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第2章 異世界の男は鎮圧する

第1話

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鶴見つるみ君、そちらへ行きました!!」
「はい!!」

 俺は囲みを抜けて走ってきた男の前に回り込む。

 男は俺を見て一瞬顔がこわばったものの、俺が黒い木刀を構えている事からすぐに格下だと判断したようで、そのまま俺に襲いかかってくる。

「くらえ!!」

 叫ぶ男が左手を俺へ向けると掌から金属のワイヤーで編まれた網が放たれた。

 なるほど、これがこの男のおそらく器物級マテリアルと思われる異能力か。

 そして右手にナイフを持っているのは、網で動けなくなった俺を刺すためだな。

 俺は俺を絡めとろうとする網を十字に切り裂く。

「なっ……」
「目の前の相手から視線を外すのはダメですよ」
「ガハッ!!」

 男にとってはよほど驚きだったのか、男は俺に切り裂かれて地面に落ちる網を目で追った。

 俺は男が見せた隙を見逃さず、男の右側に回り込み木刀で男の後頭部を強めに叩き気絶させ、一応、脈や呼吸に異常がないと確認した後に支給された拘束具で男の手足を固定する。

「これで……合ってる、のかな?」

 初めて使う道具なため、何度も男の手足の固定具合を確認していたら、スッと横から手が出てきて男の拘束具を触った。

「……はい、大丈夫です。拘束位置も拘束強度も十分ですよ」
「あ、ありがとうございます。えーと、生徒会第二書記の荒幡あらはた さくらさん、でしたね?」
「そうです。今回の任務は、この男性の確保で達成となります。初めての任務遂行お疲れ様でした」
「いえ、こちらこそ付きそい助かりました」

 荒幡あらはた さくらが軽く頭を下げてきたので、俺も軽く下げて返礼をしておく。

 なぜ、俺がこんな状況にいるのかと言えば、生徒会に所属する事になった日から三日がたった今日、俺は突然授業終わりに呼び出され生徒会室に行くと大した説明もなく任務だと伝えられ、そのまま今いる現場まで連れてこられた。

 そして、俺の担当場所が決まり、もしもの時の補助として荒幡あらはた さくらが同行したというわけだ。

 まあ、荒幡あらはた さくらは俺をさりげなく何度も見ていたから監視の役目もあるはずで、おそらく、もし俺が何かしらで暴走した時のために拘束できるような能力を思っている気がする。

 良い機会だ、少し探ってみるか。

「あの、荒幡あらはたさん」
「何でしょうか?」
「今回の任務って、どんな内容だったんですか? 突然呼び出されて詳しい説明を聞いてないんです」
「あー……、確かに情報共有が、まだでしたね。今回の任務をわかりやすくいうと異能力者で構成された窃盗団の摘発です」
「実力者も多い学園に近いところで犯罪をする人がいるんですね……」
「犯罪者側の異能力者達は、なぜか学園を敵視している事が多く、むしろ積極的に私達と戦おうとしてきます」
「…………もしかして学園に実行部隊があるのは?」
「より凶悪で緊急性の高い案件を処理するためです」

 なるほど、こっちの世界も完全に平和な世界というわけじゃないみたいだな。



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◎後書き
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