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王都にて ちょっとした暴走と凝った仕掛け
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今、僕達は王城を抜け出し王都の建物の屋根を飛び跳ねてる。ラカムタさんと父さんは着地時に音が出ないよう気をつけてくれて、例え見上げられたとしても僕が黒影衣を発動させてるから認識されない。やっぱり少人数の移動なら、この方法が一番目立たなくて速いね。
「ヤート、どこに行けば良い?」
「あそこの年季が入った建物に行って」
「わかった。捕まってろよ」
「うん、お願い」
王城から近いところから回ると決めて、やってきたのは王都の貴族街の一画にある古びた屋敷。ここはゼビリランに協力してた共犯者の中で貴族階級の奴らが拠点にしていたところだ。屋根の上に着地した後に下ろしてもらい念入りに人の気配を探る。
「どうだ?」
「サムゼンさん達が踏み込んで調べてから新しく屋敷に足を踏み入れた人はいないね。異常がないか巡回してる人をやり過ごして、サッと入ってパッと回収すれば特に騒ぎにはならないよ」
「そうか。それなら行くぞ。…………待て」
屋敷の敷地内を定期的に巡回してる数人の騎士達にバレないように入ろうとしたら、大人数が走る足音が近づいてきた。そして屋敷の門を抜けて敷地内に入ってきた集団の一人が叫ぶ。
「黒の方々‼︎ いるのなら姿を現してくれ‼︎」
「サムゼンさんだね。ラカムタさん、父さん、どうする?」
「特に隠れる意味はないな」
僕達は屋根から飛び降りて黒影衣を解除した。
「サムゼンさん、よく僕達がここにいるってわかったね」
「ハア、ハア……、王城に近いここに来ている可能性にかけて全力で走ってきたのだ。それよりも‼︎ なぜ、我らを置いて走り出した⁉︎」
「「「…………」」」
サムゼンさんに聞かれて僕達は顔を見合わせた。言われてみれば確かに僕達だけで王都を移動する必要はない。それなのに何でだろ?
「うーん……、話の流れと勢い?」
「まあ、そうだな」
「少し暴走していたようだ。悪い」
「ごめんなさい」
「軽率だった。申し訳ない」
僕達が頭を下げると、サムゼンさんは慌てだす。
「あ、いや、わかってもらえれば、それで良いんだ‼︎ ヤ、ヤート殿‼︎ この屋敷にゼビリランの魔法とやらがあるんだな⁉︎」
「ゼビリランの記憶が間違ってなければあるよ」
「そうか。それなら部下達には屋敷の周りの警備についてもらい、我らは魔法を探すという事で良いだろうか?」
「うん、僕は大丈夫。ラカムタさんと父さんは?」
「俺も大丈夫だ」
「同じく」
「よし、それでは始めよう。ヤート殿、大まかにでも場所の検討は?」
「少し待って」
僕は屈んで地面に触れて同調と界気化で屋敷を含めた敷地内全体を詳しく調べる。…………明らかにおかしいところが屋敷の地下にあった。
「屋敷の地下に何かがあるよ」
「地下だと? この屋敷に地下があるという報告は受けてないぞ……。お前達はどうだ?」
サムゼンさんの部下達も首を横に振ってるから知らないみたいだ。
「それなら中に入って僕が調べるよ」
「徹底的に調べたはずなのだがな……。まあ良い。今から発見すれば良いだけだ。お前達は周囲の警戒を頼む」
命令を受けてから最短で警備体制に入った部下達の動きを満足そうにうなずいた後、サムゼンさんは屋敷の玄関へ歩いていくので僕達も追いかける。そして扉の前に立ったサムゼンさんは懐から鍵の束を取り出し、扉を開けて中に入っていく。
「…………よし。ヤート殿、異常はないようだ」
「うん、ありがとう」
扉をくぐり見えてきたのは、飾り付けのない殺風景で薄暗い正面玄関。本当にただ集まるための場所って感じだね。自分達以外の人に見られた時を考えて最低限でも装飾をすれば良いのにとも思うけど、外観が古びてるから屋内もさびれた感じにするのが正しいのかな? 僕はそんな事を考えながら同調で屋敷の構造を探っていく。
「二階から地下へ行けるみたい」
「わかった。先頭は俺だ。次にヤートとサムゼン殿で最後はマルディだ。良いな?」
ラカムタさんの言う通りの順番で、僕達は階段を上り二階へ足を踏み入れる。二階の方が窓からの採光で明るいな。でも、明るいからこそ何もない殺風景さが目立つね。廊下から各部屋の中をチラッと見ても、やっぱり何もない。そして本来なら屋敷の主人の部屋だったであろう二階の奥の部屋に着く。そこは今までの部屋と違い床にはじゅうたんがしかれて人数分の椅子と長机があった。
「ここだけ家具があるんだな」
「逆に、ここにだけ家具があるのは怪しいよね?」
「我らもヤート殿と同じ考えで、この部屋を調べたのだが何も見つけられなかったのだ……」
「ヤート、頼む」
「わかった」
もう一度同調の精度を最大限上げて詳しく調べた。…………はー、無駄に凝った作りだな。僕は部屋の入り口から見て左の壁の左側に近づき、壁の裏に仕掛けがある部分をトト、トントン、トト、トトントンと叩いた。すると壁の裏の仕掛けが作動して、部屋の入り口から見て右側の真ん中辺りの壁が床に沈んでいき、その奥には通路が見えてくる。
「このような仕掛けが…………」
「たぶんサムゼンさん達が調べた時に壁や床を叩いて奥に空間がないかとか確かめたと思うけど、壁の材質とか厚さのせいで反響音に差が出なくてわからなかったみたいだね」
「今後のために調査や探索の専門家を育てるべきだと確信した。すぐにでも王に直訴したいところだ」
「それは重要だけど、今は通路に入ろう」
僕が通路を調べた後に、またラカムタさんを先頭にして通路を進んでいった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「ヤート、どこに行けば良い?」
「あそこの年季が入った建物に行って」
「わかった。捕まってろよ」
「うん、お願い」
王城から近いところから回ると決めて、やってきたのは王都の貴族街の一画にある古びた屋敷。ここはゼビリランに協力してた共犯者の中で貴族階級の奴らが拠点にしていたところだ。屋根の上に着地した後に下ろしてもらい念入りに人の気配を探る。
「どうだ?」
「サムゼンさん達が踏み込んで調べてから新しく屋敷に足を踏み入れた人はいないね。異常がないか巡回してる人をやり過ごして、サッと入ってパッと回収すれば特に騒ぎにはならないよ」
「そうか。それなら行くぞ。…………待て」
屋敷の敷地内を定期的に巡回してる数人の騎士達にバレないように入ろうとしたら、大人数が走る足音が近づいてきた。そして屋敷の門を抜けて敷地内に入ってきた集団の一人が叫ぶ。
「黒の方々‼︎ いるのなら姿を現してくれ‼︎」
「サムゼンさんだね。ラカムタさん、父さん、どうする?」
「特に隠れる意味はないな」
僕達は屋根から飛び降りて黒影衣を解除した。
「サムゼンさん、よく僕達がここにいるってわかったね」
「ハア、ハア……、王城に近いここに来ている可能性にかけて全力で走ってきたのだ。それよりも‼︎ なぜ、我らを置いて走り出した⁉︎」
「「「…………」」」
サムゼンさんに聞かれて僕達は顔を見合わせた。言われてみれば確かに僕達だけで王都を移動する必要はない。それなのに何でだろ?
「うーん……、話の流れと勢い?」
「まあ、そうだな」
「少し暴走していたようだ。悪い」
「ごめんなさい」
「軽率だった。申し訳ない」
僕達が頭を下げると、サムゼンさんは慌てだす。
「あ、いや、わかってもらえれば、それで良いんだ‼︎ ヤ、ヤート殿‼︎ この屋敷にゼビリランの魔法とやらがあるんだな⁉︎」
「ゼビリランの記憶が間違ってなければあるよ」
「そうか。それなら部下達には屋敷の周りの警備についてもらい、我らは魔法を探すという事で良いだろうか?」
「うん、僕は大丈夫。ラカムタさんと父さんは?」
「俺も大丈夫だ」
「同じく」
「よし、それでは始めよう。ヤート殿、大まかにでも場所の検討は?」
「少し待って」
僕は屈んで地面に触れて同調と界気化で屋敷を含めた敷地内全体を詳しく調べる。…………明らかにおかしいところが屋敷の地下にあった。
「屋敷の地下に何かがあるよ」
「地下だと? この屋敷に地下があるという報告は受けてないぞ……。お前達はどうだ?」
サムゼンさんの部下達も首を横に振ってるから知らないみたいだ。
「それなら中に入って僕が調べるよ」
「徹底的に調べたはずなのだがな……。まあ良い。今から発見すれば良いだけだ。お前達は周囲の警戒を頼む」
命令を受けてから最短で警備体制に入った部下達の動きを満足そうにうなずいた後、サムゼンさんは屋敷の玄関へ歩いていくので僕達も追いかける。そして扉の前に立ったサムゼンさんは懐から鍵の束を取り出し、扉を開けて中に入っていく。
「…………よし。ヤート殿、異常はないようだ」
「うん、ありがとう」
扉をくぐり見えてきたのは、飾り付けのない殺風景で薄暗い正面玄関。本当にただ集まるための場所って感じだね。自分達以外の人に見られた時を考えて最低限でも装飾をすれば良いのにとも思うけど、外観が古びてるから屋内もさびれた感じにするのが正しいのかな? 僕はそんな事を考えながら同調で屋敷の構造を探っていく。
「二階から地下へ行けるみたい」
「わかった。先頭は俺だ。次にヤートとサムゼン殿で最後はマルディだ。良いな?」
ラカムタさんの言う通りの順番で、僕達は階段を上り二階へ足を踏み入れる。二階の方が窓からの採光で明るいな。でも、明るいからこそ何もない殺風景さが目立つね。廊下から各部屋の中をチラッと見ても、やっぱり何もない。そして本来なら屋敷の主人の部屋だったであろう二階の奥の部屋に着く。そこは今までの部屋と違い床にはじゅうたんがしかれて人数分の椅子と長机があった。
「ここだけ家具があるんだな」
「逆に、ここにだけ家具があるのは怪しいよね?」
「我らもヤート殿と同じ考えで、この部屋を調べたのだが何も見つけられなかったのだ……」
「ヤート、頼む」
「わかった」
もう一度同調の精度を最大限上げて詳しく調べた。…………はー、無駄に凝った作りだな。僕は部屋の入り口から見て左の壁の左側に近づき、壁の裏に仕掛けがある部分をトト、トントン、トト、トトントンと叩いた。すると壁の裏の仕掛けが作動して、部屋の入り口から見て右側の真ん中辺りの壁が床に沈んでいき、その奥には通路が見えてくる。
「このような仕掛けが…………」
「たぶんサムゼンさん達が調べた時に壁や床を叩いて奥に空間がないかとか確かめたと思うけど、壁の材質とか厚さのせいで反響音に差が出なくてわからなかったみたいだね」
「今後のために調査や探索の専門家を育てるべきだと確信した。すぐにでも王に直訴したいところだ」
「それは重要だけど、今は通路に入ろう」
僕が通路を調べた後に、またラカムタさんを先頭にして通路を進んでいった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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