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第2章 雲隠れの里
アゲハ、逃亡
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*
釣瓶の城下町では、激戦が繰り広げられていた。
カンタロウ達四人に、神獣の大群が襲いかかってくる。
地上からは鋭い牙を持った、ドッグ型が。
空からは翼を持ち、手に武器を持ったイカロス型が。
屋根や空き家の中からは、ソード型、アーマー型が飛びかかってきた。
神獣に戦略はなく、皆無節操に攻撃をしかけてくる。
知恵を使う戦闘よりも、数で押し切ってきているのだ。
神獣の数は、百を超えていた。
「はっ!」
カンタロウは、もう数十匹の神獣を切っていた。
切られた神獣は、白い泥となり飛び散る。
アゲハ、マリア、ランマルも、覚えていないぐらいの数の神獣を、切り倒していた。
「くそっ! きりがない!」
屋根から降ってきたソードを切りつけ、ランマルは叫んだ。
「数が多すぎます!」
マリアはイカロスを突き刺し、ニ体のドッグをなぎ払う。しかし、限界が近い。
「このままじゃ、全滅だ! 赤眼化の体力がもたないぞ!」
ランマルの言うとおり、四人とも赤眼化を発動させていた。
体力の消耗を抑えるため、赤眼化の解除と発動を繰り返していると、逆に身体に負担がかかる。
持続させたほうが、意外に消耗は少なくてすむ。
「……そうだね。神獣を切っても意味がない。本体を倒さないと」
アゲハは水神の魔法で、周りの神獣を蹴散らした。背に魔法の翼をはやす。
水色の魔力が、アゲハの背に集まってくる。
「アゲハ?」
「――じゃね。カンタロウ君」
アゲハはニコッと笑い、カンタロウに別れを言うと、空へと舞い上がった。
カンタロウは呆然と、アゲハが去っていった空を見上げる。
「カンタロウさん!」
マリアがカンタロウに襲いかかった、ソードを切りつける。
カンタロウは敵の気配に気づかないほど、アゲハが何も言わず、去ったことに意識を取られていた。
「飛翔魔法か? おい、カンタロウ! アゲハちゃんはどこに行くんだ!」
「…………」
ランマルに、何も答えられないカンタロウ。
「カンタロウさん!」
マリアがもう一度、カンタロウの名前を呼んだ。
カンタロウは、イカロスで埋め尽くされていく空を、眺めることしかできなかった。
*
空では、アゲハが自由に飛び回っていた。
城下町の一点に、異様に白いものが集まっている。
そこでは今、カンタロウ達が神獣と戦っているはずだ。
アゲハはそれを、ニヤニヤしながら見下ろしていた。
――ごめんね。カンタロウ君。君との旅、楽しかったよ。
あれだけの数の神獣だ。もう助かることはないだろう。
体力が消耗し、最後にはラッハ達のように、切り刻まれて終わりだ。
まだアゲハに気づき、むかってくる神獣はいない。
「敵は私に気づいていないか。今のうちに本体を見つけないと」
気持ちを切り替え、気配がする方角に翼をはばたかせる。
「気配がする。あっちか」
ゴーストエコーズの気配は近い。
しばらく進むと、異様な城が見えてきた。
「何? あの城?」
足が六本ある巨大な建築物の上に、立派な城が見える。
建築物からは水が放出され、それは城下町に続いていた。
今にも動きだしそうな物体だが、どうやら生き物ではないため、微動だにしない。
水は滝となり、町中を流れていた。
城の屋根は瓦葺き、青銅の鯱が頂上にある。突上戸や廻縁も見える。
アゲハにとっては、あまり見たことのない形の城だ。
「巨大な虫の背中に乗っているみたい」
アゲハが息を飲んでいると、城から大砲がでてきた。
神獣が大砲を用意しているのだ。
神獣は仲間を大砲の中に押しつけると、導火線に火をつけた。
「気づかれたか!」
大砲が爆発し、弾となった神獣が、すさまじい速さでむかってくる。
アゲハは神獣の攻撃をうまくかわしたり、剣でなぎ払う。
「水神の名において命じる! 水の刃となり敵を切り裂け!」
アゲハは一桁詠唱を唱えると、魔法を発動させた。青い水が、鋭い刃となり、大砲を破壊する。
「原始的な攻撃だね!」
調子に乗ったアゲハは、次々と魔法で大砲を破壊していった。
城は耐魔法製の壁ではないためか、すぐに壊れていく。
防御魔法も張っていないので、神の力を防げていない。
「ははっ! もろい城だね! そして本体は!」
隙を突き、アゲハは城の最上階に水神の魔法をくらわせた。
壁が簡単に破壊され、土煙が拡散する。
「何っ!」
ツネミツは両腕で、煙と壁の残骸を防御した。
アゲハは壁に手を置くと、ゆっくりと城の中に侵入する。
「ふふん。みっけ」
アゲハから残忍な笑みがこぼれる。
ツネミツは神獣でありながら、女に戦慄を覚えた。
「……貴様」
「さてと、どんな拷問、しよっかな」
アゲハはポキポキと、手の関節を鳴らした。
釣瓶の城下町では、激戦が繰り広げられていた。
カンタロウ達四人に、神獣の大群が襲いかかってくる。
地上からは鋭い牙を持った、ドッグ型が。
空からは翼を持ち、手に武器を持ったイカロス型が。
屋根や空き家の中からは、ソード型、アーマー型が飛びかかってきた。
神獣に戦略はなく、皆無節操に攻撃をしかけてくる。
知恵を使う戦闘よりも、数で押し切ってきているのだ。
神獣の数は、百を超えていた。
「はっ!」
カンタロウは、もう数十匹の神獣を切っていた。
切られた神獣は、白い泥となり飛び散る。
アゲハ、マリア、ランマルも、覚えていないぐらいの数の神獣を、切り倒していた。
「くそっ! きりがない!」
屋根から降ってきたソードを切りつけ、ランマルは叫んだ。
「数が多すぎます!」
マリアはイカロスを突き刺し、ニ体のドッグをなぎ払う。しかし、限界が近い。
「このままじゃ、全滅だ! 赤眼化の体力がもたないぞ!」
ランマルの言うとおり、四人とも赤眼化を発動させていた。
体力の消耗を抑えるため、赤眼化の解除と発動を繰り返していると、逆に身体に負担がかかる。
持続させたほうが、意外に消耗は少なくてすむ。
「……そうだね。神獣を切っても意味がない。本体を倒さないと」
アゲハは水神の魔法で、周りの神獣を蹴散らした。背に魔法の翼をはやす。
水色の魔力が、アゲハの背に集まってくる。
「アゲハ?」
「――じゃね。カンタロウ君」
アゲハはニコッと笑い、カンタロウに別れを言うと、空へと舞い上がった。
カンタロウは呆然と、アゲハが去っていった空を見上げる。
「カンタロウさん!」
マリアがカンタロウに襲いかかった、ソードを切りつける。
カンタロウは敵の気配に気づかないほど、アゲハが何も言わず、去ったことに意識を取られていた。
「飛翔魔法か? おい、カンタロウ! アゲハちゃんはどこに行くんだ!」
「…………」
ランマルに、何も答えられないカンタロウ。
「カンタロウさん!」
マリアがもう一度、カンタロウの名前を呼んだ。
カンタロウは、イカロスで埋め尽くされていく空を、眺めることしかできなかった。
*
空では、アゲハが自由に飛び回っていた。
城下町の一点に、異様に白いものが集まっている。
そこでは今、カンタロウ達が神獣と戦っているはずだ。
アゲハはそれを、ニヤニヤしながら見下ろしていた。
――ごめんね。カンタロウ君。君との旅、楽しかったよ。
あれだけの数の神獣だ。もう助かることはないだろう。
体力が消耗し、最後にはラッハ達のように、切り刻まれて終わりだ。
まだアゲハに気づき、むかってくる神獣はいない。
「敵は私に気づいていないか。今のうちに本体を見つけないと」
気持ちを切り替え、気配がする方角に翼をはばたかせる。
「気配がする。あっちか」
ゴーストエコーズの気配は近い。
しばらく進むと、異様な城が見えてきた。
「何? あの城?」
足が六本ある巨大な建築物の上に、立派な城が見える。
建築物からは水が放出され、それは城下町に続いていた。
今にも動きだしそうな物体だが、どうやら生き物ではないため、微動だにしない。
水は滝となり、町中を流れていた。
城の屋根は瓦葺き、青銅の鯱が頂上にある。突上戸や廻縁も見える。
アゲハにとっては、あまり見たことのない形の城だ。
「巨大な虫の背中に乗っているみたい」
アゲハが息を飲んでいると、城から大砲がでてきた。
神獣が大砲を用意しているのだ。
神獣は仲間を大砲の中に押しつけると、導火線に火をつけた。
「気づかれたか!」
大砲が爆発し、弾となった神獣が、すさまじい速さでむかってくる。
アゲハは神獣の攻撃をうまくかわしたり、剣でなぎ払う。
「水神の名において命じる! 水の刃となり敵を切り裂け!」
アゲハは一桁詠唱を唱えると、魔法を発動させた。青い水が、鋭い刃となり、大砲を破壊する。
「原始的な攻撃だね!」
調子に乗ったアゲハは、次々と魔法で大砲を破壊していった。
城は耐魔法製の壁ではないためか、すぐに壊れていく。
防御魔法も張っていないので、神の力を防げていない。
「ははっ! もろい城だね! そして本体は!」
隙を突き、アゲハは城の最上階に水神の魔法をくらわせた。
壁が簡単に破壊され、土煙が拡散する。
「何っ!」
ツネミツは両腕で、煙と壁の残骸を防御した。
アゲハは壁に手を置くと、ゆっくりと城の中に侵入する。
「ふふん。みっけ」
アゲハから残忍な笑みがこぼれる。
ツネミツは神獣でありながら、女に戦慄を覚えた。
「……貴様」
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