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決戦前にて 変わろうとするものと特別なもの
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ラカムタさん達や魔獣達が飛ばしに飛ばして爆走した結果、合流地点まで半分というところまで来たらしい。事前の話し合いで聞いた限り、かなり王都から離れた場所まで後半分。一日目の移動距離としては破格だな。野営場所を作り、食事も終わったのでサムゼンさんに今の進み具合について聞いてみる。
「思ったよりも早く着きそうだ」
「やっぱり、そうだよね。余裕ができすぎるのは問題ないの?」
「普段の行軍ならそうだが、緊急事態の今なら余裕はいくらあっても足りないと考えて構わない」
「なるほど……」
「各国が合流し総力で攻めるという理想はあるにしろ、教団に不穏な動きがあるなら先に到着した国だけでも攻めて良しと取り決めになっている」
「確かに着いてみないと相手の様子はわからないから、そうなるか」
何をしてくるかわからない相手だから速さと臨機応変さが重要になっているみたいだ。こういう戦術とか兵法を勉強した方が良いのかなって思っていたら、ラカムタさんがサムゼンさんの隣に座った。
「サムゼン殿、今回の事が終わった後で構わないのだが、一度騎士の鍛錬というものを体験させてもらえないだろうか?」
「ほう……、なぜ、そのような事を?」
「このままではヤートに頼りっぱなしだからな。竜人族も変わる必要がある」
唐突……というわけではないのかな? 魔石関係で竜人族の戦闘力だけでは解決できない事が多かったし、もしかすると前々から考えてたのかもしれないね。僕は二人の話が盛り上がってきたので、邪魔にならないよう静かに離れて気になっていた魔獣のもとへ向かう。
うーん……大きい。体高は四ルーメくらいかな? 身長が二ルーメ以上のナイルさんが乗るのにふさわしい体格だけど、初めて見る魔獣だね。たぶん黒曜馬と六足馬の混血のような気がするけど、身体の各部を覆っている黒い鉱石は黒曜馬よりゴツゴツしていて、足が六足馬より二本多い八足だから単純な混血というわけじゃなさそうだ。
「ヤート君、この子が気になるのかしら?」
「うん、他の黒曜馬や六足馬とは違うなって」
「この子は私の専用騎の黒帝神馬で名前はオイリスって言うわ」
「黒帝神馬……、初めて見るね。本にも載ってなかった」
「それは仕方ないわね。今のところ黒帝神馬はオイリスだけだから」
「黒曜馬と六足馬の子供で良いの?」
「それは間違いないわ。でも、この子は特殊なの」
「特殊?」
「理由はわかってないんだけど、黒曜馬と六足馬の間に子供が産まれると親のどっちかの姿、つまり黒曜馬か六足馬として生まれるのよ」
「へえ、おもしろい性質だね」
「ええ、でも、この子は両親の特徴を併せ持ちつつ、その特徴がより強く身体に表れてるわ」
ナイルさんはオイリスを撫でながら説明してくれた。オイリスも特に嫌がってないから良い関係を築けてるみたいだね。ただ……気になる事もある。
「他の黒曜馬や六足馬よりも大きくて強そうだから、もしかして群で頂点になってる?」
「そうなのよ‼︎ この子は生まれた時から黒曜馬と六足馬の群に君臨してるわ。それに今まで私を乗せて長距離を走れる子がいなかったから、本当に嬉しいの‼︎」
うーん……、馬や馬系の魔獣は基本的に穏やかだって書いてあったけど、それにしても存在感を感じない。ここまで強い個体だったらジッとしてても迫力が伝わってきても良いはずなのに……。僕は疑問を解消するためオイリスに界気化した魔力を当てて、考えを読み取ってみた。…………なるほど、そういう事か。
「鬼熊、破壊猪、ディグリ、ミック、ちょっと来て」
僕が呼びかけると四体は、すぐに集まってくれた。よしよし、どこかボーッとしてたオイリスが四体を見だしたね。
「ガア?」
「ブオ?」
「何カアリマシタカ?」
「…………テキカ?」
「違うよ。お前らに用があるのは、このオイリスだよ」
四体の視線がオイリスに集まりバチバチとにらみ合いが始まったので、僕はオイリスに近づいて触り同調をする。オイリスが触れた僕を見たら四体は殺気立ったけど僕は気にせず話しかけた。
「お前、退屈してるよね?」
「ブル……?」
「周りに競え合える存在がいなくて張り合いがないんでしょ?」
「…………ブルル」
「この四体は強いから大丈夫。なんなら今のお前じゃ絶対に勝てない相手だよ」
「……ブル?」
「間違いなくお前の全力を受け止められる。好きな相手を選んで」
オイリスが再び四体に目を向けると、四体はオイリスに対して威圧を始めた。するとオイリスは四体の力を感じ取ったのか、嬉しそうに威圧を返す。オイリスが四体の内で誰を選ぶのか見守っているとミックがオイリスに近づいていく。
「ミック?」
「……ブル?」
「…………テキニン。イイカ?」
「ガア」
「ブオ」
「仕方ガナイデスネ。今回ハ譲リマス」
三体が離れていくのを確認した後、ミックはオイリスの目の前に止まり両手に当たる部分を地面に着ける。そしてオイリスを含む全員が見守っていたら、ミックの全身からバッと何本もの蔓が飛び出しミックの全身を覆うように巻きついていく。そして見た目が蔓でできた繭になった後、今度は繭の形がパキパキと音をたてながら変わっていった。
