147 / 318
青の村にて 知らない一面と敵
しおりを挟む
あれから時間が経つごとに僕の界気化した魔力の浸透が進んで、兄さんと姉さんから僕が受け取る情報が増えていく。僕の頭の中に浮かぶ兄さんの記憶も姉さんの記憶も登場人物が若返ってるから、兄さんと姉さんの意識を遡れてるみたいだね。このまま順調に進めたら、割りとすぐに兄さんと姉さんの意識の奥底にたどり着けそうだ。
『ヤート殿、今はどのような事柄を受け取ってますか?』
僕の隣にいるはずのイーリリスさんの声が遠くから聞こえた。たぶん僕の意識が兄さんと姉さんの方に向いてるせいかな。これはあれだ。読書に熱中してる時に話しかけられるのと似てる気がする。
「兄さんと姉さんの記憶を受け取ってるところ。イーリリスさん、受け取った記憶の中のみんなが若くなっていくんだけど、このままで良いんだよね?」
『それはヤート殿の界気化した魔力がお二人の意識に浸透している証拠なので大丈夫です』
「わかった。このまま兄さんと姉さんの無意識に浸透するまで続けるよ。あとラカムタさん」
『なんだ?』
「兄さんと姉さんの記憶を遡れば遡るほど、二人が激しくケンカしてる記憶ばっかりなんだけど……」
『ああ、それはそうだ。今のガルとマイネは口ゲンカやにらみ合いが主だが、昔はもっとひどくてよく未熟ながらも強化魔法発動させて本気の殴り合いをしていたぞ』
「そうなんだ」
『ヤートと深く触れ合うようになってから、ずいぶん落ち着いたな』
僕の知らない兄さんと姉さんの一面を知ってしまって微妙な気分になる。今が緊急事態だとしても、こういう一方的に知ってしまうのは不公平な気がするんだよね。…………前世の事を兄さんと姉さんに話してみようかな。
『ヤート殿、魔力の界気化が少し乱れています。今は集中してください』
「ごめん。すぐに元に戻す」
今はあとの事を考えてる場合じゃない。まずは目の前の兄さんと姉さんの無意識を探るのが最優先だ。
イーリリスさんに注意されてから気を引き締め直して界気化した魔力の放出を続けていると、兄さんと姉さんから受け取る情報が変わる。僕の頭に浮かんでいた映像がどんどんぼやけていき、兄さんと姉さんのいろいろな感情とか思いだけを受け取っている感じになった。
これが兄さんと姉さんの意識の奥底にある無意識に思ってる事なのかな? 陽気な感情が多いから兄さんと姉さんは毎日を楽しんでるみたいで良かった。……僕への心配もあるね。うん、いろいろ終わったら謝るとして、兄さんと姉さんの無意識に僕の界気化した魔力が浸透したんだから、あとは兄さんと姉さんをおかしくしてる奴を見つけるだけだ。
「兄さんと姉さんの意識の奥底に界気化した魔力が到達したみたい。今から全力で探ってみるから話しかけないでね」
『ヤート、慎重にな』
「うん」
僕は界気化した魔力の放出量を増やして、兄さんと姉さんの意識の奥底である無意識の隅々にまで浸透させていく。当然、僕が受け取る情報が増えて負担も増すけどどうでも良い。異常の原因を見つけてみせる。
僕がその後もひたすら兄さんと姉さんの無意識からの情報を受け取り探っていると、とうとう明らかにおかしいものを見つけた。それは兄さんと姉さんの無意識の隅の方にヘドロのようにへばりついていて、そいつから受け取れる情報とにかく濁っていて気持ち悪い。こいつが原因だって確信できる。
「緑盛魔法・超育成・聖月草」
『ヤート!!』
『ヤート殿!!』
『『ヤート君!!』』
僕の突然の行動にみんな驚いてたけど、一切構ってる余裕はない。僕は種を腰の小袋に入れたまま聖月草を成長させ、開花した聖月草が放つ邪なものを退ける光を界気化した魔力に乗せて兄さんと姉さんの無意識の隅々にまで流し込んだ。
『ギギィッ!!』
兄さんと姉さんの無意識の隅にへばりついてる奴がうめき声を出し、へばりついている奴が僕を憎々しげに見てくる。視線と気配でわかる。こいつは間違いなく敵で、こいつが兄さんと姉さんの無意識にいる事は絶対に許したらダメだ。
「緑盛魔法・純粋なる緑の波紋!!」
僕は聖月草の発する光をいったん手に集め増幅・強化をしてから、兄さんと姉さんの無意識にへばりついてる奴に叩き込む。
『ギ、ギャァア!!』
僕の純粋なる緑の波紋をくらい、へばりついてる奴が暴れながらも霧散していくけどほんの一欠片も残さないため、僕はさらに純粋なる緑の波紋を強めて放ち続ける。霧散しながらもへばりついてる奴が暴れてるせいで兄さんと姉さんの身体もガクガク動いてるけど、ラカムタさん達が押さえ込んでくれてるみたいだから今は気にしないでおく。
その後、僕は純粋なる緑の波紋の放出を続けて、へばりついてる奴が消えて気持ち悪い感じが無くなると魔力の界気化もやめて目を開けた。汗が滝のように流れてる。
「ヤート、ガルとマイネの意識の奥底で何があった?」
「絶対に許せない敵がいた……」
「敵だと……?」
僕の言葉を聞いて、みんなが困惑した表情で見てくる。兄さんと姉さんが目を覚ましたら説明しよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
『ヤート殿、今はどのような事柄を受け取ってますか?』
僕の隣にいるはずのイーリリスさんの声が遠くから聞こえた。たぶん僕の意識が兄さんと姉さんの方に向いてるせいかな。これはあれだ。読書に熱中してる時に話しかけられるのと似てる気がする。
