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最終章 崩壊都市
女傭兵、ツバメ
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*
午前、まだ太陽が頂上に達していない時刻。
マリアはカンタロウとアゲハを連れて、ある場所へとむかっていた。
カンタロウの仕事を約束どおり手伝ったので、今度は自分に返してもらう番なのだ。
まだ二人には仕事の内容を話していないため、目的にむかう途中で言うことにしていた。
「それでは、仕事の話をします。歩きながらで、ごめんなさい」
時間はあまりないようだ。マリアの焦りがわかる。
「いいさ」
カンタロウは落ち着いた様子で、歩いている。
「それにしてもさ、どこ行くの?」
アゲハは後頭部に両手をやり、ふらふら歩いていた。
「仲間と待ち合わせしてるんです。今回行く場所はとても危険なので、私は仲間集めを、彼女は情報収集を担当していました」
マリアは前をむき話を進め、
「私の目的は一つ――妹を取り戻すことです」
妹という単語に、カンタロウが顔を上げる。前にマリアから、話を多少聞いていたからだ。
「カンタロウさんには少しだけ話ましたけど、私の妹を連れ去ったのは、宗教団体『ビーナスメイク』。その団体を率いるのは、大使徒クロワ。元はエリニス国で、官僚を勤めていた人物です」
「大使徒って偉いのか?」
カンタロウは、マリアに向かって、素朴な疑問を口にだした。使徒という単語を、知らないようだ。
「使徒、大使徒、総使徒、教皇とありまして、使徒の次に偉い人ですね。私も大使徒様の命令で動いています。個人的な感情もありますけど」
マリアが答える。
使徒が肩書きのことだと知ると、カンタロウは納得して口を閉じた。
マリアは息を吐き、
「妹の名前はシオン。シオンと別れたのは、今から二年前です。今はもう八歳になっているはずです」
「えっ、六歳であなたと別れたの?」
アゲハがちょっとだけ声を上げた。
六歳といえば、まだ分別もつかない子供だ。
マリアと別れるときに、抵抗の一つもしなかったのだろうか。
「ええ。別れたといっても、私達はまたすぐ会えると思っていましたから。それに、シオンからクロワの元に行くと、願いでたのです。それなのに一年前、ビーナスメイクとは音信不通になりました。まだそのときは、何が起こっているのか、私はわからず、ビルヘンというリブラ派の聖地で、修行していました。ビーナスメイクが森の中に閉じこもったという情報を聞いたのは、つい最近のことです」
「森の中に? 森にいたんじゃなく?」
「はい。クロワは研究所を持っており、そこに信者を集め、ある儀式を行っていました。シオンは巫女に、つまり、女神になる予定だったんです」
アゲハの質問に、マリアは即答していく。言葉に淀みはない。
「女神に? どういうことだ?」
カンタロウがまた素朴な疑問を感じ、マリアに質問してみた。
「人間の体を依り代として、神を乗り移らせるってことじゃないの?」
今度はアゲハが、カンタロウに答えた。
「そうです。しかし、クロワは邪悪な儀式を行い、木をはやし、研究所の周りに樹海をつくってしまったんです。その森がとてもやっかいで、今の私達では手がだせません。そこで、強い仲間が必要だったんです」
「どうして? 深い森なの?」
「いいえ。その森には、なぜか次々とゴーストエコーズが集まってきたんです。何人かハンターを送ったみたいですが、全員帰って来ませんでした。今ではハンターギルドでさえ、この仕事は断っています」
マリアの言い方に、アゲハが納得する。
カンタロウはそこまで聞いて、ようやくマリアがハンターギルドに行けず、傭兵を雇おうとしていた理由がわかり、
「受付拒否、レッド認定されたんだな」
あまりにも危険で、報酬金との等価交換が期待できない仕事は、ハンターギルドではレッド認定として扱われる。
仕事を受付しないということになるのだ。
この情報はすべてのハンターギルドに通達されるため、どこのギルドでも受付拒否される。
「ハンターギルドにレッド認定されたため、私個人で、強いハンターを探さなくてはいけなくなりました。そこで出会ったのが、カンタロウさんとアゲハさんです」
「なるほど。他に情報はない? クロワって奴の特徴とか?」
