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第20話 二度目の王立歌劇場
しおりを挟む「わあ......!この席もまた違っていいね。熱気が伝わってくる」
前回と同様に一杯ずつシャンパンを飲むと、早々に一階のボックス席に連れてこられた。サントロ伯爵家で貸切契約をしている席らしい。
ひとしきり窓から劇場内を見渡すと、後ろのカウチソファでサラの様子を見ながらくつろぐフィリップの隣に腰を下ろした。
「そういえばクレア殿下の婚約が公表されたね。サラがエリックさんと知り合いな理由がわかったよ」
「知り合いではないんだけどね......」
「クレア殿下の仕事をしているのは察していたけど、全然エリックさんと繋がらなかったよ」
サラがクレアの下着を作っていることは察していたようだ。
「王宮に勤めていても二人は噂になったりしなかったのね」
「そうだね」
「......クレア殿下の、その......想像しちゃ駄目よ?」
「ん?……ああ。クレア殿下に興味がないから大丈夫だよ。でも、サラが作る下着には純粋に興味があるよ。サラがどんな物を作り出すのかって」
「今度自分用に作ったら見せようか?」
「......サラは自分の下着も作るの?」
「たまにね。買った物も着るけど」
「今日は?自分の作った下着、着てる?」
「着てる、けど......」
「見てみたい」
「こんな所で、駄目だよ……他のお客さんもいるし......」
会話が怪しくなってきた。フィリップが立ち上がると重厚なカーテンを閉めた。ほぼ完全な個室となった。
「これで問題ないよ」
「ちょ、これだと舞台が見えないよ!?」
「始まったら開けるよ」
フィリップが隣に座りなおすと、肩を抱かれる。声もなんだか色っぽい。
「少しだけ、見せてほしいな」
「......えっち」
「下着を見たいだけだよ、いやらしい妄想をしているのはサラじゃない?」
「っ!意地悪言うから見せませんっ」
私だけがいやらしいような口ぶりに、恥ずかしくなって立ち上がる。離れようとすると、長い腕が腰に絡まり膝の上に座らされた。後ろから力強く抱きしめられる。
「ごめんごめん、俺が悪かった。下心を認めるから許して」
「んもう」
背後のフィリップが耳にキスをする。ちゅ、ちゅうとリップ音をわざと立てているようだ。
「んっ」
「ドレスをプレゼントする理由の一つは、脱がせたいからだよ、サラ」
耳元でささやかれると、脳にダイレクトにフィリップの声が響く。フィリップがレロレロと舐め始めると、声が我慢できない。
耳を弄られることで気持ちよくなってしまうことが恥ずかしい。
「んっ、ふ、舐めないでっ......」
「感じちゃう?可愛いよサラ。……お願い。少しだけ。サラだから見たい」
「……少しだけ、だよ?」
「やった」
無邪気な声に絆される。お腹に巻き付いていた手がするすると上がり胸を撫でる。優しく掴むと手のひらを回すように動く。
「んっ見るだけじゃないのっ……?触るって聞いてない......」
「触るに決まってる」
フィリップが力を込めて揉み始める。
カーテンを閉められたことで、部屋が薄暗い。それが一層、隠微な雰囲気に拍車をかけている。
「んっ、ふうん......フィリップって、こういうの、興味がないと思ってた、なんとなくだけど」
「そんな訳ない......けど、サラがそう言うのも理解できるよ。サラを好きになるまで、興味なかった」
「でも、手慣れてる、気がする」
「そう?十五から寮に入っていたし、その後女性が苦手になったから、経験はもちろんないけど」
フィリップが耳から離れると、背中のファスナーを歯で噛んだのか、カチリと固いもの同士がぶつかる音がする。そのままジジジと下げていく。
サラの肌が露出すると、現れた肌にキスを繰り返す。背中にキスをしながら指でファスナーを腰まで下ろした。
下着が現れるとプツン、と後ろのホックを外される。
見たいと言うわりにあっさりと外され焦ると、器用にデイドレスの袖を抜き、ドレスを脱がされた。
「ほら、やっぱり、慣れてる感じがする......!」
「サラにしたいことをしてるだけだよ」
上半身が、心許ない。身に付けていた下着が浮き上がり、胸を隠すように腕を交差する。
「恥ずかしいよ......」
「綺麗だよ。めちゃくちゃ興奮してる」
「こんな所で興奮、しちゃ駄目だよ」
「確かに......そうだね」
口ではそう言いながら、浮き上がった隙間から手のひらが侵入してくる。
「やんっ」
フィリップが直接肌に触れると、乳房を下から持ち上げるように揉む。柔らかさを堪能するように、優しくふにふにと揉む。
