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第三章 階級昇格編
66話『制圧開始──side.ロア』
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アウラとカレンが制圧を開始したのと同時刻。
もう一つのグループであるロア、クロノ、ミズハの三人は城から少し離れた場所で待機していた。
「クロノ殿、襲撃の準備は大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません。いつでも行けます。……出来れば穏便に済ませたいですが、多分そうはならないでしょうから」
「ミズハとクロノの二人なら、たかが盗賊ごときに遅れは取らないだろ。それに、俺もきっちり援護するから安心しな」
大鎌を携えたクロノに、ロアが優しくそう語り掛ける。
共に『アンスール』の主力を張るミズハはともかく、クロノの魔術師らしからぬ強さはロアが身に染みて理解している。
「頼みますよ、ロア殿。貴殿がいなければ、制圧は出来ても全員捕えるのが大変ですので」
「荒っぽいことは任せるよ。俺がタイミングを見て全員縛り上げるから、ある程度痛めつけてくれれば十分だ。ミズハ、お前くれぐれも殺すんじゃないぞ?」
「ご安心を。ご要望通り、全員峰打ちで仕留めてみせますとも!」
「いや、仕留めるって言っちゃってんじゃん……殺意が隠しきれてないんだよ。やる気に満ち溢れてるのは良いことだが、少し我慢ってものを覚えろよ」
笑顔でガッツポーズをして見せるミズハに、冷静に突っ込むロア。
「とりあえず、戦闘は最低限で良い。それからのことは俺に任せてくれ」
「任せろって、良いんですか?」
「大丈夫だ。伊達に「熾天」の階級に就いてないってところを見せてやるさ」
ロアは自信ありげに言い切った。
彼らが襲撃する拠点は、廃城から少し離れたところにある。
かつて村があったところを拠点として再利用しており、こちらの方が若干人数は多い。
獣道を抜けた先に、幾つかの家屋、そして盗賊たちの姿があった。
「……では、私とミズハさんで敵側の戦力を削りましょう。準備の方は、大丈夫そうですね」
「勿論ですとも。寧ろ、早く戦いたくてウズウズしています……!」
茂みに隠れ、ミズハを横目に見るクロノ。
獲物を見つけた獣のように、和装の剣士は鋭い眼光を放っている。
「二人はある程度負傷させて来れば十分だ。──それじゃ、俺たちも始めるか」
控えるロアの合図と共に、彼らの制圧任務の火蓋が切られる。
※※※※※
「嫌っ……離して……ッ!!」
盗賊の拠点にある家屋。
その中で、茶髪のロングヘアに碧眼をした少女が両腕を掴まれ、跪かされていた。
傍らには彼女の持ち物と思しき短刀が捨てられ、抵抗する手段を全て奪われている。
「お前か? ここ最近ここいらを嗅ぎまわってるってのは。まさか、冒険者ギルドの連中が仕向けたのが、こんな女一人とは、俺たちも随分と舐められたもんだ」
「全くだ。本来ならあの場で殺しても良かったんだが……まぁ、折角だ。俺達である程度愉しんだら、魔獣共の巣穴にでも捨ててやるよ。たまにはこれぐらいのガキ相手にすんのも悪くないかもな?」
下卑た笑みを浮かべ、指で顎を上げる。
しかし、その眼差しには抵抗の意志が宿っている。
その瞳が光を失い、心を完全に折るまで弄ぶ。男はそう考え、少女の肢体に手を伸ばしていく。
だが、
「なんだ……?」
男は手を止め、入口の方へと目をやった。
外が何やら騒がしく、その場に居合わせた数人の部下も、同じく外へと目を向けた。
──事が起きたのは、その一瞬。
意識が少女から外れた瞬間を狙い、白い和装の少女が中に飛び込んで来た。
腰に差した刀の柄に手を掛け、前傾姿勢を保ったまま──、
「其は中つ国を平定せし天津神。──吐普加美依身多女」
と、息を吐くように唱える。
直後、彼女の刀が緋色のオーラを纏う。
それは、八百万の神々が住んだ極東世界に伝わる「祝詞」。
大陸各地で言うところの「神の賛歌」だ。
携えた武具の変化に呼応するように、ミズハ自身の気配にも異変が生じる。
その琥珀色の双眸に敵意が宿り、抜刀しながら床を蹴った。
「コイツ、刺客か────!!」
「……経つッ!!」
男たちが気付いた時には、もう遅い。
この閉鎖空間自体がミズハの間合い。低姿勢から繰り出される一刀は、少女を取り押さえていた二人を瞬く間に昏倒させた。
間髪入れずに踏み込み、少女の前にいた男の首元にその切っ先を突き付けた。
「命までは取りません。他の方も峰打ちで済ませてありますから」
「あくまでも殺さないってか……」
「私たちに課せられた任務は「鏖殺」ではなく「捕縛」ですから。むざむざ殺すような真似はしませんのでご安心を」
刀の切っ先を突きつけていながら、その口調は友好的だ。
表情に至っては軽く笑みさえ浮かべている。
「それでも抵抗するというのなら、こちらもそれ相応の対処はさせて頂きますがね」
「ぐっ……」
「それに、私だけというワケではありませんので。ここから逃げたとしても、あの死神が貴方の命を刈り取りに来るかもしれませんよ?」
ミズハが語る。
男はそう告げられた後、外の方を見やる。
そこには、大多数の盗賊を単騎で相手取り、縦横無尽に駆ける少女の姿があった。
大鎌を携え、一人一人を致命傷にならない程度に負傷させる。
とても魔術師とは思えぬほどの身のこなし。もし仮に暗殺者であれば、誰にも気取られることなく数多の要人を屠っていたことだろう。
手加減した状態で尚、並みの盗賊を軽く凌駕するクロノ。
最高位の魔術師に教えを乞い、異端の教徒と幾度も戦ってきた彼女からすれば、この程度の状況など苦境にはなりえない。
仲間が次々と倒れていくさまは、男から抵抗の意志を削ぎ落すには十分だ。
「────そういうことだ。今まで散々好き勝手に暴れたツケが回ってきたってことだよ」
家屋の入り口から、もう一人、別の男の声が入ってくる。
数で圧倒的に負けていても、それを全く意に介していない。寧ろ余裕すら感じさせるような声色だ。
彼は男に向けて五指を広げ、再び手を握る。それから、さながら何かを手繰り寄せるかのような動きを見せた。
「相応の罰は、牢屋で受けてもらう」
ロアの指先から伸びる、青色の「糸」があった。
それは確かに色を帯びていながらも半透明で、倒れている男二人、そして眼前で膝立ちになっている盗賊の腕を確かに拘束している。
それだけではない。
外でクロノによって制圧された者にも、手枷のように青い糸が絡み付いている。
「流石はロア殿、仕事が早いですね」
「俺が出来る仕事といえばこれぐらいだからな、自分に出来ることはきっちりやるさ。バケモノと正面切ってやり合うには、俺は少し役不足だろ?」
刀を鞘に収め、ミズハはロアの方を見やる。
すると、一通り終わったのか、クロノもロアのいる家屋の方へと歩いてきた。
「……これ、魔力そのものを「糸」として体外で操作してるんですか?」
「まぁ、基礎の応用みたいなもんだよ。これぐらいはお前でも出来るだろう?」
「確かに出来ますけど、私じゃこれだけの数を一度に捕縛する程の糸は編めません。流石「熾天」の魔術師ですね」
「お褒め頂き恐縮だよ。──さて、それならあとはアウラたちの合図と、外で待機してる冒険者たちを待つだけか」
「私たち以外にも結局来るんですか?」
「流石に、これだけの数の人間を三人で街まで連行するのは無理だからな。イェレドのギルドのギルドマスターが何人か寄越してくれるみたいだ」
「確かに、元々はあちらのギルドで対処してた事案ですもんね。でしたら、後始末も彼らにして貰うのが妥当でしょう」
「それじゃ、私はちょっとアウラさん達の方に連絡に行ってきますね。多分、連行役が来ることは知らされてなかったはずですし、トラブルになるのも面倒なので」
「了解だ。くれぐれも気をつけてな」
ロアが承諾し、クロノはすぐさまアウラたちのいる城の方角へと歩き出した。
ミズハと二人であれば、抵抗されても即座に対応できる。
加えて言うのであれば、常人の筋力でロアの糸を引きちぎるのは不可能だ。