アゲハは乗り気じゃない態度を見せながら、マリアから詳しく情報を聞こうとしている。
カンタロウは大人しく、耳を傾けた。
「クロワの年齢は五十二歳。瞳は青く、髪は白髪です。目は大きく、ギョロリとしていて、淡々と話す方でした。体格は華奢です」
「よくその人に、妹を預けようと思ったよね?」
「エリニスで地位の高い方でしたから……すっかり信用していたんです。まさかこんなことになるとは、思ってもみなかった……」
アゲハにツッコまれ、マリアの声が沈んだ。そこに後悔が見て取れる。
「ふぅん……他に情報はないのね?」
「はい。少なくてごめんなさい」
マリアの話が終わり、アゲハは一応カンタロウの方を見上げてみる。
「わかった。妹を助ければいいんだな?」
「はい。その……仕事を受けていただけますか?」
カンタロウに申し訳なさそうに言うマリア。
ハンターギルドには頼れず、ここで断られれば一からやり直しだ。
だからこそ、マリアは最後まで仕事の話ができなかった。
マリアの体に、緊張感が走っている。
「あたりまえだ。すぐに行動しよう」
カンタロウの言葉に、マリアは胸をなで下ろした。
「はい――ありがとうございます。カンタロウ様」
マリアはこぼれるような笑顔を、カンタロウにむけていた。カンタロウも、それに笑顔で応えた。
「ねえ。どうして、カンタロウ君に、『様』をつけるの? たまに言ってるけど?」
「えっ? ……意味は、ありません」
アゲハの指摘に、マリアは頬を赤く染め、伏し目がちに話した。
「嘘だぁ。マリアって、嘘がすぐに顔にでるから、わかりやすいもん」
「ええっ? そうなんですか?」
アゲハに言われ、マリアは慌てて両手で、顔を押さえた。
「まあ、いいじゃないか。俺は別に気にしない」
「なんでよ。マリアに『様』呼ばわりされてるんだよ? お前はどこかの、王様か。帝王なのか」
「それぐらい、マリアが俺のことを大切に思ってくれてるんだろ? だから俺も、それに応えるだけだ」
カンタロウは誠実にそう答えた。
アゲハにとって、それはカンタロウらしい反応なので、特に面白さも感じなかった。
それよりも、マリアの方が面白い反応をするので、そっちに興味があった。
「あっ、あのっ! そんなつもりでは……でも、そうです……」
アゲハの予想どおり、マリアはモジモジしながら反応している。
アゲハはそれを見て、小悪魔っぽく、小さく笑った。何かよからぬことを、思いつき、
「いいじゃんマリア。カンタロウ君がああ言ってるんだし。じゃ、カンタロウ君。マリアにたっぷりマッサージしてやれ」
「今ここでか?」
カンタロウは意味不明といった、表情をした。
「いえいいです! そんな、とんでもないです!」
マリアはアゲハの冗談に気づかず、慌てふためく。
「じゃ、マリアが風呂か、川に入っているときにしようぜ。突撃マッサージだ」
悪ふざけが成功し、二人の反応に喜ぶアゲハ。
「それは駄目だろ?」
カンタロウが即つっこむ。
「まっ……お待ちしてます」
マリアは覚悟を決めたのか、頭から湯気が上がっている。
「いや、駄目だろ?」
カンタロウはマリアにも、つっこんだ。
*
休憩を挟みつつ、目的の地に進んでいった。
川を越え、橋を渡り、街道を外れて山道を歩いていく。
山道に人はおらず、途中、紅葉の広がる滝のそばで、マリアの作ったお弁当を食べた。
食事が終わり、また山道を上っていくと、森がなくなり、平地が開いた。すでに時刻は昼間近になっていた。
「あっ、いました。あの人です」
マリアが指さした方向を見ると、大人の腰ぐらいまである大きさの岩の上に、誰かが座っている。
茶色のフードをかぶり、表情は影でまったく見えない。
肩まで伸びた黒い髪が、風にそよぐ。
――女、か?
体格は華奢。胸が大きく、フード付きの上着からでも、形がわかる。それらの見た目の情報から、カンタロウは女であると判断した。
「ツバメさん! 新しい仲間を連れてきましたよ!」
マリアが大きく手を振った。
ツバメという名前の女性らしい。
ツバメはマリアとカンタロウ達に気づくと、ニィと白い歯をだして笑い、
「――へえ。いい男じゃないか」
カンタロウの耳に、そんな言葉が聞こえた刹那、女の上着が空を舞った。
すでに女の姿は岩の上になく、視界から消える。殺気が、目の前にまで近づいていた。
「なっ!」
カンタロウが殺気の正体に気づいたとき、すでにツバメは中型の剣を片手に持ち、突きだしていた。
――速い!
