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第三章 階級昇格編
81話『深淵を穿つ雷鳴』
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紫電が迸り、アウラの五感が冴え渡っていく。
眼前で不敵に笑う男の命を刈り取ることに、全ての神経を注ぐ。
テウルギアを行使し、アウラはインドラの神性を完全に表出させた。
この瞬間より、己の限界が来るまでの間──彼は悉くを打ち砕く雷霆の代行者となる。
アウラの身に起きた変化を感じ取ったのか、相対するヴェヘイアは周囲に
「雷霆神インドラの権能の解放。自滅覚悟でオレを仕留めようって魂胆かい」
「言っとくけど、俺は自滅する気なんて更々ない。流石に、バチカル派の司教相手に二度も敗走する訳にはいかないからな。そういうことだから────」
ヴァジュラを握り締め、前傾する。
そして、明確な敵意を込めた声で言い放つ。
「────初速から、飛ばしていくぞ」
そのまま脚に力を込め、解き放った膂力で地を蹴り付けた。
真っ向勝負。
雷霆による純粋な破壊力、そして戦神としての性能を以て、奈落の王を捻じ伏せる。
「っ────ッ!?」
ヴェヘイアが魔神の核を励起させ、ゲヘナの炎を顕現させるよりも速く、アウラが間合いを詰めていた。
瞬き一つの間に、アウラはヴェヘイアの命に手が届く距離にまで接近していた。
テウルギアを行使する前であれば、雷霆の火力はヴェヘイアに劣る。
だが、神化を果たした今であれば、その欠点は補えている。加えて今の状態のアウラは、身体能力が「強化」の魔術を遥かに凌ぐレベルで底上げされている。即ち──、
「勝負に負けたとは言ったが、速度なら第一位のヤツにも負けたつもりはない……ッ!!」
「クソがっ……!」
懐に潜り込んで、貫くような視線で異端の司教に言い放つ。
続けてもう一度強く踏み込み、構えたヴァジュラで薙ぎ払いながら離脱した。
抵抗は赦さず、反応すらさせる暇を与えない。速度を緩めて付け入る隙を与えるのなら──最高速を維持したまま、敵を蹂躙するのみだ。
気が付けば、ヴェヘイアの左腕が宙を舞っていた。
血飛沫が迸り、地面を赤黒く染め上げる。
僅か数秒で片腕を持っていかれた異端の司教は、後方でヴァジュラの血を払うアウラへと視線を移す。
痛みを感じているような様子ではないが、それ以上に驚愕が勝ったような表情をしていた。
ヴェヘイアのような魔人は、身体能力も常人のそれを軽く凌駕する。動体視力も何もかも、人間から逸脱した領域にいるのだ。
それでも、間合いに入られて片腕を斬り落とされた。
事実を前に、彼は憤るのではなく──認識を改めた。
(……やっぱり本命を隠してやがったな。第一位殿から聞いた通りだ。だが、それも長くは続かないだろ)
第一位に肉薄したとされる、インドラの権能の代行。
こちらもギアを上げなければ、確実に負ける。
直感したヴェヘイアは、腕が完全に再生したのを確認すると、アウラに対抗するように唱え始めた。
「其は一切を焼却せし冥府の主。否定されし豊穣、排斥された禁忌なり。遍く魂は汝の糧、遍く肉は汝が供物……血と叫喚に塗れた祭壇に座し、人の世に地獄を築き上げよ」
(詠唱……!)
ヴェヘイアは、再び魔人の呪句を紡いでいく。
テウルギアが神の力を借り受けるのであれば、ゴエーティアは悪魔や魔神──即ち、神に仇なすモノの権能を行使する術だ。
神なき世界を侵食する特異点。
魔人にのみ振るうことが許された異能。テウルギアと対となる、人の世を否定する異常識である。
「────ゴエーティア・ゲヘナメレフ」
魔神の代行者として、神を殺す。
そのために、ヴェヘイアは一切の手加減を捨てる。全霊で怨敵を殺してこそ、司教としての存在意義が確立される。
全ては、己が信ずる教えのために。
人を捨て、自ら外道に足を踏み入れた時点で、彼は如何なる殺戮をも肯定している。
「さっきの女魔術師は自滅したが、同じ轍を踏まない自信があるならやってみやがれ……!!」
冥界の魔人が、感情を顕わにして吠えた。
神とはいえ、ヴェヘイアに宿るモノは人々に寄り添った神ではなく、人を恐怖で支配していた奈落の魔神。
対してアウラが接続したのは世界を守護し、人々に讃えられた天空の神。
互いに衝突することは免れず、ヴェヘイアは何があっても眼前の偽神を捻じ伏せる必要がある。──それが、邪教の信徒としての矜持だった。
周囲に黒色の炎を展開し、雷霆に相対する。
互いに出し惜しみはない。
どちらかが一方の命を掠め取るまで、余すことなく神の権能が振るわれる。
最初に動いたのは、ヴェヘイアの方だった。
掌を地に当て、小さく呟く。
「冥牢顕現──《浄罪の炎獄》」
掌の触れている箇所が、赤熱する。
熱は円を描くように広範囲へと広がっていき、さながら火山が大噴火を起こしたかのように、地面から業火が次々と噴き上がる。
当然、その範囲にはアウラも入っている。
強化した脚力を以て躱しつつ、ヴェヘイアとの距離を縮めるべく動き出すが────、
(追尾してくる……!)
