誰も映画を観てくれないので、殺人鬼を幼女化してノベライズする

因幡雄介

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イット・カムズ・アット・ナイト

ルールその4:家族円満でなければならない

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*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。


映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2020/01/15/122525)


「大変でござる!!」



 急に言左衛門が台所に入ってきた。

 俺は慌てて包丁を隠す。

「どうしたの?」リアナがさっと、背中で俺の行動を隠した。



「赤い扉が開いていて、犬が入ってきてるでござる!!」

「なんだと!?」



 机から立ち上がり、イスをひっくり返すと、俺は言左衛門とともに玄関に向かった。

 俺の下着を頭からかぶったランバレルが、あらい呼吸をしながら床にひっくりかえっていた。

 体中臭い汚物でよごれていた。



 お前……汚物処理場で遊んでたな!!



 俺の下着は洗っても取れず、おしゃかになったと絶望感を得る。



「感染しているのかもしれないわ! 早く処理を!」



 リアナがガスマスクをかぶって言う。



「しかし、ランバレルは萌美が大切に飼っているペット……」

「臭いしもういい。どっか捨ててきて」



 萌美が眉をひそめながら、かわいがっていたペットを見る。

 なんて残酷な世界なんだ。

 俺はぐうたら寝ている犬のおなかに銃口を向けた。



「次生まれ変わったら、やさしいご主人さまに会えよ」



 プラスチック弾が発射され、ポチはそれを生殖器のピンコダチではじき、あの世へ旅立った。



 事件が終わり、言左衛門夫婦と話し合ったが、誰もあの赤い扉を開けていないという。

 ならばポチがかってに入ってきたのだろうという結論となり、おたがいの部屋に帰っていく。

 言左衛門たちが部屋に帰ったのを見計らったのか、リアナが俺を台所まで呼び出した。



「門平君。ちょっとちょっと」

「何?」



 机では萌美がお人形遊びをしている。

 むちゅうで男女の頭を机でゴリゴリしていた。

 精神的病かな?



「萌美ちゃん。言ってあげて」

「萌美。美雪お姉ちゃんが赤い扉を開けるのを見たよ」



 リアナにうながされ、変なことを言う萌美。



「えっ!? だって、その時間帯は、台所にいただろう……」

「門平君。私たちは家族なのよ? 疑うの?」



 リアナは間髪入れず、真顔で言ってくる。



 待って! 萌美、ぜんぜん俺と目を合わせようとしてこないよ!? 言わされてる感が、まんまんだよ!?

 しかも家族じゃねぇしっ!!



 いろいろと言いたいことはあるが、リアナの責めるような視線が痛いので、俺の頭の中で言左衛門と美雪は感染者ということになった。



 感染者は殺さなければならない。



 言左衛門と美雪が寝ている部屋をノックし、



「言左衛門君。ちょっと出てきてくれないかな? 話し合おうよ」



 努めてフレンドリーに、声色を変えて、言左衛門たちを誘ってみる。

 俺の右手には包丁が光っている。

 出てきた瞬間をやるつもりだ。



「……嫌でござる」

「えっ? どうして?」

「拙者たちを追い出すつもりでござろう!」



 言左衛門は声を張り上げて言った。

 ばれてるな……。

 やはり雰囲気を感じとって、拒否してきやがる。



「大丈夫。安心してほしい。美雪さんのためにペティグリーチャムを持ってきただけだから」

「マンゴー味でござろうな?」

「ああ、マンゴー味だよ。マンゴーが何か知らんが」

「ドアの前に置いて引き下がるがよい」



 言左衛門が引きこもりみたいなことを言う。

 俺は後ろを向くと、二階の階段からのぞいてたリアナが、さっとからの皿を出す。

 それを受け取り、ドアの前に置いた。

 皿の音をわざと立て、階段の奥へと引き下がる。

 言左衛門はしばらくして、注意深くドアの鍵を開け、隙間から、からの皿を取ろうとした。



 今じゃ!!



 俺はドアの端をつかみ、力ずくで開けた。



「ぐわっ!?」



 言左衛門が床に転がる。

 背中ががら空きになったので、包丁を突き立てようとしたとき、視界に何か変なものが入った。



 白い繭だ。

 クモの巣のように広がった糸の中心で、ガの幼虫が入ってそうな円柱の繭ができあがっている。

 糸の間から、細い右腕だけが飛び出していた。

 美雪のものだろう。

 あとは繭に包まれており、ピックンピックンと、不気味にけいれんしている。

 それが部屋の壁に張りついているのだ。



「ぎゃあああっ!? ひとんちで何やってんだ!?」



 ホラーみたいな光景につい悲鳴を上げる。



「ぬしゃあああああっ!!」



 言左衛門が刀を抜き、半月に上から打ち込む。



「おわあっ!?」



 俺はその刀を包丁で受け止める。

 頭上でカタカタと腕が震えている。

 力で押さえ込まれるので、歯をくいしばって、足を踏ん張った。

 力を抜けば、頭からぱっくりいかれる。



「よくぞ拙者の半月斬りを受け止めた! ほめてつかわす!」

「言左衛門君! 話し合おう! 下で食事でもしながらさ!」



 となだめつつ、味方であろうリアナと萌美をチラ見する。

 すでに階段にいなかった。

 遠くで、「今日の晩ご飯は大根ね」という、リアナののんきな鼻歌が聞こえてくる。



 瞬間移動したの!?

 全部お父さんに任せる気っ!?



 死を覚悟した瞬間、繭がヒビ割れ、何かが出てきた。

 エイリアン!? 頭のおっきなエイリアンかっ!?

 包丁から力が抜け、



「やったでござる! 成功したでござるよ!」



 言左衛門が飛び上がっている。

 繭から肉球の爪が出てきて、猫耳が出てきて、体格は赤ん坊サイズの、顔が美雪猫だった。



「うわっ! 気色悪っ!」



 人面猫だ。



「ミー、ミー」



 猫というか、人間の声に近い鳴き方をする。



「なんなんだ、あれ?」

「ふふ。美雪殿と、なんやかんやを組み合わせ作り出した、新種でござる!」

「お前、錬金術師かなんかか?」

「いやいや。ただのブリーダーでござる」



 言左衛門が自慢げに言う。

 新種のペット作ってたの!?

 繭から女の右手は飛び出したままだ。

 もしかして、美雪をドロドロに溶かして、あれを作ったんじゃ……。

 なんか、すっごい吐き気がする!



 美雪猫は後ろ脚で頭をかいている。

 さすがに不気味なので、家から追い出そうか……。

 萌美が部屋に入ってきて、美雪猫を抱き上げ、



「きゃわいい! 飼っていいよね!」

「はあっ!? そんな不気味なものがっ!?」



 さすがのお父さんもびっくりした。



「いいわよ。かわいい子猫ちゃん。うふふ」



 俺の後ろでリアナお母さんが許可を出す。

 まじで!? あんなに不気味なのに!?



「お値段は9800円でござる。税抜きで」



 言左衛門が電卓をたたく。



「やすっ! 買った!!」



 俺は即買いした。



 こうして俺たち家族に、1匹(1人?)のペットがくわわった。





イット・カムズ・アット・ナイト【了】



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