発射。キリキリキリキリ……、発射。キリキリキリキリ……、発射。キリキリキリキリ……、発射。キリキリキリキリ……、発射。キリキリキリキリ……、発射。キリキリキリキリ……、発射。キリキリキリキリ……、発射。

「「「「「ギギャアアア‼︎」」」」」
『ウグ、ク、オ、オノレエエエエ‼︎』

 このねじった魔槍は、あいつの身体も魔石も貫通できてるから僕だけで威力を出すっていう目的は達成できてる。ただ……。

「これ魔槍を一本一本ねじるのに時間がかって連射性が低くなるから使いづらいな」
『……いや、十分効果的だろう』
「そう?」
『私も即興で、この威力を出せているなら十分だと思います』
「うーん……、あ、そうか」

 僕は根本的な事に思い至り魔槍をねじってから撃つのやめた。その代わり両手をあいつへ向かって伸ばして目を閉じた。

『ヤート、待て。何をするつもりだ?』
「魔槍を作ってねじって発射するっていう三段階を高速で繰り返す魔法を作ってる」
『『は?』』

 なんかシールと世界樹が僕の返答に唖然としてるみたいだけど、今は魔法の構築に集中する。さっきまでの魔槍をねじって発射するのは前世のドリルを参考にした。それなら次に参考にするべきなのは…………銃だね。つまり僕自身を銃弾をためて供給する弾倉マガジンに、両手を銃身に見立てて機関銃マシンガンを魔法で再現する。

緑盛魔法グリーンカーペット純粋なる緑のグリーンインパクト魔槍銃ランスガン

 僕は目を開け魔法を詠唱すると、すでにねじられた魔槍が現れ、そのまま発射された。そして次の瞬間には、またねじられた魔槍が現れて発射される。お、ノリと勢いで作った魔法にしては意外と良いかもしれない。あとは続けて使った時にどうなるかだね。



 しばらくあいつに向けて純粋なる緑のグリーンインパクト魔槍銃ランスガンを発動しても、特に問題が起きない。これは大丈夫だなと思っていたら、突然両掌にピリッと痛みが走る。僕が両掌の状態を確かめる前に、それは起こった。

 バツンッ‼︎

 僕の両掌が弾けた。魔法を止めて両掌を見ると掌の肉が飛び散り骨がむき出しになっていて指も何本か無くなっている。

「うーん、魔法の制御を失敗したかな?」
『ヤート‼︎』
主人あるじ‼︎ すぐに治療を‼︎』
『フ、フハハハハハハ‼︎ ジブンノマホウデキズツクトハ‼︎』
緑盛魔法グリーンカーペット純粋なる緑のグリーンインパクト魔槍銃ランスガン
『ヤハリ、キサマラハオロカ、ダバア‼︎』

 シールに言われたけど、僕は両掌を治さずに両腕を伸ばして魔法を発動させ、大きく口を開けて叫んでるあいつへねじった魔槍を撃ち込んでいった。あー、やっぱりこの魔法は制御が難しいな。両腕がどんどん魔法の負荷に耐え切れずに吹き飛んでいく。

『ヤート、今すぐ、その魔法をやめろ‼︎』
『そうです‼︎ やめてください‼︎ 肩までの肉と骨が全て吹き飛んでいってるので、このままでは出血死もありえます‼︎』
「さすがに出血死は困る。水生魔法ワータ緑盛魔法グリーンカーペット純粋なる緑のグリーンインパクト強薬水液ハイハーブリキット

 薬草団子が入っている腰の小袋の一つを水生魔法ワータの水に浸して薬草団子を溶かし魔法を発動させると、深緑色の液体ができて腕のなくなった肩口を覆う。今回は粘性を上げているから、これで出血を防ぎつつ両腕を再生できるね。

『ギ、ギザマ……ジョウギガ?』

 うん? ジョウギガ? ……ああ、正気か? か。あいつの顔に魔法を撃ち込んだせいで、また声が聞き取りづらくなってるな。

「変な事を言うね。僕はいたって正気だよ」
『ブ、ブザゲルナ‼︎ ジョウウギナラ、ジブンノウデヲ、ブギドバジデ、ベイギデイラレルワゲガナイ‼︎ ギザマ、イタミヲガンジナイノガ⁉︎』
「お前、頭悪いのか? 両腕が吹き飛んでるんだから痛いに決まってる」
『ナラバ、ナゼ、ゾゴマデレイゼイデイラレル⁉︎』
「…………逆に聞きたい。何で、たかが両腕が吹き飛んだぐらいで騒がないといけないの?」
『ナンダド……?』
「僕とお前を比べたら、どう考えても僕の方が圧倒的に弱い。それならそんな弱い僕が命がけで戦っている時に、たかが両腕が吹き飛んだぐらいで隙を見せられるわけがない」
『『『…………』』』

 あれ? 何かシールと世界樹まで絶句してる。……まあ、別にやれる事をやるだけだからどうでも良いか。僕は強薬水液ハイハーブリキットで再生しつつある両腕を、あいつの方へ伸ばす。

「それじゃあ、また我慢比べをやろうか」
『ヤート、止めろ‼︎ 我はもう少しで動けるようになる‼︎ それまで待て‼︎』
主人あるじ‼︎ せめて私が補助できるまで待ってください‼︎』
「聞いての通り、もう少しでシールと世界樹の体勢が整う。それまで僕がお前を攻め続けられたら僕の勝ち。逆に僕が自分の魔法の負荷で潰れたらお前の勝ちだ。理解できた?」
『グルッデル……。ギザマバ、ゼッダイニグルッデル‼︎』
「へえ、この世界を滅ぼそうとしてるお前から見ても僕はおかしいんだ。それなら何の問題もない」
『ナニ……?』
「僕の精神性や思考が理解できないって事は、その点ではお前より僕の方が上って事。一つ勝ってる部分があるなら、この命がけの勝負にも勝てる可能性があるって事だ」

 僕が言い切ると、シール、世界樹、あいつが驚愕で目を大きく見開いたけど、すぐにあいつだけは僕を殺意と怒りに満ちた目で見てくる。

『……リガイジダ‼︎』
「何を?」
『ギザマダ‼︎ ギザマヲゴロゼバ、ゴノゼカイバ、ドウドデモナル‼︎』
「そういう事は僕の魔法に耐え切ってから言うべきじゃない? そうじゃないとできない事を叫ぶ、ただの情けない奴だよ?」
『ガナラズ、ゴロジデヤル‼︎』
「良いね。僕もお前もやる気に満ちている。それじゃあ二度目の我慢比べの始まりだ。緑盛魔法グリーンカーペット純粋なる緑のグリーンインパクト魔槍銃ランスガン

 さて、シールと世界樹が動けるようになるまで、もう少し頑張ろう。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。

 感想や評価もお待ちしています。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

処理中です...