カンタロウはあまりの速さに、自分の意志ではなく、無意識に体を動かし、
「くっ!」
横に飛び、地面に手をつきながら、何とか剣をかわす。
「ひゅう。やるじゃないか。まっ、これぐらい、かわせないとね」
女の割には、異常に力強い声。
カンタロウは、ツバメの後ろを捕らえようとした。
「ほらよっと!」
ツバメはすぐにカンタロウの位置を把握し、剣を後ろへなぎ払う。剣は風を切り、手応えがない。
――かわされた?
ツバメは目下に気配を感じる。
カンタロウは地面にしゃがみ、大振りの剣を素早くかわしていた。もうその目に、動揺はない。
冷静さを取り戻していた。
「悪いが、少しだけ痛い目にあってもらう」
カンタロウは刀を抜かず、鞘をつけたまま、ツバメの横腹を打ち据える。
だが、固い金属音が響くだけで、ツバメに痛みの反応はない。
黒い瞳が不気味に笑った。
――二刀流?
今持っている剣と、同じ大きさの剣で、ツバメはカンタロウの刀を防いでいた。
「おいおい、本気できなよ。じゃないと、死んじゃうよ!」
ツバメの右目が一瞬で赤く染まった。右目下の頬に、神文字があらわれる。
カンタロウが赤眼化だと気づいたときには、すでに熊のような力で、数メートルまで弾き飛ばされていた。
ツバメはなおも追従し、
「ははっ!」
「くそっ!」
カンタロウは赤眼化すると、地面に踏ん張った。土がえぐれ、草花が散る。
赤眼化できない人間であれば、足の骨が砕けていた。
「へえ、赤眼化できるのかい? そうでなくっちゃぁね!」
ツバメは片手剣のまま、カンタロウを追撃する。
カンタロウは刀を抜くと、それに応戦した。
剣と刀の火花が散り、音が大きく唸った。
「やめてください! 二人とも!」
マリアは必死で、二人の戦いをやめさせようと叫んだ。まさかこうなるとは、思ってもいなかったからだ。
せっかく仲間となる者同士が、真剣で争う姿は見るのも耐え難かった。
「無駄だよ。あの女の人。戦いを楽しんでる――しかも、相当強い」
アゲハは二人の激しい戦闘に、カンタロウを助けることもできず、見守っていた。
ツバメは狂戦士のように、笑みを浮かべ、戦いに狂い踊っている。
「はははっ! 楽しいねぇ! 久しぶりだよ! こんなに血肉踊るのはっ!」
ツバメの剣を受け止めながら、カンタロウはどんどん焦ってきていた。
――手加減できない! コイツ! 強すぎる!
カンタロウの額から汗が流れ、呼吸が荒くなる。
容赦ない攻撃に、体力も激減してきた。
ツバメの剣をかわしきれず、小さな傷が増えていく。
――カンタロウ君の呼吸が乱れてる。それなのに、あのツバメって女は、まったく呼吸が荒れてない。これは、すごくやっかい。
アゲハはツバメの異様な強さに、自然と体温が高くなり、頬から汗が流れていく。
自分と戦ったときの模擬戦闘をしてみるが、互角かそれ以上。
だから「やっかい」だと、アゲハは判断した。
「さあっ! 来なよ! 私をもっと興奮させな!」
ツバメが鬼のように、大きく叫んだ。
カンタロウはツバメとの距離をとると、一呼吸し、
「……仕方ない」
カンタロウは腰を下ろし、柄に右手を乗せた。
呼吸を整え、荒い息が静まっていく。
目は水平に、ツバメを見据えている。
――居合いの構え?
ツバメはそれがどういう構えか、すぐに見切った。
歪んだ口元が、スッと引き締まる。
視線はカンタロウから、離さなかった。
「カンタロウさん、何を?」
「あれは、本気だね」
「えっ? 本気って……」
「どちらかが――死ぬかもね」
アゲハに言われ、マリアの顔から血の気が引き、青くなっていく。
アゲハは二人の戦いに目が離せず、マリアの不安に気づけないでいた。
「くくくっ。いいねいいね。ぞくぞくしてきたぁ! やっぱり殺し合いは、こうじゃなくっちゃぁ!」
ツバメが再び狂戦士化していった。
声が高揚し、興奮が止められず、しゃべるたびに唾が飛ぶのも気になっていない。
白い歯を獣のように剥きだし、獲物を殺すことにすさまじい快感を覚えている。
「死ぬ……カンタロウ様が……やめて……」
マリアの不安は、極限に達していた。
「乗ってやるよ、イケメン! 顔のいい男ってのは、不甲斐ない奴が多いけどさ。あんたは違うようだね! その磨き上げた技を、あたしに使ってみなっ!」
「…………」
カンタロウはツバメの挑発に答えない。一瞬の勝負の決着に、すべての力と集中をそそいでいる。
「ははあっ!」
ツバメが土を蹴り飛ばし、カンタロウにむかって走った。
行動に躊躇や遠慮はない。
全力でカンタロウを倒しにかかっている。
「やめて、やめてください……やめてっ!」
マリアの限界が超えた。
衝突する二人の前に走ると、ツバメからカンタロウを守るように、両手を広げる。
「マリアっ!」
アゲハはマリアが飛びだしたことに気づき、声を上げた。
「なっ!」
――マリア!
