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第1章 異世界の男は転生する
第8話
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パッと目がさめたら明るかった。
時計はベッドの周りのカーテンで遮られて見当たらないが、体感からかなり深く長く寝ていた気がする。
カーテンを開けベッドから出て身体を軽く伸ばした時の筋肉が硬くなっている感じからも、やはり長く寝ていたようだ。
「あらあら、起きたばかりで熱心ね」
「っ!!」
突然かけられた声に驚いて窓際まで飛び退き声のした方を見ると、入り口近くのデスクで作業していた流々原先生が俺を見ていた。
まったく気配を感じなかったし、ベッドから出る時に部屋の中を見回したのに気づかなかったぞ
「驚かしたようね。ごめんなさい」
「は、はい、驚きました」
「フフ……」
先生に声をかけられて俺が過剰に反応したのがおかしかったのか小さく笑われた。
……冷静に考えてみても、我ながら驚きすぎだな。
「えっと、変な動きをしてすみません。それと、おはようございます」
「気配を消してた私が悪いから気にしないで。おはよう鶴見君。まあ、おはようと言っても、時間的にはお昼に近いんだけどね」
気配を消していた?
そんな低い次元の話では無いはずだがな。
……いや、よそう。
これ以上気を取られたら俺が秋臣ではないとボロを出してしまうかもしれないから気持ちを落ち着かせろ。
「やっぱり、かなり寝てましたか。完全に遅刻だ……」
「鶴見君は戦った翌日という事で公休扱いになってるから大丈夫よ。それにもし公休扱いになってなかったとしても、ケガがひどかったし上級治癒師の立場から私が休ませてたわ」
「なるほど」
「それじゃあ最後の診察をしましょうか。これで何も異常が無ければ日常生活に戻れるわ」
「今日もお願いします」
眠る前に受けた診察と同じものもう1度を受ける。
個人的には爽快な目覚めで身体のだるさもとれていたから大丈夫だとは思っていたが、もしまだ不調だと判断されたらどうしようと少しだけ緊張していた。
「…………」
「どうでしょうか……?」
「うん、どこにも問題ないわ」
「ふー……」
「もしかして緊張してたの?」
「少しだけですが……」
「あらあら、昨日あれだけ激しく戦ってた人と同一人物とは思えないわ」
「診断されるという自分じゃどうしようもない事なので別物ですよ」
「確かにそうね。もう1度言っておくけど1週間は激しい運動と戦闘は禁止よ。特にその後問題なくても1週間後にまたここに来る事。今日と明日の食事は消化しやすいものにする事。こんなところね」
「わかりました」
「極力、この治療室に来ないような生活を送るように」
「できるだけ気をつけます。ありがとうございました」
「また1週間後にね」
「はい、それでは失礼します」
治療室を出て寮の秋臣の部屋へ行った。
最上位の精霊級に比べたら狭いが、最下位の器物級にも個室があるから秋臣が在籍しているこの学園は、かなり裕福なようだな。
◆◆◆◆◆
部屋に入り備え付けのシャワーを浴びる。
前の世界で昼間からお湯を使えたのは源泉が近いか王族か高位の貴族ぐらいだったが、それを気軽に無料で使えるのだから、やはり世界が違うらしい。
それに治癒室からこの寮の間に見た建物……大きさで言えば前の世界にも教会や城なんかで似たものはあったが数が違いすぎる。
前の世界でいう総本山の教会や大国の城と同じような大きさの建物が、この学園の中だけで20棟以上あった。
本当に前の世界と今の世界との文明格差や技術格差を想像するだけで馬鹿馬鹿しくなるな。
◆◆◆◆◆
風呂場から出て学園の制服に着替える。
公休扱いになっているはずだから私服でも良いとは思うが、これから行く場所は制服の方が無難だろう。
前の世界では気にした事もない身だしなみを鏡の前で確認した後に学生証を腕につけてから部屋を出た。
……あの全身を写せる姿見も前の世界なら国宝になってもおかしくないな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
と思ったら
お気に入りの登録を、ぜひお願いします
また感想や誤字脱字報告もお待ちしています。
時計はベッドの周りのカーテンで遮られて見当たらないが、体感からかなり深く長く寝ていた気がする。
カーテンを開けベッドから出て身体を軽く伸ばした時の筋肉が硬くなっている感じからも、やはり長く寝ていたようだ。
「あらあら、起きたばかりで熱心ね」
「っ!!」
突然かけられた声に驚いて窓際まで飛び退き声のした方を見ると、入り口近くのデスクで作業していた流々原先生が俺を見ていた。
まったく気配を感じなかったし、ベッドから出る時に部屋の中を見回したのに気づかなかったぞ
「驚かしたようね。ごめんなさい」
「は、はい、驚きました」
「フフ……」
先生に声をかけられて俺が過剰に反応したのがおかしかったのか小さく笑われた。
……冷静に考えてみても、我ながら驚きすぎだな。
「えっと、変な動きをしてすみません。それと、おはようございます」
「気配を消してた私が悪いから気にしないで。おはよう鶴見君。まあ、おはようと言っても、時間的にはお昼に近いんだけどね」
気配を消していた?
