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決戦にて 魔石とみんな
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あいつは何度僕に傷口をえぐられたりしても攻撃してくる。今のところ、あいつが僕の観察と想像を超えないおかげで負けない戦い方を続けられてるね。
『なぜ、あのものは我から見ても雑に動き、自らやられにくるのだ……?』
『……理解不能です』
あいつの行動を目の当たりにしてるシールと世界樹から困惑や不気味という気持ちが伝わってくる。うーん…………、確かにこれは平穏に周りと共生して生きる植物のシールと世界樹には理解しづらいものなのかもしれないね。
「それは、あいつの性質とか性格とかが関係してるよ」
『……説明を頼む』
「あいつの性格は慎重であるものの基本は傲慢、横暴、自己中心的で自分以外はエサだと思ってる。たぶん、この世界に来るまでも、ずっと周りを食い散らかしてきただろうから王様……違うね。きっと神様気分だったんだよ」
『そこまでは、あのものの言動から我にもわかるな』
「でも、あいつは僕に良いようにやられた。それも真っ向勝負なら負ける可能性もある世界樹じゃなくて、圧倒的に弱い僕にだ。界気化した魔力で考えを読み取ってないから正確にはわからないけど、どうして自分が僕にやられているとかをぐちゃぐちゃ考えて混乱してたはず」
『大声でわめき散らしていたから、そうなのだろうな』
『それではジリジリと退がっていたのは、どういう事ですか?』
「あの時、あいつの頭には態勢を立て直して力を蓄えるために、この世界の別の場所へ逃げたり世界の外へ無理やり出るっていう考えも浮かんでたと思う」
『それが普通ではありますね』
「だけど、僕に指摘された。自分を神様だって考えてるあいつが、逃げて良いよって圧倒的に弱い僕に言われた。神様であるはずの自分が弱気になっている事を見抜かれた。あいつの傲慢に、横暴に、自己中心的に生きてきた期間が長いほど、自分が弱いと言われるのが受け入れられない。否定したい。だから、あいつは僕に何度迎撃されても向かってくるんだよ」
僕の説明を聞くほどにシールと世界樹は、あいつへ哀れだという視線で見ていた。それに気づいたあいつは動きを止める。
『ワ゛レヲ、ゾノ゛メ゛デミ゛ル゛ノ゛バユ゛ル゛ザン゛ゾ‼︎』
「客観的に考えて僕に何度もやられてるから、哀れに見られるのもしょうがないんじゃない?」
『ブザゲル゛ナ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛‼︎』
あいつが羽を大きく開く。突進してくるみたいだけど、あの傷ついた身体でやれるのかな? ……まあ、僕が考える事じゃないか。
「緑盛魔法・超育成・硬金樹根撃拳」
『ジネ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛‼︎』
「いくら焦ってるとはいえ、単純な正面からの突進は迎撃してくださいって言ってるようなものだよ」
『ゲバアッ‼︎』
僕はあいつの突進が最高速になった時にぶつかるように硬金樹の根を生やして編み込み、太く頑丈な拳を作る。あいつは僕の狙い通り硬金樹根撃拳にぶつかり、激しく回転して身体の一部を散らしながら吹き飛ぶ。誰でも勢い良く走ってて何かにぶつかったら痛い。しかも、それが全力疾走中で不意にだったら、なおさらだよね。問題は……。
「あいつにかなりの重傷を与えたけど、ここからさらにダメ押しを加える攻撃力が僕にはない。やっぱり僕だけだと勝つ戦い方はできないな」
『フフ……、その、あのものに重傷を与えられるのは、この世界で限られたもの達だけという事を認識するべきだぞ』
『主人は、現状で満点に近い戦いの運びをしているので、もっと喜んでも良いと思います』
僕自身はいまいちだなって思ってるけど、シールと世界樹がほめてくれた。よし、ここは喜ぶために気合を入れようとしたら、あいつがフラつきつつもまた浮かんできた。…………僕が狙ってやった事だけど、あいつの身体が激突の衝撃でひしゃげていてなかなかにグロい状態だ。
『オ゛ノ゛レ゛エ゛エ゛エ゛エ゛ッ゛‼︎ ヨ゛グモ゛ヨ゛グモ゛ヨ゛グモ゛ヨ゛グモ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ‼︎』
「あんな状態で口からゴボゴボ体液を吐いてるのに、まだ大声を出す力があるんだ」
『明らかにまともな精神状態ではないな』
『おそらく痛みを自覚してないと思われます』
『ヴゴゲエ゛エ゛エ゛エ゛ッ‼︎』
「シール、世界樹」
『わかっている』
『状況把握に努めます』
あいつが叫ぶと、周りに飛び散ったあいつの身体の一部が脈動を始め徐々に膨れていき、うんざりする気配を放ち始める。
