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青の村への旅にて 戦い方と陣地
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「うおおおお!!!!」
兄さんが叫びながらタキタさんに全力で打撃を当てようと手足を振り回すけど……。
「勢いは目を見張るものがありますね」
兄さんの手足が一回も当たらずタキタさんの身体を通り抜ける。これはタキタさんの避ける技術のせいなのか、青特有の魔法を使ってるためのどっちだろ? ラカムタより強いらしいタキタさんなら通り抜けて見えるくらい紙一重で避ける技術を持ってそうだし、魔法に関してもタキタさんならって考えたら……どっちでもありそうだ。僕がタキタさんの様子を見ていると、またタキタさんの身体が一瞬かすかにブレて兄さんが地面に背中から叩きつけられた。
「グッ!!」
「ガル殿は才能・潜在能力ともに申し分ないですが、今は無駄が多いですね。それではヤート殿との勝負に戻ります」
「水弾!!」
動けなくなっている兄さんの横をタキタさんが通り過ぎる時、水弾が遮るように通過した。水弾を放ったイリュキンが、タキタさんを険しい目で見ながら右手をタキタさんの方に向けている。
「姫さま、何か御用でしょうか?」
「タキタ、今すぐ勝負をやめるんだ」
「それは無理ですね」
「なぜだ?」
「わしから勝負を挑んだためです。途中でやめる意思を持っていたら始めから勝負なんて挑みません」
「……ヤート君、そうなのかい?」
「うん、タキタさんに真剣な表情で戦ってほしいって言われたから受けた」
僕が言うとイリュキンは何か言いたそうに口を開いたけど、何も言わずにグッと口を噛み締めて右手も下ろした。どうやら続けて良いみたいだから再開までに準備を整えよう。
「緑盛魔法・超育成」
「ほう……」
腰の小袋から出した種を地面に蒔いて魔法で成長させ僕の周りに野草を茂らせる。タキタさんは目を興味深そうに細めて、そのまま歩いてくるので僕はタキタさんが野草を生やした場所に入ったところで次の魔法を発動させた。
「緑盛魔法・緑葉群帯」
僕の魔法で成長した野草の葉がタキタさんを絡め取ろうと伸びるけど、タキタさんから腕一本分くらいの距離で何かに弾かれる。……たぶんタキタさんの両手がブレてるから絡みつこうとする葉を手で弾いたりさばいたりしてるみたい。
前と左右からの葉に対応できるのはわかるけど、どうやったら身体を動かさずに腕だけで後ろや足下から絡み付こうとする葉に対応できるのか疑問だ。後ろからくる奴は身体の向きを変えないといけないし、足下の奴は腰を曲げるなり屈むなりしないと無理だと思う。あり得るとしたら関節を外すとか魔法で腕を伸ばしてるとか? ……って、考えてる場合じゃない。
僕はタキタさんの周りの野草だけでなく僕の周りの野草にも動いてもらって、タキタさんに絡みつかせる葉の数を一気に増やした。さすがに緑葉群帯の葉をタキタさんが見えなくなるくらいの数なら全部に対応されるって事はないはず。
「ふー、少し肝を冷やしました」
タキタさんが野草の生えてるところから、いつのまにか離れた場所に移動していた。よし、初めて僕の行動でタキタさんを動かせた。
「やっぱり僕とタキタさんの実力差だったら、この戦い方で合ってるみたい」
「この短い間にも分析をしていたのですね」
「うん、やられっぱなしは嫌だから」
「どのような事を考えたのですか?」
「一つ目、タキタさんは魔力を使わず格闘技術だけに制限して戦ってる。二つ目、タキタさんには一瞬で距離を無くせる機動力がある。三つ目、全力の兄さんの攻撃が当たらないという事は僕が兄さんと同じような点の攻撃……要は手足での打撃や単発の弾丸状の攻撃をするのは意味がない。この三つの事から導ける結論は……」
「何でしょう?」