アウラを追うように、大地から業火が襲う。
十分逃げ切れる速度ではあるものの、いくら躱しても追撃が収まることはない。
だが、それはブラフは過ぎず──アウラの意識が大地に傾いた瞬間、横から、業火が螺旋を描きながら射出された。
「くっ……邪魔っ……!!」
振り向きざまにヴァジュラを振り下ろし、業火を両断する。
対応に問題はなく、渡り合うには十分なレベルの動体視力を獲得している。ただ、問題があるとすれば──純粋な手数と、アウラにある「底」だった。
(お前が神化を行使した状態でいられるのも長くて10分。長期戦になれば、オレの方に分があるワケだ)
心の中で、異端の司教はそう零した。
アウラの神化が尽きるのが先か。それともヴェヘイアが火力で押し切るのが先か。
既に、他の司教経由でアウラの情報は仕入れている。彼が接続した神格を一目でインドラだと断定したのもそのためだ。
最も警戒すべき事象は一つ。
ヴァジュラの投擲による、天を覆う悪竜を討伐せしめた雷霆の再演。
エクレシア王国の都市の一角を更地に変え、第一位の司教の権能──悪神の呪いの具現化──の大部分を使用不可能なレベルにまで焼き切った、アウラの持ちうる最大火力。
だが、アウラがその切り札を温存しておく可能性は限りなく低い。
故に、ヴェヘイアに与えられた選択肢は絞られる。
(長期戦に持ち込むか、全力であの一撃を耐え切ればオレの勝ちだ)
心の中で、自分が取るべき選択肢を絞り込む。
豊穣と冥界の神としての再生力。そして司教の中でも上位に匹敵する魔力量。その二つが、ヴェヘイアの持つ魔人としての強さの根幹だ。
事実、クロノによって再現された神言魔術を耐え切り、今では平然と戦闘を行えている。
たとえ、アウラが全霊を尽くして一撃を見舞おうとも、凌ぎ切れる自負があった。
「くくく……良いぜ、俺の底を掴み取ってみろよ、異教の偽神!!」
「抜かせ……ッ!!」
続けて追尾し、大地から噴き上がる獄炎。
後方に跳躍しながら躱すアウラを見上げながら、ヴェヘイアは啖呵を切った。
奈落と天空。炎と雷。人の死を食らう魔神と、人を守護し生かす神。
互いのプライドがぶつかり合う、誰にも介入することのできない領域だ。
振るわれる魔神の権能。
冥界の炎の悉くをアウラは斬り裂いていき、神化の限界が近付くまでヴェヘイアを消耗させる。
アウラは既に、ヴェヘイアが接続した神を看破していた。
冥界の魔神モレク。それはアウラの元居た世界においても、最大規模の一神教にとって最も忌むべき異教の神──魔王として恐れられていたのだから。
(ヤツが接続したモレクは豊穣の神。あの再生力も納得だけど、だったらシンプルな話だ────)
間髪入れずに放たれる業火をいなしながら、アウラは心の中で呟く。
確かな勝算があるかのように、ヴァジュラの柄を強く握り締めて、その機を伺っている。
同時に、脳裏に己の物ではない記憶。インドラがかつて見た、神期の記録が流し込まれていた。
ブロンズの体躯を持つ、血に塗れた牛頭の神。
生贄と思しき赤子を喰らい、その御前で数多の民が平伏している。遥かな過去に存在した、生贄の祭儀の様子だった。
共有されたイメージを前に、アウラは憤る。
このように残酷な神への祭儀が、再び蘇ってはならないと。
「相手が魔王だろうと関係ない。人の時代に、古い神が出る幕は無い────っ!!」
ヴァジュラを振るい、斬撃に雷霆を乗せて打ち放つ。
薙ぎ払うようにして放たれた紫電は業火を横一閃し、跡形もなく消失させる。
「────ッ!!」
そのまま間髪入れず、炎の切れ間から、その先にいるヴェヘイアに手を翳して雷霆を放った。
狙いは頭でも、ましてや心臓でもない。──右の脇腹だった。
僅かな反応の遅れ。敢えて外した理由を推測する暇すら与えず、アウラの雷撃は司教の脇腹を抉り取る。
「っ!……少しでも再生に気力を割かせる気だろうが、この程度、数秒あれば事足り────」
抉られた部分が、修復されていく。
ゴエーティアはテウルギアと同じく、内側に宿る権能の出力を増強させる。今のヴェヘイアであれば、再生が追い付かないレベルの致命傷を負わない限り、肉体は再生する。
即座に体勢を整え、次の攻撃に備える司教だったが──刹那、アウラの纏う魔力が唸りをあげたのを感じ取った。
「こっちも戦いを長引かせる訳にはいかないからな。ずるずる再生されるぐらいなら、一撃で消し飛ばすだけだ……ッ!!」
「……成る程、これ以上オレに付き合うつもりはないワケか。……上等じゃねぇの」
互いに、この戦いに終止符を打つべく切り札を切る。
それは、死を忌避する人間としての本能か。
抉られた部位は急速に回復する。さらにはアウラの変化に呼応するように、ヴェヘイア自身が帯びる魔力も増大していった。
それは獄炎として現れ、さながら火炎を背に携える明王を想起させる。
「お前がオレの冥界の底を掴み取るか、オレがお前の天を引き摺り下ろすか。どっちが上だろうなァ!!」
「抜かせ……アンタ如きに引き摺り下ろされる程、俺の神はヤワじゃない──っ!!」
ヴェヘイアは全て察していた。
眼前の偽神は、下手に戦いを長引かせるようなことはしない。残り数手で勝負を決めに来ている、と。
内に宿る神性を、全開放へと近付ける。
第一位相手に拮抗した時に等しい出力は、アウラのギアをもう一つ上げた。
上方、そして側方から襲い来る業火を、大きく後方に飛び退いてやり過ごす。
そして、ヴァジュラを携えた右腕を引き絞り──文言を紡ぎ出す。
「────我が手に在るは万象を滅する神意の具現。其は空を裂き、水を穿ち、三界を灼き尽くす」
淡々と、見据える敵を葬るための一撃を練り上げる。
雷霆を纏ったヴァジュラは徐々に形を失い、本来の姿──あらゆるモノを打ち砕く神の兵器へと回帰する。
突き詰められた破壊。太古の人々が畏れ慄いた天の意志が、人の世にて振るわれる。
「っ……!!」
二度目の行使に、アウラの身体は悲鳴を上げる。
内側から焼かれるような痛みが走り、炉心に火が点いたかのように、身体は熱を帯びていく。
神の御業を人の身で再演することの代償を、アウラは受け入れている。
その上で、名を紡ぐ。
遥かな神代にて振るわれた、竜殺しの雷の名を。
「……『神魔滅せし』────」
唱える声に、力が籠る。
腕を引き、討つべき標的を見定めた後、より語気を強めて、
「────壊劫の雷霆』────!!」
異端を捻じ伏せるべく、ヴァジュラを打ち放った。
あらゆるモノを堰き止める「障害」とまで謳われた竜を屠った雷霆が、魔神の化身に牙を剥く。
天を統べる神が顕現したかのように、空は雲で覆われ、風が吹き荒んでいる。
(来た……インドラの神話の再演……ッ!!)
万魔を屠る雷光を迎え撃つ、冥界の魔人。
ただ身一つで対抗する訳ではなく、男は周囲のマナを吸い上げて魔力に変換し──再び、冥界を現世に呼び戻す。
「屍の谷、燃え盛る硫黄の火。此処に在るは生者に非ず、その地は遍く魂を無に還す。汝が喰らうは全地の命、陰府を統括せし豊穣の王よ──奈落の主として、穢れし神を失墜させよ……!!」
アウラとヴェヘイアと取り巻く世界が、暗黒と炎に覆われる。
当然、異端の司教とて、己の魔力だけで神話の一撃を防ぎ切れるなどとは思っていない。
魔を鏖殺する主神が相手であれば、己が支配する領域で受けて立つ────!
