上 下
6 / 9
本編

6.私、師匠のことが好きです

しおりを挟む
 ルリはアーロを見た。

 大体、20代後半くらいに見えるおとこのひとだ。

 賢者になってから、様々な仕事をしていくうえでいつのまにか老化が遅くなったという話を聞いたことがある。出会ったときからあまり変わったところはない。

 いや、昔はもっと、険しい顔をしていたような気がする。

 視線は泳ぎ、眉は少し下がっている。肌は汗ばみ、ひげが少し伸びている。



(久々にみたな、こんな近くで……)



 当たり前のようにそばにいるから、改めてみるなんてことなかったな。



「師匠、私、その。また、師匠と話すことができるようになってうれしいです。」



「は、話す?」



「ええ、だって。久々にこんなにお話しできませんでした、ずっとにゃーにゃ―言ってるし」



「そう、だな、たしかに」



「ねぇ、師匠。私、師匠の言ってたさみしいが、少しわかりましたよ」



「そう」



「そりゃ私の手紙勝手に読んで捨てようとしてのは許さないですけど、すこしはその……考えてもいいかなって……今後のこと……しっかり話してから決めたいし……。そ、それに、好きって言うのはですねあの」



「うんうん」



「……師匠聞いてます?」



「そうだな」



「……師匠!!」



「ん゛?!」



 途中から目をつぶり、適当な返事しかしなくなったアーロの肩をたたく。

 顔がやけに赤い。



「やっぱり聞いてないじゃないですか!なんなんですか!あんなに話したがっていたのに!大事な話してるのに!!」



「い、いや、ルリ。今日はその、やめよう……!?今はちょっと話を聞くことができないっていうか」



「今日じゃないとだめです!」



「せめて、服を着させてくれ!あと1時間くらいとってくれたらはなせるようになるから!!」



 アーロは目をつぶったままルリの肩をつかみ、起き上がる。



「わ、ちょっ」バランスを崩した、ルリが腰を落とす。



 今まで見えていなかったものが、見えるようになり、そして。



「…………し、ししょ……」



「だーー!そこはダメ、ちょ、は、離れて……!生理現象だから許して……!」



「ああああ、ああ、あのっ」



 アーロの股間には元気になってしまった逸物がそこにあった。

 丸見えである。

 丸見え。



 (ふ。太くて…長い…)



はじめてみるその雄々しい姿にルリは赤面する。



「いいいいいつから」



 思わずわきにあったシーツでとりあえず股間を隠すも、元気に天を向くその存在感は隠しきれない。アーロの太ももの上に乗ったままルリは聞く。

 いや、聞いてる場合じゃないかも、とは一瞬は思ったのではあるが。



「え、いやさっきからだって僕の上に乗ってくるのが悪いよ!?君は若くて可愛い女の子なんだから!しかも、僕のことすき、とか、いうし……。その君にとっての好きはその、こういう好きじゃないとはわかってるんだ、だからその」



「わかくて、可愛い……」



「わかってる、これはセクハラなるもの!ほんと、ごめん、こんなんなのに、きみのこと、かぞくだって……弟子だって……」



「かぞく……」



「きみのこと、す、すきなんだよ……きみがわかくてかわいいだけじゃなくって、ルリだから好きなんだ。でも。ほんとう、ごめん。猫になっていいように君に触っちゃったし、それでその、言い訳もできない……こんなかっこ悪い姿見せたくなかったんだけど」



「まぁ、全裸シーツで弟子が膝の上は……」



 ルリの言葉にアーロはがたがたと震え始める。

 脱ぎ散らかしてあった服っぽいものを顔にかぶり、さらに言い募る。



「もう、今度こそだめだよね、見下げ果てたよね。僕のこと見放して捨てるのは良いけど、せめて明日話し合ってからにしよう!?少しは綺麗なお別れの言葉くらい考えておくからぁ……」



 半泣きを越え完全に泣いていた。

 アーロの膂力であれば、膝の上にのってるルリくらい簡単に動かせるはずだがしかし。

先ほど、散々触ったことに後悔しているのか、今や顔を隠して仰向けに横たわりシーツを股間に乗せているだけである。



(う……恥ずかしい存在なのに可愛い……。そして、まったく好きの意味が伝わっていない……!!)



