誰も映画を観てくれないので、殺人鬼を幼女化してノベライズする

因幡雄介

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スレンダーマン

とある人気動画投稿者の逮捕

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*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。


映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/12/23/101150)


 美雪雪音は講義室に門平、宮本、リアナを呼び出した。

 大学の総務には、ゼミの課題をすると言ってある。

 夏で暑いので、冷房は20℃近くまで下げていた。

 カーテンを閉めて、30人は座れる室内を暗くする。



「今日あなたたちに集まってもらったのは、真剣な議論をしたいからよ」



 呼び出した3人は、何が始まるのかと息を飲んで私を見つめる。

 緊張した雰囲気に、誰も口を開かない。

 いや、開けない雰囲気になっているのだ。

 私はノートパソコンを操作して、とある動画サイトに接続した。

 再生ボタンをマウスでクリックすると、動画が再生される。



 映像に映ったのは、オッサンだった。

 白シャツに短パンと、少年のような格好をしている。

 たれた胸の筋肉に、赤子がいるようなおなか。

 足をおおっているのは、サルをほうふつさせる、膨大な毛。

 いやらしいことに、立派な胸毛が白シャツに盛り上がっている。

 自宅の庭にきた野良猫に餌をやっているようだ。

 安い煮干しを食らう猫を、幼女をめでてる気持ちでながめている。

 たまにカメラをチラ見して、はにかむ姿は彼の純粋さをあらわしているのか。



 映像が変わった。

 今度はオッサンがシャワーを浴びている姿が映り、「やだー、もー」と、リアナが生娘みたいな悲鳴を上げる。

 オッサンはなめまかし老いたえたいに、透明な光る水をまんべんなく皮膚に当てていく。

 美しくも、汚らわしい行為に、リアナは背中を向けてしまった。

 オッサンが股を開き、秘密の花園をお披露目する前に、私は動画の映像を停止させる。



「――みんな、どう思う?」

「動画サイトの運営に通報して、アカウントを破壊してもらえよ」



 門平が無慈悲なことを言い始めた。



「なぜそんなことを思ったのかしら?」

「公然わいせつ罪でござるよ。立派な犯罪行為でござる」



 侍は腕を組んで、両目を閉じている。

 ダメージを回復させているのかしら。

 私は鼻で笑い、



「安心して。彼はもう警察に逮捕されてるわ。ネットニュースで【人気動画投稿者逮捕】って流れているはずよ」

「誰に需要があったんだよ? 人気ってつけるのはおかしくない?」

「ねえ。不思議だと思わない?」



 私はツッコむ門平に背を向けて、カーテンを開ける。

 ほのかな太陽のぬくもり。

 少し寒気がして震えてしまった。



「彼は30代。人気者になろうと思ってあんなことをしたんだろうけど、なぜ自分の裸体をさらそうと思ったの?」

「知らんがな。性癖じゃないの?」

「彼、もしかすると、妖精になろうとしてたんじゃないかしら?」

「かってに話を進めてるところ悪いがね。妖精どころか、犯罪者になっとるがな」



 関西弁でツッコんでくる門平。



「何か秘密があると思うの。私たちで調べてみない?」

「残念だが、ほかを当たってくれ。じゃ、帰るか」



 門平がバッグを手に持ち、言左衛門、リアナと講義室を出ていった。

 私は情けない同級生たちに息を吐きつけ、ノートパソコンの電源を落とす。

 そのときだ。



「えっ?」



 鐘だ。

 どこからともなく、不気味な鐘の音が聞こえてくる。

 カーテンを素早く開け、外の景色を見下ろしてみると、移動販売しているアイスクリーム屋に、さっき出て行った3人がダッシュしていた。



「あいつら!」



 私は3階の講義室のガラス窓をぶち破った。

 破片が流れ星みたいにきらめいている。

 アイスを買おうと、走る女性助教授の背中に着地し、背骨を折ると、髪を手で流しつつ最後尾に並んだ。







 リアナはアイスを片手に自宅に帰っていた。

 門平と言左衛門とは別れ、美雪は警備員から逃走していた。

 大好きなバニラをなめ、



「あま~い。幸せ~」



 満足しつつ歩みも軽い。

 風がふいた。

 髪が揺らめき、急に周りが静かになる。

 奇妙な感覚を抱いたとき、空から黒いものが差してきた。

 影にはぴょこんと出ている猫耳と、おなかが大きい、巨大な体格の何かが落ちてくる。

 見上げた瞬間、顔に抱きつかれ、あまりのオッサン臭に意識がなくなった。


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