46 / 47
イット・カムズ・アット・ナイト
ルールその4:家族円満でなければならない
しおりを挟む
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2020/01/15/122525)
「大変でござる!!」
急に言左衛門が台所に入ってきた。
俺は慌てて包丁を隠す。
「どうしたの?」リアナがさっと、背中で俺の行動を隠した。
「赤い扉が開いていて、犬が入ってきてるでござる!!」
「なんだと!?」
机から立ち上がり、イスをひっくり返すと、俺は言左衛門とともに玄関に向かった。
俺の下着を頭からかぶったランバレルが、あらい呼吸をしながら床にひっくりかえっていた。
体中臭い汚物でよごれていた。
お前……汚物処理場で遊んでたな!!
俺の下着は洗っても取れず、おしゃかになったと絶望感を得る。
「感染しているのかもしれないわ! 早く処理を!」
リアナがガスマスクをかぶって言う。
「しかし、ランバレルは萌美が大切に飼っているペット……」
「臭いしもういい。どっか捨ててきて」
萌美が眉をひそめながら、かわいがっていたペットを見る。
なんて残酷な世界なんだ。
俺はぐうたら寝ている犬のおなかに銃口を向けた。
「次生まれ変わったら、やさしいご主人さまに会えよ」
プラスチック弾が発射され、ポチはそれを生殖器のピンコダチではじき、あの世へ旅立った。
事件が終わり、言左衛門夫婦と話し合ったが、誰もあの赤い扉を開けていないという。
ならばポチがかってに入ってきたのだろうという結論となり、おたがいの部屋に帰っていく。
言左衛門たちが部屋に帰ったのを見計らったのか、リアナが俺を台所まで呼び出した。
「門平君。ちょっとちょっと」
「何?」
机では萌美がお人形遊びをしている。
むちゅうで男女の頭を机でゴリゴリしていた。
精神的病かな?
「萌美ちゃん。言ってあげて」
「萌美。美雪お姉ちゃんが赤い扉を開けるのを見たよ」
リアナにうながされ、変なことを言う萌美。
「えっ!? だって、その時間帯は、台所にいただろう……」
「門平君。私たちは家族なのよ? 疑うの?」
リアナは間髪入れず、真顔で言ってくる。
待って! 萌美、ぜんぜん俺と目を合わせようとしてこないよ!? 言わされてる感が、まんまんだよ!?
しかも家族じゃねぇしっ!!
いろいろと言いたいことはあるが、リアナの責めるような視線が痛いので、俺の頭の中で言左衛門と美雪は感染者ということになった。
感染者は殺さなければならない。
言左衛門と美雪が寝ている部屋をノックし、
「言左衛門君。ちょっと出てきてくれないかな? 話し合おうよ」
努めてフレンドリーに、声色を変えて、言左衛門たちを誘ってみる。
俺の右手には包丁が光っている。
出てきた瞬間をやるつもりだ。
「……嫌でござる」
「えっ? どうして?」
「拙者たちを追い出すつもりでござろう!」
言左衛門は声を張り上げて言った。
ばれてるな……。
やはり雰囲気を感じとって、拒否してきやがる。
「大丈夫。安心してほしい。美雪さんのためにペティグリーチャムを持ってきただけだから」
「マンゴー味でござろうな?」
「ああ、マンゴー味だよ。マンゴーが何か知らんが」
「ドアの前に置いて引き下がるがよい」
言左衛門が引きこもりみたいなことを言う。
俺は後ろを向くと、二階の階段からのぞいてたリアナが、さっとからの皿を出す。
それを受け取り、ドアの前に置いた。
皿の音をわざと立て、階段の奥へと引き下がる。
言左衛門はしばらくして、注意深くドアの鍵を開け、隙間から、からの皿を取ろうとした。
今じゃ!!