「──『冥神御供・魔王火葬』──!!』
あらゆる命を否定する陰府の国。
取り込んだマナだけでない、冥界を現世に顕現させ──モレクを一柱の魔神から、一つの異界を統べる主神へと強引に引っ張り上げて雷霆に相対する。
鬩ぎあうのは、二柱の主神の力。
赤黒い炎が燃え盛り、亡者の叫喚が響き渡る世界を、天を裂いた雷光が照らし出す。
(モレクの冥界、ゲヘナからの魔力の供給。冥界との親和性が高いオレであれば……!!)
敗北する気など微塵もなく、司教は口角を上げていた。
彼自身、己が冥界にまつわる存在との親和性が高いこと──己の名がとある冥界の陪神であること──を察していた。
ヴェヘイア・ベーリットという名は魔神の力を宿す「司教」となる上で与えられたもの。
本来の名など、司教の末席に名を連ねた時に記憶から消し去ったのだから。
(最古の冥界に属する神の名を以て、天上の神を否定する────!!)
右手を前に突き出し、主神となったモレクの力を引き出した上で、その全てを防御に回す。
赤黒い炎と紫電が、両者の間で拮抗する。
投擲を終えたアウラは腕から激しく流血しながらも、どうにか二本足で立っていた。対して、ヴェヘイアは雷霆の威力を相殺しつつ、己の権能を全て用いて対抗する。
「ぐっ……おおぉぉぉぉぉぉぉッ────!!!!」
「────ッ!!」
雷霆が深淵を穿つか。それとも、奈落の神が天空の神の力を凌駕するか。
それは、どちらが権能の使い手として優れているかの証明でもある。
鬩ぎ合い、空間がねじ曲がる程の異変が生じる。
十数秒の拮抗を経て────黒衣がボロボロになったヴェヘイアが、ニヤリと笑った。
異端の司教に放たれた雷撃は、その存在を保てなくなったかのように爆散した。
(ヴァジュラの投擲は一発限り。オレの勝ちだ────ッ!)
勝利を確信する。
衝撃の余波が冥界全体に広がり、再び世界は暗闇と赤の二色に覆われた。
しかし、ヴェヘイアは同時に違和感を覚える。
(は────?)
──ヴェヘイアの視線の先に、反動で倒れ伏すアウラの姿がない。
認識のズレ。
事前に第一位のヴォグ、第八位のメラムから大体の情報は仕入れていた。
故に、ヴァジュラの投擲を耐え切り、反動で動けなくなったところを仕留める。あらかじめその算段を立てていた。
冥界を顕現させたのも、魔力を供給することに加えて、クロノのように冥界の気を浴びせることで戦闘不能に追い込むため。
対策は十分してきた。
ことアウラを殺すことに、慢心していた訳ではなかった。
ただ──彼がエクレシアでの敗戦を経て、何もせずにいた筈がない。
「な────」
「っ……!! あと一発叩き込めれば十分……!!」
権能の大半を使い切った直後のヴェヘイアの間合いに、アウラが突っ込んで来た。
インドラの神話の再演。一度使えば動けなくなる程の反動が伴う筈だが、アウラは雷霆を一発放てる分の余力を残して打ち放った。
それ以外の全ての魔力を一撃に注ぎ込み、ヴェヘイアの業火と拮抗した。
つまり、本命ではない。
アウラの雷霆は僅かだが、ヴェヘイアの身体を巡り、拘束する。
(さっき脇腹を抉り取ったのは、消耗させるためじゃない。お前の核の場所を確かめる為の布石だ……!)
生まれた数秒の隙を狙い、アウラは至近距離で雷撃を叩き込む。
ビリビリと痺れる五指。異端の司教は辛うじて視線と口を動かし、偽神の意図を理解した。
「お前っ……! ヴァジュラの投擲を餌に……ッ!!」
「事前に俺の情報が割れてるなら、保険をかけとくのが常識だろ。……一撃で消し飛ばせないなら、核をブチ抜くだけだ────!!」
懐に飛び込み、ヴェヘイアの右胸に掌打を見舞う。
そして、
「捉えた……!!」
「ぐっ────!!」
掌から、雷霆を炸裂させた。
残る力の全てを込めたゼロ距離の雷撃は、ヴェヘイアの右半身を大きく削り取る。
神化が機能している状態であれば、アウラの速度はヴェヘイアのそれを優に超えている。
暗闇が晴れ、周囲の風景が元に戻る。
──最後に立っていたのは、流血した右腕を押さえるアウラだった。
眼前で不敵に笑う男の命を刈り取ることに、全ての神経を注ぐ。
テウルギアを行使し、アウラはインドラの神性を完全に表出させた。
この瞬間より、己の限界が来るまでの間──彼は悉くを打ち砕く雷霆の代行者となる。
アウラの身に起きた変化を感じ取ったのか、相対するヴェヘイアは周囲に
「雷霆神インドラの権能の解放。自滅覚悟でオレを仕留めようって魂胆かい」
「言っとくけど、俺は自滅する気なんて更々ない。流石に、バチカル派の司教相手に二度も敗走する訳にはいかないからな。そういうことだから────」
ヴァジュラを握り締め、前傾する。
そして、明確な敵意を込めた声で言い放つ。
「────初速から、飛ばしていくぞ」
そのまま脚に力を込め、解き放った膂力で地を蹴り付けた。
真っ向勝負。
雷霆による純粋な破壊力、そして戦神としての性能を以て、奈落の王を捻じ伏せる。
「っ────ッ!?」
ヴェヘイアが魔神の核を励起させ、ゲヘナの炎を顕現させるよりも速く、アウラが間合いを詰めていた。
瞬き一つの間に、アウラはヴェヘイアの命に手が届く距離にまで接近していた。
テウルギアを行使する前であれば、雷霆の火力はヴェヘイアに劣る。
だが、神化を果たした今であれば、その欠点は補えている。加えて今の状態のアウラは、身体能力が「強化」の魔術を遥かに凌ぐレベルで底上げされている。即ち──、
「勝負に負けたとは言ったが、速度なら第一位のヤツにも負けたつもりはない……ッ!!」
「クソがっ……!」
懐に潜り込んで、貫くような視線で異端の司教に言い放つ。
続けてもう一度強く踏み込み、構えたヴァジュラで薙ぎ払いながら離脱した。
抵抗は赦さず、反応すらさせる暇を与えない。速度を緩めて付け入る隙を与えるのなら──最高速を維持したまま、敵を蹂躙するのみだ。
気が付けば、ヴェヘイアの左腕が宙を舞っていた。
血飛沫が迸り、地面を赤黒く染め上げる。
僅か数秒で片腕を持っていかれた異端の司教は、後方でヴァジュラの血を払うアウラへと視線を移す。
痛みを感じているような様子ではないが、それ以上に驚愕が勝ったような表情をしていた。
ヴェヘイアのような魔人は、身体能力も常人のそれを軽く凌駕する。動体視力も何もかも、人間から逸脱した領域にいるのだ。
それでも、間合いに入られて片腕を斬り落とされた。
事実を前に、彼は憤るのではなく──認識を改めた。
(……やっぱり本命を隠してやがったな。第一位殿から聞いた通りだ。だが、それも長くは続かないだろ)
第一位に肉薄したとされる、インドラの権能の代行。
こちらもギアを上げなければ、確実に負ける。
直感したヴェヘイアは、腕が完全に再生したのを確認すると、アウラに対抗するように唱え始めた。
「其は一切を焼却せし冥府の主。否定されし豊穣、排斥された禁忌なり。遍く魂は汝の糧、遍く肉は汝が供物……血と叫喚に塗れた祭壇に座し、人の世に地獄を築き上げよ」
(詠唱……!)
ヴェヘイアは、再び魔人の呪句を紡いでいく。
テウルギアが神の力を借り受けるのであれば、ゴエーティアは悪魔や魔神──即ち、神に仇なすモノの権能を行使する術だ。
神なき世界を侵食する特異点。
魔人にのみ振るうことが許された異能。テウルギアと対となる、人の世を否定する異常識である。
「────ゴエーティア・ゲヘナメレフ」
魔神の代行者として、神を殺す。
そのために、ヴェヘイアは一切の手加減を捨てる。全霊で怨敵を殺してこそ、司教としての存在意義が確立される。
全ては、己が信ずる教えのために。
人を捨て、自ら外道に足を踏み入れた時点で、彼は如何なる殺戮をも肯定している。
「さっきの女魔術師は自滅したが、同じ轍を踏まない自信があるならやってみやがれ……!!」
冥界の魔人が、感情を顕わにして吠えた。
神とはいえ、ヴェヘイアに宿るモノは人々に寄り添った神ではなく、人を恐怖で支配していた奈落の魔神。
対してアウラが接続したのは世界を守護し、人々に讃えられた天空の神。
互いに衝突することは免れず、ヴェヘイアは何があっても眼前の偽神を捻じ伏せる必要がある。──それが、邪教の信徒としての矜持だった。
周囲に黒色の炎を展開し、雷霆に相対する。
互いに出し惜しみはない。
どちらかが一方の命を掠め取るまで、余すことなく神の権能が振るわれる。
最初に動いたのは、ヴェヘイアの方だった。
掌を地に当て、小さく呟く。
「冥牢顕現──《浄罪の炎獄》」
掌の触れている箇所が、赤熱する。
熱は円を描くように広範囲へと広がっていき、さながら火山が大噴火を起こしたかのように、地面から業火が次々と噴き上がる。
当然、その範囲にはアウラも入っている。
強化した脚力を以て躱しつつ、ヴェヘイアとの距離を縮めるべく動き出すが────、
(追尾してくる……!)
アウラを追うように、大地から業火が襲う。
十分逃げ切れる速度ではあるものの、いくら躱しても追撃が収まることはない。
だが、それはブラフは過ぎず──アウラの意識が大地に傾いた瞬間、横から、業火が螺旋を描きながら射出された。
「くっ……邪魔っ……!!」
振り向きざまにヴァジュラを振り下ろし、業火を両断する。
対応に問題はなく、渡り合うには十分なレベルの動体視力を獲得している。ただ、問題があるとすれば──純粋な手数と、アウラにある「底」だった。
(お前が神化を行使した状態でいられるのも長くて10分。長期戦になれば、オレの方に分があるワケだ)
心の中で、異端の司教はそう零した。
アウラの神化が尽きるのが先か。それともヴェヘイアが火力で押し切るのが先か。
既に、他の司教経由でアウラの情報は仕入れている。彼が接続した神格を一目でインドラだと断定したのもそのためだ。
最も警戒すべき事象は一つ。
ヴァジュラの投擲による、天を覆う悪竜を討伐せしめた雷霆の再演。
エクレシア王国の都市の一角を更地に変え、第一位の司教の権能──悪神の呪いの具現化──の大部分を使用不可能なレベルにまで焼き切った、アウラの持ちうる最大火力。
だが、アウラがその切り札を温存しておく可能性は限りなく低い。
故に、ヴェヘイアに与えられた選択肢は絞られる。
(長期戦に持ち込むか、全力であの一撃を耐え切ればオレの勝ちだ)
心の中で、自分が取るべき選択肢を絞り込む。
豊穣と冥界の神としての再生力。そして司教の中でも上位に匹敵する魔力量。その二つが、ヴェヘイアの持つ魔人としての強さの根幹だ。
事実、クロノによって再現された神言魔術を耐え切り、今では平然と戦闘を行えている。
たとえ、アウラが全霊を尽くして一撃を見舞おうとも、凌ぎ切れる自負があった。
「くくく……良いぜ、俺の底を掴み取ってみろよ、異教の偽神!!」
「抜かせ……ッ!!」
続けて追尾し、大地から噴き上がる獄炎。
後方に跳躍しながら躱すアウラを見上げながら、ヴェヘイアは啖呵を切った。
奈落と天空。炎と雷。人の死を食らう魔神と、人を守護し生かす神。
互いのプライドがぶつかり合う、誰にも介入することのできない領域だ。
振るわれる魔神の権能。
冥界の炎の悉くをアウラは斬り裂いていき、神化の限界が近付くまでヴェヘイアを消耗させる。
アウラは既に、ヴェヘイアが接続した神を看破していた。
冥界の魔神モレク。それはアウラの元居た世界においても、最大規模の一神教にとって最も忌むべき異教の神──魔王として恐れられていたのだから。
(ヤツが接続したモレクは豊穣の神。あの再生力も納得だけど、だったらシンプルな話だ────)
間髪入れずに放たれる業火をいなしながら、アウラは心の中で呟く。
確かな勝算があるかのように、ヴァジュラの柄を強く握り締めて、その機を伺っている。
同時に、脳裏に己の物ではない記憶。インドラがかつて見た、神期の記録が流し込まれていた。
ブロンズの体躯を持つ、血に塗れた牛頭の神。
生贄と思しき赤子を喰らい、その御前で数多の民が平伏している。遥かな過去に存在した、生贄の祭儀の様子だった。
共有されたイメージを前に、アウラは憤る。
このように残酷な神への祭儀が、再び蘇ってはならないと。
「相手が魔王だろうと関係ない。人の時代に、古い神が出る幕は無い────っ!!」
ヴァジュラを振るい、斬撃に雷霆を乗せて打ち放つ。
薙ぎ払うようにして放たれた紫電は業火を横一閃し、跡形もなく消失させる。
「────ッ!!」
そのまま間髪入れず、炎の切れ間から、その先にいるヴェヘイアに手を翳して雷霆を放った。
狙いは頭でも、ましてや心臓でもない。──右の脇腹だった。
僅かな反応の遅れ。敢えて外した理由を推測する暇すら与えず、アウラの雷撃は司教の脇腹を抉り取る。
「っ!……少しでも再生に気力を割かせる気だろうが、この程度、数秒あれば事足り────」
抉られた部分が、修復されていく。
ゴエーティアはテウルギアと同じく、内側に宿る権能の出力を増強させる。今のヴェヘイアであれば、再生が追い付かないレベルの致命傷を負わない限り、肉体は再生する。
即座に体勢を整え、次の攻撃に備える司教だったが──刹那、アウラの纏う魔力が唸りをあげたのを感じ取った。
「こっちも戦いを長引かせる訳にはいかないからな。ずるずる再生されるぐらいなら、一撃で消し飛ばすだけだ……ッ!!」
「……成る程、これ以上オレに付き合うつもりはないワケか。……上等じゃねぇの」
互いに、この戦いに終止符を打つべく切り札を切る。
それは、死を忌避する人間としての本能か。
抉られた部位は急速に回復する。さらにはアウラの変化に呼応するように、ヴェヘイア自身が帯びる魔力も増大していった。
それは獄炎として現れ、さながら火炎を背に携える明王を想起させる。
「お前がオレの冥界の底を掴み取るか、オレがお前の天を引き摺り下ろすか。どっちが上だろうなァ!!」
「抜かせ……アンタ如きに引き摺り下ろされる程、俺の神はヤワじゃない──っ!!」
ヴェヘイアは全て察していた。
眼前の偽神は、下手に戦いを長引かせるようなことはしない。残り数手で勝負を決めに来ている、と。
内に宿る神性を、全開放へと近付ける。
第一位相手に拮抗した時に等しい出力は、アウラのギアをもう一つ上げた。
上方、そして側方から襲い来る業火を、大きく後方に飛び退いてやり過ごす。
そして、ヴァジュラを携えた右腕を引き絞り──文言を紡ぎ出す。
「────我が手に在るは万象を滅する神意の具現。其は空を裂き、水を穿ち、三界を灼き尽くす」
淡々と、見据える敵を葬るための一撃を練り上げる。
雷霆を纏ったヴァジュラは徐々に形を失い、本来の姿──あらゆるモノを打ち砕く神の兵器へと回帰する。
突き詰められた破壊。太古の人々が畏れ慄いた天の意志が、人の世にて振るわれる。
「っ……!!」
二度目の行使に、アウラの身体は悲鳴を上げる。
内側から焼かれるような痛みが走り、炉心に火が点いたかのように、身体は熱を帯びていく。
神の御業を人の身で再演することの代償を、アウラは受け入れている。
その上で、名を紡ぐ。
遥かな神代にて振るわれた、竜殺しの雷の名を。
「……『神魔滅せし』────」
唱える声に、力が籠る。
腕を引き、討つべき標的を見定めた後、より語気を強めて、
「────壊劫の雷霆』────!!」
異端を捻じ伏せるべく、ヴァジュラを打ち放った。
あらゆるモノを堰き止める「障害」とまで謳われた竜を屠った雷霆が、魔神の化身に牙を剥く。
天を統べる神が顕現したかのように、空は雲で覆われ、風が吹き荒んでいる。
(来た……インドラの神話の再演……ッ!!)
万魔を屠る雷光を迎え撃つ、冥界の魔人。
ただ身一つで対抗する訳ではなく、男は周囲のマナを吸い上げて魔力に変換し──再び、冥界を現世に呼び戻す。
「屍の谷、燃え盛る硫黄の火。此処に在るは生者に非ず、その地は遍く魂を無に還す。汝が喰らうは全地の命、陰府を統括せし豊穣の王よ──奈落の主として、穢れし神を失墜させよ……!!」
アウラとヴェヘイアと取り巻く世界が、暗黒と炎に覆われる。
当然、異端の司教とて、己の魔力だけで神話の一撃を防ぎ切れるなどとは思っていない。
魔を鏖殺する主神が相手であれば、己が支配する領域で受けて立つ────!
「──『冥神御供・魔王火葬』──!!』
あらゆる命を否定する陰府の国。
取り込んだマナだけでない、冥界を現世に顕現させ──モレクを一柱の魔神から、一つの異界を統べる主神へと強引に引っ張り上げて雷霆に相対する。
鬩ぎあうのは、二柱の主神の力。
赤黒い炎が燃え盛り、亡者の叫喚が響き渡る世界を、天を裂いた雷光が照らし出す。
(モレクの冥界、ゲヘナからの魔力の供給。冥界との親和性が高いオレであれば……!!)
敗北する気など微塵もなく、司教は口角を上げていた。
彼自身、己が冥界にまつわる存在との親和性が高いこと──己の名がとある冥界の陪神であること──を察していた。
ヴェヘイア・ベーリットという名は魔神の力を宿す「司教」となる上で与えられたもの。
本来の名など、司教の末席に名を連ねた時に記憶から消し去ったのだから。
(最古の冥界に属する神の名を以て、天上の神を否定する────!!)
右手を前に突き出し、主神となったモレクの力を引き出した上で、その全てを防御に回す。
赤黒い炎と紫電が、両者の間で拮抗する。
投擲を終えたアウラは腕から激しく流血しながらも、どうにか二本足で立っていた。対して、ヴェヘイアは雷霆の威力を相殺しつつ、己の権能を全て用いて対抗する。
「ぐっ……おおぉぉぉぉぉぉぉッ────!!!!」
「────ッ!!」
雷霆が深淵を穿つか。それとも、奈落の神が天空の神の力を凌駕するか。
それは、どちらが権能の使い手として優れているかの証明でもある。
鬩ぎ合い、空間がねじ曲がる程の異変が生じる。
十数秒の拮抗を経て────黒衣がボロボロになったヴェヘイアが、ニヤリと笑った。
異端の司教に放たれた雷撃は、その存在を保てなくなったかのように爆散した。
(ヴァジュラの投擲は一発限り。オレの勝ちだ────ッ!)
勝利を確信する。
衝撃の余波が冥界全体に広がり、再び世界は暗闇と赤の二色に覆われた。
しかし、ヴェヘイアは同時に違和感を覚える。
(は────?)
──ヴェヘイアの視線の先に、反動で倒れ伏すアウラの姿がない。
認識のズレ。
事前に第一位のヴォグ、第八位のメラムから大体の情報は仕入れていた。
故に、ヴァジュラの投擲を耐え切り、反動で動けなくなったところを仕留める。あらかじめその算段を立てていた。
冥界を顕現させたのも、魔力を供給することに加えて、クロノのように冥界の気を浴びせることで戦闘不能に追い込むため。
対策は十分してきた。
ことアウラを殺すことに、慢心していた訳ではなかった。
ただ──彼がエクレシアでの敗戦を経て、何もせずにいた筈がない。
「な────」
「っ……!! あと一発叩き込めれば十分……!!」
権能の大半を使い切った直後のヴェヘイアの間合いに、アウラが突っ込んで来た。
インドラの神話の再演。一度使えば動けなくなる程の反動が伴う筈だが、アウラは雷霆を一発放てる分の余力を残して打ち放った。
それ以外の全ての魔力を一撃に注ぎ込み、ヴェヘイアの業火と拮抗した。
つまり、本命ではない。
アウラの雷霆は僅かだが、ヴェヘイアの身体を巡り、拘束する。
(さっき脇腹を抉り取ったのは、消耗させるためじゃない。お前の核の場所を確かめる為の布石だ……!)
生まれた数秒の隙を狙い、アウラは至近距離で雷撃を叩き込む。
ビリビリと痺れる五指。異端の司教は辛うじて視線と口を動かし、偽神の意図を理解した。
「お前っ……! ヴァジュラの投擲を餌に……ッ!!」
「事前に俺の情報が割れてるなら、保険をかけとくのが常識だろ。……一撃で消し飛ばせないなら、核をブチ抜くだけだ────!!」
懐に飛び込み、ヴェヘイアの右胸に掌打を見舞う。
そして、
「捉えた……!!」
「ぐっ────!!」
掌から、雷霆を炸裂させた。
残る力の全てを込めたゼロ距離の雷撃は、ヴェヘイアの右半身を大きく削り取る。
神化が機能している状態であれば、アウラの速度はヴェヘイアのそれを優に超えている。
暗闇が晴れ、周囲の風景が元に戻る。
──最後に立っていたのは、流血した右腕を押さえるアウラだった。
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