足早に向かうクロノを見届けるロアの顔には、安堵の表情が浮かんでいた。
もう一つのグループであるロア、クロノ、ミズハの三人は城から少し離れた場所で待機していた。
「クロノ殿、襲撃の準備は大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません。いつでも行けます。……出来れば穏便に済ませたいですが、多分そうはならないでしょうから」
「ミズハとクロノの二人なら、たかが盗賊ごときに遅れは取らないだろ。それに、俺もきっちり援護するから安心しな」
大鎌を携えたクロノに、ロアが優しくそう語り掛ける。
共に『アンスール』の主力を張るミズハはともかく、クロノの魔術師らしからぬ強さはロアが身に染みて理解している。
「頼みますよ、ロア殿。貴殿がいなければ、制圧は出来ても全員捕えるのが大変ですので」
「荒っぽいことは任せるよ。俺がタイミングを見て全員縛り上げるから、ある程度痛めつけてくれれば十分だ。ミズハ、お前くれぐれも殺すんじゃないぞ?」
「ご安心を。ご要望通り、全員峰打ちで仕留めてみせますとも!」
「いや、仕留めるって言っちゃってんじゃん……殺意が隠しきれてないんだよ。やる気に満ち溢れてるのは良いことだが、少し我慢ってものを覚えろよ」
笑顔でガッツポーズをして見せるミズハに、冷静に突っ込むロア。
「とりあえず、戦闘は最低限で良い。それからのことは俺に任せてくれ」
「任せろって、良いんですか?」
「大丈夫だ。伊達に「熾天」の階級に就いてないってところを見せてやるさ」
ロアは自信ありげに言い切った。
彼らが襲撃する拠点は、廃城から少し離れたところにある。
かつて村があったところを拠点として再利用しており、こちらの方が若干人数は多い。
獣道を抜けた先に、幾つかの家屋、そして盗賊たちの姿があった。
「……では、私とミズハさんで敵側の戦力を削りましょう。準備の方は、大丈夫そうですね」
「勿論ですとも。寧ろ、早く戦いたくてウズウズしています……!」
茂みに隠れ、ミズハを横目に見るクロノ。
獲物を見つけた獣のように、和装の剣士は鋭い眼光を放っている。
「二人はある程度負傷させて来れば十分だ。──それじゃ、俺たちも始めるか」
控えるロアの合図と共に、彼らの制圧任務の火蓋が切られる。
※※※※※
「嫌っ……離して……ッ!!」
盗賊の拠点にある家屋。
その中で、茶髪のロングヘアに碧眼をした少女が両腕を掴まれ、跪かされていた。
傍らには彼女の持ち物と思しき短刀が捨てられ、抵抗する手段を全て奪われている。
「お前か? ここ最近ここいらを嗅ぎまわってるってのは。まさか、冒険者ギルドの連中が仕向けたのが、こんな女一人とは、俺たちも随分と舐められたもんだ」
「全くだ。本来ならあの場で殺しても良かったんだが……まぁ、折角だ。俺達である程度愉しんだら、魔獣共の巣穴にでも捨ててやるよ。たまにはこれぐらいのガキ相手にすんのも悪くないかもな?」
下卑た笑みを浮かべ、指で顎を上げる。
しかし、その眼差しには抵抗の意志が宿っている。
その瞳が光を失い、心を完全に折るまで弄ぶ。男はそう考え、少女の肢体に手を伸ばしていく。
だが、
「なんだ……?」
男は手を止め、入口の方へと目をやった。
外が何やら騒がしく、その場に居合わせた数人の部下も、同じく外へと目を向けた。
──事が起きたのは、その一瞬。
意識が少女から外れた瞬間を狙い、白い和装の少女が中に飛び込んで来た。
腰に差した刀の柄に手を掛け、前傾姿勢を保ったまま──、
「其は中つ国を平定せし天津神。──吐普加美依身多女」
と、息を吐くように唱える。
直後、彼女の刀が緋色のオーラを纏う。
それは、八百万の神々が住んだ極東世界に伝わる「祝詞」。
大陸各地で言うところの「神の賛歌」だ。
携えた武具の変化に呼応するように、ミズハ自身の気配にも異変が生じる。
その琥珀色の双眸に敵意が宿り、抜刀しながら床を蹴った。
「コイツ、刺客か────!!」
「……経つッ!!」
男たちが気付いた時には、もう遅い。
この閉鎖空間自体がミズハの間合い。低姿勢から繰り出される一刀は、少女を取り押さえていた二人を瞬く間に昏倒させた。
間髪入れずに踏み込み、少女の前にいた男の首元にその切っ先を突き付けた。
「命までは取りません。他の方も峰打ちで済ませてありますから」
「あくまでも殺さないってか……」
「私たちに課せられた任務は「鏖殺」ではなく「捕縛」ですから。むざむざ殺すような真似はしませんのでご安心を」
刀の切っ先を突きつけていながら、その口調は友好的だ。
表情に至っては軽く笑みさえ浮かべている。
「それでも抵抗するというのなら、こちらもそれ相応の対処はさせて頂きますがね」
「ぐっ……」
「それに、私だけというワケではありませんので。ここから逃げたとしても、あの死神が貴方の命を刈り取りに来るかもしれませんよ?」
ミズハが語る。
男はそう告げられた後、外の方を見やる。
そこには、大多数の盗賊を単騎で相手取り、縦横無尽に駆ける少女の姿があった。
大鎌を携え、一人一人を致命傷にならない程度に負傷させる。
とても魔術師とは思えぬほどの身のこなし。もし仮に暗殺者であれば、誰にも気取られることなく数多の要人を屠っていたことだろう。
手加減した状態で尚、並みの盗賊を軽く凌駕するクロノ。
最高位の魔術師に教えを乞い、異端の教徒と幾度も戦ってきた彼女からすれば、この程度の状況など苦境にはなりえない。
仲間が次々と倒れていくさまは、男から抵抗の意志を削ぎ落すには十分だ。
「────そういうことだ。今まで散々好き勝手に暴れたツケが回ってきたってことだよ」
家屋の入り口から、もう一人、別の男の声が入ってくる。
数で圧倒的に負けていても、それを全く意に介していない。寧ろ余裕すら感じさせるような声色だ。
彼は男に向けて五指を広げ、再び手を握る。それから、さながら何かを手繰り寄せるかのような動きを見せた。
「相応の罰は、牢屋で受けてもらう」
ロアの指先から伸びる、青色の「糸」があった。
それは確かに色を帯びていながらも半透明で、倒れている男二人、そして眼前で膝立ちになっている盗賊の腕を確かに拘束している。
それだけではない。
外でクロノによって制圧された者にも、手枷のように青い糸が絡み付いている。
「流石はロア殿、仕事が早いですね」
「俺が出来る仕事といえばこれぐらいだからな、自分に出来ることはきっちりやるさ。バケモノと正面切ってやり合うには、俺は少し役不足だろ?」
刀を鞘に収め、ミズハはロアの方を見やる。
すると、一通り終わったのか、クロノもロアのいる家屋の方へと歩いてきた。
「……これ、魔力そのものを「糸」として体外で操作してるんですか?」
「まぁ、基礎の応用みたいなもんだよ。これぐらいはお前でも出来るだろう?」
「確かに出来ますけど、私じゃこれだけの数を一度に捕縛する程の糸は編めません。流石「熾天」の魔術師ですね」
「お褒め頂き恐縮だよ。──さて、それならあとはアウラたちの合図と、外で待機してる冒険者たちを待つだけか」
「私たち以外にも結局来るんですか?」
「流石に、これだけの数の人間を三人で街まで連行するのは無理だからな。イェレドのギルドのギルドマスターが何人か寄越してくれるみたいだ」
「確かに、元々はあちらのギルドで対処してた事案ですもんね。でしたら、後始末も彼らにして貰うのが妥当でしょう」
「それじゃ、私はちょっとアウラさん達の方に連絡に行ってきますね。多分、連行役が来ることは知らされてなかったはずですし、トラブルになるのも面倒なので」
「了解だ。くれぐれも気をつけてな」
ロアが承諾し、クロノはすぐさまアウラたちのいる城の方角へと歩き出した。
ミズハと二人であれば、抵抗されても即座に対応できる。
加えて言うのであれば、常人の筋力でロアの糸を引きちぎるのは不可能だ。
足早に向かうクロノを見届けるロアの顔には、安堵の表情が浮かんでいた。
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