俺はドアの端をつかみ、力ずくで開けた。
「ぐわっ!?」
言左衛門が床に転がる。
背中ががら空きになったので、包丁を突き立てようとしたとき、視界に何か変なものが入った。
白い繭だ。
クモの巣のように広がった糸の中心で、ガの幼虫が入ってそうな円柱の繭ができあがっている。
糸の間から、細い右腕だけが飛び出していた。
美雪のものだろう。
あとは繭に包まれており、ピックンピックンと、不気味にけいれんしている。
それが部屋の壁に張りついているのだ。
「ぎゃあああっ!? ひとんちで何やってんだ!?」
ホラーみたいな光景につい悲鳴を上げる。
「ぬしゃあああああっ!!」
言左衛門が刀を抜き、半月に上から打ち込む。
「おわあっ!?」
俺はその刀を包丁で受け止める。
頭上でカタカタと腕が震えている。
力で押さえ込まれるので、歯をくいしばって、足を踏ん張った。
力を抜けば、頭からぱっくりいかれる。
「よくぞ拙者の半月斬りを受け止めた! ほめてつかわす!」
「言左衛門君! 話し合おう! 下で食事でもしながらさ!」
となだめつつ、味方であろうリアナと萌美をチラ見する。
すでに階段にいなかった。
遠くで、「今日の晩ご飯は大根ね」という、リアナののんきな鼻歌が聞こえてくる。
瞬間移動したの!?
全部お父さんに任せる気っ!?
死を覚悟した瞬間、繭がヒビ割れ、何かが出てきた。
エイリアン!? 頭のおっきなエイリアンかっ!?
包丁から力が抜け、
「やったでござる! 成功したでござるよ!」
言左衛門が飛び上がっている。
繭から肉球の爪が出てきて、猫耳が出てきて、体格は赤ん坊サイズの、顔が美雪猫だった。
「うわっ! 気色悪っ!」
人面猫だ。
「ミー、ミー」
猫というか、人間の声に近い鳴き方をする。
「なんなんだ、あれ?」
「ふふ。美雪殿と、なんやかんやを組み合わせ作り出した、新種でござる!」
「お前、錬金術師かなんかか?」
「いやいや。ただのブリーダーでござる」
言左衛門が自慢げに言う。
新種のペット作ってたの!?
繭から女の右手は飛び出したままだ。
もしかして、美雪をドロドロに溶かして、あれを作ったんじゃ……。
なんか、すっごい吐き気がする!
美雪猫は後ろ脚で頭をかいている。
さすがに不気味なので、家から追い出そうか……。
萌美が部屋に入ってきて、美雪猫を抱き上げ、
「きゃわいい! 飼っていいよね!」
「はあっ!? そんな不気味なものがっ!?」
さすがのお父さんもびっくりした。
「いいわよ。かわいい子猫ちゃん。うふふ」
俺の後ろでリアナお母さんが許可を出す。
まじで!? あんなに不気味なのに!?
「お値段は9800円でござる。税抜きで」
言左衛門が電卓をたたく。
「やすっ! 買った!!」
俺は即買いした。
こうして俺たち家族に、1匹(1人?)のペットがくわわった。
イット・カムズ・アット・ナイト【了】
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2020/01/15/122525)
「大変でござる!!」
急に言左衛門が台所に入ってきた。
俺は慌てて包丁を隠す。
「どうしたの?」リアナがさっと、背中で俺の行動を隠した。
「赤い扉が開いていて、犬が入ってきてるでござる!!」
「なんだと!?」
机から立ち上がり、イスをひっくり返すと、俺は言左衛門とともに玄関に向かった。
俺の下着を頭からかぶったランバレルが、あらい呼吸をしながら床にひっくりかえっていた。
体中臭い汚物でよごれていた。
お前……汚物処理場で遊んでたな!!
俺の下着は洗っても取れず、おしゃかになったと絶望感を得る。
「感染しているのかもしれないわ! 早く処理を!」
リアナがガスマスクをかぶって言う。
「しかし、ランバレルは萌美が大切に飼っているペット……」
「臭いしもういい。どっか捨ててきて」
萌美が眉をひそめながら、かわいがっていたペットを見る。
なんて残酷な世界なんだ。
俺はぐうたら寝ている犬のおなかに銃口を向けた。
「次生まれ変わったら、やさしいご主人さまに会えよ」
プラスチック弾が発射され、ポチはそれを生殖器のピンコダチではじき、あの世へ旅立った。
事件が終わり、言左衛門夫婦と話し合ったが、誰もあの赤い扉を開けていないという。
ならばポチがかってに入ってきたのだろうという結論となり、おたがいの部屋に帰っていく。
言左衛門たちが部屋に帰ったのを見計らったのか、リアナが俺を台所まで呼び出した。
「門平君。ちょっとちょっと」
「何?」
机では萌美がお人形遊びをしている。
むちゅうで男女の頭を机でゴリゴリしていた。
精神的病かな?
「萌美ちゃん。言ってあげて」
「萌美。美雪お姉ちゃんが赤い扉を開けるのを見たよ」
リアナにうながされ、変なことを言う萌美。
「えっ!? だって、その時間帯は、台所にいただろう……」
「門平君。私たちは家族なのよ? 疑うの?」
リアナは間髪入れず、真顔で言ってくる。
待って! 萌美、ぜんぜん俺と目を合わせようとしてこないよ!? 言わされてる感が、まんまんだよ!?
しかも家族じゃねぇしっ!!
いろいろと言いたいことはあるが、リアナの責めるような視線が痛いので、俺の頭の中で言左衛門と美雪は感染者ということになった。
感染者は殺さなければならない。
言左衛門と美雪が寝ている部屋をノックし、
「言左衛門君。ちょっと出てきてくれないかな? 話し合おうよ」
努めてフレンドリーに、声色を変えて、言左衛門たちを誘ってみる。
俺の右手には包丁が光っている。
出てきた瞬間をやるつもりだ。
「……嫌でござる」
「えっ? どうして?」
「拙者たちを追い出すつもりでござろう!」
言左衛門は声を張り上げて言った。
ばれてるな……。
やはり雰囲気を感じとって、拒否してきやがる。
「大丈夫。安心してほしい。美雪さんのためにペティグリーチャムを持ってきただけだから」
「マンゴー味でござろうな?」
「ああ、マンゴー味だよ。マンゴーが何か知らんが」
「ドアの前に置いて引き下がるがよい」
言左衛門が引きこもりみたいなことを言う。
俺は後ろを向くと、二階の階段からのぞいてたリアナが、さっとからの皿を出す。
それを受け取り、ドアの前に置いた。
皿の音をわざと立て、階段の奥へと引き下がる。
言左衛門はしばらくして、注意深くドアの鍵を開け、隙間から、からの皿を取ろうとした。
今じゃ!!
俺はドアの端をつかみ、力ずくで開けた。
「ぐわっ!?」
言左衛門が床に転がる。
背中ががら空きになったので、包丁を突き立てようとしたとき、視界に何か変なものが入った。
白い繭だ。
クモの巣のように広がった糸の中心で、ガの幼虫が入ってそうな円柱の繭ができあがっている。
糸の間から、細い右腕だけが飛び出していた。
美雪のものだろう。
あとは繭に包まれており、ピックンピックンと、不気味にけいれんしている。
それが部屋の壁に張りついているのだ。
「ぎゃあああっ!? ひとんちで何やってんだ!?」
ホラーみたいな光景につい悲鳴を上げる。
「ぬしゃあああああっ!!」
言左衛門が刀を抜き、半月に上から打ち込む。
「おわあっ!?」
俺はその刀を包丁で受け止める。
頭上でカタカタと腕が震えている。
力で押さえ込まれるので、歯をくいしばって、足を踏ん張った。
力を抜けば、頭からぱっくりいかれる。
「よくぞ拙者の半月斬りを受け止めた! ほめてつかわす!」
「言左衛門君! 話し合おう! 下で食事でもしながらさ!」
となだめつつ、味方であろうリアナと萌美をチラ見する。
すでに階段にいなかった。
遠くで、「今日の晩ご飯は大根ね」という、リアナののんきな鼻歌が聞こえてくる。
瞬間移動したの!?
全部お父さんに任せる気っ!?
死を覚悟した瞬間、繭がヒビ割れ、何かが出てきた。
エイリアン!? 頭のおっきなエイリアンかっ!?
包丁から力が抜け、
「やったでござる! 成功したでござるよ!」
言左衛門が飛び上がっている。
繭から肉球の爪が出てきて、猫耳が出てきて、体格は赤ん坊サイズの、顔が美雪猫だった。
「うわっ! 気色悪っ!」
人面猫だ。
「ミー、ミー」
猫というか、人間の声に近い鳴き方をする。
「なんなんだ、あれ?」
「ふふ。美雪殿と、なんやかんやを組み合わせ作り出した、新種でござる!」
「お前、錬金術師かなんかか?」
「いやいや。ただのブリーダーでござる」
言左衛門が自慢げに言う。
新種のペット作ってたの!?
繭から女の右手は飛び出したままだ。
もしかして、美雪をドロドロに溶かして、あれを作ったんじゃ……。
なんか、すっごい吐き気がする!
美雪猫は後ろ脚で頭をかいている。
さすがに不気味なので、家から追い出そうか……。
萌美が部屋に入ってきて、美雪猫を抱き上げ、
「きゃわいい! 飼っていいよね!」
「はあっ!? そんな不気味なものがっ!?」
さすがのお父さんもびっくりした。
「いいわよ。かわいい子猫ちゃん。うふふ」
俺の後ろでリアナお母さんが許可を出す。
まじで!? あんなに不気味なのに!?
「お値段は9800円でござる。税抜きで」
言左衛門が電卓をたたく。
「やすっ! 買った!!」
俺は即買いした。
こうして俺たち家族に、1匹(1人?)のペットがくわわった。
イット・カムズ・アット・ナイト【了】
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
だらだらとした映画語り【チャット】
因幡雄介
エッセイ・ノンフィクション
門平善照と美雪雪音が独断と偏見でだらだらと映画をチャット形式で語る記事です。雑談は因幡雄介担当。
《映画紹介キャラクター》
*門平善照(かどひらよしてる)・・・男子高校生。冷静なツッコみ役。
*美雪雪音(みゆきゆきね)・・・女子高校生。何かと暴れる役。
*ベルシュタイン・・・女子留学生。戦闘が得意なお嬢様。
*萌美(もえみ)・・・妖精さん。漢字が読めないが、ひらがなも読めない破壊の魔法少女。
*リアナ恵子(りあなけいこ)・・・女子留学生。穏やかなお嬢様。
*真田雪村(さなだゆきむら)・・・女子高生。貧乏苦学生。
*猫美(ねこみ)・・・猫獣人さん。「にゃー」しか言わないが、日本語を理解できるし、普通に話せる。
*西成区の女神(にしなりくのめがみ)・・・宗教団体『御母様』幹部
毎月一本投稿で、9ヶ月累計30000pt収益について
ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
9ヶ月で毎月一本の投稿にて累計ポイントが30000pt突破した作品が出来ました!
ぜひより多くの方に読んでいただけた事についてお話しできたらと思います!
スピリチュアルママの子育て記録
花角瞳
エッセイ・ノンフィクション
昔から予知夢として、夢がいろいろと教えてくれる私が、また予知夢によって我が子を授かり、そんな我が子と私のマタニティ~育児を通しての成長記録を振り返る小説。
マタニティ生活で役立ったことや道具、週ごとのトラブルや出来事など。
これから妊活~妊娠するにあたって、参考になれば幸いです🌸
不死鳥~あの時、僕の一言が無ければ~
味噌村 幸太郎
エッセイ・ノンフィクション
キャッチコピー
「読めば元気になる?」
これは一人の無垢な少年が起こした事件であり。
同時に不死鳥が誕生した奇跡である。
100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて
ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる