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決戦前にて 黒の考えとできる事できない事
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王都を出発した僕達の陣形は、先頭が特別な専用騎に乗ってるナイルさんで、少し遅れて並走してるのが黒曜馬に乗ってるサムゼンさん。次に僕とリンリーが乗ってる鬼熊、兄さんと姉さんが乗ってる破壊猪が横並びで追走している。そしてラカムタさんと父さんは鬼熊の右側を、母さんは破壊猪の左側を走っていて、最後に二体の後ろを走っているディグリとミックまでが先頭集団で、他の精鋭部隊は黒曜馬や六足馬に乗って僕達の後方を付かず離れず追ってきていた。
普通なら教団と教団支援者の襲撃を警戒をしつつの移動だから、そこそこの速さしか出せないはずだけど僕がいるから問題はない。それに魔獣達やラカムタさん達の元々の移動速度が桁外れなおかげで、どんどん距離が稼げているのも大きいね。たぶん、この移動速度なら待ち伏せがあったとしても、相手の準備が整う前に走り抜けてしまう気がする。
「ヤート、どうだ? 異常はないか?」
「うん、今のところどこにも異常はないよ」
「…………悪いな」
「いきなりどうしたの? ラカムタさん」
「ヤートに周りの警戒という一番神経を使う作業を続けさせているからな……」
「ああ、そういう事か。適材適所だから気にしないで。あと別に神経は使ってないよ」
「……前に界気化した魔力の制御は難しいと言っていたよな?」
「王都全域を探知するのに比べたら、自然の中を移動してる今は界気化した魔力で受け取る情報量が少ないんだ」
「そう……なのか?」
…………やっぱりこの感覚は界気化を使えないとわからないものだから、こんな風に認識に差が出るのはしょうがないかな。
「僕の感覚を説明すると、王都全域を界気化した魔力で探知するのはいろんな音が混じった本当に騒がしいところで一つ一つの音を聞き分ける感じで、移動中の今は静かな夜に耳を澄ませてる感じかな」
「確かに今の方が楽に思えるな……」
「うん、だから気にしないで」
「わかった。疲れてきたら、すぐに言うんだぞ」
「了解しました」
「おい」
僕が少しふざけて騎士の人達の胸に右拳を持ってきて頭を下げる動作をしたら、ラカムタさんに呆れられた。ちょっと僕らしくなかったかな? でも、僕にとって界気化は、もはや慣れたものだから気にしてほしくない。
「うふふ、とってもとっても良い関係ね」
「ナイルさん?」
「見ていて微笑ましいわ。でも、ラカムタ、もっと戦力として見てあげないとダメね。ヤート君は、ただ守られるつもりはないと思うわよ?」
「……理解はしている」
「本当かしら? あなた達黒は何ていうかヤート君が消えるのを怖がってるように見えるわ」
ナイルさんのつぶやきにラカムタさん達から痛いところを突かれたっていう反応をしてる。それにしても僕が消える?
「ナイルさん、僕に姿を消す能力はな…………、黒影衣がそうか。ごめん。僕は消えれたよ」
「うーん……、ヤート君が言ってる消えるとラカムタ達が思ってる消えるには、大きな違いがあるわね」
「そうなの?」
「ええ、ラカムタ達が気にしてるのはヤート君が本当に自分達のそばからいなくなってしまう事」
「え? 長旅する予定も独立する予定もないよ?」
「だけど、ヤート君は必要ならするでしょ?」
「それはそうだね」
「ヤート君、誰だって自分の身近な存在が、ある日突然いなくなるのは嫌よ。もし、その日が来たら旅立つ前に言ってあげて」
…………なるほど、やっとナイルさんの言いたい事がわかった。確かに僕も黒のみんなが突然いなくなるのは嫌だから、きちんとあいさつはしよう。
「ラカムタさん、父さん、母さん、兄さん、姉さん、リンリー、これから先僕が長旅に出る事があるかもしれない。でも、その時はちゃんと行ってきますは言うし、絶対に帰ってきてただいまって言うから」
「ヤート、約束だぞ」
「うん、約束は守るから安心して」
「わかった」
「それにしてもラカムタさん達が、そういう風に考えてるとは思わなかったよ」
「まあな。はっきり言って俺は、ある日突然ヤートが空の彼方へ飛んで行ってもおかしくないと思ってる」
ラカムタさんが真顔で言うと、みんなもうなずいた。
「…………みんな、僕の事を何だと思ってるの?」
「え? ヤート君、できないんですか?」
「リンリー、僕が飛べない事に驚くのは変だからね」
「ヤート君なら私達が想像するような事は全部できるのかと……」
「僕は植物達に力を貸してもらえなかったら何もできないよ」
「ヤート、待って。植物達の力で飛べるの?」
「試した事はないけど、たぶんできる。あ、それなら教団の本拠地へは空から突っ込めば良かったな。…………今からやっても」
「ヤート君、お願いだから止めてね」
「あ、うん」
母さんの質問に答えた後に思いついた事を実行しようとしたら、ナイルさんが食い気味に止めてきて思わずうなずいて止めてしまった。すごい迫力だったな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
普通なら教団と教団支援者の襲撃を警戒をしつつの移動だから、そこそこの速さしか出せないはずだけど僕がいるから問題はない。それに魔獣達やラカムタさん達の元々の移動速度が桁外れなおかげで、どんどん距離が稼げているのも大きいね。たぶん、この移動速度なら待ち伏せがあったとしても、相手の準備が整う前に走り抜けてしまう気がする。
「ヤート、どうだ? 異常はないか?」
「うん、今のところどこにも異常はないよ」
「…………悪いな」
「いきなりどうしたの? ラカムタさん」
「ヤートに周りの警戒という一番神経を使う作業を続けさせているからな……」
「ああ、そういう事か。適材適所だから気にしないで。あと別に神経は使ってないよ」
「……前に界気化した魔力の制御は難しいと言っていたよな?」
「王都全域を探知するのに比べたら、自然の中を移動してる今は界気化した魔力で受け取る情報量が少ないんだ」
「そう……なのか?」
…………やっぱりこの感覚は界気化を使えないとわからないものだから、こんな風に認識に差が出るのはしょうがないかな。
「僕の感覚を説明すると、王都全域を界気化した魔力で探知するのはいろんな音が混じった本当に騒がしいところで一つ一つの音を聞き分ける感じで、移動中の今は静かな夜に耳を澄ませてる感じかな」
「確かに今の方が楽に思えるな……」
「うん、だから気にしないで」
「わかった。疲れてきたら、すぐに言うんだぞ」
「了解しました」
「おい」
僕が少しふざけて騎士の人達の胸に右拳を持ってきて頭を下げる動作をしたら、ラカムタさんに呆れられた。ちょっと僕らしくなかったかな? でも、僕にとって界気化は、もはや慣れたものだから気にしてほしくない。
「うふふ、とってもとっても良い関係ね」
「ナイルさん?」
「見ていて微笑ましいわ。でも、ラカムタ、もっと戦力として見てあげないとダメね。ヤート君は、ただ守られるつもりはないと思うわよ?」
「……理解はしている」
「本当かしら? あなた達黒は何ていうかヤート君が消えるのを怖がってるように見えるわ」
ナイルさんのつぶやきにラカムタさん達から痛いところを突かれたっていう反応をしてる。それにしても僕が消える?
「ナイルさん、僕に姿を消す能力はな…………、黒影衣がそうか。ごめん。僕は消えれたよ」
「うーん……、ヤート君が言ってる消えるとラカムタ達が思ってる消えるには、大きな違いがあるわね」
「そうなの?」
「ええ、ラカムタ達が気にしてるのはヤート君が本当に自分達のそばからいなくなってしまう事」
「え? 長旅する予定も独立する予定もないよ?」
「だけど、ヤート君は必要ならするでしょ?」
「それはそうだね」
「ヤート君、誰だって自分の身近な存在が、ある日突然いなくなるのは嫌よ。もし、その日が来たら旅立つ前に言ってあげて」
…………なるほど、やっとナイルさんの言いたい事がわかった。確かに僕も黒のみんなが突然いなくなるのは嫌だから、きちんとあいさつはしよう。
「ラカムタさん、父さん、母さん、兄さん、姉さん、リンリー、これから先僕が長旅に出る事があるかもしれない。でも、その時はちゃんと行ってきますは言うし、絶対に帰ってきてただいまって言うから」
「ヤート、約束だぞ」
「うん、約束は守るから安心して」
「わかった」
「それにしてもラカムタさん達が、そういう風に考えてるとは思わなかったよ」
「まあな。はっきり言って俺は、ある日突然ヤートが空の彼方へ飛んで行ってもおかしくないと思ってる」
ラカムタさんが真顔で言うと、みんなもうなずいた。
「…………みんな、僕の事を何だと思ってるの?」
「え? ヤート君、できないんですか?」
「リンリー、僕が飛べない事に驚くのは変だからね」
「ヤート君なら私達が想像するような事は全部できるのかと……」
「僕は植物達に力を貸してもらえなかったら何もできないよ」
「ヤート、待って。植物達の力で飛べるの?」
「試した事はないけど、たぶんできる。あ、それなら教団の本拠地へは空から突っ込めば良かったな。…………今からやっても」
「ヤート君、お願いだから止めてね」
「あ、うん」
母さんの質問に答えた後に思いついた事を実行しようとしたら、ナイルさんが食い気味に止めてきて思わずうなずいて止めてしまった。すごい迫力だったな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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