「僕がタキタさんに純粋な格闘で接近戦を挑むのは論外。離れて魔法で戦うのも発動の隙に距離を詰められるから論外。つまり僕は自分の陣地を作ってそこにタキタさんが入ってきた時に多数の線の攻撃か面状の空間を制圧する攻撃をするべき」
僕は緑葉群帯が僕の思い通りに動いてくれるのをタキタさんに見せるため規則正しく右から左に波のように揺らせたり時計回りに一部をピンと直立させる。それと同時に次にも備えてあるものを小袋から取り出し地面に埋め魔力を通しておく。
「ホッホッホ、お見事です。それではこのような場合はどうされるでしょうか?」
タキタさんが何も問題ないとばかりにゆったりと歩いて、そのまま緑葉群帯に絡みつかれる。……何をするつもりだろ? 疑問に思ってるのは僕だけじゃなくて、僕とタキタさんのやりとりを見守ってるみんなの顔にも疑問の色が浮かんでいる。
ブォン。
何かが膨れながら揺れるような音が聞こえた。そしてその音が聞こえたとともにタキタさんに絡みついていた緑葉群帯が解けて地面に落ちていく。動いてってお願いしても野草達がまるで気絶してるみたいに反応してくれない。というか本当に気絶したみたいだ。
「植物を気絶させるとか意味がわからないよ」
「やろうと思えばなんでもできるものです。さてヤート殿の陣地は無力化しましたが降参されますか?」
「まさか。緑盛魔法・超育成・魔竹乱立」
気絶してる野草達の下から大神林の竹が一気に成長して竹林の陣地を形成する。タキタさんは足もとの地面からも竹が突き出てくるのを、予想してたみたいに余裕で後ろに跳び避けた。不意を付けなかったのは残念。
「次の手を用意されてましたか」
「タキタさんと一つの手段で勝負できるとは考えてない」
竹が成長しきり竹の葉が舞い落ちてくる中で竹林の外にいるタキタさんと再び向かい合った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
兄さんが叫びながらタキタさんに全力で打撃を当てようと手足を振り回すけど……。
「勢いは目を見張るものがありますね」
兄さんの手足が一回も当たらずタキタさんの身体を通り抜ける。これはタキタさんの避ける技術のせいなのか、青特有の魔法を使ってるためのどっちだろ? ラカムタより強いらしいタキタさんなら通り抜けて見えるくらい紙一重で避ける技術を持ってそうだし、魔法に関してもタキタさんならって考えたら……どっちでもありそうだ。僕がタキタさんの様子を見ていると、またタキタさんの身体が一瞬かすかにブレて兄さんが地面に背中から叩きつけられた。
「グッ!!」
「ガル殿は才能・潜在能力ともに申し分ないですが、今は無駄が多いですね。それではヤート殿との勝負に戻ります」
「水弾!!」
動けなくなっている兄さんの横をタキタさんが通り過ぎる時、水弾が遮るように通過した。水弾を放ったイリュキンが、タキタさんを険しい目で見ながら右手をタキタさんの方に向けている。
「姫さま、何か御用でしょうか?」
「タキタ、今すぐ勝負をやめるんだ」
「それは無理ですね」
「なぜだ?」
「わしから勝負を挑んだためです。途中でやめる意思を持っていたら始めから勝負なんて挑みません」
「……ヤート君、そうなのかい?」
「うん、タキタさんに真剣な表情で戦ってほしいって言われたから受けた」
僕が言うとイリュキンは何か言いたそうに口を開いたけど、何も言わずにグッと口を噛み締めて右手も下ろした。どうやら続けて良いみたいだから再開までに準備を整えよう。
「緑盛魔法・超育成」
「ほう……」
腰の小袋から出した種を地面に蒔いて魔法で成長させ僕の周りに野草を茂らせる。タキタさんは目を興味深そうに細めて、そのまま歩いてくるので僕はタキタさんが野草を生やした場所に入ったところで次の魔法を発動させた。
「緑盛魔法・緑葉群帯」