ツバメ、カンタロウも、マリアの無謀な行動に気づいた。
カンタロウは構えをやめ、素早くマリアの前に立つと、肩を抱いた。
背中から、ツバメがせまってくるのがわかる。
身を挺して、マリアを守っているのだ。
「くっ、そぉ!」
ツバメは興奮が急降下し、我に返ると、片足を蹴って、横に自分をズラした。
「ぐわぁ!」
ツバメは勢いあまって、顔から地面に落ちていった。
カンタロウは赤眼化を解除すると、マリアから少し離れた。
ツバメが自ら、戦闘を放棄したことを悟ったからだ。
「……無茶するな、お前は」
カンタロウに言われ、マリアは悲しそうに、顔を伏せ、
「……ごめんなさい。どうしても、止めたくて」
「まっ、無事でよかった」
カンタロウはマリアの頭をなでると、安心したように笑った。
「……はい」
マリアは嬉しさに揺れるような、微笑みを浮かべて、カンタロウを見つめる。
カンタロウはその笑みに一瞬、目を離せなかった。
「で、いつまでくっついてるの?」
二人の間から、不機嫌そうなアゲハの声が聞こえる。
「きゃあ! ごっ、ごめんなさい! また私、ぼうっとしちゃって」
「あっ、ああ。俺の方こそ悪かった」
我に返ったカンタロウとマリアは、慌てて離れた。
「何照れてんの? マザコンのくせに」
アゲハがカンタロウの背中を、拳でグリグリしている。
「マザコンでも、親孝行でも、照れるものは照れる」
カンタロウはマリアとアゲハに、目をむけない。耳たぶが真っ赤になっているのが、二人にはわかった。
「あはっ、そうですね」
マリアはクスクスと、カンタロウの照れ隠しを笑っていた。
「そんなことは、どうでもいいさね。マぁリぃアぁ~」
マリアの後ろで、ツバメの地獄からの唸り声が聞こえた。
顔は土で汚れている。
鼻からは、鼻血の跡が見えた。
右目はもう赤くなく、黒に戻っている。
「はっ、はい!」
マリアはシャキッと、立ち尽くした。
「危ないじゃないか! いきなり前にでてくるなんて!」
「ごめんなさい!」
マリアは素早く、ツバメに頭を下げて、謝った。
「あと、あたしを置いて、いつまで仲間探しに行ってんだい! すごく寂しかったんだからぁ!」
ツバメが飛びかかってきた。
「きゃああああ! カンタロウ様!」
マリアは悲鳴を叫ぶと、カンタロウの後ろに隠れる。
「えっ?」
カンタロウはなぜ自分の後ろに隠れたのか、わからず呆然とした。
「とっ、見せかけて、とうっ!」
ツバメはマリアではなく、別の方向に飛びついた。
「えっ?」
その方向には、アゲハがいた。
「金髪獣美少女、見っけ!」
「うっ、うわっ!」
ツバメはアゲハに馬乗りになると、悪魔のように舌をだして狂喜した。
「うへへへへへへっ! 可愛いお嬢ちゃんだねぇ。痛くしないから、おじさんと来な!」
「どこへ!」
「ちょっと、ちょっと遊ぶだけだから! 終わったらすぐに、お家に帰すから! さあ、おじさんと行こう! ヘヴンへ!」
ツバメがアゲハの両肩をつかむ。押し倒されたアゲハは、子供のように必死で抵抗する。
「きゃああああ! カンタロウ君助けてっ! 可愛いくて、美少女で、可憐な私が、変な女に悪戯されるっ!」
アゲハはカンタロウに助けを求めた。
「お前、けっこう余裕だな?」
カンタロウは特に、すぐに助ける行動にはでなかった。
「うひひひひひ、ぐわっ?」
ツバメの頭に激痛が走った。
「いい加減に、しなさいっ!」
マリアが金属製の槍の柄で、ツバメの頭を殴ったのだ。
「いっ、痛い痛い痛いぃぃぃ!」
あまりの痛さに、ツバメは頭を押さえて地面を転がり回った。
「ふう。危なかった。可愛いって、やっぱり罪だよね」
「自分に惚れるな」
服装を整えるアゲハに、ついカンタロウはつっこんでしまった。
午前、まだ太陽が頂上に達していない時刻。
マリアはカンタロウとアゲハを連れて、ある場所へとむかっていた。
カンタロウの仕事を約束どおり手伝ったので、今度は自分に返してもらう番なのだ。
まだ二人には仕事の内容を話していないため、目的にむかう途中で言うことにしていた。
「それでは、仕事の話をします。歩きながらで、ごめんなさい」