「「「「「…………」」」」」
数分後、驚きすぎて誰も声が出せない中、ミックは黒帝神馬の姿となりオイリスの前に立った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「思ったよりも早く着きそうだ」
「やっぱり、そうだよね。余裕ができすぎるのは問題ないの?」
「普段の行軍ならそうだが、緊急事態の今なら余裕はいくらあっても足りないと考えて構わない」
「なるほど……」
「各国が合流し総力で攻めるという理想はあるにしろ、教団に不穏な動きがあるなら先に到着した国だけでも攻めて良しと取り決めになっている」
「確かに着いてみないと相手の様子はわからないから、そうなるか」
何をしてくるかわからない相手だから速さと臨機応変さが重要になっているみたいだ。こういう戦術とか兵法を勉強した方が良いのかなって思っていたら、ラカムタさんがサムゼンさんの隣に座った。
「サムゼン殿、今回の事が終わった後で構わないのだが、一度騎士の鍛錬というものを体験させてもらえないだろうか?」
「ほう……、なぜ、そのような事を?」
「このままではヤートに頼りっぱなしだからな。竜人族も変わる必要がある」
唐突……というわけではないのかな? 魔石関係で竜人族の戦闘力だけでは解決できない事が多かったし、もしかすると前々から考えてたのかもしれないね。僕は二人の話が盛り上がってきたので、邪魔にならないよう静かに離れて気になっていた魔獣のもとへ向かう。
うーん……大きい。体高は四ルーメくらいかな? 身長が二ルーメ以上のナイルさんが乗るのにふさわしい体格だけど、初めて見る魔獣だね。たぶん黒曜馬と六足馬の混血のような気がするけど、身体の各部を覆っている黒い鉱石は黒曜馬よりゴツゴツしていて、足が六足馬より二本多い八足だから単純な混血というわけじゃなさそうだ。
「ヤート君、この子が気になるのかしら?」
「うん、他の黒曜馬や六足馬とは違うなって」
「この子は私の専用騎の黒帝神馬で名前はオイリスって言うわ」
「黒帝神馬……、初めて見るね。本にも載ってなかった」
「それは仕方ないわね。今のところ黒帝神馬はオイリスだけだから」
「黒曜馬と六足馬の子供で良いの?」
「それは間違いないわ。でも、この子は特殊なの」
「特殊?」
「理由はわかってないんだけど、黒曜馬と六足馬の間に子供が産まれると親のどっちかの姿、つまり黒曜馬か六足馬として生まれるのよ」
「へえ、おもしろい性質だね」
「ええ、でも、この子は両親の特徴を併せ持ちつつ、その特徴がより強く身体に表れてるわ」
ナイルさんはオイリスを撫でながら説明してくれた。オイリスも特に嫌がってないから良い関係を築けてるみたいだね。ただ……気になる事もある。
「他の黒曜馬や六足馬よりも大きくて強そうだから、もしかして群で頂点になってる?」
「そうなのよ‼︎ この子は生まれた時から黒曜馬と六足馬の群に君臨してるわ。それに今まで私を乗せて長距離を走れる子がいなかったから、本当に嬉しいの‼︎」
うーん……、馬や馬系の魔獣は基本的に穏やかだって書いてあったけど、それにしても存在感を感じない。ここまで強い個体だったらジッとしてても迫力が伝わってきても良いはずなのに……。僕は疑問を解消するためオイリスに界気化した魔力を当てて、考えを読み取ってみた。…………なるほど、そういう事か。
「鬼熊、破壊猪、ディグリ、ミック、ちょっと来て」
僕が呼びかけると四体は、すぐに集まってくれた。よしよし、どこかボーッとしてたオイリスが四体を見だしたね。
「ガア?」
「ブオ?」
「何カアリマシタカ?」
「…………テキカ?」
「違うよ。お前らに用があるのは、このオイリスだよ」
四体の視線がオイリスに集まりバチバチとにらみ合いが始まったので、僕はオイリスに近づいて触り同調をする。オイリスが触れた僕を見たら四体は殺気立ったけど僕は気にせず話しかけた。
「お前、退屈してるよね?」
「ブル……?」
「周りに競え合える存在がいなくて張り合いがないんでしょ?」
「…………ブルル」
「この四体は強いから大丈夫。なんなら今のお前じゃ絶対に勝てない相手だよ」
「……ブル?」
「間違いなくお前の全力を受け止められる。好きな相手を選んで」
オイリスが再び四体に目を向けると、四体はオイリスに対して威圧を始めた。するとオイリスは四体の力を感じ取ったのか、嬉しそうに威圧を返す。オイリスが四体の内で誰を選ぶのか見守っているとミックがオイリスに近づいていく。
「ミック?」
「……ブル?」
「…………テキニン。イイカ?」
「ガア」
「ブオ」
「仕方ガナイデスネ。今回ハ譲リマス」
三体が離れていくのを確認した後、ミックはオイリスの目の前に止まり両手に当たる部分を地面に着ける。そしてオイリスを含む全員が見守っていたら、ミックの全身からバッと何本もの蔓が飛び出しミックの全身を覆うように巻きついていく。そして見た目が蔓でできた繭になった後、今度は繭の形がパキパキと音をたてながら変わっていった。
「「「「「…………」」」」」
数分後、驚きすぎて誰も声が出せない中、ミックは黒帝神馬の姿となりオイリスの前に立った。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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