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+副団長の謝罪
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後に、ウーラはジョシュの副官であるルイスと話す機会があった際、ルイスから謝られた。
「……何故謝るのですか」ウーラはルイスをジトッとみていた。
ジョシュとは仲が悪かった分、副官であるルイスとは業務上話す機会が多かったため、そこそこ気心知れた仲である。
そんな相手に改めて謝られるとなると、何かあったのか疑いたくなる。
「いえ、あなたと馬鹿なんですが、認識が間違っていたせいであんなにこじれたのかと気づきまして。――あのバカはたぶん勘違いしたんですよ」
ルイスの言葉にウーラは首を傾げた。
「認識?勘違い?」
「なんか嫌いなんだな程度にとらえていたんです。直感で生きてるから一回思い込んだらもうだめだしな、同世代で同じ出世の早さだし、それが原因でもあるだろうなくらいで放置していたのですが。その、まれにあるんです。ええと、これはあのバカをかばうわけではないのですが、獣人の中には番だ!と思ったときに発情期がまだ来ていないと。その番だ!というもやもやした感情を負の感情と勘違いすることがあるんですよね。あのバカはたぶん、いわゆる発情期は来ていたんでしょうけど、番だ!という感情がわからなかったので、あなたの顔を見る前に――見た後だったら今みたいになってたんでしょうけども――番だと思う感情がなんだかわからず、胸がもやもやするのを悪感情だと思ったんでしょう。匂いがわかったら発情してわかったかもしれないんですけど、そのあまり鼻が利かないから匂いが結びつかなかったりとか。あったかもしれません。その。それで、あんなことになったかなって、今更ながら」
「………じゃあ、逆に番だみたいな直感がなければ……」
「何事もなく、仲良くなるにせよどうなるにせよ、先入観がないということになるので、もう少し波乱がない関係になったんじゃないでしょうか」
なんて迷惑なんだ。番の直感。ウーラは遠い目をしていた。が、次のルイスの言葉を聞いた瞬間固まった。
「あと、ほかの騎士団長からは「面白いからあのバカが白の騎士団長が女だってこと、いつ気づくかそのまま見ていような」みたいなお触れがあって、みんなあなたが女性だってこと団長に言えなかったんですよね。それもこんなことになった原因の一つかなって、だって普通あなたが女性って誰かが言えば気づくはずだったし。気づけばきっと――」
「――誰ですか」ウーラの声はとても低かった。
「え?」
「私が、女だと伝えないようにと言い出したのは、誰ですか」
「ええと」
「言いなさい」ローブからのぞくウーラの目は冷え切っていた。
「……言い出したのはガーメイン卿、緑の騎士団長様、のはずです」眼力に負けてルイスは絞り出すように言った。
「ありがとうございます。私は用事があるのでここで失礼します」
ウーラは底冷えのする目で会釈をすると、ルイスに背を向けて速足で立ち去った。
やばい。緑の騎士団長、だいじょうぶだろうか。
そもそも、黒の騎士団の面々もジョシュが全くウーラを女性であると気づかないことをそこそこ、いや、結構楽しんで対応していた事実は闇に葬り去るべきだろう。
ジョシュ自身、「今に見てろ」というにはいっていたが、結局婚約騒動のウキウキで報復はまだされていなかった。
なんにせよ。余計なことは言わぬが花である。ルイスは素知らぬ顔で黒の騎士団に戻った。
「どこいってたんだルイス、さっさと書類を片付けてくれ。今日まだウーラの顔を見てないんだ。早く見に行きたい」
黒の騎士団長の執務室に入ったルイスは机に脚を投げて適当に書類を眺めている(だけ)団長を見つつ、ずぼらで書類整理にやる気が一切見られない上司への怒りを「鼻が利かないって悲しいなぁ」という思いにぶつけて霧散させた。
数日後、ウーラ経由で諸々が伝わり、報復を行うことを思い出したジョシュからの制裁として数週間家に泊まり込まれ、その間妻と思う存分イチャイチャできなくなったルイスは胃炎になった。
その他黒の騎士団は普段よりいっそう厳しい訓練が課され、筋力に磨きをかけられることになったのだった。
白の騎士団長の復讐がどう行われたのかは皆の知るところにはならなかったため、詳細は不明である。
◇◇◇
「そういえばなんで昔は一人称が僕だったんだ?私って言ってりゃ少しは……」
「近づかないでください。……あのころは……先代の真似ばっかりしてて、だから、抱きつかないでください!!……先代が僕っていってたからそれで、だーかーら!さわらないで!!」
「なぁ。今、僕ってつかってみてくれないか。あと、結婚してくれ」
「いやですよ!!!!」
「……何故謝るのですか」ウーラはルイスをジトッとみていた。
ジョシュとは仲が悪かった分、副官であるルイスとは業務上話す機会が多かったため、そこそこ気心知れた仲である。
そんな相手に改めて謝られるとなると、何かあったのか疑いたくなる。
「いえ、あなたと馬鹿なんですが、認識が間違っていたせいであんなにこじれたのかと気づきまして。――あのバカはたぶん勘違いしたんですよ」
ルイスの言葉にウーラは首を傾げた。
「認識?勘違い?」
「なんか嫌いなんだな程度にとらえていたんです。直感で生きてるから一回思い込んだらもうだめだしな、同世代で同じ出世の早さだし、それが原因でもあるだろうなくらいで放置していたのですが。その、まれにあるんです。ええと、これはあのバカをかばうわけではないのですが、獣人の中には番だ!と思ったときに発情期がまだ来ていないと。その番だ!というもやもやした感情を負の感情と勘違いすることがあるんですよね。あのバカはたぶん、いわゆる発情期は来ていたんでしょうけど、番だ!という感情がわからなかったので、あなたの顔を見る前に――見た後だったら今みたいになってたんでしょうけども――番だと思う感情がなんだかわからず、胸がもやもやするのを悪感情だと思ったんでしょう。匂いがわかったら発情してわかったかもしれないんですけど、そのあまり鼻が利かないから匂いが結びつかなかったりとか。あったかもしれません。その。それで、あんなことになったかなって、今更ながら」
「………じゃあ、逆に番だみたいな直感がなければ……」
「何事もなく、仲良くなるにせよどうなるにせよ、先入観がないということになるので、もう少し波乱がない関係になったんじゃないでしょうか」
なんて迷惑なんだ。番の直感。ウーラは遠い目をしていた。が、次のルイスの言葉を聞いた瞬間固まった。
「あと、ほかの騎士団長からは「面白いからあのバカが白の騎士団長が女だってこと、いつ気づくかそのまま見ていような」みたいなお触れがあって、みんなあなたが女性だってこと団長に言えなかったんですよね。それもこんなことになった原因の一つかなって、だって普通あなたが女性って誰かが言えば気づくはずだったし。気づけばきっと――」
「――誰ですか」ウーラの声はとても低かった。
「え?」
「私が、女だと伝えないようにと言い出したのは、誰ですか」
「ええと」
「言いなさい」ローブからのぞくウーラの目は冷え切っていた。
「……言い出したのはガーメイン卿、緑の騎士団長様、のはずです」眼力に負けてルイスは絞り出すように言った。
「ありがとうございます。私は用事があるのでここで失礼します」
ウーラは底冷えのする目で会釈をすると、ルイスに背を向けて速足で立ち去った。
やばい。緑の騎士団長、だいじょうぶだろうか。
そもそも、黒の騎士団の面々もジョシュが全くウーラを女性であると気づかないことをそこそこ、いや、結構楽しんで対応していた事実は闇に葬り去るべきだろう。
ジョシュ自身、「今に見てろ」というにはいっていたが、結局婚約騒動のウキウキで報復はまだされていなかった。
なんにせよ。余計なことは言わぬが花である。ルイスは素知らぬ顔で黒の騎士団に戻った。
「どこいってたんだルイス、さっさと書類を片付けてくれ。今日まだウーラの顔を見てないんだ。早く見に行きたい」
黒の騎士団長の執務室に入ったルイスは机に脚を投げて適当に書類を眺めている(だけ)団長を見つつ、ずぼらで書類整理にやる気が一切見られない上司への怒りを「鼻が利かないって悲しいなぁ」という思いにぶつけて霧散させた。
数日後、ウーラ経由で諸々が伝わり、報復を行うことを思い出したジョシュからの制裁として数週間家に泊まり込まれ、その間妻と思う存分イチャイチャできなくなったルイスは胃炎になった。
その他黒の騎士団は普段よりいっそう厳しい訓練が課され、筋力に磨きをかけられることになったのだった。
白の騎士団長の復讐がどう行われたのかは皆の知るところにはならなかったため、詳細は不明である。
◇◇◇
「そういえばなんで昔は一人称が僕だったんだ?私って言ってりゃ少しは……」
「近づかないでください。……あのころは……先代の真似ばっかりしてて、だから、抱きつかないでください!!……先代が僕っていってたからそれで、だーかーら!さわらないで!!」
「なぁ。今、僕ってつかってみてくれないか。あと、結婚してくれ」
「いやですよ!!!!」
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