時間はあまりないようだ。マリアの焦りがわかる。
「いいさ」
カンタロウは落ち着いた様子で、歩いている。
「それにしてもさ、どこ行くの?」
アゲハは後頭部に両手をやり、ふらふら歩いていた。
「仲間と待ち合わせしてるんです。今回行く場所はとても危険なので、私は仲間集めを、彼女は情報収集を担当していました」
マリアは前をむき話を進め、
「私の目的は一つ――妹を取り戻すことです」
妹という単語に、カンタロウが顔を上げる。前にマリアから、話を多少聞いていたからだ。
「カンタロウさんには少しだけ話ましたけど、私の妹を連れ去ったのは、宗教団体『ビーナスメイク』。その団体を率いるのは、大使徒クロワ。元はエリニス国で、官僚を勤めていた人物です」
「大使徒って偉いのか?」
カンタロウは、マリアに向かって、素朴な疑問を口にだした。使徒という単語を、知らないようだ。
「使徒、大使徒、総使徒、教皇とありまして、使徒の次に偉い人ですね。私も大使徒様の命令で動いています。個人的な感情もありますけど」
マリアが答える。
使徒が肩書きのことだと知ると、カンタロウは納得して口を閉じた。
マリアは息を吐き、
「妹の名前はシオン。シオンと別れたのは、今から二年前です。今はもう八歳になっているはずです」
「えっ、六歳であなたと別れたの?」
アゲハがちょっとだけ声を上げた。
六歳といえば、まだ分別もつかない子供だ。
マリアと別れるときに、抵抗の一つもしなかったのだろうか。
「ええ。別れたといっても、私達はまたすぐ会えると思っていましたから。それに、シオンからクロワの元に行くと、願いでたのです。それなのに一年前、ビーナスメイクとは音信不通になりました。まだそのときは、何が起こっているのか、私はわからず、ビルヘンというリブラ派の聖地で、修行していました。ビーナスメイクが森の中に閉じこもったという情報を聞いたのは、つい最近のことです」
「森の中に? 森にいたんじゃなく?」
「はい。クロワは研究所を持っており、そこに信者を集め、ある儀式を行っていました。シオンは巫女に、つまり、女神になる予定だったんです」
アゲハの質問に、マリアは即答していく。言葉に淀みはない。
「女神に? どういうことだ?」
カンタロウがまた素朴な疑問を感じ、マリアに質問してみた。
「人間の体を依り代として、神を乗り移らせるってことじゃないの?」
今度はアゲハが、カンタロウに答えた。
「そうです。しかし、クロワは邪悪な儀式を行い、木をはやし、研究所の周りに樹海をつくってしまったんです。その森がとてもやっかいで、今の私達では手がだせません。そこで、強い仲間が必要だったんです」
「どうして? 深い森なの?」
「いいえ。その森には、なぜか次々とゴーストエコーズが集まってきたんです。何人かハンターを送ったみたいですが、全員帰って来ませんでした。今ではハンターギルドでさえ、この仕事は断っています」
マリアの言い方に、アゲハが納得する。
カンタロウはそこまで聞いて、ようやくマリアがハンターギルドに行けず、傭兵を雇おうとしていた理由がわかり、
「受付拒否、レッド認定されたんだな」
あまりにも危険で、報酬金との等価交換が期待できない仕事は、ハンターギルドではレッド認定として扱われる。
仕事を受付しないということになるのだ。
この情報はすべてのハンターギルドに通達されるため、どこのギルドでも受付拒否される。
「ハンターギルドにレッド認定されたため、私個人で、強いハンターを探さなくてはいけなくなりました。そこで出会ったのが、カンタロウさんとアゲハさんです」
「なるほど。他に情報はない? クロワって奴の特徴とか?」
アゲハは乗り気じゃない態度を見せながら、マリアから詳しく情報を聞こうとしている。
カンタロウは大人しく、耳を傾けた。
「クロワの年齢は五十二歳。瞳は青く、髪は白髪です。目は大きく、ギョロリとしていて、淡々と話す方でした。体格は華奢です」
「よくその人に、妹を預けようと思ったよね?」
