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青の村への旅にて まねと戦略の結果
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魔竹の根に身体を運んでもらってタキタさんを追いかけてるけど追いつけない。……いや違うか。タキタさんは竹林を出るわけでもなく僕との距離を一定に保ってるから、どう考えても僕が追いかけさせられてる。それにしても今のタキタさんはさっきまで一瞬で距離を消すような動きじゃなくて竹林の間を滑るように移動してるんだけど、ディグリみたいに身体を変形しないでどういう身体の使い方をしたら上下動を完全に無くせるんだろ?
あと気になるのは前を行くタキタさんが僕をチラチラ見てくる時の顔だ。見た事ある表情なんだけど、どこで見たんだっけ? …………あー、思い出した。黒の村長が村の子供を見る目にそっくりなんだ。確か兄さんや姉さんを含めた子供達だけで大型の魔獣を狩った時だったかな。
ちょうど僕が散歩から帰ると村の広場で兄さん達が村長に報告してて、それを聞いてる村長の顔が、まるで孫の成長を喜ぶ祖父みたいにうれしそうに微笑んでたのを覚えてる。
……という事は僕の行動はタキタさんには微笑ましいものに見えてるって事か。始めからタキタさんは魔力を使ってないし、対等な相手として見てもらうのは難しいとは思ってたけど、このまま孫と祖父の触れ合いみたいな感じで終わるのは悔しいからなんとかしよう。僕はタキタさんを追いかけながら再び竹の葉をタキタさんに向かって走らせる。
「ホッホッホ、まだまだ諦めてないようで何よりですが、これでは先程と変わりませんな」
移動しながらもタキタさんは両腕で無数の竹の葉を迎撃していく。うん、これは予想できてたから腰の小袋から取り出した別のものをタキタさんに向かって投げ目をつむり顔を腕で覆う。
「緑盛魔法・発光栗」
この発光栗は毬が割れて中身が空気に触れた時に点滅するっていう不思議な植物で、今回は発光栗の実に魔法をかけて強く発光させた。一応、タキタさんの手の届かない位置での発光だしギリギリまで竹の葉に紛れさせてるから大丈夫なはず。追撃としてピカッと光った後に光を遮らないように散開させていた竹の葉を再びタキタさんに走らせる。
強い光で確実に周りを見えなくしたのに、また竹の葉を叩き落す音が聞こえてきた。急いでタキタさんを見たら目を閉じたままタキタさんが竹の葉を迎撃していた。滑るような移動にも一切支障はないみたいで林立している竹にもぶつからない。
「うそ……」
「ヤート殿、長く生きていれば色々な事ができるものですよ」
本当につくづくタキタさんは達人で、達人は相手に有利な状況でも問題なく動けるから達人って事か。……次に考えてる事が通じるのか自信が無くなってきたけど、このままズルズル長引けば僕が不利だし遠距離・中距離での攻撃や妨害もタキタさんに対応されて効果が薄いからやるしかない。僕は覚悟を決めて竹の葉とともにタキタさんに突っ込んで行く。
「勝負……」
「切り札投入ですかな? 受けて立ちましょう」
もう少しでタキタさんの間合いに入るっていう時に僕の身体を運んでくれていた魔竹の根を触り、タキタさんの足下にある別の根をタキタさんに向かって伸ばしてってお願いした。
「おっと」
「緑盛魔法・純粋なる緑」
タキタさんは当然のように反応して避けたけど、竹の葉を迎撃する動作がほんの少し乱れたのを見て僕は魔竹達からもらった魔力を両掌に集め左掌をタキタさんに当てようと突き出す。
「離れての攻撃は意味がないと考えて一気に距離を詰める。良い思い切りです」