そんな低い次元の話では無いはずだがな。
……いや、よそう。
これ以上気を取られたら俺が秋臣ではないとボロを出してしまうかもしれないから気持ちを落ち着かせろ。
「やっぱり、かなり寝てましたか。完全に遅刻だ……」
「鶴見君は戦った翌日という事で公休扱いになってるから大丈夫よ。それにもし公休扱いになってなかったとしても、ケガがひどかったし上級治癒師の立場から私が休ませてたわ」
「なるほど」
「それじゃあ最後の診察をしましょうか。これで何も異常が無ければ日常生活に戻れるわ」
「今日もお願いします」
眠る前に受けた診察と同じものもう1度を受ける。
個人的には爽快な目覚めで身体のだるさもとれていたから大丈夫だとは思っていたが、もしまだ不調だと判断されたらどうしようと少しだけ緊張していた。
「…………」
「どうでしょうか……?」
「うん、どこにも問題ないわ」
「ふー……」
「もしかして緊張してたの?」
「少しだけですが……」
「あらあら、昨日あれだけ激しく戦ってた人と同一人物とは思えないわ」
「診断されるという自分じゃどうしようもない事なので別物ですよ」
「確かにそうね。もう1度言っておくけど1週間は激しい運動と戦闘は禁止よ。特にその後問題なくても1週間後にまたここに来る事。今日と明日の食事は消化しやすいものにする事。こんなところね」
「わかりました」
「極力、この治療室に来ないような生活を送るように」
「できるだけ気をつけます。ありがとうございました」
「また1週間後にね」
「はい、それでは失礼します」
治療室を出て寮の秋臣の部屋へ行った。
最上位の精霊級に比べたら狭いが、最下位の器物級にも個室があるから秋臣が在籍しているこの学園は、かなり裕福なようだな。
◆◆◆◆◆
部屋に入り備え付けのシャワーを浴びる。
前の世界で昼間からお湯を使えたのは源泉が近いか王族か高位の貴族ぐらいだったが、それを気軽に無料で使えるのだから、やはり世界が違うらしい。
それに治癒室からこの寮の間に見た建物……大きさで言えば前の世界にも教会や城なんかで似たものはあったが数が違いすぎる。
前の世界でいう総本山の教会や大国の城と同じような大きさの建物が、この学園の中だけで20棟以上あった。
本当に前の世界と今の世界との文明格差や技術格差を想像するだけで馬鹿馬鹿しくなるな。
◆◆◆◆◆
風呂場から出て学園の制服に着替える。
公休扱いになっているはずだから私服でも良いとは思うが、これから行く場所は制服の方が無難だろう。
前の世界では気にした事もない身だしなみを鏡の前で確認した後に学生証を腕につけてから部屋を出た。
……あの全身を写せる姿見も前の世界なら国宝になってもおかしくないな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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「続きが気になる、読みたい!」
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