「サラ、以前オーダーした時に気づいたけど、こんなに胸が大きかったんだね」
「っ……大きいの、やだ?」
「好き……というより、考えたことなかったかも。サラの胸だったらなんでも好き。サラの胸だから触りたい」
何度も揉み込まれる。フィリップの手で自由自在に形が変わる。指の先が胸の先端に触れた。
「あっ......フィリップっ......ふっ」
声が漏れてしまう。
「少しくらい声を出しても聞こえないよ」
「恥ずかしいからっ......って、全然、下着見てないしい!」
「今度、改めて見る……今はサラの胸に夢中だから」
「フィリップったらあ!」
意味の無くなった下着を取り払うと、いよいよ上半身を覆う物が無くなり、さらに腕を持ち上げられた。耳の横まで上げると、頭の後ろで手を組まされる。隠すものがなくなり顔に熱が集まる。フィリップに背を向けているとはいえ、丸見えだ。
「やあっ、見ないで」
たおやかな双丘の上に赤い蕾がその存在を主張している。フィリップが覗きこみながらもう一度揉み始めると、フィリップの息が荒くなる。
「綺麗……。はあ、サラ、好きだ、好きすぎる」
「んっ、私も好き……」
指先が乳首をつつく。指の腹で優しく回すように触れると、すぐに先端が凝りだす。
「硬くなった」
「実況、だめ……」
「俺も、痛いくらい」
背後から腰を押し付けられると、硬いものがあたる。
「私の体に興奮してくれてるの……?」
「ん、めちゃくちゃ興奮してる」
ついさっき興奮しては駄目と言ったのに、興奮してくれることが嬉しい。片手は揉み続けたまま、振り向くように誘導される。
フィリップの方に顔を向けると、半開きの口に唇を奪われた。すぐに舌が入ってくる。
仕事終わりに会った時に、何度か舌を絡めるキスをしたが、まだ慣れない。
フィリップの舌が熱い。口内を蹂躙される。
「ふっ、……んっ」
「サラ、サラ」
息継ぎ間に、何度も名前を呼ばれてどんどん気持ちが盛り上がる。
フィリップの唇が離れて行くと首筋を舐めだした。フィリップの足がサラの膝を持ち上げるように割り入れると、フィリップの足に片足を乗せた状態になる。ドレスで見えないが、股を開いた格好に恥ずかしさと、興奮でおかしくなりそうだ。
サラの胸を揉んでいた手が片方降りてくると、サラの股をドレス越しにひと撫でした。
サラは恥ずかしさのあまり、フィリップにキスをねだる。
「はあん!……フィリップ、もっと、キスして……?」
「っ……サラ!」
我慢ができないとばかりにソファに押し倒された瞬間、大きなブザーが鳴った。舞台が始まる合図だ。
フィリップの動きが止まると、不満げにため息をついた。
「……約束だからね」
サラを起こすと、下着とドレスを着るのを手伝ってくれた。背中のファスナーが上がりきるとサラは立ち上がって、カーテンを開ける。
中途半端な愛撫にこちらも悶々と体が疼いてしまっている。フィリップのせいで、いやらしい気持ちになってしまったが、さすがに続きをして欲しいとは口に出来なかった。
一番前の席に座ってもフィリップが来ない。振り向くとフィリップが背もたれに肘をつきながら顔を隠している。
「フィリップ?」
「……落ち着いたら、座るよ」
フィリップの硬くなっていた股間を思い出し、ぐるんと正面を向いた。
帰りの馬車の中。
「今日の俳優さんも演技が上手ね……!顔も格好良いし、人気がありそう」
「……顔だったら俺の方が格好良いけど」
「それはもちろんよ、フィリップより格好良い人なんていないよ?」
「俺のこと格好良いって思ってくれてるの?」
「言ってなかった?ずっと思ってるけど……それこそ出会った時から」
フィリップが嬉しそうににやけている。
「そういえば、アリアナさんの話聞きたいな」
「ああ、アリアナさんの恋人は第三騎士団の副団長なんだよ。この前アリアナさんが差し入れにきてて気づいてさ。ちなみに副団長は騎士団屈指の色男で有名だったんだけど、今は皆の前で、早く彼女と結婚したい、早く子供が欲しいって連呼してる」
「わあ、熱烈……」
「俺も、同じように思っているよ」
「っ……」
「早く一緒に暮らしたい」
「気が早すぎじゃない……?」
「そうかな?帰ったら、サラがうちにいるなんて最高じゃないか」
真面目な口ぶりに、恥ずかしくなって顔を逸らす。
「まあ、待ち合わせをしたり、今みたいに離れ難い気持ちも今しかない物だと思うと堪能しないとね」
「もう、結婚は既定路線みたいな口ぶり……」
「既定路線だけど?」
得意げなフィリップに顔を真っ赤にするサラであった。
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