タキタさんに突き出した左掌を弾かれた。まあ竹の葉が動く速さよりも遅いから当たり前だ。だけど僕は左掌を弾かれながら右掌をタキタさんに向けている。タキタさんはその事に気づいて怪訝な顔をした。
「緑盛魔法・純粋なる緑の波紋」
「カハ……」
パンッて音がしてタキタさんがよろめき僕達の周りの竹の葉が吹き散る。
何をしたかと言えば僕は僕がタキタさんに直接攻撃を当てるのは、どう考えても無理だって思い右掌の純粋なる緑を破裂させ衝撃を生み出した。要はタキタさんの発勁をまねただけなんだけど、……破裂の衝撃で掌がものすごく痛い。強化魔法を使えば良かったって後悔しながら追撃のため我慢して弾かれた左掌をタキタさんに近づける。
「緑盛魔法・純粋なる緑のはもッ、ん!?」
今度は左掌で純粋なる緑の波紋を放とうとしたら、さっきよりも強く弾かれバキンって音がして顔に少し生暖かい液体が飛んできた。何が起こったのかわからなかったけど僕の左掌があった場所にタキタさんの右掌があってタキタさんが呆然としてた。
……いつ右掌を放ったの? どうやら僕の純粋なる緑がタキタさんの発勁で潰されて僕の掌に炸裂したみたいだ。タキタさんが腕を下ろして頭を下げてくる。勝負はここまでか。
「……ヤート殿、本当に申し訳ありません」
「タキタさんは無意識に動いてたみたいだし、そもそも僕が強化魔法を使わなかったのが原因だから気にしないで」
「しかし……」
「治せるから気にしないでってば」
僕の身体を運んでいた魔竹の根に地面へ降ろしてもらい掌の状態を確かめる。……手の甲の肉がズタズタだ。それに同調で骨を確認したら折れてた。結構大きな音がしたから当然と言えば当然か。それでも指の神経が無事なのは不幸中の幸いだね。
「……ヤート殿、冷静に確認されてますが痛くはないのですか?」
「顔に出てないだけで痛いよ」
前世での闘病生活で激痛に慣れてるのもあるけど、それは言ってもしょうがないからここは無表情だからで通す。ただ問題なのは、この後に絶対ラカムタさん達に怒られるって事だね。まあ、変に意地を張ってこのケガだし、しっかり怒られよう。あと戦略を考えて戦っても格上には無意味になる事がわかって勉強になった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
あと気になるのは前を行くタキタさんが僕をチラチラ見てくる時の顔だ。見た事ある表情なんだけど、どこで見たんだっけ? …………あー、思い出した。黒の村長が村の子供を見る目にそっくりなんだ。確か兄さんや姉さんを含めた子供達だけで大型の魔獣を狩った時だったかな。
ちょうど僕が散歩から帰ると村の広場で兄さん達が村長に報告してて、それを聞いてる村長の顔が、まるで孫の成長を喜ぶ祖父みたいにうれしそうに微笑んでたのを覚えてる。
……という事は僕の行動はタキタさんには微笑ましいものに見えてるって事か。始めからタキタさんは魔力を使ってないし、対等な相手として見てもらうのは難しいとは思ってたけど、このまま孫と祖父の触れ合いみたいな感じで終わるのは悔しいからなんとかしよう。僕はタキタさんを追いかけながら再び竹の葉をタキタさんに向かって走らせる。
「ホッホッホ、まだまだ諦めてないようで何よりですが、これでは先程と変わりませんな」
移動しながらもタキタさんは両腕で無数の竹の葉を迎撃していく。うん、これは予想できてたから腰の小袋から取り出した別のものをタキタさんに向かって投げ目をつむり顔を腕で覆う。
「緑盛魔法・発光栗」
この発光栗は毬が割れて中身が空気に触れた時に点滅するっていう不思議な植物で、今回は発光栗の実に魔法をかけて強く発光させた。一応、タキタさんの手の届かない位置での発光だしギリギリまで竹の葉に紛れさせてるから大丈夫なはず。追撃としてピカッと光った後に光を遮らないように散開させていた竹の葉を再びタキタさんに走らせる。
