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決戦後にて 苔巨人兵との別れと達人技
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さて、苔巨人兵達は、どうしてもらった方が良いんだろ? 元の苔玉に戻すのは現実的じゃない……というか、苔巨人兵として安定してるから戻せないと言った方が正しいか。とりあえず苔巨人兵達にどうしたいか聞いてみよう。あとお礼を言っておかないとダメだね。
「魔石を倒すのに協力してくれてありがとう」
僕がお礼を言うと苔巨人兵達はそろってうなずいてきた。
「それでだけど、僕にしてほしい事ってある?」
苔巨人兵達は僕の質問に顔を見合わせるような動作をして動きを止めた。どうやら話し合ってる感じだね。
少しして並んでる苔巨人兵達の中の一体が、僕達の方に一歩前に出てきた。この苔巨人兵が代表という事かな? そして代表の苔巨人兵が右腕を僕の方に向けると、人で言う指先部分が細く伸びてくる。ちょうど僕の目の前まで伸びてきたから、僕は握手をするように左手で握った。すると苔巨人兵達の話し合いの結論が僕に伝わってくる。……これはイーリリスさんに相談しよう。
「イーリリスさん」
「……何でしょう」
「苔巨人兵達は大霊湖を周遊してたい個体、浅瀬でジッとしてたい個体、陸地に上がって根付きたい個体に別れてるんだけど、このまま大霊湖にいても大丈夫?」
「場所の問題は広大な大霊湖には関係ありません。周遊するにしても根付くにしても、うまく環境に適応してくれるのなら大丈夫だと思います」
「苔巨人兵達の元になってる苔玉は、静かな種類だし暴れるとか大霊湖の生物を食い荒らす事はしないよ」
「それでしたら構いません。ヤート殿、周遊を希望していない個体に、あちらの方向の湖岸へ進むように伝えてください」
「わかった。おーい、聞こえた? 静かにしてたい奴と根付きたい奴は、イーリリスさんの指差してる方の湖岸に移動して」
僕が言うと十体の内の八体がザブンザブンと水をかき分けて湖岸を目指し始めた。残りの二体は大霊湖を周遊してたいんだね。
「わかってると思うけど、大霊湖の中央部に行くのは慣れてからにする事。あと大髭様や大霊湖の他の生物にぶつかるのはダメだよ」
二体の苔巨人兵は、しっかりとうなずく。まあ、もし何かしらで困っても大霊湖の水生植物に聞くだろうし大丈夫か。
「まずは、二体いっしょにこの辺りを回ってみて大霊湖の雰囲気を感じたら良いよ」
僕が言うと二体の苔巨人兵は、それぞれ両腕をグッと曲げて大丈夫だと意思表示をしてくる。
一通り苔巨人兵達との意思疎通が終わった後、僕へと伸ばしていた苔を回収して二体の苔巨人兵は大霊湖を周遊するために僕とイーリリスさんから離れて行った。
「またね。黒の村に帰る前に一度会いに行くよ」
僕が離れていく二体の苔巨人兵に言うと、二体の苔巨人兵は立ち止まりグリンって上半身だけ僕とイーリリスさんの方に振り返ると、両腕で大きな丸を作り了解っていう意思を示した後に再び歩き出す。
「ヤート殿……、植物というのは感情があるのですね」
「僕もそう思う。特に動けるようになった植物達は感情表現が豊かで少し羨ましい」
「ヤート殿も、いずれはできますよ」
「赤の村長のグレアソンさんにも同じ事を言われた」
「ああ、それならグレアソンの人を見る目は確かなので本当に大丈夫です」
「そうなんだ。少し気が楽になった気がする。それじゃあ僕達も……あれ?」
「どうかされましたか?」
「あれは……大髭様……?」
「……そうですね」
苔巨人兵達の見送りが終わって青の村へと進路を取ろうとしたら、遠くの方で何かが水面を突き破って飛び出してきたのが見えて、空中で踊るその姿は大髭様だった。…………大髭様が水面から飛び出した?
