20 / 47
フラットライナーズ
最強の生き物あらわる
しおりを挟む
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/11/25/092349)
門平は病院の病室で美雪の見舞いにきていた。
あの筋肉祭りから無事生還したのだ。
美雪は病室のベッドで上半身を起こしている。
マンションから落ちたらしい。
不思議なことに、最強の生物の身体を失い、きゃしゃな女性に戻っていた。
言左衛門とリアナは化け物のままである。
俺はいつもの美雪を見てほっとしている。
筋肉にもてあそばれるのは、ごめんだ。
美雪は病室の窓から外をながめ、
「マッスルパワーで生き延びたわ」
「すごいな。もうター○ネーターだな。いつ人間を滅ぼす気なんだ? 俺たち人類の未来はどうなっちまうんだ」
美雪は俺の冗談に答えない。
真剣な話だと感じた。
リアナが不服そうな顔つきをし、
「軟弱な。たかだかマンションから落ちたぐらいで入院するとは」
「うほうほ。うほほほほ(美雪殿。けがは良い経験でござる。療養されよ)」
言左衛門ゴリラは立派なことを言ってそうだが、ゴリラ語がわからなかった。
マンションの十階から落ちれば十分死ぬレベルだと思うのだが。
美雪は顔を上げ、
「……妹に会ったわ」
「妹いたのか?」
「ええ。もう死んでいるけどね。彼女があのマンションにいて、私を突き落としたの」
「えっ!? 生きていたのか!?」
「ううん。あれは妹の姿をした悪魔だと思う。でなければ、この私を突き落とすことなど不可能よ」
「そうか。それぐらいないと、マッチョな肉体がはじき返すだろうからな」
にわかには信じがたいが、事実、きゃしゃな女性がマッチョになるぐらいだ。
世の中オカルトぐらいあるように思えてきた。
「これからも彼女は私を襲ってくるでしょうね。マッスルパワーを失った今、私は普通の一般人。ただの女よ」
「それで良かったのだと言いたいけど、悪魔の対策は必要だな」
「それで考えたんだけど、罪を償えばこの悪夢からさめるんじゃないかしら?」
「唐突な解決策だな。いろいろと突っ込みどころはあるけど」
そもそも臨死体験をして、悪魔が出てきて、罪償って終わるというのが安易だ。
だがもうやるしかないか。
言左衛門ゴリラがバナナの皮を外に捨て、
「うほほ。うほうほ。うほほほほ(俺も奉行に出世するために、シーフードヌードルと偽って、カレーヌードルを同僚に食べさせ、苦しめた過去があるでござる。やつに謝らねば夢にも化けて出てくるでござろう)」
何やら真剣な顔つきで言っているが、言語がわからん。
「笑止!!」リアナがイスを倒して立ち上がり、
「バカどもが! 付き合ってられんわ! 強くなりたければ、喰らえ!!」
捨てゼルフを残して病室から出ていく。
「ねえ誰!? あの子誰なの!?」
俺は軽くパニックを起こす。
オネエ言葉も出てしまう。
大学のアイドルだったはずなのに、なんであんな焼けた肌のオッサンになるのか。
「行きましょ、門平。罪を償うために」
「……えっ? なぜ俺? ひとりで行けば……」
「とりあえずコンビニでプリン買ってきて」
「あっ、うん、はい」
美雪の要望を断り切れず、自腹でプリンを買わされた。
車の運転をさせられ、助手席には美雪が、後ろの席はゴリラが支配していた。
美雪の実家近くにある墓に連れていかれ、妹の萌美の墓にプリンが置かれる。
「あなたが好きだった、糖質ゼロのプリンよ」
美雪はそういうと、手を合わせた。
俺とゴリラも手を合わせる。
となりにいた金髪碧眼の女の子も手を合わせている。
静かな時間が流れた。
しばらくして手を解放すると、金髪碧眼の女の子がいなくなっていた。
霊的な何かを感じるとしたら、無事成仏できたのだろうか。
「なあ。妹さんはプリンを食べて、食中毒で死んだのか?」
「いいえ、違うわ。萌美はプリンが食べたいと言ったけど、私は完璧なお人形さんがほしかったから、彼女の胃の中に食べ物が残ることを恐れたの。水を飲ますのが精いっぱいだったわ」
「…………」
あれ? 今やべぇこと聞いたような気がする。
そもそも美雪に妹がいたなんて初めて聞いた。
俺はなんらかの恐怖を感じて、それ以上聞くのをやめた。
言左衛門はライバルだった親友に会いにいっていた。
親友もゴリラになっていて、言左衛門を見て激しく胸を手でたたき、ドラミングをしていた。
言左衛門はシーフードヌードルを友に見せる。
威嚇がピタリとやみ、「うほうほ」とふたりは見つめ合い、お尻を突き合わせた。
なんらかの友情が芽生えたようだ。
言左衛門はゴリラから人間に戻り、すべてが解決したかのように思えた。
美雪の携帯が鳴った。
「はい? えっ、リアナ? どうしたの? えっ、えっ? ちょっと待って!」
美雪の携帯が切れたようだ。
俺と言左衛門は注目する。
美雪は俺を見て、
「大変よ……携帯の電源が切れたわ!」
「ちゃんと充電しとけよ」
「それどころじゃないの! リアナが自殺するって! 単位を取るためにカンニングしたから!」
「うそだろ、おい? 最強の生き物がなんでそんなにメンタル弱いんだよ」
「早く大学の地下室に行くのよ! あそこには、賞味期限が一年以上たったカップラーメンがあるの!」
「マジか! そいつは大変だ!」
車のハンドルを操作し、アクセルを踏みつつ、信号が赤になったら停止し、いつもよりも遅く大学の駐車場についた。
俺たち三人は大学の地下室に向かった。
階段を駆け下り、美雪について行ったら道を間違えたのか迷い、一時間も遅れてカップラーメンが保存されている倉庫につく。
リアナがうつぶせに倒れていた。
筋肉の塊が転がってるのかと思った。
ライオンみたいな髪型がペタンと床についている。
食べかけのカップラーメンが転がっていたので、手に取ってみると、三年前に賞味期限は切れていた。
「遅かったか……」
死んだのはつらいけど、なぜか悲しい思いにならなくてすんだ。
これがもし、元のリアナだったら、俺は号泣していただろう。
肉だるまのオッサンが死んでも、涙がこみ上げてこない。
美雪がそばに立ち、
「助けないといけないわね」
「そうだな。早く救急車と警察を……」
「いいえ。あなたがやるの」
「はっ!?」
彼女の顔を見ると、後ろの言左衛門に何か合図をしている。
「ふんっ!!」
「ぐはっ!?」
後頭部を刀の鞘で殴られた。
意識が飛んだ。
起き上がると、見たことのない廃虚にいた。
「ぐはぁっ!」
「うわぁっ!?」
廃虚の壁を突き破って、リアナが飛び出してきた。
皮膚がところどころ赤くなっている。
「なんだぁ!? なんだなんだぁ!?」
「やかましい! 集中できんだろうがっ!」
「はいいっ!」
リアナに怒られてしまった。
鼻血まで出している。
このバトル展開はいったい!?
「しぶといですね。いいかげん、この萌美にひざまずきなさい」
金髪碧眼の幼女が、プリンを食べながら、穴のあいた壁から出てきた。
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/11/25/092349)
門平は病院の病室で美雪の見舞いにきていた。
あの筋肉祭りから無事生還したのだ。
美雪は病室のベッドで上半身を起こしている。
マンションから落ちたらしい。
不思議なことに、最強の生物の身体を失い、きゃしゃな女性に戻っていた。
言左衛門とリアナは化け物のままである。
俺はいつもの美雪を見てほっとしている。
筋肉にもてあそばれるのは、ごめんだ。
美雪は病室の窓から外をながめ、
「マッスルパワーで生き延びたわ」
「すごいな。もうター○ネーターだな。いつ人間を滅ぼす気なんだ? 俺たち人類の未来はどうなっちまうんだ」
美雪は俺の冗談に答えない。
真剣な話だと感じた。
リアナが不服そうな顔つきをし、
「軟弱な。たかだかマンションから落ちたぐらいで入院するとは」
「うほうほ。うほほほほ(美雪殿。けがは良い経験でござる。療養されよ)」
言左衛門ゴリラは立派なことを言ってそうだが、ゴリラ語がわからなかった。
マンションの十階から落ちれば十分死ぬレベルだと思うのだが。
美雪は顔を上げ、
「……妹に会ったわ」
「妹いたのか?」
「ええ。もう死んでいるけどね。彼女があのマンションにいて、私を突き落としたの」
「えっ!? 生きていたのか!?」
「ううん。あれは妹の姿をした悪魔だと思う。でなければ、この私を突き落とすことなど不可能よ」
「そうか。それぐらいないと、マッチョな肉体がはじき返すだろうからな」
にわかには信じがたいが、事実、きゃしゃな女性がマッチョになるぐらいだ。
世の中オカルトぐらいあるように思えてきた。
「これからも彼女は私を襲ってくるでしょうね。マッスルパワーを失った今、私は普通の一般人。ただの女よ」
「それで良かったのだと言いたいけど、悪魔の対策は必要だな」
「それで考えたんだけど、罪を償えばこの悪夢からさめるんじゃないかしら?」
「唐突な解決策だな。いろいろと突っ込みどころはあるけど」
そもそも臨死体験をして、悪魔が出てきて、罪償って終わるというのが安易だ。
だがもうやるしかないか。
言左衛門ゴリラがバナナの皮を外に捨て、
「うほほ。うほうほ。うほほほほ(俺も奉行に出世するために、シーフードヌードルと偽って、カレーヌードルを同僚に食べさせ、苦しめた過去があるでござる。やつに謝らねば夢にも化けて出てくるでござろう)」
何やら真剣な顔つきで言っているが、言語がわからん。
「笑止!!」リアナがイスを倒して立ち上がり、
「バカどもが! 付き合ってられんわ! 強くなりたければ、喰らえ!!」
捨てゼルフを残して病室から出ていく。
「ねえ誰!? あの子誰なの!?」
俺は軽くパニックを起こす。
オネエ言葉も出てしまう。
大学のアイドルだったはずなのに、なんであんな焼けた肌のオッサンになるのか。
「行きましょ、門平。罪を償うために」
「……えっ? なぜ俺? ひとりで行けば……」
「とりあえずコンビニでプリン買ってきて」
「あっ、うん、はい」
美雪の要望を断り切れず、自腹でプリンを買わされた。
車の運転をさせられ、助手席には美雪が、後ろの席はゴリラが支配していた。
美雪の実家近くにある墓に連れていかれ、妹の萌美の墓にプリンが置かれる。
「あなたが好きだった、糖質ゼロのプリンよ」
美雪はそういうと、手を合わせた。
俺とゴリラも手を合わせる。
となりにいた金髪碧眼の女の子も手を合わせている。
静かな時間が流れた。
しばらくして手を解放すると、金髪碧眼の女の子がいなくなっていた。
霊的な何かを感じるとしたら、無事成仏できたのだろうか。
「なあ。妹さんはプリンを食べて、食中毒で死んだのか?」
「いいえ、違うわ。萌美はプリンが食べたいと言ったけど、私は完璧なお人形さんがほしかったから、彼女の胃の中に食べ物が残ることを恐れたの。水を飲ますのが精いっぱいだったわ」
「…………」
あれ? 今やべぇこと聞いたような気がする。
そもそも美雪に妹がいたなんて初めて聞いた。
俺はなんらかの恐怖を感じて、それ以上聞くのをやめた。
言左衛門はライバルだった親友に会いにいっていた。
親友もゴリラになっていて、言左衛門を見て激しく胸を手でたたき、ドラミングをしていた。
言左衛門はシーフードヌードルを友に見せる。
威嚇がピタリとやみ、「うほうほ」とふたりは見つめ合い、お尻を突き合わせた。
なんらかの友情が芽生えたようだ。
言左衛門はゴリラから人間に戻り、すべてが解決したかのように思えた。
美雪の携帯が鳴った。
「はい? えっ、リアナ? どうしたの? えっ、えっ? ちょっと待って!」
美雪の携帯が切れたようだ。
俺と言左衛門は注目する。
美雪は俺を見て、
「大変よ……携帯の電源が切れたわ!」
「ちゃんと充電しとけよ」
「それどころじゃないの! リアナが自殺するって! 単位を取るためにカンニングしたから!」
「うそだろ、おい? 最強の生き物がなんでそんなにメンタル弱いんだよ」
「早く大学の地下室に行くのよ! あそこには、賞味期限が一年以上たったカップラーメンがあるの!」
「マジか! そいつは大変だ!」
車のハンドルを操作し、アクセルを踏みつつ、信号が赤になったら停止し、いつもよりも遅く大学の駐車場についた。
俺たち三人は大学の地下室に向かった。
階段を駆け下り、美雪について行ったら道を間違えたのか迷い、一時間も遅れてカップラーメンが保存されている倉庫につく。
リアナがうつぶせに倒れていた。
筋肉の塊が転がってるのかと思った。
ライオンみたいな髪型がペタンと床についている。
食べかけのカップラーメンが転がっていたので、手に取ってみると、三年前に賞味期限は切れていた。
「遅かったか……」
死んだのはつらいけど、なぜか悲しい思いにならなくてすんだ。
これがもし、元のリアナだったら、俺は号泣していただろう。
肉だるまのオッサンが死んでも、涙がこみ上げてこない。
美雪がそばに立ち、
「助けないといけないわね」
「そうだな。早く救急車と警察を……」
「いいえ。あなたがやるの」
「はっ!?」
彼女の顔を見ると、後ろの言左衛門に何か合図をしている。
「ふんっ!!」
「ぐはっ!?」
後頭部を刀の鞘で殴られた。
意識が飛んだ。
起き上がると、見たことのない廃虚にいた。
「ぐはぁっ!」
「うわぁっ!?」
廃虚の壁を突き破って、リアナが飛び出してきた。
皮膚がところどころ赤くなっている。
「なんだぁ!? なんだなんだぁ!?」
「やかましい! 集中できんだろうがっ!」
「はいいっ!」
リアナに怒られてしまった。
鼻血まで出している。
このバトル展開はいったい!?
「しぶといですね。いいかげん、この萌美にひざまずきなさい」
金髪碧眼の幼女が、プリンを食べながら、穴のあいた壁から出てきた。
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
だらだらとした映画語り【チャット】
因幡雄介
エッセイ・ノンフィクション
門平善照と美雪雪音が独断と偏見でだらだらと映画をチャット形式で語る記事です。雑談は因幡雄介担当。
《映画紹介キャラクター》
*門平善照(かどひらよしてる)・・・男子高校生。冷静なツッコみ役。
*美雪雪音(みゆきゆきね)・・・女子高校生。何かと暴れる役。
*ベルシュタイン・・・女子留学生。戦闘が得意なお嬢様。
*萌美(もえみ)・・・妖精さん。漢字が読めないが、ひらがなも読めない破壊の魔法少女。
*リアナ恵子(りあなけいこ)・・・女子留学生。穏やかなお嬢様。
*真田雪村(さなだゆきむら)・・・女子高生。貧乏苦学生。
*猫美(ねこみ)・・・猫獣人さん。「にゃー」しか言わないが、日本語を理解できるし、普通に話せる。
*西成区の女神(にしなりくのめがみ)・・・宗教団体『御母様』幹部
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クルマについてのエトセトラⅡ
詩川貴彦
エッセイ・ノンフィクション
また始まるよ!!
しつこいようですがまた書いていきたいと思います。
理由は?
理由はお金も体力も嗜好品も趣味もなくて、暇だけはあって、要するに貧乏で暇だからです(泣)

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる