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ホラーゲーム『デス・スペースシップ』
仲間の死亡時間
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モナカが銃を片手で掲げながら、
「ドアが開いたよ。七瀬のやつ顔真っ赤にしてるじゃないか」
「そっとしてやれ。感動で涙が止まらんのだ」
「超笑ってるけど」
もちろん彼女の言うことも信じない。
クルミが首をかしげ、
「おいたん。愛ってなぁに?」
「私の根源を成すものだ」
「ふぅん」
やっぱり首をかしげる。
『子供には難しいですね』
文曲の言葉に、私もそう思う。
モナカが私の背中をたたき、
「もう何がきてもあんたに任せられるね。七瀬。あのドアはどこにつながってるんだい?」
「鉱山です。管制棟は採掘所の近くにあるので、ぶふっ! そこから行けるかと」
「涙出てるじゃないか」
「もうおもしろすぎるのが、つらくて」
七瀬は指で両目をぬぐっている。
クルミは崩壊した敵のかけらを手に持って、興味深そうにながめている。
男の子と違って、蹴って遊ばないところは、女の子らしい。
「おいたん。これなぁに?」
「ただの石だ。ばっちいから捨てなさい」
「わかったぁ」
クルミは石をぽいっと投げた。
パワードスーツの足音を鳴らし、
「それで。鉱山には向かうのか?」
「脱出艇は管制棟にしかないですからね。選択肢はないかと」
「よかろう。では、クルミの面倒を頼むぞ」
「はい、わかりました」
幼女の世話を七瀬に任せ、私は手の骨を鳴らしつつ、自動ドアを開けた。
廊下は静かだった。
壁に茶色いものが張りついている。
木の枝だ。
根っこのように床や壁、天井に生息している。
「ここは?」
「植物エリアです。鉱山から取れた変わった種子を培養していました。この様子だと、植物コントロールルームは全滅ですね」
七瀬がクルミが根っこにつまずいてコケないように気を配りながら言う。
「火炎放射器で燃やしたほうがいいんじゃないか? まあ実際にやると、警報装置が働くだろうけど」
モナカは銃の先で枝をつついている。
隙間という隙間から、木の枝が侵入している。
宇宙から取れた木の種は生命力が絶大だった。
『六道さん。現在サイレントモードにしてますので、私とあなたしか聞こえなくしてあります』
「うん? 突然どうした?」
『空気中から毒素を検出しました。何かが大気を汚染しています。六道さんはパワードスーツのおかげで空気が浄化されているので無事ですが、七瀬さんたちはあと10分で死にます』
「ほう。それはそれ……はあっ!?」
つい声を上げてしまう。
「はっ!? どうした!?」
モナカが反応する。
「なんでもない! 私はちょっと離れる! お前たちはそこにいるがいい!」
そう言って、さっと近くの部屋に入る。
「なんでみんなに黙ってるんだ!?」
『言うと、緊張で呼吸がはげしくなり、ますます毒素が体内に回ります』
「さっ酸素マスクみたいなものはないのか!?」
『探しているよゆうはありません』
「じゃ、元きた場所に帰ろう!」
『毒素が外に出るだけなので、状況は変わりません。ここは宇宙船なので、密閉空間です』
「どうするんだよ!!」
文曲がなかなか答えを出さないので、怒りをむき出してしまう。
『まずは元をたつ。次に空調の復活です』
「元? この木が毒素を出しているのか?」
『いえ、別のものです。木は壁に隙間を作ってしまったので、毒素が広まってしまいました。エリア内の地図をダウンロードしますので、指をメモリーセットに入れてください』
「よし!」
人さし指を制御盤の穴に入れ込む。
『ダウンロード完了。地図を表示』
メインモニターに地図があらわれた。
右上のアイコンでは、黒髪の文曲が指示棒を持っている。
『現代地はここです。そこからここが、植物のコントロールセンターになります』
予想以上に遠い。
ここまで10分以内いかなくてはいけない。
すぐにガラス張りの部屋から飛び出た。
「あっ! オッサン! なんかさ。クルミが調子悪いみたいなんだよ」
モナカがクルミの頭をなでている。
クルミは七瀬の腕の中で横になり、気分が悪そうに汗をかいていた。
白いワンピースから出る、腕や足から、汗がしたたり落ちている。
「どうして? 熱はないし、さっきまで体調は良かったのに?」
七瀬はどうしていいのかわからず、そわそわしていた。
『クルミちゃんは小さいので、毒素が回りやすいようですね。10分ではもたない……』
「モナカ! 七瀬! クルミを寝かせてそばにいてやれ! 私は今から元をたってくる! あまり動き回るなよ!」
文曲の話を聞かず、私は声を張って、毒素の原因に向かって走っていった。
地図を見ていると、道が入り組んでいて、元をたったとしても、かなりギリギリだ。
間に合わない確率のほうが高い。
『それでは案内します。まずそこを右で……』
「案内などいらん! ふんっ!!」
金属製の壁に体当たりして突き破った。
どうせ毒素が広まってるので、壁があこうが、あくまいが関係ない。
配管やら、部品やらが飛び散って、配線がちぎれて、廊下の照明が消えてしまったが。
損害賠償請求ならクリーチャーにしてもらおう!
「毒素を出したやつを見つけ出して説教してやる!」
『言い換えるとクレームですね』
文曲のうまい言い方を聞きながら、私は次々と壁を破壊していき、目的地まで1分で到着した。
「ドアが開いたよ。七瀬のやつ顔真っ赤にしてるじゃないか」
「そっとしてやれ。感動で涙が止まらんのだ」
「超笑ってるけど」
もちろん彼女の言うことも信じない。
クルミが首をかしげ、
「おいたん。愛ってなぁに?」
「私の根源を成すものだ」
「ふぅん」
やっぱり首をかしげる。
『子供には難しいですね』
文曲の言葉に、私もそう思う。
モナカが私の背中をたたき、
「もう何がきてもあんたに任せられるね。七瀬。あのドアはどこにつながってるんだい?」
「鉱山です。管制棟は採掘所の近くにあるので、ぶふっ! そこから行けるかと」
「涙出てるじゃないか」
「もうおもしろすぎるのが、つらくて」
七瀬は指で両目をぬぐっている。
クルミは崩壊した敵のかけらを手に持って、興味深そうにながめている。
男の子と違って、蹴って遊ばないところは、女の子らしい。
「おいたん。これなぁに?」
「ただの石だ。ばっちいから捨てなさい」
「わかったぁ」
クルミは石をぽいっと投げた。
パワードスーツの足音を鳴らし、
「それで。鉱山には向かうのか?」
「脱出艇は管制棟にしかないですからね。選択肢はないかと」
「よかろう。では、クルミの面倒を頼むぞ」
「はい、わかりました」
幼女の世話を七瀬に任せ、私は手の骨を鳴らしつつ、自動ドアを開けた。
廊下は静かだった。
壁に茶色いものが張りついている。
木の枝だ。
根っこのように床や壁、天井に生息している。
「ここは?」
「植物エリアです。鉱山から取れた変わった種子を培養していました。この様子だと、植物コントロールルームは全滅ですね」
七瀬がクルミが根っこにつまずいてコケないように気を配りながら言う。
「火炎放射器で燃やしたほうがいいんじゃないか? まあ実際にやると、警報装置が働くだろうけど」
モナカは銃の先で枝をつついている。
隙間という隙間から、木の枝が侵入している。
宇宙から取れた木の種は生命力が絶大だった。
『六道さん。現在サイレントモードにしてますので、私とあなたしか聞こえなくしてあります』
「うん? 突然どうした?」
『空気中から毒素を検出しました。何かが大気を汚染しています。六道さんはパワードスーツのおかげで空気が浄化されているので無事ですが、七瀬さんたちはあと10分で死にます』
「ほう。それはそれ……はあっ!?」
つい声を上げてしまう。
「はっ!? どうした!?」
モナカが反応する。
「なんでもない! 私はちょっと離れる! お前たちはそこにいるがいい!」
そう言って、さっと近くの部屋に入る。
「なんでみんなに黙ってるんだ!?」
『言うと、緊張で呼吸がはげしくなり、ますます毒素が体内に回ります』
「さっ酸素マスクみたいなものはないのか!?」
『探しているよゆうはありません』
「じゃ、元きた場所に帰ろう!」
『毒素が外に出るだけなので、状況は変わりません。ここは宇宙船なので、密閉空間です』
「どうするんだよ!!」
文曲がなかなか答えを出さないので、怒りをむき出してしまう。
『まずは元をたつ。次に空調の復活です』
「元? この木が毒素を出しているのか?」
『いえ、別のものです。木は壁に隙間を作ってしまったので、毒素が広まってしまいました。エリア内の地図をダウンロードしますので、指をメモリーセットに入れてください』
「よし!」
人さし指を制御盤の穴に入れ込む。
『ダウンロード完了。地図を表示』
メインモニターに地図があらわれた。
右上のアイコンでは、黒髪の文曲が指示棒を持っている。
『現代地はここです。そこからここが、植物のコントロールセンターになります』
予想以上に遠い。
ここまで10分以内いかなくてはいけない。
すぐにガラス張りの部屋から飛び出た。
「あっ! オッサン! なんかさ。クルミが調子悪いみたいなんだよ」
モナカがクルミの頭をなでている。
クルミは七瀬の腕の中で横になり、気分が悪そうに汗をかいていた。
白いワンピースから出る、腕や足から、汗がしたたり落ちている。
「どうして? 熱はないし、さっきまで体調は良かったのに?」
七瀬はどうしていいのかわからず、そわそわしていた。
『クルミちゃんは小さいので、毒素が回りやすいようですね。10分ではもたない……』
「モナカ! 七瀬! クルミを寝かせてそばにいてやれ! 私は今から元をたってくる! あまり動き回るなよ!」
文曲の話を聞かず、私は声を張って、毒素の原因に向かって走っていった。
地図を見ていると、道が入り組んでいて、元をたったとしても、かなりギリギリだ。
間に合わない確率のほうが高い。
『それでは案内します。まずそこを右で……』
「案内などいらん! ふんっ!!」
金属製の壁に体当たりして突き破った。
どうせ毒素が広まってるので、壁があこうが、あくまいが関係ない。
配管やら、部品やらが飛び散って、配線がちぎれて、廊下の照明が消えてしまったが。
損害賠償請求ならクリーチャーにしてもらおう!
「毒素を出したやつを見つけ出して説教してやる!」
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