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8.忌まわしき初恋の呪い

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 やっぱりめちゃくちゃにされるんじゃないかー!!と、ウーラは心の中で叫んだ。声にはならず、ぱくぱくと開閉する唇をみて、ジョシュはウーラに再び口づけた。

 口を閉じる間もなく、入り込んだジョシュの舌がウーラの口内をたどる。歯列をなぞり、口蓋に触れた。いつのまにか、ジョシュはウーラを押し倒していて、ウーラの両手はジョシュのそれに捕まれていた。

 逃げようと身をよじっても、彼が逃すわけもない。

 口づけられたまま睨めば、余裕綽々とでもいいそうな目でジョシュはウーラを見つめ返した。

 ――悔しいことに、その瞳だけで腰が砕けそうになる。

 なんてことだ。ウーラはおのれの素直な体に歯がみした。

 10年来の片思いはもはや体に染みついているらしい。

 こんな馬鹿みたいな状況なのに無抵抗で何してるんだ。そう思うのに、ジョシュが情熱的に自分を求めているというだけで、心が踊らされるだなんて。



(人体にさほど影響がないくらいの、自己防衛の魔法とか!…………むりだー!!!)



 魔術は触媒がなければ使えないし、魔法を使うには精神統一が必要である。今のウーラには、両方持ち合わせがなかった。修行が足りなかった、と後悔してみるも、まさかこんな状況を想定した実戦練習などできるわけもないし、そもそもこんな状況、想定するわけがない。 

 魔法も魔術も使えなければウーラなどただの力の弱い女である。筋肉脳筋馬鹿に勝てるわけがない。

 そんなウーラの思考を読んだのか、ジョシュが唇を話した。そして、耳元でささやく。



「抵抗しないんだな。お得意の魔法はどうした?」



「……………」



 馬鹿だ馬鹿だと思っても、耳元でささやかれたら力が抜けてしまう。な、なんてことですか。絶望と認めたくはない興奮というか歓びでウーラはぐぬぬと唇を引き締める。

 そして、10年以上も言葉で殴り合った関係ゆえの負けん気でどうにかジョシュに向かっていった。



「こんな同意のない性行為なんて!どうかしてます!!」



 その言葉にジョシュはそこそこ真面目な顔で答えた。



「だから、同意かどうかは体に聞くって言っているだろう」



「………本気なんですか?!」



「俺はいつだって本気だ」



 かなりのどや顔だった。そして、かっこいいのである。少しやに下がってるくせに。

 やっぱり馬鹿じゃないですか!!とウーラは、馬鹿に理屈は通じないと痛感し、同時にちょっと期待した自分に衝撃を受けた。体から力が抜ける。

 ――どうせ負けてるんですよね……。

 しかし、ウーラにも言い分はある。

 馬鹿だのあほだの、言い募ったところで許せるわけないその10数年。

 受け入れる気はない。だが。

 自分を押し倒してじっと見てくる男は、どうせ止められないのだ。



「――やれるものならやってみればいいんじゃないですか」 



 体を与えたところで、彼の思いなど受け入れやしない。ただ、もう今日は疲れた。抵抗するにも暖簾に腕押しとくれば、あきらめるのも一手だ。だって馬鹿が相手だし。きっと後悔するだろうなぁ。知ってる。等と思いつつ。

 知ってか知らずか、ジョシュはにやりと笑った。

 こんなところで何をしているんだろう。ウーラはぼんやりと天井を眺め、目をつぶった。



 ――まったく。忌まわしきは、初恋の呪い、ということにしておきたい。





  ◇◇◇





 普段の荒っぽい仕草とは裏腹にジョシュは優しくウーラに触れていた。

 ウーラはその動きに翻弄される一方だった。

 耳を食んでいた唇は、今は首を舐めている。左手はウーラの胸の形をたどり、左手の指は緩やかに彼女の秘所の入り口をなぞる。そこはすでにしとどにぬれてた。――ようだった。

