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青の村にて 不審な態度と新しい鍛錬
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自分の体調と緑葉船に風吹き花達の状態を確認する。……僕の身体と緑葉船は問題無いとして、風吹き花達の消耗が激しいな。風吹き花達からは何のこれしきという意思を伝えてくるけど、やせ我慢なのが丸わかりだよ。
「緑盛魔法。緑葉船も風吹き花達も、頑張ってくれてありがとう。ゆっくり休んで」
僕は魔法を発動させて種に戻して眠ってもらう。……あ、眠る直前の緑葉船と風吹き花達から、またいつでも力を貸すから呼べっていう意思が、はっきりと伝わってきた。本当に植物達は僕に優しくしてくれるんだろ? 僕から植物達に何かした覚えは全くないから謎だ。謎と言えば……。
「ガ、ガア⁉︎」
「ブオブオ⁉︎」
「大丈夫デスカ⁉︎ ドコカ身体ハ痛ミマスカ⁉︎」
三体もどうしてここまで親身になってくれるのか謎だよね。
「僕は特に問題ないよ」
「ガア……」
「ブオ……」
「良カッタデス……」
「あ、そういえば競争に水を差しちゃったね。ごめん」
僕が謝ると三体はそろって首を振った。
「ガア」
「ブオ」
「私モ気ニシテマセンヨ。ソレデハ村ニ戻リマショウ」
「……そうだね」
さて、今回は絶対にわざとじゃないけど、結果としてかなり危なかったから素直に怒られよう。僕は覚悟を決めて三体と青の村の門に向かうと、そこには、すでにラカムタさんやハインネルフさんを初めとしたみんながいた。
まあ、あれだけ鬼熊と破壊猪が爆走して近づいてきてたら状況確認のために、みんな出てくるよね。
「ラカムタさん、ハインネルフさん、ただいま」
「……おう」
「ふむ、なかなか激しい散歩だったようだ」
「ちょっと……じゃなくて、かなり帰り際に盛り上がったんだ」
「…………」
あれ? 拳骨くらいは覚悟してたのに、ラカムタさんから何も言われない。不思議に思ってラカムタさんを見たら目をそらされた。……この反応は何?
「ともかく無事で何より。ヤート殿も魔獣の方々も休むと良い」
「うん、そうさせてもらうよ。行こう」
「ガ」
「ブ」
「ハイ」
散歩から戻ってきてしばらくするとお昼になったから、みんな広場で昼食を食べてる。まあ食べてるのは良いとして……。
「「「「「…………」」」」」
雰囲気が重い。特に兄さん達とラカムタさんとイーリリスさんから、何とも言い難い雰囲気が伝わってきて重く感じる。あと食べながらも僕をチラチラ見てくるのは何で? ……とりあえず一番近い兄さんに聞いてみるか。
「兄さん」
「うおっ‼︎ ど、どうした。ヤート?」
兄さん、態度が不自然すぎるよ。
「……みんな僕をチラチラ見てくるけど、僕に何か用?」
「あ、いや、その……なんだ」
「僕から聞いた事だけど、僕への用がはっきりしてないなら後で良いよ?」
「そういうわけじゃねえんだが……」
あまりに兄さんの態度がらしくないので、時間を開けようとしたら兄さんは口ごもる。姉さん達やラカムタさんも、同じような感じだ。本当に何だろ? まあ、本当に用があるなら、言ってくるだろうし無理に聞かないでおこう。
僕は昼食を食べ終わったので一休みがてら大霊湖に面した広場の端に向かった。……背中に兄さん達の視線を感じるけど、何も言ってこないな。そのまま兄さん達から話しかけられる事もなく広場の端に着き、食後でまったりしていた三体のそばに行く。
「美味しく食事できた?」
「ガ」
「ブ」
「ココノ水ハ私ノ身体ニアッテイルヨウデス」
三体が三体とも満足してるみたいで良かった。僕はうなずいてから三体のそばに座って目を閉じ静かに深呼吸をする。
「「「…………」」」
三体はそんな僕の様子を見て、これからやろうとしている事を理解し身体からあふれている魔力を抑えてくれた。気づかいのできる優しい奴らだね。
「スー……、ハー……」
息を吸いながら魔力を安定させ、吐くとともに魔力の放出量を増やしていく。そして今の自分の限界値……通常時を一とした時の三くらいになったら、そのまま限界値を維持する。
今の僕の接近戦における最大の問題点は、界気化した魔力を全身から安定して出せないという事。それをどうするべきか一晩考え、こうやって身体全体からの魔力の放出に慣れるのが肝心だっていう結論になった。すぐには際立った変化を感じないだろうけど、続けていけばその内界気化した魔力を全身から出しての接近戦も可能になるはず。
数分が経ち呼吸が乱れてきて、魔力放出の限界値も保てなくなったので魔力を通常時の量に戻す。
「ハア……、ハア……」
「大丈夫デスカ?」
「フー……、うん、とはいえ動いてない状態での限界値の放出が、数分しか保たないのは厳しいな。実戦で使えるようになるのは、まだまだ先だ」
「積ミ重ネテイキマショウ。ソレガ最善デス」
「きっと、そうだね。そうするよ」
その後も限界値での魔力の放出と休憩を繰り返して、少しでも放出できる時間が長くなるように身体の奥底から魔力を振り絞る。今まで手を出さなかった鍛錬だから、なかなかにきついけど強くなるためと思えば何というか楽しい。
……前世の世界で身体を鍛えてる人達は、たぶんこんな感覚だったのかなって考えながら呼吸を整えていると後ろから数人が近づいてくる足音が聞こえ振り向くと兄さん達だった。そして兄さん達は、僕と三体から少し離れたところに並んで立ち止まる。何だろ?
「ヤート……」
「兄さん、どうしたの?」
「悪かった‼︎」
「ヤート、ごめん‼︎」
「ヤート君、ごめんなさい‼︎」
「ヤート君、すまなかった‼︎」
「ヤート、すまん」
「ヤート殿、申し訳ありませんでした」
いきなり、みんなに謝られた。……何で?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「緑盛魔法。緑葉船も風吹き花達も、頑張ってくれてありがとう。ゆっくり休んで」
僕は魔法を発動させて種に戻して眠ってもらう。……あ、眠る直前の緑葉船と風吹き花達から、またいつでも力を貸すから呼べっていう意思が、はっきりと伝わってきた。本当に植物達は僕に優しくしてくれるんだろ? 僕から植物達に何かした覚えは全くないから謎だ。謎と言えば……。
「ガ、ガア⁉︎」
「ブオブオ⁉︎」
「大丈夫デスカ⁉︎ ドコカ身体ハ痛ミマスカ⁉︎」
三体もどうしてここまで親身になってくれるのか謎だよね。
「僕は特に問題ないよ」
「ガア……」
「ブオ……」
「良カッタデス……」
「あ、そういえば競争に水を差しちゃったね。ごめん」
僕が謝ると三体はそろって首を振った。
「ガア」
「ブオ」
「私モ気ニシテマセンヨ。ソレデハ村ニ戻リマショウ」
「……そうだね」
さて、今回は絶対にわざとじゃないけど、結果としてかなり危なかったから素直に怒られよう。僕は覚悟を決めて三体と青の村の門に向かうと、そこには、すでにラカムタさんやハインネルフさんを初めとしたみんながいた。
まあ、あれだけ鬼熊と破壊猪が爆走して近づいてきてたら状況確認のために、みんな出てくるよね。
「ラカムタさん、ハインネルフさん、ただいま」
「……おう」
「ふむ、なかなか激しい散歩だったようだ」
「ちょっと……じゃなくて、かなり帰り際に盛り上がったんだ」
「…………」
あれ? 拳骨くらいは覚悟してたのに、ラカムタさんから何も言われない。不思議に思ってラカムタさんを見たら目をそらされた。……この反応は何?
