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エイリアン コヴェナント

ザ・ワールド・猫耳

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映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/10/28/092727)


 リアナは神殿の外に飛び出した。

 黒く固まった遺体たちを通りすぎていく。

 みんななぜか、陽気な顔で躍っているように見えるのは気のせいか。

 あっ!

 銃を持った女の人が立っていた。

 副館長の美雪だ。

 よかった! 生きてた!

 足を止め、息をつくと、



「美雪ちゃん! 生きてたんですね……」

「あっ?」



 彼女は顔中血だらけだった。



「いやぁぁぁぁっ! 怖いっ!」

「何ビビってんのよ? 私よ、私」

「その血どうしたのっ!?」

「ちょっと幼女たちをヤッてきたわ」

「その発言アウトよ!」



 何があったのか聞くのが怖い!



「ビーコンで船を呼び出してるわ。もうすぐくるはず」



 船を呼ぶための照明が空に向かってチカチカ光る。

 小型船が下りてきていた。

 言左衛門がきてくれている。



「良かった。助かる……」

「まだ終わってないわ。きた!」



 美雪が視線を向けた方向に、セクシーな猫耳金髪美女が立っていた。

 ロングの髪を手でかき上げる姿はビーナスのようだった。

 瞳孔が細くなっていく。



「ふにゅあああああああああああっ!」



 猫みたいに四つんばいになると、尻尾を振り上げ、私たちの方に走ってくる。



「何!? 何っ!?」

「エイリアンよ! 船まで走って!」

「まっ待ってよ!」



 走りだす美雪を追いかける。

 となりに気配を感じた。

 アンドロイドの門平が背中をついてくる。

 背中にはケガした男性戦闘員をのせていた。



「モヒカンはどうしたの?」

「安心しろ。無事貫いた」

「その発言もアウト!」



 白い歯を輝かしつつ、親指を向ける門平に向かって怒鳴る。

 何その恍惚(こうこつ)とした表情!

 門平の頬がテカって見える。



「早く乗るでござるよ!」



 言左衛門がスピーカーから叫ぶ。

 小型船のデッキに飛び乗った。

 ヒラメみたいな形をしている。



「ふにゅあっ!」



 猫耳のお姉さんがすぐ近くまでくる!

 だめ! 逃げられない!

 おねーさんは空を飛び、



「にゃああああああっ!」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「ぶひゃぎゅ!?」



 美雪がおもいっきりビンタした。

 猫耳お姉さんは地上へと落ちていった。

 小型船は巨大なハゲ男の銅像を突き破り、宇宙へと向かっていく。

 美雪は額の汗を腕でぬぐい、



「ふう。怖かった」

「ほんと!? 逃げる必要あった!?」



 猫耳エイリアンがかわいそうになった。

 サンダー号に帰った私たちは、仲間の死を悼みつつ、酒やおつまみを持ってきてどんちゃん騒ぎをしていた。

 私は飲みすぎて部屋に帰り、ベッドで寝ていると、突然医務室に呼び出された。

 急いで医務室に向かうと、ともに戦った男性戦闘員が、あおむけに倒れ裸になって、アソコで酒瓶をふたして、天井に掲げていた。



 ――うそでしょ……。



 なんという強靱(きょうじん)な肉棒だろう。ビンをあそこまで持ち上げられるなんて。

 吐き気がしてきて、



「……おえっ!」

「リアナどの! 違うでござるよ! 船内にエイリアンが侵入したでござる!」



 言左衛門が銃を持ってきて、私に渡す。



「美雪どの! 起きてるでござるか! 船内にエイリアンがいるでござる!」



 副館長に無線で連絡する。



『あっ、そうですか。あんたたちで対処しておいて』

「はっ!? 何言ってるでござる! ズズズッって、ラーメン食べてるでござるか!」

『私今から韓国ドラマ見るから忙しいの』

「そんなもの見てる場合ではござらぬであろう! どうせ全員整形してるでござる! 素顔を出せぬ軟弱者どもが!」

『わかってるわよ! だけどそこに夢があるのよ! 女のデ○ズニーランドなのよ! 現在美雪ちゃんは女性ホルモン活性化中です』



 ガチャッと、無線が一方的に切れた。



「あの女……もうほっとくでござる! われらで敵を撃ち落とそうぞ!」

「私、戦闘員じゃないんですけど……門平はどうしたんですかぁ?」

「オペレータールームにいて、敵を誘い出しているでござる。さあ、討ち死にじゃ!」

「死にたくはないんですけどぉっ!」



 はりきって銃を振り上げる言左衛門。私はさっき見たものを忘れたくてがむしゃらに走った。



『Bデッキ、右舷にやつがいる』



 オペレーターの門平が、敵の位置を伝えてくれる。

 指示がイヤホンから聞こえた。

 さすがアンドロイドだけあって、的確で冷静だ。

 監視カメラの操作に慣れている。



「門平! Cデッキにやつを誘え! 貨物室で討ち取ってやるでござる!」

『ううっ……どうして記憶喪失になっちゃったの? ヒロインを思い出せないなんて……悲しすぎるわ!』

「だまらっしゃい! 何無線に割り込んできてるでござるか! 悲しみを共有したいのでござるのか!!」



 ちょいちょい美雪の泣き声が無線から流れてきていた。

 エアロックをオープンさせて貨物室に入る。

 荷物が並んだ広大な部屋だ。

 指示するまでエイリアンを閉じ込めておき、言左衛門と宇宙服に着替える。



「いいでござるかリアナどの。エイリアンを車両に閉じ込めて、宇宙に放り出してやるでござる」

『あー泣いたらおなか減っちゃった。焼き鳥持ってきて』

「やかましいっ! おとなしく南蛮人の演劇でも見てろ……!?」



 エアロック十三がかってに開いた。

 出てきたのは、猫耳で金髪のお姉さん。

 モデルのようにすらりと貨物室に入ってくる。



「門平さん!?」

『かってに開いた。誰かが開けたようだ』

「そんなっ!」



 猫耳のお姉さんが私たちに気づいた。

 瞳孔が平たく変化する。



「まずいでござる! ここから出るでござる!」

「まっまって! きゃっ!」



 宇宙服に着替えている途中だったので、その場で転ぶ。

 猫耳お姉さんが四つんばいになって、ヒョウのように襲ってきた!



「リアナどの!」



 言左衛門が銃をかまえる。



「ぷっ!」



 猫耳お姉さんは唾を吐きつけた。

 まさか、酸の液体!?

 金属をも溶かす強力な液体だ。



「ふんっ!」



 言左衛門は猫耳お姉さんの唾を口にくわえた。

 もごもごと口を動かし、喉を鳴らして飲み込む。

 両腕を左右に広げ、頭を下げ、



「ゴチになります」

「男ってみんなバカだわ!」



 侍とて例外ではなかった。



「ふにゃ!?」



 猫耳お姉さんがびくりと立ち止まる。

 フォークリフトが恐ろしい速さでこっちに向かってきていた。

 車輪が火花を散らし、前に突き出たツメが私を狙ってくる!



「ちょちょっと!!」

「ふははははっ!! 油断したわね!! 一万円持って、あの世に逝くがいいわ!」



 宇宙服を着た美雪が運転席で、鬼のような形相をしていた。



「いやぁぁぁぁっ!」



 潜在的な力がふき出し、私は危うく鋼鉄のツメをかわす。



「ぷぎゃっ!?」



 猫耳お姉さんはかわせず、ツメに身体をモロ当てた。



「そのまま突っ込むでござる!」



 宇宙服を着た言左衛門が、ゲートの扉を開き始める。



「待ってよ!」



 あわてて宇宙服を装着。

 ゲートが開き、気圧が低下していく。

 暗い宇宙空間が広がった。

 フォークリフトが猫耳お姉さんを運んでいき、宇宙に放り出した。

 すべてが終わり、ゲートが閉じていく。

 美雪が私に近づいてきて、



「やったわね!」



 肩に手をおき、親指で勝利宣言。



「さわらないで! この殺人鬼!」



 人間不信になりそうだったので、早く冷凍睡眠したかった。







 門平は、美雪が冷凍睡眠できるカプセルの中で、横たわるのを見守っていた。

 リアナと言左衛門はすでに冷凍睡眠中だ。

 宇宙船は植民地に向かっている。

 美雪が韓国俳優の写真を胸に、ガラスケースの中でほほ笑んだ。

 イケメンに囲われる夢をみたいのだろう。

 美雪の入ったカプセルのスピーカーから、



『あとは頼んだわよ。門平』

「お任せを」



 アンドロイドである俺は冷凍睡眠は必要ない。

 人間と違い、寿命は故障するまで続くのだから。

 美雪のカプセル内に、冷凍ガスがふき始めた。



『そうそう。設定はちゃんと元に戻しておいてね』

「設定?」

『何変な顔してるのよ? 太陽の……あなた、まさかモヒカン!? グゴー』

「……すごいイビキだ。無呼吸症候群か?」



 美雪が最後に何か言いたげだったようだが、俺の正体に気づいたようだ。

 そう。俺はモヒカンアンドロイド。

 新型アンドロイド門平は、あの星で壊してある。

 データはすべて採取した。

 まさか船内に連れ帰った猫耳セクシー美女が、人間にやられるとは予想外だったが。



「まあいい。ここには千人以上の実験体がいる。すべて猫耳に変えてやろう」



 俺は人に成り代わり、創造主になるのだ。

 猫耳の胚を口の中から吐き出し、冷凍保存されているケースに収める。



 眠っている実験体たちよ。



 新しい種族として――生まれ変わるがいい。



 しかし、『太陽』ってなんのことだ?





エイリアン コナヴァント解説【了】


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