 というのも、触るジョシュの指が動くたびに水音がし、彼がにやりと笑ったからだ。

 左の手も報酬を得たようだった。くい、とウーラの乳首を捻る。ウーラの鼓動が早くなる。口づけながらジョシュは笑みを深めた。



「おとなしくなったな。やっぱり体は正直じゃないか」



 ウーラは視線を逸らす。

 ――なんかもう抵抗すればいいのに。

 今からでも遅くない、自分でもそう思う。簡単に落ちるものかと、既に落ちきっているのに落ちてない振りをするのだから、自分も相当な馬鹿なのだろう。

 ジョシュに関することに対しては、知能指数が下がることに対しての自覚は少しばかりはあったが、ここまでとは思わなかった。



「………」



「知らんぷりでもいいけどな、いつまでもつだか」



 鼻で笑う勢いのジョシュにムカついたので、頭をつかむ。髪の毛ぐちゃぐちゃにしてやる。と思った瞬間、



「ひっ」



 体のそんなところに穴があるということを知識で知っているのと体感するのとでは大きく違う。差し入れられたそれが太い男の指だったからなおさらなのだろうか。その質量に違和感を覚えて身をよじるも、ジョシュに抱き込まれて身動きが取れない。



「おっと手が滑った」悪びれもなく、ジョシュはつぶやき、そのまま指を秘所に差し入れる。



「あっ、あっ、む、むりッ」



「無理じゃないだろ」



 足を引き寄せ、ジョシュは肩に顔をうずめ、細い首に頬を摺り寄せてきた

 ウーラは息を止めてその違和感を逃がそうとしていた。

 しかし、原因が原因で、そう簡単に違和感がなくなるわけもなく。



「少しは濡れてるな。しかし、まだこんなに狭いのか」



 ジョシュは鼻歌交じりにも聞こえそうな朗らかさでウーラの“穴”を探索している。指は強引だが、しかし、乱暴とまではいかない。開拓を楽しむように、その場所を知ろうとしているようだ。ウーラはただただその違和感に耐えるしかなかった。

 そして、ジョシュは一通り楽しんでからウーラが息を止めていることに気づくと、ふれるだけの口づけをした。



「そろそろ息をした方がいいぞ」



「……」言われるがままに大きく深呼吸をする。



「力を抜け」



「……難しい注文を……」



「考えてばっかりだからダメなんだよ。まぁ、頭でっかちだからなぁお前」



「え、偉そうに……!っ、あっ」



 ジョシュの言葉に反論しようとした瞬間、ウーラは息をのんだ。



「処女でもこっちは感じるだろう?」



 秘芯がジョシュの濡れた手で優しくこねられた。

 違和感はすぐに忘れ、ジョシュの手の与える刺激にどうしていいかわからなくなってウーラはジョシュにしがみついた。

 ジョシュはウーラの耳元に口を寄せ、



「なぁ、お前の穴が俺をほしいとひくついてるぞ?お前はこれでも、こんなに感じても、こんなに俺がほしくなっても、俺を嫌いになりたいなんて言い張るのか?」



 ウーラは唇をかみしめた。

 ジョシュの声が耳から体に響く。

 耳元で聞くことができるだけでも、長く望んだことなのに。



「――あっ貴方が、自分、の性技、にぃっ、自信を持っているというのは!わかりましたっ!しかし、女性の反応は場の雰囲気に流されることだってあるので、それだけで決められることで、はぁ!?あぅ、ひっ!や、やっぁ!」



 ウーラが言い切った瞬間、ジョシュは優しく触っていた秘芯を強めにこすった。



「本当に意地っ張りだな」



 笑いながらジョシュはウーラに口づけた。

 息も絶え絶えとばかりに開いた唇から舌を容赦なく入れ、口内を蹂躙する。どうしたって、腰がうずく。

 ジョシュは目を閉じているウーラに唇をつけたまま「俺を見ろ」といった。



「……っ」



 目が合った。涙の滲んだ赤の瞳はそれでも反抗的だった。10年という年月でこじらせた想いだけを頼りにどうにか我慢しているに過ぎない。

 ジョシュはそれをそのままに見つめたまま、言った。



「愛してる」



 秘芯への刺激をそのままに、じっとウーラを見つめれば、彼女は泣きそうな顔で目を細めた。



 口づければ、その動きに翻弄されて、甘く、ウーラを蕩けさせる。

 優しく指で秘所をまさぐれば、固い表情がさらにゆがむ。

 彼女はその甘さに耐えるように体を固くしたまま。



 陥落したのか?だなんて。――そんなものとっくにしてる。一目で恋に落ちた、あの瞬間から、ずっとずっと、彼に落ちている。

 でも、それを簡単に認めることはできない。心と体はバラバラで、心は許せなくても、体は彼を求めてしまう。触れられれば悦んでしまう。



 彼の指はウーラのが知らないウーラの大事なところを優しくほぐし、絶頂へと導く。

 声も出せないほど歯を食いしばって、それでも彼には分ってしまうのだろう。

 絶頂の気配にジョシュはにやりと笑った気がした。

 ウーラは小さく震えてから、力を抜いた。

 ――お酒のせいだ。



 ウーラはそれだけ考えていた。彼の愛の言葉を聞いて、気持ちがいいし、体も疼く。でも、それでも。



  ◇◇◇





 ジョシュはなすがままになったウーラをそこそこ丁寧にほぐし、言葉を重ねた。

 そのたびにウーラは泣きながら「馬鹿」とつぶやいた。



 ――いささか早急だったことは否めない。

 ほしいものはたいてい我慢しない主義だし、目の前にいるのは番なのだ。処女だし、さんざん因縁がある関係だから頑張って我慢した。

 と考えたため、ジョシュは(自分の感覚でたぶん)大丈夫だろうというあたりで何も言わずに了承もなしにウーラの秘所に興奮しきった己のものを突っ込んだ。



「えッ?!!!いっやめっ!とまって!やぁっ!!」



 なすがままになっていたウーラが痛みに顔色を変え、抵抗するのを、強引に抱きしめて動きを封じ、腰を押し付ける。その狭さに満足する。

 ジョシュが動くのをやめるとウーラはキッと涙目で彼をにらんだ。



「ぬいてください……っ」



「無理な相談だな」



 ジョシュは言いながらゆっくりと腰を引いた。その動きに、ウーラは「ひぁっ」と身を震わせる。

 ゆっくりと前後させれば、ウーラは目を閉じ、ジョシュにすがるようにしがみついた。

 目元の涙を舐め取り、片手で彼女とつながるところに触れる。蜜を指につけ、再び秘芯をこねれば、彼女の腰が跳ねる。ゆっくりした動きと秘芯への刺激を繰り返せば、きつい膣内は、いつの間にかひくつき、ジョシュを受け入れることに順応しつつあった。



「もうよさそうだな」満足げにジョシュがいうと、ウーラは目を開いた。



 その目を見たまま、口づけし、今度は一切容赦なく、動き始める。

 浅く、深く。ウーラの体を探索するように、彼女の悲鳴を舌で掬い取りながら、動き続けていると、背中に爪を立てられた。

 口を離すとウーラはせき込んだ。息ができなかったようだ。



「なんっでッ!こらえ性が!ないんでッすかっ!!んんっ、だめっだめそこだめぇっ」



 ウーラの文句にも何も返さず、ジョシュは狭い膣の中の探しだした良いところを繰り返し責めた。

 文句をいう顔がとろけ、言葉にならない嬌声が漏れる。

 ゆすぶられながらウーラの顔が痛みよりも快楽が勝り、彼女の穴がジョシュを歓迎している。ジョシュは笑えば、ウーラは悔しそうに唇を噛んだ。

しかしそれでも彼女は綺麗だった。漏れる嬌声に、悔しさと気持ちよさの混じる顔を見降ろしながら、ジョシュはとても気持ちよく、彼女を堪能した。







 欲望を発散しきったころには朝日が昇っていた。

 途中から朦朧として、ぐったりと寝落ちたウーラを眺め、ジョシュは幸せな気分で笑った。すくなくとも、彼女はここにいる。

 そのとき、寝たと思ったウーラがつぶやいた。



「こんなことしたって、私は納得しないし、あなたの言葉なんて信じませんからね」



 横目で見ながら、枯れた声で感情をこめずに言われた言葉にジョシュは首を横に振る。

 じゃあ、なんで抱かれた。だなんて、さすがのジョシュだって言わない。代わりに、ウーラの肩を抱き寄せ、頬に口づける。



「愛してる」



 自分でも思った以上に優しい声が出た。

 返事はなく、耳を澄ませば、規則正しい呼吸が聞こえる。流石に寝てしまったのか。

 手段がどうとか、きっとよろしくないことも知っている。――でも、あきらめる気はない。

 手に入れようというつもりに変わりはない。こういう方法しか自分は知らない。

 何しろ馬鹿なので。
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