強い光で確実に周りを見えなくしたのに、また竹の葉を叩き落す音が聞こえてきた。急いでタキタさんを見たら目を閉じたままタキタさんが竹の葉を迎撃していた。滑るような移動にも一切支障はないみたいで林立している竹にもぶつからない。
「うそ……」
「ヤート殿、長く生きていれば色々な事ができるものですよ」
本当につくづくタキタさんは達人で、達人は相手に有利な状況でも問題なく動けるから達人って事か。……次に考えてる事が通じるのか自信が無くなってきたけど、このままズルズル長引けば僕が不利だし遠距離・中距離での攻撃や妨害もタキタさんに対応されて効果が薄いからやるしかない。僕は覚悟を決めて竹の葉とともにタキタさんに突っ込んで行く。
「勝負……」
「切り札投入ですかな? 受けて立ちましょう」
もう少しでタキタさんの間合いに入るっていう時に僕の身体を運んでくれていた魔竹の根を触り、タキタさんの足下にある別の根をタキタさんに向かって伸ばしてってお願いした。
「おっと」
「緑盛魔法・純粋なる緑」
タキタさんは当然のように反応して避けたけど、竹の葉を迎撃する動作がほんの少し乱れたのを見て僕は魔竹達からもらった魔力を両掌に集め左掌をタキタさんに当てようと突き出す。
「離れての攻撃は意味がないと考えて一気に距離を詰める。良い思い切りです」
タキタさんに突き出した左掌を弾かれた。まあ竹の葉が動く速さよりも遅いから当たり前だ。だけど僕は左掌を弾かれながら右掌をタキタさんに向けている。タキタさんはその事に気づいて怪訝な顔をした。
「緑盛魔法・純粋なる緑の波紋」
「カハ……」
パンッて音がしてタキタさんがよろめき僕達の周りの竹の葉が吹き散る。
何をしたかと言えば僕は僕がタキタさんに直接攻撃を当てるのは、どう考えても無理だって思い右掌の純粋なる緑を破裂させ衝撃を生み出した。要はタキタさんの発勁をまねただけなんだけど、……破裂の衝撃で掌がものすごく痛い。強化魔法を使えば良かったって後悔しながら追撃のため我慢して弾かれた左掌をタキタさんに近づける。
「緑盛魔法・純粋なる緑のはもッ、ん!?」
今度は左掌で純粋なる緑の波紋を放とうとしたら、さっきよりも強く弾かれバキンって音がして顔に少し生暖かい液体が飛んできた。何が起こったのかわからなかったけど僕の左掌があった場所にタキタさんの右掌があってタキタさんが呆然としてた。
……いつ右掌を放ったの? どうやら僕の純粋なる緑がタキタさんの発勁で潰されて僕の掌に炸裂したみたいだ。タキタさんが腕を下ろして頭を下げてくる。勝負はここまでか。
「……ヤート殿、本当に申し訳ありません」
「タキタさんは無意識に動いてたみたいだし、そもそも僕が強化魔法を使わなかったのが原因だから気にしないで」
「しかし……」
「治せるから気にしないでってば」
僕の身体を運んでいた魔竹の根に地面へ降ろしてもらい掌の状態を確かめる。……手の甲の肉がズタズタだ。それに同調で骨を確認したら折れてた。結構大きな音がしたから当然と言えば当然か。それでも指の神経が無事なのは不幸中の幸いだね。
「……ヤート殿、冷静に確認されてますが痛くはないのですか?」
「顔に出てないだけで痛いよ」
前世での闘病生活で激痛に慣れてるのもあるけど、それは言ってもしょうがないからここは無表情だからで通す。ただ問題なのは、この後に絶対ラカムタさん達に怒られるって事だね。まあ、変に意地を張ってこのケガだし、しっかり怒られよう。あと戦略を考えて戦っても格上には無意味になる事がわかって勉強になった。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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