「なるほど、あいつの身体はそうだったね」
『……魔石を取り込み一体化したもの』
「「「「「ギャギャギャギャギャギャッ‼︎」」」」」
数えるのも面倒なくらいの魔石が空を泳ぎ出す。…………これはまずいな。
「動けそう?」
『そろそろだと思うのだが、まだだ……』
『同じくです』
「しょうがないね。もうしばらく頑張るよ」
シールと世界樹の申し訳ないっていう気持ちを感じながら、僕はできるだけ多くの魔法を準備していく。あいつの目が僕達へ向くと、魔石達も僕達を見る。
『グイ゛ヂラ゛ガゼエ゛エ゛エ゛エ゛‼︎』
「「「「「ギャギャギャギャギャギャッ‼︎」」」」」
「緑盛魔法……、え?」
「「「「「ギギャーーーー‼︎」」」」」
僕達に迫ってくる魔石達は、僕が魔法を発動させる前に次々撃ち落とされていった。これは…… 竜人息に魔力刃に鼻息弾? あ、強烈な拳圧で、また撃墜された。。
「ヤート‼︎ 魔石どもは俺達に任せろ‼︎」
「ヤートのおかげで体力や魔力も温存できたからな、ここは全力でやらせてもらうぞ」
「ヤート、良い戦いぶりだったわ‼︎」
「ヤートだけに戦わせられないぜ‼︎」
「ヤート、少し休んでて」
「ヤート君、体調の確認をしてください」
「ラカムタさん、父さん、母さん、兄さん、姉さん、リンリー……」
黒のみんなが世界樹の広い背中にいた。
「ヤート君、地上は私達に任せてね‼︎」
「あなた達、油断するじゃないわよ‼︎」
「他の子達より先にへばったら、帰った時にしごくから‼︎」
「なかなか体験できない戦場よ‼︎」
「きっちり敵を倒して生き残り自分の糧にしなさい‼︎」
「ナイルさん、黄河さん、インダスさん、チグリスさん、ユーフラテスさん……」
騎士のみんなが世界樹に背中を向けて周りを囲んでいる。馬の魔獣達もやる気に満ちてるね。
「ガアッ‼︎」
「ブオッ‼︎」
「一体残ラズ必ズ滅シマス」
「…………ニガサナイ」
四体は遊撃のようで、それぞれが好きに動くみたいだ。あ、みんなが参戦した事で魔石達が動きを止め、にらみ合いになった。
「……それにしても、みんなが近づいてきてたのを全く気づかなかったな」
『我もだ』
『私もです。ただ良い機会なので少しでも身体を休めてください』
「わかった」
僕はあいつや魔石達を注意しつつ深呼吸を繰り返す。同調で体調を確認すると、やっぱり無理をしてるせいで疲れが溜まっているので、腰の小袋から薬草団子を取り出し食べた。あー、混ぜた果汁の甘さが身体に染み渡るね。
『ナ゛ニ゛ヲ゛ジデイ゛ル゛ッ゛‼︎ ザッザドグイ゛ヂラ゛ガゼッ゛‼︎』
「お前ら‼︎ 向かってくるもの全て叩き潰せ‼︎」
ラカムタさんとあいつの声が響き渡ると、みんなと魔石達の戦争が始まった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
『なぜ、あのものは我から見ても雑に動き、自らやられにくるのだ……?』
『……理解不能です』
あいつの行動を目の当たりにしてるシールと世界樹から困惑や不気味という気持ちが伝わってくる。うーん…………、確かにこれは平穏に周りと共生して生きる植物のシールと世界樹には理解しづらいものなのかもしれないね。
「それは、あいつの性質とか性格とかが関係してるよ」
『……説明を頼む』
「あいつの性格は慎重であるものの基本は傲慢、横暴、自己中心的で自分以外はエサだと思ってる。たぶん、この世界に来るまでも、ずっと周りを食い散らかしてきただろうから王様……違うね。きっと神様気分だったんだよ」
『そこまでは、あのものの言動から我にもわかるな』
「でも、あいつは僕に良いようにやられた。それも真っ向勝負なら負ける可能性もある世界樹じゃなくて、圧倒的に弱い僕にだ。界気化した魔力で考えを読み取ってないから正確にはわからないけど、どうして自分が僕にやられているとかをぐちゃぐちゃ考えて混乱してたはず」
『大声でわめき散らしていたから、そうなのだろうな』
『それではジリジリと退がっていたのは、どういう事ですか?』
「あの時、あいつの頭には態勢を立て直して力を蓄えるために、この世界の別の場所へ逃げたり世界の外へ無理やり出るっていう考えも浮かんでたと思う」
『それが普通ではありますね』
「だけど、僕に指摘された。自分を神様だって考えてるあいつが、逃げて良いよって圧倒的に弱い僕に言われた。神様であるはずの自分が弱気になっている事を見抜かれた。あいつの傲慢に、横暴に、自己中心的に生きてきた期間が長いほど、自分が弱いと言われるのが受け入れられない。否定したい。だから、あいつは僕に何度迎撃されても向かってくるんだよ」
僕の説明を聞くほどにシールと世界樹は、あいつへ哀れだという視線で見ていた。それに気づいたあいつは動きを止める。
『ワ゛レヲ、ゾノ゛メ゛デミ゛ル゛ノ゛バユ゛ル゛ザン゛ゾ‼︎』
「客観的に考えて僕に何度もやられてるから、哀れに見られるのもしょうがないんじゃない?」
『ブザゲル゛ナ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛‼︎』
あいつが羽を大きく開く。突進してくるみたいだけど、あの傷ついた身体でやれるのかな? ……まあ、僕が考える事じゃないか。
「緑盛魔法・超育成・硬金樹根撃拳」
『ジネ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛‼︎』
「いくら焦ってるとはいえ、単純な正面からの突進は迎撃してくださいって言ってるようなものだよ」
『ゲバアッ‼︎』
僕はあいつの突進が最高速になった時にぶつかるように硬金樹の根を生やして編み込み、太く頑丈な拳を作る。あいつは僕の狙い通り硬金樹根撃拳にぶつかり、激しく回転して身体の一部を散らしながら吹き飛ぶ。誰でも勢い良く走ってて何かにぶつかったら痛い。しかも、それが全力疾走中で不意にだったら、なおさらだよね。問題は……。
「あいつにかなりの重傷を与えたけど、ここからさらにダメ押しを加える攻撃力が僕にはない。やっぱり僕だけだと勝つ戦い方はできないな」
『フフ……、その、あのものに重傷を与えられるのは、この世界で限られたもの達だけという事を認識するべきだぞ』
『主人は、現状で満点に近い戦いの運びをしているので、もっと喜んでも良いと思います』
僕自身はいまいちだなって思ってるけど、シールと世界樹がほめてくれた。よし、ここは喜ぶために気合を入れようとしたら、あいつがフラつきつつもまた浮かんできた。…………僕が狙ってやった事だけど、あいつの身体が激突の衝撃でひしゃげていてなかなかにグロい状態だ。
『オ゛ノ゛レ゛エ゛エ゛エ゛エ゛ッ゛‼︎ ヨ゛グモ゛ヨ゛グモ゛ヨ゛グモ゛ヨ゛グモ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ‼︎』
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『おそらく痛みを自覚してないと思われます』
『ヴゴゲエ゛エ゛エ゛エ゛ッ‼︎』
「シール、世界樹」
『わかっている』
『状況把握に努めます』
あいつが叫ぶと、周りに飛び散ったあいつの身体の一部が脈動を始め徐々に膨れていき、うんざりする気配を放ち始める。
「なるほど、あいつの身体はそうだったね」
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「「「「「ギャギャギャギャギャギャッ‼︎」」」」」
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『グイ゛ヂラ゛ガゼエ゛エ゛エ゛エ゛‼︎』
「「「「「ギャギャギャギャギャギャッ‼︎」」」」」
「緑盛魔法……、え?」
「「「「「ギギャーーーー‼︎」」」」」
僕達に迫ってくる魔石達は、僕が魔法を発動させる前に次々撃ち落とされていった。これは…… 竜人息に魔力刃に鼻息弾? あ、強烈な拳圧で、また撃墜された。。
「ヤート‼︎ 魔石どもは俺達に任せろ‼︎」
「ヤートのおかげで体力や魔力も温存できたからな、ここは全力でやらせてもらうぞ」
「ヤート、良い戦いぶりだったわ‼︎」
「ヤートだけに戦わせられないぜ‼︎」
「ヤート、少し休んでて」
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「ヤート君、地上は私達に任せてね‼︎」
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「ガアッ‼︎」
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「一体残ラズ必ズ滅シマス」
「…………ニガサナイ」
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「……それにしても、みんなが近づいてきてたのを全く気づかなかったな」
『我もだ』
『私もです。ただ良い機会なので少しでも身体を休めてください』
「わかった」
僕はあいつや魔石達を注意しつつ深呼吸を繰り返す。同調で体調を確認すると、やっぱり無理をしてるせいで疲れが溜まっているので、腰の小袋から薬草団子を取り出し食べた。あー、混ぜた果汁の甘さが身体に染み渡るね。
『ナ゛ニ゛ヲ゛ジデイ゛ル゛ッ゛‼︎ ザッザドグイ゛ヂラ゛ガゼッ゛‼︎』
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ラカムタさんとあいつの声が響き渡ると、みんなと魔石達の戦争が始まった。
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