婚活に失敗したら第四王子の家庭教師になりました

春浦ディスコ

文字の大きさ
上 下
11 / 15

11

しおりを挟む
目が覚めると、目の前にあまりにも美しいご尊顔が自分を見つめている。

「おはようマーサ」
ちゅうと口づけされる。
「......おはよう、ございます」
「可愛い、マーサ」

恥ずかしさでシーツにもぐろうとするがシルヴァンに阻止される。


「......マーサ、俺のこと好き?」
「......好きです」
マーサはもう逃げられないと、正直に告げた。

「マーサ、愛してる......マーサは婚活してたって、結婚は諦めたって言ってたけど、俺はまだ学生だけどもうずっと働いてるし、マーサが困ることなく生活できるだけの蓄えもあるし、お買い得だと思うよ」
「お買い得どころか、私には想像してはいけないほど、手の届かない存在ですよ」
「手は届くよ。ほら」
マーサの指を絡めとる。
「マーサが手を伸ばしてくれたらすぐ捕まえられたのに、中々素直にならないんだから」
「......すみません」

「今後はもっと忙しくなる。マーサとやっと一つになれたのに。......もっと一緒にいたいのに」
「ふふ......はい」
「結婚の準備も進めたいし」
「け、結婚......」

横向きになっていた体が抱き締められたかと思うとシルヴァンの上に乗せられる。
触れあう素肌が恥ずかしいけど気持ちがいい。

「なにが不安?」

シルヴァンが甘い笑みでマーサに問う。

「そもそも年も離れているし、国民や......女王陛下に認めていただけるとは思いません」
「ふむ。何から話そうか。まず第一に、母君は恋愛結婚に賛成派だよ」
「ええ!?」
「母君は政略結婚だけど、まあ、それが理由もあるのか、実はもうすぐ通達があると思うんだけど」
「......通達」

「まず、貴族の親同士が決める政略結婚は禁止される予定だよ」
「ええ!?初耳です!」
「うん。それに伴って貴族の結婚について随分自由になるんだ。自由意思の尊重だね。当然、上位貴族の反発はすごかったらしいけど、母上は議会で十年以上戦ったらしい。俺は最近まで知らなかったけどね」

「女王陛下が......」
「政治的な思惑や親の都合だけで好きでもない人と結婚しなくて済む。母は偉大だ。だから僕の恋愛について誰も何も言わないよ。俺は好きな人と、マーサと結婚する」

女王陛下の途方もない尽力は想像すら出来ない。
思わずマーサの目に涙が溢れる。
(シルヴァン殿下を好きでいいの......?)

「いいのでしょうか......こんなに、幸せで」
「いいんだよ。幸せで」
「シルヴァン殿下」

ちゅうと口付けられる。

「まあ、別に可決されなくても、マーサと結婚するつもりだったけど。母上のおかげで表立って僕の結婚に文句を言ってくるやつがいなくなるのは有り難いかな」

「マーサ、好きだよ。結婚を前提に付き合ってくれるよね?」
「......私でよければ、喜んで」
「マーサ!」
ぎゅうと力を込めて抱き締めると口づけする。

しばらく抱き締めあい、気持ちよさに二人でまどろむ。

「ああ、幸せだ......。でも卒業したら隣国に半年程滞在する予定があって......マーサも付いてきてほしいな......別件で動いてる河川調査ももう少し進めてから引き継ぎしないと......」

マーサはまどろみながら話の続きを待っていると、すう、すう、と穏やかな寝息が聞こえてきた。
なんだかとんでもないことを言われた気がしたが、マーサが目を開くとシルヴァンが穏やかな表情で眠っていた。
想像できないような重圧のなか、常に努力を惜しまずに責務を全うしようとしている。
無防備なシルヴァンに愛しさが込み上がってくる。
少しでも安らかな気持ちになれるよう、自分にできることはなんだろうか。
どのように力になれるか、考えを巡らせながらマーサも穏やかな眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる

しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、 王弟殿下と出会いました。 なんでわたしがこんな目に…… R18 性的描写あり。※マークつけてます。 38話完結 2/25日で終わる予定になっております。 たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。 この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。 バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。 読んでいただきありがとうございます! 番外編5話 掲載開始 2/28

ちょいぽちゃ令嬢は溺愛王子から逃げたい

なかな悠桃
恋愛
ふくよかな体型を気にするイルナは王子から与えられるスイーツに頭を悩ませていた。彼に黙ってダイエットを開始しようとするも・・・。 ※誤字脱字等ご了承ください

お義兄様に一目惚れした!

よーこ
恋愛
クリステルはギレンセン侯爵家の一人娘。 なのに公爵家嫡男との婚約が決まってしまった。 仕方なくギレンセン家では跡継ぎとして養子をとることに。 そうしてクリステルの前に義兄として現れたのがセドリックだった。 クリステルはセドリックに一目惚れ。 けれども婚約者がいるから義兄のことは諦めるしかない。 クリステルは想いを秘めて、次期侯爵となる兄の役に立てるならと、未来の立派な公爵夫人となるべく夫人教育に励むことに。 ところがある日、公爵邸の庭園を侍女と二人で散策していたクリステルは、茂みの奥から男女の声がすることに気付いた。 その茂みにこっそりと近寄り、侍女が止めるのも聞かずに覗いてみたら…… 全38話

女公爵になるはずが、なぜこうなった?

薄荷ニキ
恋愛
「ご挨拶申し上げます。わたくしフェルマー公爵の長女、アメリアと申します」 男性優位が常識のラッセル王国で、女でありながら次期当主になる為に日々頑張るアメリア。 最近は可愛い妹カトレアを思い、彼女と王太子の仲を取り持とうと奮闘するが…… あれ? 夢に見た恋愛ゲームと何か違う? ーーーーーーーーーーーーーー ※主人公は転生者ではありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。

しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。 そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。 王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。 断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。 閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で…… ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。

処理中です...