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第2章 雲隠れの里
アゲハのたくらみ
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*
しばらくして、カンタロウとアゲハは川の水くみが終わり、桶を持って、家に戻っていた。
「カンタロウ君! はやくっ! はやくっ!」
アゲハは何も持たず、カンタロウを先へ先へと促している。
緑の草を吹き渡る風が、アゲハの金髪をそよがせる。
小さな兎が飛び跳ねるように、元気よく進む。
遊び姿を見ていたカンタロウは、嫌みの一つでも言おうかと思った。
「一つぐらい持ったらどうだ? タダ飯食べて行くつもりか?」
二つの桶を持ったカンタロウは、不満そうにアゲハに言った。
「私はいいの。か弱い女の子だもん」
「自分で言うのか? それを?」
ぶつぶつアゲハに、文句を言うカンタロウ。
アゲハはさりげなく、カンタロウの後ろに回ると、その背中を押し始めた。
両手に固い背筋が当たる。熱い汗で湿った感触が、手から伝わってくる。
アゲハは背中を押しつつ、
「ほらほら、がんばれっ、がんばれっ」
「おっ、おい。押すなって……あっ」
カンタロウの足が止まった。
「ん? どうしたの? あっ」
アゲハの前に、スズが腕を組み、立っていた。
「アゲハさんでしたね? すみませんが、二人きりで話があります」
「スズ姉……」
カンタロウは、スズがアゲハにまた戦いを挑むつもりなのかと思い、不安気な表情になった。
カンタロウにスズは、落ち着き、安らいだ顔を見せ、
「カンタロウ。早くお水を家へ。安心してください。ちょっと、彼女に聞きたいことがあるだけです」
カンタロウが後ろにいる、アゲハに視線をむける。
アゲハはうなずいた。
「……わかったよ」
納得したのか、カンタロウはその場から去っていく。桶のきしむ音が、遠くなり、そして消えた。
カンタロウが遠くへ行ったことを確認し、アゲハは挑発的に、片手を腰にやり、
「でっ、何?」
「私の魔剣をかわした魔法。あれは、荊棘魔法ですか?」
「うん。そうだよ」
「やはり。二系統神魔法ですか。それはたぶん、幻神の力」
「……さすがだね。当たり。それで、あなたの攻撃をかわしたの」
荊棘魔法、またの名を二系統神魔法ともいう。
普通、赤眼化し、神の力を使う場合は、一系統神魔法しか使えない。
一人の赤眼化所持者に、一つの神の力しか発現できない。
一系統神魔法は、土神、火神、風神、重神、雷神など、自然エネルギーが主に使用される。
二系統神魔法とは、アゲハが発現した幻神など、自然エネルギーとは違った別のエネルギーが使用される。
使用できる者は少なく、世界にたった数十人しか確認されていない。
難関な魔法なため、荊棘魔法と呼ばれるようになった。
――この若さで、二つもの神の力を。この子、ただ者ではない。
スズは戦ってみて、アゲハが普通のハンターではないことに気づいた。
「私とカンタロウ君の仲を認めてくれるの?」
「いえ、それは別問題ですが……アゲハさん」
「はい?」
「カンタロウを、守ってあげてください。――よろしくお願いします」
スズはアゲハにむかって、深々と頭を下げた。
「えっ、あっ、ちょ、いやいや。それはお互い様っていうか」
スズの予想外の行動に、アゲハは慌てて言い方を直した。
「あの子は母親のためなら、必ず無理をします。ヒナゲシ様の両目をなくしてしまった原因が、自分であるという、負い目もある。だから、無理をさせないでください。もし危険なことをしようとするのなら、あの子を止めてください。お願いします」
「でもそれじゃ、今でも十分危険なことを……」
「やはり、報奨金額の高い、ハンターの仕事をしているのですね?」
スズの問いに、アゲハは意味がわからず、きょとんとする。
――えっ? もしかして、スズとヒナゲシ、カンタロウ君が何をしているのか知らないの?
カンタロウは、スズとヒナゲシに心配させまいと、ハンターの内容を詳しく教えていなかった。
アゲハはそれに、今気がついた。
カンタロウが家に帰り、ヒナゲシ達に旅の話をあまりしないことも思い出した。
「あえてカンタロウが、何をしているか聞きません。あなたとカンタロウの関係もあるでしょう。それに私とヒナゲシ様が反対した所で、あの子はやめないでしょうしね。だから、私の方から――あの子をお願いします」
もう一度頭を下げるスズ。
「……うん。わかった。やってみるよ」
アゲハはとりあえず、そう答えることにした。
「ありがとう、アゲハさん」
スズは自然と、口元を緩ませた。それはまぎれもなく、家族を思う一人の女性だった。
「あっ、そうだ」
「はい?」
「一つ聞きたいんだけど。カンタロウ君も荊棘魔法使えるの?」
カンタロウは、神脈結界を切ることができる。
カインの起こした事件を、それで切り抜けることができた。
町の人を、それで救うことができたのだ。
アゲハはその能力が気になり、スズ達が知っているかどうか確認してみることにした。
「いえ? 見たことありません。あの子の神文字の能力は、風神の力だけのはずですが?」
スズはカンタロウの一系統神魔法を知っているものだと解釈し、アゲハに能力を言ってしまった。
カンタロウのもう一つの魔法のことは知らないようだ。
「そっか。うん、わかった」
「どうかしましたか?」
「ううん。ちょっと気になったから。じゃ、帰ろう」
アゲハはスズに背を見せると、さっさと家に帰って行く。
「ふふっ、そうですね」
スズは何も知らず、アゲハの後ろをついて行く。
――くくっ、都合のいいこと聞いちゃった。
アゲハは歪んだ表情を抑えることで、精一杯だった。
カンタロウの家では、ランマルがヒナゲシから食事をごちそうになっていた。
白い飯に、野菜の漬け物など、質素なものだ。
ランマルは、すぐにたいらげてしまった。
「いやぁ。ごちそうさまでした。ありがとうございます。ヒナゲシさん」
ランマルは丁寧に箸を置き、手を合わせた。
「どういたしまして」
「さて、それでは、私はグランデルに帰るとします」
グランデルとは、剣帝国首都のことだ。
剣帝国王ベルドランが支配し、立派なお城もある。
剣や盾、鎧など、武器防具を作る職人が多いことで有名だ。
「そうですか。それではカンタロウ、用意は完了しましたか?」
スズがカンタロウを呼ぶ。
奥から旅の支度が整った、カンタロウとアゲハがでてきて、
「ああっ、旅の準備はできた。お金も持ったよ」
「私も完了」
スズは納得いった顔つきをし、
「そうですか。むこうに行ったら、食事代と宿泊代をおごってもらうのですよ」
カンタロウとアゲハはうなずき、
「わかった」
「了解!」
三人で話がどんどん進んでいったが、ランマルは訳が分からず戸惑った。
「うん? どういうことだ?」
「どうもこうもありませんよ。さっきの食事代です。この子達をグランデルに連れていき、食事と寝床のお代をだしなさい」
「……はっ?」
スズの断定的な言い方に、ランマルは目をパチクリさせた。
頭の神経が繋がり、すべてを理解した。
二人がグランデルに着く頃には、もう夕方だ。
ランマルにお金をだしてもらい、一泊して帰ってきなさいということなのだ。
「ちょっと待て! これは、なんていうか、その、気持ちだろ?」
「いいえ。あなた、もしかして、この世にタダなんてものが、存在すると思っているんですか? 世の中――お金こそがすべてです」
スズはランマルに真顔で言い切った。
「いやいやいやいや。ヒナゲシさんっ!」
「ごめんなさい。スズがどうしてもって言うから。カンタロウさんとアゲハちゃんに、いっぱいおいしいもの、食べさせてあげてね」
ヒナゲシは息子のためなら、やむおえないといった態度だ。
ランマルの味方にはなってくれない。
「ええぇ! おっ、お前! 俺が安月給なの知ってるだろ?」
「大丈夫です。白陽騎士団現団長。独身貴族。お金に不自由はないはず」
まるでランマルのことを知り尽くしているかのように、スズはきっぱりと断定する。
「すまない、ランマル」
「ゴッチでぇす!」
カンタロウは頭を下げ、アゲハは片手を額に当て敬礼した。
二人とも遠慮なしに、おごられる気である。
――やっ、やられた。どうりで、いつもより優しいと思った。
ランマルは、いつもぶっきらぼうなスズが、今日に限ってやけにニコニコしていたことを思い返した。
「くっ、ヒナゲシさんの頼みなら、まあ仕方がない……だがスズ! お前には借りを返してもらう!」
ランマルは覚悟を決め、スズとむき合った。
「私に? 何を?」
「俺と結婚しろっ!」
ランマルはビシッと、親指を自分にむけた。冗談ではなく、本気のようだ。
「嫌です」
スズは即、拒否した。
「なら、俺の彼女になれっ!」
「有り得ません」
「それなら、俺と付き合えっ!」
「ないですね」
「こうなったら最後の手段だ! 俺のモノになれっ!」
「殺しますよ?」
「そっ、そっ、それなら……一日デートしてください……」
「……わかりました。それぐらいなら」
その一言で、ランマルのテンションが上がり切った。有頂天になり、ガッツポーズしている。
「よしっ! 絶対、女らしい格好してこいよ! 男みたいな格好するなよ!」
スズの格好は、常に男物の和装。
腰には刀を絶対に身につけている。
ヒナゲシのように、女物の着物をあまり着ていない。
「えっ、どうしてですか?」
「どうしてもだっ!」
「わっ、わかりましたよ……」
ランマルの張りのある声に、さすがのスズも少しひるんだ。
「よっしゃ! 俺についてこい! お前達!」
ランマルは颯爽と、家から外に飛びだす。
「わかった。ランマル」
「ランマル兄ちゃん、かっこいい!」
カンタロウとアゲハは、それに乗った。
「二人とも、調子に乗らないでください」
スズは恥ずかしさからか、頬が真っ赤になる。
「あらあら。大家族ができるわね」
ヒナゲシは楽しそうに、皆の会話を聞いていた。
しばらくして、カンタロウとアゲハは川の水くみが終わり、桶を持って、家に戻っていた。
「カンタロウ君! はやくっ! はやくっ!」
アゲハは何も持たず、カンタロウを先へ先へと促している。
緑の草を吹き渡る風が、アゲハの金髪をそよがせる。
小さな兎が飛び跳ねるように、元気よく進む。
遊び姿を見ていたカンタロウは、嫌みの一つでも言おうかと思った。
「一つぐらい持ったらどうだ? タダ飯食べて行くつもりか?」
二つの桶を持ったカンタロウは、不満そうにアゲハに言った。
「私はいいの。か弱い女の子だもん」
「自分で言うのか? それを?」
ぶつぶつアゲハに、文句を言うカンタロウ。
アゲハはさりげなく、カンタロウの後ろに回ると、その背中を押し始めた。
両手に固い背筋が当たる。熱い汗で湿った感触が、手から伝わってくる。
アゲハは背中を押しつつ、
「ほらほら、がんばれっ、がんばれっ」
「おっ、おい。押すなって……あっ」
カンタロウの足が止まった。
「ん? どうしたの? あっ」
アゲハの前に、スズが腕を組み、立っていた。
「アゲハさんでしたね? すみませんが、二人きりで話があります」
「スズ姉……」
カンタロウは、スズがアゲハにまた戦いを挑むつもりなのかと思い、不安気な表情になった。
カンタロウにスズは、落ち着き、安らいだ顔を見せ、
「カンタロウ。早くお水を家へ。安心してください。ちょっと、彼女に聞きたいことがあるだけです」
カンタロウが後ろにいる、アゲハに視線をむける。
アゲハはうなずいた。
「……わかったよ」
納得したのか、カンタロウはその場から去っていく。桶のきしむ音が、遠くなり、そして消えた。
カンタロウが遠くへ行ったことを確認し、アゲハは挑発的に、片手を腰にやり、
「でっ、何?」
「私の魔剣をかわした魔法。あれは、荊棘魔法ですか?」
「うん。そうだよ」
「やはり。二系統神魔法ですか。それはたぶん、幻神の力」
「……さすがだね。当たり。それで、あなたの攻撃をかわしたの」
荊棘魔法、またの名を二系統神魔法ともいう。
普通、赤眼化し、神の力を使う場合は、一系統神魔法しか使えない。
一人の赤眼化所持者に、一つの神の力しか発現できない。
一系統神魔法は、土神、火神、風神、重神、雷神など、自然エネルギーが主に使用される。
二系統神魔法とは、アゲハが発現した幻神など、自然エネルギーとは違った別のエネルギーが使用される。
使用できる者は少なく、世界にたった数十人しか確認されていない。
難関な魔法なため、荊棘魔法と呼ばれるようになった。
――この若さで、二つもの神の力を。この子、ただ者ではない。
スズは戦ってみて、アゲハが普通のハンターではないことに気づいた。
「私とカンタロウ君の仲を認めてくれるの?」
「いえ、それは別問題ですが……アゲハさん」
「はい?」
「カンタロウを、守ってあげてください。――よろしくお願いします」
スズはアゲハにむかって、深々と頭を下げた。
「えっ、あっ、ちょ、いやいや。それはお互い様っていうか」
スズの予想外の行動に、アゲハは慌てて言い方を直した。
「あの子は母親のためなら、必ず無理をします。ヒナゲシ様の両目をなくしてしまった原因が、自分であるという、負い目もある。だから、無理をさせないでください。もし危険なことをしようとするのなら、あの子を止めてください。お願いします」
「でもそれじゃ、今でも十分危険なことを……」
「やはり、報奨金額の高い、ハンターの仕事をしているのですね?」
スズの問いに、アゲハは意味がわからず、きょとんとする。
――えっ? もしかして、スズとヒナゲシ、カンタロウ君が何をしているのか知らないの?
カンタロウは、スズとヒナゲシに心配させまいと、ハンターの内容を詳しく教えていなかった。
アゲハはそれに、今気がついた。
カンタロウが家に帰り、ヒナゲシ達に旅の話をあまりしないことも思い出した。
「あえてカンタロウが、何をしているか聞きません。あなたとカンタロウの関係もあるでしょう。それに私とヒナゲシ様が反対した所で、あの子はやめないでしょうしね。だから、私の方から――あの子をお願いします」
もう一度頭を下げるスズ。
「……うん。わかった。やってみるよ」
アゲハはとりあえず、そう答えることにした。
「ありがとう、アゲハさん」
スズは自然と、口元を緩ませた。それはまぎれもなく、家族を思う一人の女性だった。
「あっ、そうだ」
「はい?」
「一つ聞きたいんだけど。カンタロウ君も荊棘魔法使えるの?」
カンタロウは、神脈結界を切ることができる。
カインの起こした事件を、それで切り抜けることができた。
町の人を、それで救うことができたのだ。
アゲハはその能力が気になり、スズ達が知っているかどうか確認してみることにした。
「いえ? 見たことありません。あの子の神文字の能力は、風神の力だけのはずですが?」
スズはカンタロウの一系統神魔法を知っているものだと解釈し、アゲハに能力を言ってしまった。
カンタロウのもう一つの魔法のことは知らないようだ。
「そっか。うん、わかった」
「どうかしましたか?」
「ううん。ちょっと気になったから。じゃ、帰ろう」
アゲハはスズに背を見せると、さっさと家に帰って行く。
「ふふっ、そうですね」
スズは何も知らず、アゲハの後ろをついて行く。
――くくっ、都合のいいこと聞いちゃった。
アゲハは歪んだ表情を抑えることで、精一杯だった。
カンタロウの家では、ランマルがヒナゲシから食事をごちそうになっていた。
白い飯に、野菜の漬け物など、質素なものだ。
ランマルは、すぐにたいらげてしまった。
「いやぁ。ごちそうさまでした。ありがとうございます。ヒナゲシさん」
ランマルは丁寧に箸を置き、手を合わせた。
「どういたしまして」
「さて、それでは、私はグランデルに帰るとします」
グランデルとは、剣帝国首都のことだ。
剣帝国王ベルドランが支配し、立派なお城もある。
剣や盾、鎧など、武器防具を作る職人が多いことで有名だ。
「そうですか。それではカンタロウ、用意は完了しましたか?」
スズがカンタロウを呼ぶ。
奥から旅の支度が整った、カンタロウとアゲハがでてきて、
「ああっ、旅の準備はできた。お金も持ったよ」
「私も完了」
スズは納得いった顔つきをし、
「そうですか。むこうに行ったら、食事代と宿泊代をおごってもらうのですよ」
カンタロウとアゲハはうなずき、
「わかった」
「了解!」
三人で話がどんどん進んでいったが、ランマルは訳が分からず戸惑った。
「うん? どういうことだ?」
「どうもこうもありませんよ。さっきの食事代です。この子達をグランデルに連れていき、食事と寝床のお代をだしなさい」
「……はっ?」
スズの断定的な言い方に、ランマルは目をパチクリさせた。
頭の神経が繋がり、すべてを理解した。
二人がグランデルに着く頃には、もう夕方だ。
ランマルにお金をだしてもらい、一泊して帰ってきなさいということなのだ。
「ちょっと待て! これは、なんていうか、その、気持ちだろ?」
「いいえ。あなた、もしかして、この世にタダなんてものが、存在すると思っているんですか? 世の中――お金こそがすべてです」
スズはランマルに真顔で言い切った。
「いやいやいやいや。ヒナゲシさんっ!」
「ごめんなさい。スズがどうしてもって言うから。カンタロウさんとアゲハちゃんに、いっぱいおいしいもの、食べさせてあげてね」
ヒナゲシは息子のためなら、やむおえないといった態度だ。
ランマルの味方にはなってくれない。
「ええぇ! おっ、お前! 俺が安月給なの知ってるだろ?」
「大丈夫です。白陽騎士団現団長。独身貴族。お金に不自由はないはず」
まるでランマルのことを知り尽くしているかのように、スズはきっぱりと断定する。
「すまない、ランマル」
「ゴッチでぇす!」
カンタロウは頭を下げ、アゲハは片手を額に当て敬礼した。
二人とも遠慮なしに、おごられる気である。
――やっ、やられた。どうりで、いつもより優しいと思った。
ランマルは、いつもぶっきらぼうなスズが、今日に限ってやけにニコニコしていたことを思い返した。
「くっ、ヒナゲシさんの頼みなら、まあ仕方がない……だがスズ! お前には借りを返してもらう!」
ランマルは覚悟を決め、スズとむき合った。
「私に? 何を?」
「俺と結婚しろっ!」
ランマルはビシッと、親指を自分にむけた。冗談ではなく、本気のようだ。
「嫌です」
スズは即、拒否した。
「なら、俺の彼女になれっ!」
「有り得ません」
「それなら、俺と付き合えっ!」
「ないですね」
「こうなったら最後の手段だ! 俺のモノになれっ!」
「殺しますよ?」
「そっ、そっ、それなら……一日デートしてください……」
「……わかりました。それぐらいなら」
その一言で、ランマルのテンションが上がり切った。有頂天になり、ガッツポーズしている。
「よしっ! 絶対、女らしい格好してこいよ! 男みたいな格好するなよ!」
スズの格好は、常に男物の和装。
腰には刀を絶対に身につけている。
ヒナゲシのように、女物の着物をあまり着ていない。
「えっ、どうしてですか?」
「どうしてもだっ!」
「わっ、わかりましたよ……」
ランマルの張りのある声に、さすがのスズも少しひるんだ。
「よっしゃ! 俺についてこい! お前達!」
ランマルは颯爽と、家から外に飛びだす。
「わかった。ランマル」
「ランマル兄ちゃん、かっこいい!」
カンタロウとアゲハは、それに乗った。
「二人とも、調子に乗らないでください」
スズは恥ずかしさからか、頬が真っ赤になる。
「あらあら。大家族ができるわね」
ヒナゲシは楽しそうに、皆の会話を聞いていた。
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華々しく、私の人生を謳歌しよう。
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◇◇◇
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