「まずい!! イーリリスさん、緑葉船を動かすから捕まってて!!」
「わかりました!!」
僕は風吹き花にお願いして風を出してもらい、大髭様が水面に落ちるまでに少しでも離れるように緑葉船を走らす。そしてドバーーン!! と音がした後にドドドドドドドドッていう音が後ろから迫ってくる。後ろを見ると予想通り大波が僕達を飲み込もうとしていた。あまりの事態に頭が真っ白になって動けずにいたらイーリリスさんの声が聞こえた。
「ヤート殿!! 体勢を低くしてください!!」
「わ、わかった」
「フゥゥゥゥゥ…………、ハッ!!」
イーリリスさんを見ると、両腕を上げた状態で緑葉船に立ち息を吐き集中していた。そしてイーリリスさんは息を吸うとともにカッと目を開き右腕を振り下ろす。
「嘘……」
その結果……大波が縦一文字に真っ二つになり、その二つになった大波が緑葉船の両脇を追い越していった。…………つくづく青の人達は達人なんだな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「魔石を倒すのに協力してくれてありがとう」
僕がお礼を言うと苔巨人兵達はそろってうなずいてきた。
「それでだけど、僕にしてほしい事ってある?」
苔巨人兵達は僕の質問に顔を見合わせるような動作をして動きを止めた。どうやら話し合ってる感じだね。
少しして並んでる苔巨人兵達の中の一体が、僕達の方に一歩前に出てきた。この苔巨人兵が代表という事かな? そして代表の苔巨人兵が右腕を僕の方に向けると、人で言う指先部分が細く伸びてくる。ちょうど僕の目の前まで伸びてきたから、僕は握手をするように左手で握った。すると苔巨人兵達の話し合いの結論が僕に伝わってくる。……これはイーリリスさんに相談しよう。
「イーリリスさん」
「……何でしょう」
「苔巨人兵達は大霊湖を周遊してたい個体、浅瀬でジッとしてたい個体、陸地に上がって根付きたい個体に別れてるんだけど、このまま大霊湖にいても大丈夫?」
「場所の問題は広大な大霊湖には関係ありません。周遊するにしても根付くにしても、うまく環境に適応してくれるのなら大丈夫だと思います」
「苔巨人兵達の元になってる苔玉は、静かな種類だし暴れるとか大霊湖の生物を食い荒らす事はしないよ」
「それでしたら構いません。ヤート殿、周遊を希望していない個体に、あちらの方向の湖岸へ進むように伝えてください」
「わかった。おーい、聞こえた? 静かにしてたい奴と根付きたい奴は、イーリリスさんの指差してる方の湖岸に移動して」
僕が言うと十体の内の八体がザブンザブンと水をかき分けて湖岸を目指し始めた。残りの二体は大霊湖を周遊してたいんだね。
「わかってると思うけど、大霊湖の中央部に行くのは慣れてからにする事。あと大髭様や大霊湖の他の生物にぶつかるのはダメだよ」
二体の苔巨人兵は、しっかりとうなずく。まあ、もし何かしらで困っても大霊湖の水生植物に聞くだろうし大丈夫か。
「まずは、二体いっしょにこの辺りを回ってみて大霊湖の雰囲気を感じたら良いよ」
僕が言うと二体の苔巨人兵は、それぞれ両腕をグッと曲げて大丈夫だと意思表示をしてくる。
一通り苔巨人兵達との意思疎通が終わった後、僕へと伸ばしていた苔を回収して二体の苔巨人兵は大霊湖を周遊するために僕とイーリリスさんから離れて行った。
「またね。黒の村に帰る前に一度会いに行くよ」
僕が離れていく二体の苔巨人兵に言うと、二体の苔巨人兵は立ち止まりグリンって上半身だけ僕とイーリリスさんの方に振り返ると、両腕で大きな丸を作り了解っていう意思を示した後に再び歩き出す。
「ヤート殿……、植物というのは感情があるのですね」
「僕もそう思う。特に動けるようになった植物達は感情表現が豊かで少し羨ましい」
「ヤート殿も、いずれはできますよ」
「赤の村長のグレアソンさんにも同じ事を言われた」
「ああ、それならグレアソンの人を見る目は確かなので本当に大丈夫です」
「そうなんだ。少し気が楽になった気がする。それじゃあ僕達も……あれ?」
「どうかされましたか?」
「あれは……大髭様……?」
「……そうですね」
苔巨人兵達の見送りが終わって青の村へと進路を取ろうとしたら、遠くの方で何かが水面を突き破って飛び出してきたのが見えて、空中で踊るその姿は大髭様だった。…………大髭様が水面から飛び出した?
「まずい!! イーリリスさん、緑葉船を動かすから捕まってて!!」
「わかりました!!」
僕は風吹き花にお願いして風を出してもらい、大髭様が水面に落ちるまでに少しでも離れるように緑葉船を走らす。そしてドバーーン!! と音がした後にドドドドドドドドッていう音が後ろから迫ってくる。後ろを見ると予想通り大波が僕達を飲み込もうとしていた。あまりの事態に頭が真っ白になって動けずにいたらイーリリスさんの声が聞こえた。
「ヤート殿!! 体勢を低くしてください!!」
「わ、わかった」
「フゥゥゥゥゥ…………、ハッ!!」
イーリリスさんを見ると、両腕を上げた状態で緑葉船に立ち息を吐き集中していた。そしてイーリリスさんは息を吸うとともにカッと目を開き右腕を振り下ろす。
「嘘……」
その結果……大波が縦一文字に真っ二つになり、その二つになった大波が緑葉船の両脇を追い越していった。…………つくづく青の人達は達人なんだな。
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◎後書き
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注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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