「エリニスで地位の高い方でしたから……すっかり信用していたんです。まさかこんなことになるとは、思ってもみなかった……」
アゲハにツッコまれ、マリアの声が沈んだ。そこに後悔が見て取れる。
「ふぅん……他に情報はないのね?」
「はい。少なくてごめんなさい」
マリアの話が終わり、アゲハは一応カンタロウの方を見上げてみる。
「わかった。妹を助ければいいんだな?」
「はい。その……仕事を受けていただけますか?」
カンタロウに申し訳なさそうに言うマリア。
ハンターギルドには頼れず、ここで断られれば一からやり直しだ。
だからこそ、マリアは最後まで仕事の話ができなかった。
マリアの体に、緊張感が走っている。
「あたりまえだ。すぐに行動しよう」
カンタロウの言葉に、マリアは胸をなで下ろした。
「はい――ありがとうございます。カンタロウ様」
マリアはこぼれるような笑顔を、カンタロウにむけていた。カンタロウも、それに笑顔で応えた。
「ねえ。どうして、カンタロウ君に、『様』をつけるの? たまに言ってるけど?」
「えっ? ……意味は、ありません」
アゲハの指摘に、マリアは頬を赤く染め、伏し目がちに話した。
「嘘だぁ。マリアって、嘘がすぐに顔にでるから、わかりやすいもん」
「ええっ? そうなんですか?」
アゲハに言われ、マリアは慌てて両手で、顔を押さえた。
「まあ、いいじゃないか。俺は別に気にしない」
「なんでよ。マリアに『様』呼ばわりされてるんだよ? お前はどこかの、王様か。帝王なのか」
「それぐらい、マリアが俺のことを大切に思ってくれてるんだろ? だから俺も、それに応えるだけだ」
カンタロウは誠実にそう答えた。
アゲハにとって、それはカンタロウらしい反応なので、特に面白さも感じなかった。
それよりも、マリアの方が面白い反応をするので、そっちに興味があった。
「あっ、あのっ! そんなつもりでは……でも、そうです……」
アゲハの予想どおり、マリアはモジモジしながら反応している。
アゲハはそれを見て、小悪魔っぽく、小さく笑った。何かよからぬことを、思いつき、
「いいじゃんマリア。カンタロウ君がああ言ってるんだし。じゃ、カンタロウ君。マリアにたっぷりマッサージしてやれ」
「今ここでか?」
カンタロウは意味不明といった、表情をした。
「いえいいです! そんな、とんでもないです!」
マリアはアゲハの冗談に気づかず、慌てふためく。
「じゃ、マリアが風呂か、川に入っているときにしようぜ。突撃マッサージだ」
悪ふざけが成功し、二人の反応に喜ぶアゲハ。
「それは駄目だろ?」
カンタロウが即つっこむ。
「まっ……お待ちしてます」
マリアは覚悟を決めたのか、頭から湯気が上がっている。
「いや、駄目だろ?」
カンタロウはマリアにも、つっこんだ。
*
休憩を挟みつつ、目的の地に進んでいった。
川を越え、橋を渡り、街道を外れて山道を歩いていく。
山道に人はおらず、途中、紅葉の広がる滝のそばで、マリアの作ったお弁当を食べた。
食事が終わり、また山道を上っていくと、森がなくなり、平地が開いた。すでに時刻は昼間近になっていた。
「あっ、いました。あの人です」
マリアが指さした方向を見ると、大人の腰ぐらいまである大きさの岩の上に、誰かが座っている。
茶色のフードをかぶり、表情は影でまったく見えない。
肩まで伸びた黒い髪が、風にそよぐ。
――女、か?
体格は華奢。胸が大きく、フード付きの上着からでも、形がわかる。それらの見た目の情報から、カンタロウは女であると判断した。
「ツバメさん! 新しい仲間を連れてきましたよ!」
マリアが大きく手を振った。
ツバメという名前の女性らしい。
ツバメはマリアとカンタロウ達に気づくと、ニィと白い歯をだして笑い、
「――へえ。いい男じゃないか」
カンタロウの耳に、そんな言葉が聞こえた刹那、女の上着が空を舞った。
すでに女の姿は岩の上になく、視界から消える。殺気が、目の前にまで近づいていた。
「なっ!」
カンタロウが殺気の正体に気づいたとき、すでにツバメは中型の剣を片手に持ち、突きだしていた。
――速い!