「兄さんと姉さんの記憶を受け取ってるところ。イーリリスさん、受け取った記憶の中のみんなが若くなっていくんだけど、このままで良いんだよね?」
『それはヤート殿の界気化した魔力がお二人の意識に浸透している証拠なので大丈夫です』
「わかった。このまま兄さんと姉さんの無意識に浸透するまで続けるよ。あとラカムタさん」
『なんだ?』
「兄さんと姉さんの記憶を遡れば遡るほど、二人が激しくケンカしてる記憶ばっかりなんだけど……」
『ああ、それはそうだ。今のガルとマイネは口ゲンカやにらみ合いが主だが、昔はもっとひどくてよく未熟ながらも強化魔法発動させて本気の殴り合いをしていたぞ』
「そうなんだ」
『ヤートと深く触れ合うようになってから、ずいぶん落ち着いたな』
僕の知らない兄さんと姉さんの一面を知ってしまって微妙な気分になる。今が緊急事態だとしても、こういう一方的に知ってしまうのは不公平な気がするんだよね。…………前世の事を兄さんと姉さんに話してみようかな。
『ヤート殿、魔力の界気化が少し乱れています。今は集中してください』
「ごめん。すぐに元に戻す」
今はあとの事を考えてる場合じゃない。まずは目の前の兄さんと姉さんの無意識を探るのが最優先だ。
イーリリスさんに注意されてから気を引き締め直して界気化した魔力の放出を続けていると、兄さんと姉さんから受け取る情報が変わる。僕の頭に浮かんでいた映像がどんどんぼやけていき、兄さんと姉さんのいろいろな感情とか思いだけを受け取っている感じになった。
これが兄さんと姉さんの意識の奥底にある無意識に思ってる事なのかな? 陽気な感情が多いから兄さんと姉さんは毎日を楽しんでるみたいで良かった。……僕への心配もあるね。うん、いろいろ終わったら謝るとして、兄さんと姉さんの無意識に僕の界気化した魔力が浸透したんだから、あとは兄さんと姉さんをおかしくしてる奴を見つけるだけだ。
「兄さんと姉さんの意識の奥底に界気化した魔力が到達したみたい。今から全力で探ってみるから話しかけないでね」
『ヤート、慎重にな』
「うん」
僕は界気化した魔力の放出量を増やして、兄さんと姉さんの意識の奥底である無意識の隅々にまで浸透させていく。当然、僕が受け取る情報が増えて負担も増すけどどうでも良い。異常の原因を見つけてみせる。
僕がその後もひたすら兄さんと姉さんの無意識からの情報を受け取り探っていると、とうとう明らかにおかしいものを見つけた。それは兄さんと姉さんの無意識の隅の方にヘドロのようにへばりついていて、そいつから受け取れる情報とにかく濁っていて気持ち悪い。こいつが原因だって確信できる。
「緑盛魔法・超育成・聖月草」
『ヤート!!』
『ヤート殿!!』
『『ヤート君!!』』
僕の突然の行動にみんな驚いてたけど、一切構ってる余裕はない。僕は種を腰の小袋に入れたまま聖月草を成長させ、開花した聖月草が放つ邪なものを退ける光を界気化した魔力に乗せて兄さんと姉さんの無意識の隅々にまで流し込んだ。
『ギギィッ!!』
兄さんと姉さんの無意識の隅にへばりついてる奴がうめき声を出し、へばりついている奴が僕を憎々しげに見てくる。視線と気配でわかる。こいつは間違いなく敵で、こいつが兄さんと姉さんの無意識にいる事は絶対に許したらダメだ。
「緑盛魔法・純粋なる緑の波紋!!」
僕は聖月草の発する光をいったん手に集め増幅・強化をしてから、兄さんと姉さんの無意識にへばりついてる奴に叩き込む。
『ギ、ギャァア!!』
僕の純粋なる緑の波紋をくらい、へばりついてる奴が暴れながらも霧散していくけどほんの一欠片も残さないため、僕はさらに純粋なる緑の波紋を強めて放ち続ける。霧散しながらもへばりついてる奴が暴れてるせいで兄さんと姉さんの身体もガクガク動いてるけど、ラカムタさん達が押さえ込んでくれてるみたいだから今は気にしないでおく。
その後、僕は純粋なる緑の波紋の放出を続けて、へばりついてる奴が消えて気持ち悪い感じが無くなると魔力の界気化もやめて目を開けた。汗が滝のように流れてる。
「ヤート、ガルとマイネの意識の奥底で何があった?」
「絶対に許せない敵がいた……」
「敵だと……?」
僕の言葉を聞いて、みんなが困惑した表情で見てくる。兄さんと姉さんが目を覚ましたら説明しよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
2
お気に入りに追加
876
あなたにおすすめの小説
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~
石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。
しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。
冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。
自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。
※小説家になろうにも掲載しています。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる