13 / 47
ゲット・アウト
日本人にとってかわいいものは正義
しおりを挟む
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/11/01/095030)
門平善照には恋人がいた。
萌美という六歳の妖精さんだ。
彼女は妖精で人間ではないが、人間の年齢でいうと六歳なので、見た目は幼女にしか見えない。
日本では完全に結婚できる年齢ではないけど、人間ではないのでセーフだった。
自慢のカメラの手入れを部屋でしていると、萌美がドアを開けて入ってきた。
「お兄ちゃん! 何してるの?」
はじけるような笑顔を見せる萌美。
とことこと歩いてきて、ベッドにポンッとのる。
彼女は俺のことを「お兄ちゃん」と呼んで慕っている。
けっして言わせているわけではない。
「別に。仕事道具の手入れさ」
「へー。そんなことより、したくはすんだ? ワンワンはかわいいねぇ」
萌美は俺のペットである小型犬をなでなでし始めた。
集中力がないのだ。
まあ、幼女だからしかたないだろう。
「終わったよ。それよりご両親に、その、俺が日本人だと伝えたか?」
「ううん。なんで?」
萌美が首を振って、小さくかしげる。
まあ、忘れてるだろうなとは、思ってた。
これも幼女だからしかたないだろう。
一抹の不安を残しつつ、俺と萌美は車に乗って、萌美の実家に向かった。
運転は萌美がしている。
本来車の運転は免許が必要だけど、妖精は特別必要なかった。
口笛をふきながら、萌美はブレーキやアクセルを飛び込んで踏んでいた。
小柄なのでしかたないが、よく体力が持つものだと感心する。
親友の言左衛門にペットの世話を頼もうと、スマートフォンで電話した。
彼は警備員の仕事をしている。
「おおっ! 門平ではないか! どうしたでござる?」
「ああ。すまないけど、ペットの世話を頼みたいんだ」
「ほう? どこに行くでござるか?」
「萌美の実家だ。ご両親にあいさつしにいく」
「ほほう。まあ人の恋路を邪魔する気はござらんが、やめたほうがよかろう」
「なんでだ?」
「ロリコンと思われるでござる」
そう。それだ。
日本人はかわいいもの好きなので、世界的にもロリコンが多い国だと思われている。
ツイッターのアニメ調アイコンがそれを物語っているのだ。
変な目でご両親に見られなければいいのだが……。
「ぐはっ!?」
突然車が停止した。
スマホの通話が切れる。
サイドミラーが取れてたれている。
「なんかひいちゃったぁ~」
萌美がうるうると俺を見る。
警察を呼び、ひいたものを見に行くと、野生のマスコットキャラだった。
日本一ブサイクだと言われた、奈良のやつだ。
ピクピクとけいれんしている。
ついに世間に飽きられてしまい、美女と交代させられたか。
警察に説明していると、免許証を求められる。
「俺は助手席に座ってて、何もしてないんだけど……」
「いいから出しなさい」
有無を言わさない態度だ。
顔が引きつり、犯罪者を見るかのような目で俺を見ている。
普通なら萌美に免許証提示を求めそうなものだが……。
萌美は両目をうるわし、警察官のズボンをひっぱり、
「おじさん、いじわるはやめてよ……」
「うん。わるかった。おじさんは帰る」
泣かれるとめんどうだと思ったのか、パトカーに乗って帰っていった。
萌美の実家に着くと、ご両親が迎えてくれた。
途中で草を刈っている使用人は、同じ日本人だった。
親近感をおぼえる。
両親は萌美と同じく小柄で、目が大きく、年齢も萌美と変わらなかった。
ひげをつけた萌美のお父さんに家の中を案内される。
台所に日本人女性の使用人が立って迎えてくれた。
口の端が切れそうなぐらいの笑顔なので、ちょっと不気味だった。
萌美のお父さんと外を歩き、
「日本では総理大臣をキャラクター化するそうだね」
「政治が悪かったら売れませんよ」
「そうか。わが国も前大統領のキャラクターなら買うがね」
この国の人々は、今の大統領のキャラクターが出たら、額に銃弾を撃ち込みそうだ。
夜。
萌美の弟が帰ってきたようなので、家族で食事を取る。
弟はボサ髪のヒゲ面で不衛生そうだが、体格はやっぱり萌美だった。
弟は医者だそうだ。父は外科医で、母は精神科医。
いわゆるインテリ家族だった。
萌美から聞かされていなかったので知らなかった。
俺も家族のことを聞かれたが、関係が悪いので、口をにごす。
弟はユーチューブにはまっているらしく、
「日本はバーチャルユーチューブってのが人気らしいな?」
「最近出てきましたね」
「なあ? なんで猫耳をつけた女の子キャラで、動画三つ出しただけで、チャンネル登録数十万も取れるんだよ? お前の国はどうなってんだ?」
酒で酔ってるのか、口が悪い。
俺の肩をつかみ揺すってくる。
「教えろよ! 俺が猫耳つけたら、チャンネル数百は減ったぞ!? お前の国はどんだけキメラ好きなんだよ! あれ目の大きいグレイ型エイリアンと何が違うんだよ!」
「しっ知りませんよ!」
そこは日本人の俺でもわからん。
萌美のお母さんが蜂蜜入り緑茶をバンッと机に置き、
「あなたに足りないもの――歌と踊りよ」
お母さん。それを入れても、こいつは無理だ。声がウシガエルだから。
「えいっ!」
「ほぐっ!?」
萌美が弟にケーキを投げつけた。
そのあと、ケーキ投げ合戦が始まる。
激しいバトルではなく、ファンシーな気分になった。
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/11/01/095030)
門平善照には恋人がいた。
萌美という六歳の妖精さんだ。
彼女は妖精で人間ではないが、人間の年齢でいうと六歳なので、見た目は幼女にしか見えない。
日本では完全に結婚できる年齢ではないけど、人間ではないのでセーフだった。
自慢のカメラの手入れを部屋でしていると、萌美がドアを開けて入ってきた。
「お兄ちゃん! 何してるの?」
はじけるような笑顔を見せる萌美。
とことこと歩いてきて、ベッドにポンッとのる。
彼女は俺のことを「お兄ちゃん」と呼んで慕っている。
けっして言わせているわけではない。
「別に。仕事道具の手入れさ」
「へー。そんなことより、したくはすんだ? ワンワンはかわいいねぇ」
萌美は俺のペットである小型犬をなでなでし始めた。
集中力がないのだ。
まあ、幼女だからしかたないだろう。
「終わったよ。それよりご両親に、その、俺が日本人だと伝えたか?」
「ううん。なんで?」
萌美が首を振って、小さくかしげる。
まあ、忘れてるだろうなとは、思ってた。
これも幼女だからしかたないだろう。
一抹の不安を残しつつ、俺と萌美は車に乗って、萌美の実家に向かった。
運転は萌美がしている。
本来車の運転は免許が必要だけど、妖精は特別必要なかった。
口笛をふきながら、萌美はブレーキやアクセルを飛び込んで踏んでいた。
小柄なのでしかたないが、よく体力が持つものだと感心する。
親友の言左衛門にペットの世話を頼もうと、スマートフォンで電話した。
彼は警備員の仕事をしている。
「おおっ! 門平ではないか! どうしたでござる?」
「ああ。すまないけど、ペットの世話を頼みたいんだ」
「ほう? どこに行くでござるか?」
「萌美の実家だ。ご両親にあいさつしにいく」
「ほほう。まあ人の恋路を邪魔する気はござらんが、やめたほうがよかろう」
「なんでだ?」
「ロリコンと思われるでござる」
そう。それだ。
日本人はかわいいもの好きなので、世界的にもロリコンが多い国だと思われている。
ツイッターのアニメ調アイコンがそれを物語っているのだ。
変な目でご両親に見られなければいいのだが……。
「ぐはっ!?」
突然車が停止した。
スマホの通話が切れる。
サイドミラーが取れてたれている。
「なんかひいちゃったぁ~」
萌美がうるうると俺を見る。
警察を呼び、ひいたものを見に行くと、野生のマスコットキャラだった。
日本一ブサイクだと言われた、奈良のやつだ。
ピクピクとけいれんしている。
ついに世間に飽きられてしまい、美女と交代させられたか。
警察に説明していると、免許証を求められる。
「俺は助手席に座ってて、何もしてないんだけど……」
「いいから出しなさい」
有無を言わさない態度だ。
顔が引きつり、犯罪者を見るかのような目で俺を見ている。
普通なら萌美に免許証提示を求めそうなものだが……。
萌美は両目をうるわし、警察官のズボンをひっぱり、
「おじさん、いじわるはやめてよ……」
「うん。わるかった。おじさんは帰る」
泣かれるとめんどうだと思ったのか、パトカーに乗って帰っていった。
萌美の実家に着くと、ご両親が迎えてくれた。
途中で草を刈っている使用人は、同じ日本人だった。
親近感をおぼえる。
両親は萌美と同じく小柄で、目が大きく、年齢も萌美と変わらなかった。
ひげをつけた萌美のお父さんに家の中を案内される。
台所に日本人女性の使用人が立って迎えてくれた。
口の端が切れそうなぐらいの笑顔なので、ちょっと不気味だった。
萌美のお父さんと外を歩き、
「日本では総理大臣をキャラクター化するそうだね」
「政治が悪かったら売れませんよ」
「そうか。わが国も前大統領のキャラクターなら買うがね」
この国の人々は、今の大統領のキャラクターが出たら、額に銃弾を撃ち込みそうだ。
夜。
萌美の弟が帰ってきたようなので、家族で食事を取る。
弟はボサ髪のヒゲ面で不衛生そうだが、体格はやっぱり萌美だった。
弟は医者だそうだ。父は外科医で、母は精神科医。
いわゆるインテリ家族だった。
萌美から聞かされていなかったので知らなかった。
俺も家族のことを聞かれたが、関係が悪いので、口をにごす。
弟はユーチューブにはまっているらしく、
「日本はバーチャルユーチューブってのが人気らしいな?」
「最近出てきましたね」
「なあ? なんで猫耳をつけた女の子キャラで、動画三つ出しただけで、チャンネル登録数十万も取れるんだよ? お前の国はどうなってんだ?」
酒で酔ってるのか、口が悪い。
俺の肩をつかみ揺すってくる。
「教えろよ! 俺が猫耳つけたら、チャンネル数百は減ったぞ!? お前の国はどんだけキメラ好きなんだよ! あれ目の大きいグレイ型エイリアンと何が違うんだよ!」
「しっ知りませんよ!」
そこは日本人の俺でもわからん。
萌美のお母さんが蜂蜜入り緑茶をバンッと机に置き、
「あなたに足りないもの――歌と踊りよ」
お母さん。それを入れても、こいつは無理だ。声がウシガエルだから。
「えいっ!」
「ほぐっ!?」
萌美が弟にケーキを投げつけた。
そのあと、ケーキ投げ合戦が始まる。
激しいバトルではなく、ファンシーな気分になった。
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
だらだらとした映画語り【チャット】
因幡雄介
エッセイ・ノンフィクション
門平善照と美雪雪音が独断と偏見でだらだらと映画をチャット形式で語る記事です。雑談は因幡雄介担当。
《映画紹介キャラクター》
*門平善照(かどひらよしてる)・・・男子高校生。冷静なツッコみ役。
*美雪雪音(みゆきゆきね)・・・女子高校生。何かと暴れる役。
*ベルシュタイン・・・女子留学生。戦闘が得意なお嬢様。
*萌美(もえみ)・・・妖精さん。漢字が読めないが、ひらがなも読めない破壊の魔法少女。
*リアナ恵子(りあなけいこ)・・・女子留学生。穏やかなお嬢様。
*真田雪村(さなだゆきむら)・・・女子高生。貧乏苦学生。
*猫美(ねこみ)・・・猫獣人さん。「にゃー」しか言わないが、日本語を理解できるし、普通に話せる。
*西成区の女神(にしなりくのめがみ)・・・宗教団体『御母様』幹部
ネオンブルーと珊瑚砂
七草すずめ
エッセイ・ノンフィクション
初めての海外旅行、行き先は常夏の島グアム。旅のおともは家族にカメラ、それから妹の彼氏……!? ぽんこつな長女すずめと彼氏連れの次女つぐみ、マイペースな三女ひばりとちゃっかりものの末弟、羽斗。爽やか彼氏に行動的な父、天然の母が加われば、ただの旅行では終わらない! 筆者が見たグアムの四日間を切り取った、初の長編エッセイ。他人の家族旅行なのに、なぜかおもしろい!?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
カクヨム、noteではじめる小説家、クリエーター生活
坂崎文明
エッセイ・ノンフィクション
カクヨム、noteを中心に小説新人賞やクリエーター関連のエッセイを書いていきます。
小説家になろう、アルファポリス、E☆エブリスタ、ノベラボなどのWeb小説サイト全般の攻略法も書いていきます。
自動バックアップ機能がある『小説家になろう』→カクヨム→noteの順に投稿しています。note版がリンク機能があるので読みやすいかも。
小説家になろう版
http://ncode.syosetu.com/n0557de/
カクヨム版(567関連で公開停止)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880246141
【続編】カクヨム、noteではじめる小説家、クリエーター生活2 作者 坂崎文明
https://kakuyomu.jp/works/16816700427247367228
note版
https://note.mu/sakazaki_dc/m/mec15c2a2698d
E☆エブリスタ版
http://estar.jp/_howto_view?w=24043593
小説家になるための戦略ノート 作者:坂崎文明《感想 130件 レビュー 2件 ブックマーク登録 1063 件 総合評価 2,709pt文字数 958441文字》も人気です。
http://ncode.syosetu.com/n4163bx/
我らおっさん・サークル「異世界召喚予備軍」
虚仮橋陣屋(こけばしじんや)
青春
おっさんの、おっさんによる、おっさんのためのほろ苦い青春ストーリー
サラリーマン・寺崎正・四〇歳。彼は何処にでもいるごく普通のおっさんだ。家族のために黙々と働き、家に帰って夕食を食べ、風呂に入って寝る。そんな真面目一辺倒の毎日を過ごす、無趣味な『つまらない人間』がある時見かけた奇妙なポスターにはこう書かれていた――サークル「異世界召喚予備軍」、メンバー募集!と。そこから始まるちょっと笑えて、ちょっと勇気を貰えて、ちょっと泣ける、おっさんたちのほろ苦い青春ストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる