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大霊湖にて 変に感じる出発と青の大樹

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今話で通算200話になりました。

これまで読んでいただけた皆様に心より感謝を申し上げます。

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 僕とイリュキンは、ラカムタさんに言われて、緑葉船リーフボートや休憩の時に食べる軽食なんかを用意して大霊湖だいれいこの湖畔に立っていた。

「準備はできたな。今日は良い天気で風も穏やかだ。ゆっくり大髭おおひげ様と話してこい‼︎」
「「…………」」

 妙にラカムタさんは盛り上がってるし、ハインネルフさん達も僕とイリュキンを微笑ましく見てくるのは何で? いつもみたいに僕の感覚がズレてるのかなって思ったけど、イリュキンから困惑と疑問の混じった感情が伝わってきて、この状況は変なんだって確信できた。
 
「……行こうか」
「……そうだね」

 状況には納得できないけど、大髭おおひげ様へのあいさつは行かない理由もないので、イリュキンと緑葉船リーフボートに乗り込み、風吹き花ブロワーフラワーに風を出してもらい大霊湖だいれいこを進み出す。

 振り返ると小さくなったラカムタさん達が、僕とイリュキンに手を振っていた。これも特にやらない理由はないので手を振り返した後、進行方向を向き気分を切り替える。

「イリュキン、大霊湖だいれいこの中央部まで進んだら、一度界気化かいきかした魔力で大髭おおひげ様を探すで良いかな?」
「中央部に近づいた時点で、大髭おおひげ様の方から何かの合図はありそうだけど、とりあえずヤート君の方針に賛成だ」
「わかった。それじゃあ風吹き花ブロワーフラワーの無理のない強さまで風を出して加速するから、落ち着かないとかあったら遠慮なく言ってね」
「もちろん、そうさせてもらうよ」

 イリュキンがしっかりと緑葉船リーフボートをつかんだのを確認して、僕は風吹き花ブロワーフラワーにお願いした。すると風吹き花ブロワーフラワーは快く風の出力を上げてグンッと加速する。……やっぱり、この空気をかき分けて進む感じは楽しいな。



 一刻(前世で言う一時間)くらい進んでから風吹き花ブロワーフラワーを休ませるために休憩を取った。風吹き花ブロワーフラワーからは、まだまだいけるという意志が伝わってくるけど今日は急ぎの用じゃないって言って落ち着いてもらう。

 ……そういえば前の三体との競争でも、風吹き花ブロワーフラワーは植物らしくないものすごいやる気を見せてくれてたな。まあ、積極的に協力してくれるのは嬉しいしありがたいと思ってる。

 でも、さすがに萎れる寸前まで力を出されるのは困るので、今の僕達はきっちり休憩の時間を作るため波に流される緑葉船リーフボートの上で軽食を食べながら話したり軽く寝たりして過ごしていた。そんな中、ふとした時にイリュキンが僕を見る。

「ヤート君」
「何?」
「青の村に、大霊湖だいれいこに来て良かったかい?」
「魔石の事を除けば、見た事のない景色、新しい出会い、有意義な発見、これからの課題を見つけれたから良い時間だと思ってる」
「……それは良かった。ヤート君を招待した甲斐があったよ」

 緊張気味に質問してきたイリュキンは、僕の答えを聞いて小さくホッと息を吐いた。どうして、そんな事を聞いてきたのか気にはなったけど、なんとなくイリュキンに答えを聞くのは違うなって思い、界気化かいきかを止める。

 その後は、お互い無言のまま時間が過ぎていったけど僕とイリュキンは無言でも気まずくならない上に、気持ちの良い日差しと風を感じて水の音を聞いていたら特に苦じゃなかった。



 二十分ほど経ってから、そろそろ移動を再開しようとなり最初に決めた通り界気化かいきかした魔力で大髭おおひげ様の位置を探る。

「…………」
大髭おおひげ様は近くにいそうかな?」
「割と遠くだね。少なくとも、ここに来るまでと同じくらいの時間はかかりそう」
「いっそ、こちらから合図を送る?」
「……そうしようか。それじゃあイリュキン、よろしく」
「私が合図を出して良いのかい?」
「うん、大髭おおひげは僕の出す合図よりイリュキンの出す合図の方が感知しやすい気がする。それに大霊湖だいれいこでイリュキンが水を操ったらどうなるのかを見てみたい」
「そんな風に言われたら、気合を入れてやるしかないね」

 イリュキンは僕の発言を受けて真剣な顔になり、緑葉船リーフボートから少し身を乗り出して湖に手を入れた。そして目を閉じ集中すると、イリュキンの魔力は手に集まっていき湖面で波紋が起こる。

 イリュキンの魔法の邪魔にならないよう僕は今も界気化かいきかを止めてるけど、界気化かいきかを使わなくても時間が経つごとに湖面の波紋は大きくなっていくので魔力を高めているのはわかる。これはかなり大規模になりそうだ。

水造形ブルークリエイション

 イリュキンの魔法の発動とともに、まず波紋が鎮まる。そして次の瞬間、緑葉船リーフボートから離れた湖面の一部分が青く光ると湖面が盛り上がり、そのまま空へと伸びていく。そして見上げるほどに高くなると、先の方が枝分かれしていった。

 うん? 枝分かれというより、本当に樹の枝みたいになってるな。さらにそのまま見ていると水でできた樹の枝は複雑に伸びていき、葉もできていく。

「どうかな? 私も魔法の制御には自信があるんだ」
「すごい……」

 完成したのは、青く光る水でできた大樹。しかも、ただ形を再現しているわけじゃなくて、水でできた枝や葉が風で揺れている。それに幹の表面のザラザラ感や水中に根が伸び方はすごい再現度だ。感心していると、イリュキンが湖面から手を抜いて額の汗を拭う。

「全力で魔力を込めたから、しばらくこのまま残るはず」
「湖に生える水の大樹か……。僕の想像を超えてて、うまい感想を言えないのが悔しいな」
「そう言ってもらえると、気合を入れた甲斐があったよ」

 僕はイリュキンに水の大樹の作り方や想像元なんかを聞きながらも、ずっと水の大樹を見ていたというより目が離せずにいた。……ああ、これならきっと大髭おおひげ様も気付いてくれるね。



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◎後書き
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。

 感想や評価もお待ちしています。
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