上 下
21 / 47
フラットライナーズ

メスティンは万能だよね

しおりを挟む
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。


映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/11/26/073405)


 何あの子!? 最強の敵か!?

 ピリピリとした威圧が全身を襲う。

 リアナはペッと、折れた歯を口から吐き出し、



「このガキがっ!!」



 両手を広げて、ライオンが子猫に襲いかかる。



「やあっ!」



 パキッと、萌美はリアナにアッパーカット。

 リアナは白目をむいて後ろに倒れ始める。

 一撃で意識を失わされている。



「えーいっ!」



 萌美の蹴りがリアナの首に入る。

 ボキッと、木の幹みたいな首が横に曲がり、リアナは鼻と口から液体を飛ばして、廃虚の壁に激突した。

 岩が砕かれ、煙が舞う。

 アングリと、口が開いたまま身体が硬直。

 小さな身体の幼女が、巨体な男(元巨乳のお姉さん)をボコボコにしている。

 萌美がプリンをちゅるっと吸いつつ、大きな瞳で俺のほうを見た。



「……あれ? ここはどこなんだ? いったい何が起こったんだ? ちなみに俺はあの男とはいっさい関係がありません。あなたと争うつもりは、ない!!」



 最後の言葉は絶対に聞いてほしいので、力強く言ってやった。

 萌美は首をかしげ、



「お兄ちゃん。する?」

「ノオッ!」



 バツをばっと天に掲げる。

 あんな化け物幼女と戦ったら、全身の骨砕かれるわっ!



「萌美。いまからあのお兄ちゃんの骨を一本ずつ砕いて、木琴みたいにするの。邪魔する?」

「ノオッ! ノオッ!」



 首も大きく横に振る。

 やつは好きにしていい。だけど俺は助けてくれっ!

 萌美はかわいらしい笑顔を見せると、人骨音楽を聴くために、リアナに向かう。

 廃虚の中に逃げ出すと、鏡がある。

 鏡の中では、美雪と言左衛門が、固形燃料に火をつけて、メスティンを使い、ブリ飯を作っていた。



「ブリにマッシュルームを入れて、わさびとからしを入れたわ」

「あとは水がふき出すのを待つだけでござるな」

「あっ! あっ! 水ふいてる!」

「できたようでござる」



 美雪が興奮し、言左衛門がメスティンのふたを開ける。

 ふっくらとしたご飯に、白いブリ。

 美雪はさっそくブリとごはんを食べ、



「うまい! しょうが風味のご飯ね!」

「う~ん。マッシュルームも柔らかいでござる」



 言左衛門がほくほくと食べる。



「おいっ!! キャンプしてんじゃねぇ!!」



 鏡をつかんでふたりに叫ぶ。

 美雪のはしが止まり、



「うん? どこからか声がしない?」

「美雪殿~。我慢してたでござるか? まさかブリだけに実が出てしまった……」

「ふんっ!」

「あうちっ!」



 言左衛門をビンタした。

 キョロキョロとどこから声がするのか探し、俺の存在に気づいたようだ。

 俺のほうを見つめている。



「カップラーメンの容器から声がするわ」

「門平の声でござるな」



 美雪と言左衛門が見下ろしている。

 カップラーメンの容器とつながってんの!?

 もうなんでもいいので、美雪たちに状況を訴えることにした。



「こっちは大変なんだ! リアナが金髪碧眼少女と戦ってて、負けてて……そうだ! 萌美って、お前の妹なんじゃないのか!」

「えっ!? 私の妹がリアナと戦ってるの!? どんなバトルなの!? 幻魔大戦的なやつ!?」

「いや、格闘的なやつ! ていうか、その年齢でなんでそれ知ってんだよ! おかしいだろ!」

「会わせて!」



 美雪がそう言うので、姿見を両手で持っていき、萌美とリアナを映す。



「そんな……」

「どうにかしてくれ! このままじゃ、リアナが人間木琴にされるぞ!」

「わかったわ! 萌美! 萌美! こっちにきなさい! メスティンで作ったブリ飯があるわよ!」



 美雪は萌美に向かって、ブリ飯を差し出した。

 萌美は「ふん?」と振り向き、鏡の中にあるほくほくのブリ飯を見つける。

 口からヨダレがたれ、



「おいしそう。萌美、食べたい」



 罠に引っかかり、鏡のほうに近寄ってくる。



「今よ! リアナ! やっちまって!」



 美雪が残酷なことを言う。

「ふんっ!」リアナは萌美の首を太い腕でしめた。

 首の骨をへし折るつもりだ。



「おっおい。お前の妹だろ? 殺していいのかよ?」

「私の妹は黒髪で黒目よ! あんな金髪碧眼知らないわ! いったい誰なの!」

「名前が同じだけだったのか! まあ、お前黒髪だし、おかしいと思ったけど!」



 同姓同名の別人だったので、美雪は幼女を殺しにかかっている。



「なにぃ!?」



 リアナがギリギリと首をしめているが、萌美はまったく動じず向かってくる。

 巨体な猛獣を引きずっている。

 あの小さな体に、すごい力を秘めている。



「おい、しっかりしろよ! お前は世界最強のゴリラだろうが!」



 リアナに発破をかけるが、萌美が死ぬ様子はない。



「美雪殿~。メスティンで、ラー油ギョーザ飯作ったでござる」



 言左衛門が手袋をして持ってくる。

 おいっ! いいかげんキャンプ気分やめろ!



「おうっ!?」



 言左衛門が床でつまずき、メスティンを手放した。

 ギョーザ飯は異世界の壁を乗り越え、ポンッと、萌美の手の中に入る。

 萌美はプリンのスプーンで、ラー油ギョーザ飯を食べた。

 体がプルプル震え、涙を流している。

 ラー油とギョーザのほんのりと、辛い味が身にしみているのか。

 突然光が発せられ、萌美はキラキラと輝き、その姿を消失させていく。

 えっ? 何? 成仏した?

 急展開に頭が追いつかない。

 美雪は絶望的な表情をし、



「なんて……なんてことなの……」

「どうした? 成仏したんじゃないのか?」

「ラー油ギョーザ飯がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「そっちかよ」



 シクシクと泣き出している。

 萌美がいなくなり、残ったのは、光によって燃やされた焦げ臭いゴリラだけ……。



「はっ!? リアナさん!」



 ゴリラが元の巨乳の女子大生に戻っていた。

 素早く寄って介抱する。

 好感度を上げるチャンスだ!



「悪魔を倒した! 俺たちは元の世界に戻れるぞ!」

「……私、世界最強のゴリラじゃないもん」



 リアナはシクシク細く泣く。



 ――聞かれてたぁぁぁぁっ!



 胸の中で、後悔に泣く俺。

 美雪たちがいる世界に帰って、リアナのために晩飯おごると言う。

 全員で焼き肉屋に行き、一万円が飛んでいった。 





フラットライナーズ解説【了】


*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

だらだらとした映画語り【チャット】

因幡雄介
エッセイ・ノンフィクション
門平善照と美雪雪音が独断と偏見でだらだらと映画をチャット形式で語る記事です。雑談は因幡雄介担当。 《映画紹介キャラクター》 *門平善照(かどひらよしてる)・・・男子高校生。冷静なツッコみ役。 *美雪雪音(みゆきゆきね)・・・女子高校生。何かと暴れる役。 *ベルシュタイン・・・女子留学生。戦闘が得意なお嬢様。 *萌美(もえみ)・・・妖精さん。漢字が読めないが、ひらがなも読めない破壊の魔法少女。 *リアナ恵子(りあなけいこ)・・・女子留学生。穏やかなお嬢様。 *真田雪村(さなだゆきむら)・・・女子高生。貧乏苦学生。 *猫美(ねこみ)・・・猫獣人さん。「にゃー」しか言わないが、日本語を理解できるし、普通に話せる。 *西成区の女神(にしなりくのめがみ)・・・宗教団体『御母様』幹部

だらだらとした映画語り

因幡雄介
エッセイ・ノンフィクション
因幡さんが独断と偏見でだらだらと映画を語る記事です。詳細【https://lit.link/inaba2023】

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

カクヨム、noteではじめる小説家、クリエーター生活

坂崎文明
エッセイ・ノンフィクション
カクヨム、noteを中心に小説新人賞やクリエーター関連のエッセイを書いていきます。 小説家になろう、アルファポリス、E☆エブリスタ、ノベラボなどのWeb小説サイト全般の攻略法も書いていきます。 自動バックアップ機能がある『小説家になろう』→カクヨム→noteの順に投稿しています。note版がリンク機能があるので読みやすいかも。 小説家になろう版 http://ncode.syosetu.com/n0557de/ カクヨム版(567関連で公開停止) https://kakuyomu.jp/works/1177354054880246141 【続編】カクヨム、noteではじめる小説家、クリエーター生活2 作者 坂崎文明 https://kakuyomu.jp/works/16816700427247367228 note版 https://note.mu/sakazaki_dc/m/mec15c2a2698d E☆エブリスタ版 http://estar.jp/_howto_view?w=24043593 小説家になるための戦略ノート 作者:坂崎文明《感想 130件  レビュー 2件 ブックマーク登録 1063 件 総合評価 2,709pt文字数 958441文字》も人気です。 http://ncode.syosetu.com/n4163bx/

我らおっさん・サークル「異世界召喚予備軍」

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)
青春
おっさんの、おっさんによる、おっさんのためのほろ苦い青春ストーリー サラリーマン・寺崎正・四〇歳。彼は何処にでもいるごく普通のおっさんだ。家族のために黙々と働き、家に帰って夕食を食べ、風呂に入って寝る。そんな真面目一辺倒の毎日を過ごす、無趣味な『つまらない人間』がある時見かけた奇妙なポスターにはこう書かれていた――サークル「異世界召喚予備軍」、メンバー募集!と。そこから始まるちょっと笑えて、ちょっと勇気を貰えて、ちょっと泣ける、おっさんたちのほろ苦い青春ストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...