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第16話 専属の護衛騎士
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緊張でシャルロットの手が汗ばむ。
「えっと、話というほどてもないんだけど」
アランが真剣な顔でシャルロットの言葉を待つ。
「あのね……あなたがいてくれたおかげで、ここにいる間、とても健やかに、安心して過ごせたわ」
恥ずかしさでアランの顔が見れない。
シャルロットは精一杯、言葉を振り絞る。
「ヴェロニカとの一件に始まって、馬車の事故のときも一番に駆けつけてくれて、いつだって助けてくれて、心から感謝してるの。ダンスレッスンに付き合ってくれたのもアランで本当に良かった……あなたと踊るのが、心から楽しかったから」
「実は、花嫁修行が終わることになったの……あなたに感謝の気持ちを伝えたくて」
シャルロットが顔を上げるとアランは険しい顔をしている。
無口なのはいつもだが、いつもとは違う雰囲気にシャルロットは戸惑った。
「あなたもなにか言ってよ……」
「好きです。お慕いしています」
「え、……え?」
「嬉しそうにフリード殿下が退室されたので察しています」
「察してる……?あれ、私の気持ち、バレてるのかしら」
「健気でいつも朗らかで、周りを幸せにすることばかり考えている、あなた以上に焦がれる人は二度と現れないと確信しています」
想像もしていなかった告白に、シャルロットは思わず口元を両手で抑える。
「フリード殿下と結婚されても、あなたを騎士として守り続けます」
「え、あ、ちょっと待って?」
「フリード殿下とあなたを生涯かけて守ります」
「ま、待って、勘違いしてるわ?私、今、婚約者候補を解任されたの」
「……え?……いまなんと」
「私もヴェロニカも婚約者候補じゃなくなったのよ」
「シャルロット様が婚約者に決まったのではないのですか?」
「ええ、フリード殿下は今は結婚に興味がないみたいよ?……だから、近いうちにここを出ることになるわ」
「楽しげにお話されていましたし、フリード殿下が嬉しそうに出て行ったのでてっきり……」
「それはまあ、色々あるのかもしれないわ」
自分の思い通りに、シャルロットがアランに恋をしたのがさぞかし愉快だったのだろう。
シャルロットは深呼吸するとゆっくりと想いを告げた。
「えっと、あのね?私、あなたのことが、アランのことが好きなの」
「え?」
「好きなの……」
恥ずかしくて顔が熱い。
「ちょっと、頭が混乱しています」
「ふふふ」
「シャルロット様への想いは一方的なものだとばかり思っていたので……」
「そうかしら、私とっても分かりやすいみたいよ?フリード殿下にも気づかれていたわ」
「シャルロット様が自分を……?」
「どうやったら信じてくださる?」
「……あなたに触れても?」
「ええ、いいわよ。恥ずかしいけれど……」
真正面に向かい合っているアランが歩み寄ると、そろりとシャルロットの手を握る。
大きな手にシャルロットはどきりと胸が鳴った。
たくさんダンスレッスンで手を握ったはずなのに、想いが通じ合って繋ぐ手は格別に思えた。
「アラン……ずっと守ってくれてありがとう。あなたがいたから、とっても楽しい花嫁修行だったわ」
「こちらこそ、あなたを守れて光栄でした」
「……これからも、守ってくれる?」
「はい、喜んで」
アランは掴んだ手に口付ける。
びくんと肩が跳ねたシャルロットを引き寄せると優しく抱きしめた。
「アラン……」
「シャルロット様……」
「シャルロットって呼んで?」
「シャルロット、……好きです」
「私も、大好き」
アランの腕の中でシャルロットが満開の笑顔で見上げる。
「ぐっ……」
「ぐ?」
「ちょっと破壊力が……」
「破壊力?」
アランがシャルロットを抱きしめる力を強める。
「私の恋人になっていただけるのですか」
「はい、喜んで」
アランを真似るように返事するシャルロットのあまりの可愛さにアランは思わず額に口付けた。
額を押さえ、恥ずかしそうにするシャルロット。
「実ることはないと思っていたので、いまだに夢のようです」
「私もよ?好きになってはいけないと思えば思うほど、アランのことばかり考えたわ」
「シャルロット……」
そうして二人はしばらく抱きしめあった。
ーーー
シャルロットが婚約者候補を解任され、アランはすぐに強制的な休みを取らされることになった。
専属護衛騎士の間、一度も休みを取ろうとしなかったため、上長から強制的に休みにさせられたそうだ。
想いが通じ合ったばかりでアランは歯痒かったが、数日後にシャルロットを王城からタウンハウスへ送り届ける役目をなんとか勝ち取った。
三日後の早朝、二人は王城のエントラスでビアンカとヴェロニカに別れの挨拶をしていた。
「ビアンカ、たくさんお話できて楽しかったわ」
「こちらこそ、シャルロット様にお仕えできて幸せでした……」
ビアンカは涙ぐんでいる。
「ヴェロニカ様、私あなたに出会えてとってもよかった。芯のあるあなたがとっても素敵で憧れたわ」
「本当にあなたってお人よしね……叩いて悪かったわね」
素っ気なく謝るヴェロニカにシャルロットは笑みが溢れる。
「また近いうちにお茶会をしましょう。……そういえばヴェロニカ様は迎えは?」
「私は帰らないわよ、フリード殿下のこと諦めていないもの」
婚約者候補の解任に納得していないヴェロニカはゴネてもうしばらく王城に滞在するらしい。
「あなたの大きな愛にフリード殿下も早く気づいてほしいわね?」
「まったくよ!」
別れを告げると、シャルロットはアランと共にエントランスを出たのだった。
「えっと、話というほどてもないんだけど」
アランが真剣な顔でシャルロットの言葉を待つ。
「あのね……あなたがいてくれたおかげで、ここにいる間、とても健やかに、安心して過ごせたわ」
恥ずかしさでアランの顔が見れない。
シャルロットは精一杯、言葉を振り絞る。
「ヴェロニカとの一件に始まって、馬車の事故のときも一番に駆けつけてくれて、いつだって助けてくれて、心から感謝してるの。ダンスレッスンに付き合ってくれたのもアランで本当に良かった……あなたと踊るのが、心から楽しかったから」
「実は、花嫁修行が終わることになったの……あなたに感謝の気持ちを伝えたくて」
シャルロットが顔を上げるとアランは険しい顔をしている。
無口なのはいつもだが、いつもとは違う雰囲気にシャルロットは戸惑った。
「あなたもなにか言ってよ……」
「好きです。お慕いしています」
「え、……え?」
「嬉しそうにフリード殿下が退室されたので察しています」
「察してる……?あれ、私の気持ち、バレてるのかしら」
「健気でいつも朗らかで、周りを幸せにすることばかり考えている、あなた以上に焦がれる人は二度と現れないと確信しています」
想像もしていなかった告白に、シャルロットは思わず口元を両手で抑える。
「フリード殿下と結婚されても、あなたを騎士として守り続けます」
「え、あ、ちょっと待って?」
「フリード殿下とあなたを生涯かけて守ります」
「ま、待って、勘違いしてるわ?私、今、婚約者候補を解任されたの」
「……え?……いまなんと」
「私もヴェロニカも婚約者候補じゃなくなったのよ」
「シャルロット様が婚約者に決まったのではないのですか?」
「ええ、フリード殿下は今は結婚に興味がないみたいよ?……だから、近いうちにここを出ることになるわ」
「楽しげにお話されていましたし、フリード殿下が嬉しそうに出て行ったのでてっきり……」
「それはまあ、色々あるのかもしれないわ」
自分の思い通りに、シャルロットがアランに恋をしたのがさぞかし愉快だったのだろう。
シャルロットは深呼吸するとゆっくりと想いを告げた。
「えっと、あのね?私、あなたのことが、アランのことが好きなの」
「え?」
「好きなの……」
恥ずかしくて顔が熱い。
「ちょっと、頭が混乱しています」
「ふふふ」
「シャルロット様への想いは一方的なものだとばかり思っていたので……」
「そうかしら、私とっても分かりやすいみたいよ?フリード殿下にも気づかれていたわ」
「シャルロット様が自分を……?」
「どうやったら信じてくださる?」
「……あなたに触れても?」
「ええ、いいわよ。恥ずかしいけれど……」
真正面に向かい合っているアランが歩み寄ると、そろりとシャルロットの手を握る。
大きな手にシャルロットはどきりと胸が鳴った。
たくさんダンスレッスンで手を握ったはずなのに、想いが通じ合って繋ぐ手は格別に思えた。
「アラン……ずっと守ってくれてありがとう。あなたがいたから、とっても楽しい花嫁修行だったわ」
「こちらこそ、あなたを守れて光栄でした」
「……これからも、守ってくれる?」
「はい、喜んで」
アランは掴んだ手に口付ける。
びくんと肩が跳ねたシャルロットを引き寄せると優しく抱きしめた。
「アラン……」
「シャルロット様……」
「シャルロットって呼んで?」
「シャルロット、……好きです」
「私も、大好き」
アランの腕の中でシャルロットが満開の笑顔で見上げる。
「ぐっ……」
「ぐ?」
「ちょっと破壊力が……」
「破壊力?」
アランがシャルロットを抱きしめる力を強める。
「私の恋人になっていただけるのですか」
「はい、喜んで」
アランを真似るように返事するシャルロットのあまりの可愛さにアランは思わず額に口付けた。
額を押さえ、恥ずかしそうにするシャルロット。
「実ることはないと思っていたので、いまだに夢のようです」
「私もよ?好きになってはいけないと思えば思うほど、アランのことばかり考えたわ」
「シャルロット……」
そうして二人はしばらく抱きしめあった。
ーーー
シャルロットが婚約者候補を解任され、アランはすぐに強制的な休みを取らされることになった。
専属護衛騎士の間、一度も休みを取ろうとしなかったため、上長から強制的に休みにさせられたそうだ。
想いが通じ合ったばかりでアランは歯痒かったが、数日後にシャルロットを王城からタウンハウスへ送り届ける役目をなんとか勝ち取った。
三日後の早朝、二人は王城のエントラスでビアンカとヴェロニカに別れの挨拶をしていた。
「ビアンカ、たくさんお話できて楽しかったわ」
「こちらこそ、シャルロット様にお仕えできて幸せでした……」
ビアンカは涙ぐんでいる。
「ヴェロニカ様、私あなたに出会えてとってもよかった。芯のあるあなたがとっても素敵で憧れたわ」
「本当にあなたってお人よしね……叩いて悪かったわね」
素っ気なく謝るヴェロニカにシャルロットは笑みが溢れる。
「また近いうちにお茶会をしましょう。……そういえばヴェロニカ様は迎えは?」
「私は帰らないわよ、フリード殿下のこと諦めていないもの」
婚約者候補の解任に納得していないヴェロニカはゴネてもうしばらく王城に滞在するらしい。
「あなたの大きな愛にフリード殿下も早く気づいてほしいわね?」
「まったくよ!」
別れを告げると、シャルロットはアランと共にエントランスを出たのだった。
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