僕の魔法で成長した野草の葉がタキタさんを絡め取ろうと伸びるけど、タキタさんから腕一本分くらいの距離で何かに弾かれる。……たぶんタキタさんの両手がブレてるから絡みつこうとする葉を手で弾いたりさばいたりしてるみたい。
前と左右からの葉に対応できるのはわかるけど、どうやったら身体を動かさずに腕だけで後ろや足下から絡み付こうとする葉に対応できるのか疑問だ。後ろからくる奴は身体の向きを変えないといけないし、足下の奴は腰を曲げるなり屈むなりしないと無理だと思う。あり得るとしたら関節を外すとか魔法で腕を伸ばしてるとか? ……って、考えてる場合じゃない。
僕はタキタさんの周りの野草だけでなく僕の周りの野草にも動いてもらって、タキタさんに絡みつかせる葉の数を一気に増やした。さすがに緑葉群帯の葉をタキタさんが見えなくなるくらいの数なら全部に対応されるって事はないはず。
「ふー、少し肝を冷やしました」
タキタさんが野草の生えてるところから、いつのまにか離れた場所に移動していた。よし、初めて僕の行動でタキタさんを動かせた。
「やっぱり僕とタキタさんの実力差だったら、この戦い方で合ってるみたい」
「この短い間にも分析をしていたのですね」
「うん、やられっぱなしは嫌だから」
「どのような事を考えたのですか?」
「一つ目、タキタさんは魔力を使わず格闘技術だけに制限して戦ってる。二つ目、タキタさんには一瞬で距離を無くせる機動力がある。三つ目、全力の兄さんの攻撃が当たらないという事は僕が兄さんと同じような点の攻撃……要は手足での打撃や単発の弾丸状の攻撃をするのは意味がない。この三つの事から導ける結論は……」
「何でしょう?」
「僕がタキタさんに純粋な格闘で接近戦を挑むのは論外。離れて魔法で戦うのも発動の隙に距離を詰められるから論外。つまり僕は自分の陣地を作ってそこにタキタさんが入ってきた時に多数の線の攻撃か面状の空間を制圧する攻撃をするべき」
僕は緑葉群帯が僕の思い通りに動いてくれるのをタキタさんに見せるため規則正しく右から左に波のように揺らせたり時計回りに一部をピンと直立させる。それと同時に次にも備えてあるものを小袋から取り出し地面に埋め魔力を通しておく。
「ホッホッホ、お見事です。それではこのような場合はどうされるでしょうか?」
タキタさんが何も問題ないとばかりにゆったりと歩いて、そのまま緑葉群帯に絡みつかれる。……何をするつもりだろ? 疑問に思ってるのは僕だけじゃなくて、僕とタキタさんのやりとりを見守ってるみんなの顔にも疑問の色が浮かんでいる。
ブォン。
何かが膨れながら揺れるような音が聞こえた。そしてその音が聞こえたとともにタキタさんに絡みついていた緑葉群帯が解けて地面に落ちていく。動いてってお願いしても野草達がまるで気絶してるみたいに反応してくれない。というか本当に気絶したみたいだ。
「植物を気絶させるとか意味がわからないよ」
「やろうと思えばなんでもできるものです。さてヤート殿の陣地は無力化しましたが降参されますか?」
「まさか。緑盛魔法・超育成・魔竹乱立」
気絶してる野草達の下から大神林の竹が一気に成長して竹林の陣地を形成する。タキタさんは足もとの地面からも竹が突き出てくるのを、予想してたみたいに余裕で後ろに跳び避けた。不意を付けなかったのは残念。
「次の手を用意されてましたか」
「タキタさんと一つの手段で勝負できるとは考えてない」
竹が成長しきり竹の葉が舞い落ちてくる中で竹林の外にいるタキタさんと再び向かい合った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
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注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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