「ともかく無事で何より。ヤート殿も魔獣の方々も休むと良い」
「うん、そうさせてもらうよ。行こう」
「ガ」
「ブ」
「ハイ」
散歩から戻ってきてしばらくするとお昼になったから、みんな広場で昼食を食べてる。まあ食べてるのは良いとして……。
「「「「「…………」」」」」
雰囲気が重い。特に兄さん達とラカムタさんとイーリリスさんから、何とも言い難い雰囲気が伝わってきて重く感じる。あと食べながらも僕をチラチラ見てくるのは何で? ……とりあえず一番近い兄さんに聞いてみるか。
「兄さん」
「うおっ‼︎ ど、どうした。ヤート?」
兄さん、態度が不自然すぎるよ。
「……みんな僕をチラチラ見てくるけど、僕に何か用?」
「あ、いや、その……なんだ」
「僕から聞いた事だけど、僕への用がはっきりしてないなら後で良いよ?」
「そういうわけじゃねえんだが……」
あまりに兄さんの態度がらしくないので、時間を開けようとしたら兄さんは口ごもる。姉さん達やラカムタさんも、同じような感じだ。本当に何だろ? まあ、本当に用があるなら、言ってくるだろうし無理に聞かないでおこう。
僕は昼食を食べ終わったので一休みがてら大霊湖に面した広場の端に向かった。……背中に兄さん達の視線を感じるけど、何も言ってこないな。そのまま兄さん達から話しかけられる事もなく広場の端に着き、食後でまったりしていた三体のそばに行く。
「美味しく食事できた?」
「ガ」
「ブ」
「ココノ水ハ私ノ身体ニアッテイルヨウデス」
三体が三体とも満足してるみたいで良かった。僕はうなずいてから三体のそばに座って目を閉じ静かに深呼吸をする。
「「「…………」」」
三体はそんな僕の様子を見て、これからやろうとしている事を理解し身体からあふれている魔力を抑えてくれた。気づかいのできる優しい奴らだね。
「スー……、ハー……」
息を吸いながら魔力を安定させ、吐くとともに魔力の放出量を増やしていく。そして今の自分の限界値……通常時を一とした時の三くらいになったら、そのまま限界値を維持する。
今の僕の接近戦における最大の問題点は、界気化した魔力を全身から安定して出せないという事。それをどうするべきか一晩考え、こうやって身体全体からの魔力の放出に慣れるのが肝心だっていう結論になった。すぐには際立った変化を感じないだろうけど、続けていけばその内界気化した魔力を全身から出しての接近戦も可能になるはず。
数分が経ち呼吸が乱れてきて、魔力放出の限界値も保てなくなったので魔力を通常時の量に戻す。
「ハア……、ハア……」
「大丈夫デスカ?」
「フー……、うん、とはいえ動いてない状態での限界値の放出が、数分しか保たないのは厳しいな。実戦で使えるようになるのは、まだまだ先だ」
「積ミ重ネテイキマショウ。ソレガ最善デス」
「きっと、そうだね。そうするよ」
その後も限界値での魔力の放出と休憩を繰り返して、少しでも放出できる時間が長くなるように身体の奥底から魔力を振り絞る。今まで手を出さなかった鍛錬だから、なかなかにきついけど強くなるためと思えば何というか楽しい。
……前世の世界で身体を鍛えてる人達は、たぶんこんな感覚だったのかなって考えながら呼吸を整えていると後ろから数人が近づいてくる足音が聞こえ振り向くと兄さん達だった。そして兄さん達は、僕と三体から少し離れたところに並んで立ち止まる。何だろ?
「ヤート……」
「兄さん、どうしたの?」
「悪かった‼︎」
「ヤート、ごめん‼︎」
「ヤート君、ごめんなさい‼︎」
「ヤート君、すまなかった‼︎」
「ヤート、すまん」
「ヤート殿、申し訳ありませんでした」
いきなり、みんなに謝られた。……何で?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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