「る、るり……きみがぼくをきらいになるのもわかるよ」



「師匠、きらいにはなりませんよ」



「そう?!」手が少し動き、目が見えた。



 うるんだ新緑の瞳に、ルリは笑った。そして。



「――私、師匠のことが好きです。師匠と同じ意味の好きです。好き同士なのでセックスしましょう」と続けた。









「え?」



 汗に濡れしっとりしたアーロの顔がほころんだ。が、次の瞬間固まった。



「る、ルリ……?途中からおかしくないか?」



「おかしくないですよ」 



 ルリは顔を赤らめ、アーロの股間をみた。

 シーツ越しではあるがわかる。当然のことながらまだ元気だ。

 アーロの膝の上に座りなおしたあと、手を伸ばす。

 あ、かたい……。つぶやいたルリの声にアーロはびくっとした。



「というか、師匠、この状況で断るほうが凄いと思いますよ」



「いやいやいやいや」





  ◇◇◇





 アーロは混乱していた。

 ここ数日自分のやらかしたことについての後悔はままある。

 どう触っても猫的に解釈されるので、通常よりハグの回数は増やしたのとか。

 さっきも勢いあまって色々触りすぎた気がする、



 しかし、しかしだ。



 なぜこんなことに。



「師匠……その、私思ったんです。師匠に任せていたらたぶん一生かかっても私、師匠と結婚できません」



「えっけ、けっこん!?」



「師匠はとってもヘタレ野郎なので……」



「ヘタレ」



「ヘタレですよね、私はやっと気づいたんですけど、師匠、あなたもっとまえに気づいてましてよね?弟子以上に思ってるって」



「その」



「いつ気づいたかとかそんなのどうでもいいですよ、ただ、私は師匠のことが好きだし、師匠も私のことが好きなら――」





 やっちゃいましょ?



 何かを振り切ってしまったらしい弟子は見たことのない表情をしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

ヤンデレ、始められました。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
ごくごく平凡な女性と、彼女に執着する騎士団副隊長の恋愛話。Rシーンは超あっさりです。

獣人専門弁護士の憂鬱

豆丸
恋愛
獣人と弁護士、よくある番ものの話。  ムーンライト様で日刊総合2位になりました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

いきなり騎士隊長の前にアナザーダイブなんて…これって病んでるの?もしかして運命とか言わないですよね?

はなまる
恋愛
 橘 瑠衣は半年ほど前初めてクラブに行きそこでD.J.をしている王子修仁と出会う。瑠衣はずっと恋をしたことがなくその修仁に生まれて初めて恋をする。彼から誘われるまま関係を持つとすぐに修仁が家に転がり込んできた。それから半年、今では彼がひどい男だとわかって神経が参っていた。そんな時夢の中にレオナルドと言う人間ではない狼獣人が出てくる。彼は優しく瑠衣をいやしてくれる存在で、瑠衣は夢の中のレオナルドを求めるようになる。だが、実はこれは夢ではなく別世界の実在する世界であった。そんな時修仁が他の女に入れ込んでしばらく家に帰って来なくなり瑠衣は彼と別れようと決める。修仁が帰って来てそのことを話すと修仁は怒りまくって瑠衣を何度も殴りつける。そして瑠衣はレオナルドのいる世界に…そこは見たこともない世界で瑠衣はその世界で不思議な力があることを知る。そしてその国の言い伝えの聖女の伝説に瑠衣はそっくりだった。レオナルドは瑠衣と出会った時から彼女に激しく惹かれる。そして瑠衣を愛するようになって…‥

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

処理中です...