カンタロウはあまりの速さに、自分の意志ではなく、無意識に体を動かし、
「くっ!」
横に飛び、地面に手をつきながら、何とか剣をかわす。
「ひゅう。やるじゃないか。まっ、これぐらい、かわせないとね」
女の割には、異常に力強い声。
カンタロウは、ツバメの後ろを捕らえようとした。
「ほらよっと!」
ツバメはすぐにカンタロウの位置を把握し、剣を後ろへなぎ払う。剣は風を切り、手応えがない。
――かわされた?
ツバメは目下に気配を感じる。
カンタロウは地面にしゃがみ、大振りの剣を素早くかわしていた。もうその目に、動揺はない。
冷静さを取り戻していた。
「悪いが、少しだけ痛い目にあってもらう」
カンタロウは刀を抜かず、鞘をつけたまま、ツバメの横腹を打ち据える。
だが、固い金属音が響くだけで、ツバメに痛みの反応はない。
黒い瞳が不気味に笑った。
――二刀流?
今持っている剣と、同じ大きさの剣で、ツバメはカンタロウの刀を防いでいた。
「おいおい、本気できなよ。じゃないと、死んじゃうよ!」
ツバメの右目が一瞬で赤く染まった。右目下の頬に、神文字があらわれる。
カンタロウが赤眼化だと気づいたときには、すでに熊のような力で、数メートルまで弾き飛ばされていた。
ツバメはなおも追従し、
「ははっ!」
「くそっ!」
カンタロウは赤眼化すると、地面に踏ん張った。土がえぐれ、草花が散る。
赤眼化できない人間であれば、足の骨が砕けていた。
「へえ、赤眼化できるのかい? そうでなくっちゃぁね!」
ツバメは片手剣のまま、カンタロウを追撃する。
カンタロウは刀を抜くと、それに応戦した。
剣と刀の火花が散り、音が大きく唸った。
「やめてください! 二人とも!」
マリアは必死で、二人の戦いをやめさせようと叫んだ。まさかこうなるとは、思ってもいなかったからだ。
せっかく仲間となる者同士が、真剣で争う姿は見るのも耐え難かった。
「無駄だよ。あの女の人。戦いを楽しんでる――しかも、相当強い」
アゲハは二人の激しい戦闘に、カンタロウを助けることもできず、見守っていた。
ツバメは狂戦士のように、笑みを浮かべ、戦いに狂い踊っている。
「はははっ! 楽しいねぇ! 久しぶりだよ! こんなに血肉踊るのはっ!」
ツバメの剣を受け止めながら、カンタロウはどんどん焦ってきていた。
――手加減できない! コイツ! 強すぎる!
カンタロウの額から汗が流れ、呼吸が荒くなる。
容赦ない攻撃に、体力も激減してきた。
ツバメの剣をかわしきれず、小さな傷が増えていく。
――カンタロウ君の呼吸が乱れてる。それなのに、あのツバメって女は、まったく呼吸が荒れてない。これは、すごくやっかい。
アゲハはツバメの異様な強さに、自然と体温が高くなり、頬から汗が流れていく。
自分と戦ったときの模擬戦闘をしてみるが、互角かそれ以上。
だから「やっかい」だと、アゲハは判断した。
「さあっ! 来なよ! 私をもっと興奮させな!」
ツバメが鬼のように、大きく叫んだ。
カンタロウはツバメとの距離をとると、一呼吸し、
「……仕方ない」
カンタロウは腰を下ろし、柄に右手を乗せた。
呼吸を整え、荒い息が静まっていく。
目は水平に、ツバメを見据えている。
――居合いの構え?
ツバメはそれがどういう構えか、すぐに見切った。
歪んだ口元が、スッと引き締まる。
視線はカンタロウから、離さなかった。
「カンタロウさん、何を?」
「あれは、本気だね」
「えっ? 本気って……」
「どちらかが――死ぬかもね」
アゲハに言われ、マリアの顔から血の気が引き、青くなっていく。
アゲハは二人の戦いに目が離せず、マリアの不安に気づけないでいた。
「くくくっ。いいねいいね。ぞくぞくしてきたぁ! やっぱり殺し合いは、こうじゃなくっちゃぁ!」
ツバメが再び狂戦士化していった。
声が高揚し、興奮が止められず、しゃべるたびに唾が飛ぶのも気になっていない。
白い歯を獣のように剥きだし、獲物を殺すことにすさまじい快感を覚えている。
「死ぬ……カンタロウ様が……やめて……」
マリアの不安は、極限に達していた。
「乗ってやるよ、イケメン! 顔のいい男ってのは、不甲斐ない奴が多いけどさ。あんたは違うようだね! その磨き上げた技を、あたしに使ってみなっ!」
「…………」
カンタロウはツバメの挑発に答えない。一瞬の勝負の決着に、すべての力と集中をそそいでいる。
「ははあっ!」
ツバメが土を蹴り飛ばし、カンタロウにむかって走った。
行動に躊躇や遠慮はない。
全力でカンタロウを倒しにかかっている。
「やめて、やめてください……やめてっ!」
マリアの限界が超えた。
衝突する二人の前に走ると、ツバメからカンタロウを守るように、両手を広げる。
「マリアっ!」
アゲハはマリアが飛びだしたことに気づき、声を上げた。
「なっ!」
――マリア!
ツバメ、カンタロウも、マリアの無謀な行動に気づいた。
カンタロウは構えをやめ、素早くマリアの前に立つと、肩を抱いた。
背中から、ツバメがせまってくるのがわかる。
身を挺して、マリアを守っているのだ。
「くっ、そぉ!」
ツバメは興奮が急降下し、我に返ると、片足を蹴って、横に自分をズラした。
「ぐわぁ!」
ツバメは勢いあまって、顔から地面に落ちていった。
カンタロウは赤眼化を解除すると、マリアから少し離れた。
ツバメが自ら、戦闘を放棄したことを悟ったからだ。
「……無茶するな、お前は」
カンタロウに言われ、マリアは悲しそうに、顔を伏せ、
「……ごめんなさい。どうしても、止めたくて」
「まっ、無事でよかった」
カンタロウはマリアの頭をなでると、安心したように笑った。
「……はい」
マリアは嬉しさに揺れるような、微笑みを浮かべて、カンタロウを見つめる。
カンタロウはその笑みに一瞬、目を離せなかった。
「で、いつまでくっついてるの?」
二人の間から、不機嫌そうなアゲハの声が聞こえる。
「きゃあ! ごっ、ごめんなさい! また私、ぼうっとしちゃって」
「あっ、ああ。俺の方こそ悪かった」
我に返ったカンタロウとマリアは、慌てて離れた。
「何照れてんの? マザコンのくせに」
アゲハがカンタロウの背中を、拳でグリグリしている。
「マザコンでも、親孝行でも、照れるものは照れる」
カンタロウはマリアとアゲハに、目をむけない。耳たぶが真っ赤になっているのが、二人にはわかった。
「あはっ、そうですね」
マリアはクスクスと、カンタロウの照れ隠しを笑っていた。
「そんなことは、どうでもいいさね。マぁリぃアぁ~」
マリアの後ろで、ツバメの地獄からの唸り声が聞こえた。
顔は土で汚れている。
鼻からは、鼻血の跡が見えた。
右目はもう赤くなく、黒に戻っている。
「はっ、はい!」
マリアはシャキッと、立ち尽くした。
「危ないじゃないか! いきなり前にでてくるなんて!」
「ごめんなさい!」
マリアは素早く、ツバメに頭を下げて、謝った。
「あと、あたしを置いて、いつまで仲間探しに行ってんだい! すごく寂しかったんだからぁ!」
ツバメが飛びかかってきた。
「きゃああああ! カンタロウ様!」
マリアは悲鳴を叫ぶと、カンタロウの後ろに隠れる。
「えっ?」
カンタロウはなぜ自分の後ろに隠れたのか、わからず呆然とした。
「とっ、見せかけて、とうっ!」
ツバメはマリアではなく、別の方向に飛びついた。
「えっ?」
その方向には、アゲハがいた。
「金髪獣美少女、見っけ!」
「うっ、うわっ!」
ツバメはアゲハに馬乗りになると、悪魔のように舌をだして狂喜した。
「うへへへへへへっ! 可愛いお嬢ちゃんだねぇ。痛くしないから、おじさんと来な!」
「どこへ!」
「ちょっと、ちょっと遊ぶだけだから! 終わったらすぐに、お家に帰すから! さあ、おじさんと行こう! ヘヴンへ!」
ツバメがアゲハの両肩をつかむ。押し倒されたアゲハは、子供のように必死で抵抗する。
「きゃああああ! カンタロウ君助けてっ! 可愛いくて、美少女で、可憐な私が、変な女に悪戯されるっ!」
アゲハはカンタロウに助けを求めた。
「お前、けっこう余裕だな?」
カンタロウは特に、すぐに助ける行動にはでなかった。
「うひひひひひ、ぐわっ?」
ツバメの頭に激痛が走った。
「いい加減に、しなさいっ!」
マリアが金属製の槍の柄で、ツバメの頭を殴ったのだ。
「いっ、痛い痛い痛いぃぃぃ!」
あまりの痛さに、ツバメは頭を押さえて地面を転がり回った。
「ふう。危なかった。可愛いって、やっぱり罪だよね」
「自分に惚れるな」
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