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今後について
しおりを挟む そうして準備を終えた五人は待ち合わせ場所に集まった。
そこへ真那は馬車に乗ってやってきた。
「車じゃないんですか?」
「この国、天園王国みたいに整備された道を通らないからこっちの方が安全だお。道中は好戦的な野生の動物に襲われたりするから車だと不便なんだお」
「だからって馬車はねーだろ。この馬共は大丈夫なのか?」
「野生の動物が襲ってくるなら馬が慌てて逃げたりしないかな?」
「途中で馬が逃げたら徒歩になるのか?!」
「ウチ歩きっぱで行くなら危険でも車の方がええわ」
「おっおっおっ、大丈夫だお。この馬達は訓練された馬だお。あたいの言うことをしっかり聞いてくれるお」
そこで綺沙羅が素朴な疑問を投げかけた。
「魔法で飛んでいくのは駄目なんですか?」
「それも考えたお。でもそうすると突然現れたあたい達が不法入国者になる可能性があるお。皆がこの国に来た時のこと思い出すお」
「確かにそうですね……」
「それにこの二匹の馬、左がテイオー、右がシンオーと言うのだけど。テイオーとシンオーはあたいが世界を旅した時の二匹の馬の子供だお。しっかり訓練積んで度胸もだけど速さも抜群だお。大舟に乗ったつもりで乗り込むお」
真那にそう言われて、半信半疑で屋根付き荷台に乗り込む五人。真那が手綱を引きゆっくりと走り出した。
暫く国道をパカパカと走っていると綺沙羅は真那に言った。
「本当に速いですね!車よりは遅いけど」
「まだ危ないから全速出してないお。全速出せば車にも負けないお」
やがて関所に到着した真那は、門番に説明し通してもらう。その際何かを見せていた。
「皆手を出すお」
真那は一人一人に手をかざし呪文をかけていく。そしてある呪文を覚えさせた。
「これで個人証明ができるお。この国の人間である証明だお。はぐれた時はこれを使うお」
皆が呪文を唱えてみると、手の甲から青いデータのようなものが飛び出してきて自分の個人情報が映し出された。
「まぁ心配なのは番樹ちゃんくらいだけど」
「俺は子供じゃないぜ!心配ないさ。陸也の方が喧嘩とかしながらどっかいかないか心配だな!」
「ああ?おめーみたいな低脳じゃねぇから大丈夫だわ」
「ほらほら、喧嘩しない。僕もはぐれないようにしないとね」
「ウチもやわ、ちょっと不安になりそうやわ」
「大丈夫だよ!はぐれても皆が探すからね!」
「では、行くお。しっかり掴まってるお」
国境を出ると草原が広がっていた。テイオーとシンオーが速度を上げる。
風が心地よかった。かなりスピードが出ていたため荷台にもかなり揺れる。
「わぁ!凄い凄い!」
綺沙羅は楽しそうに外の景色を見ていた。来夢も隣ではしゃいでる。一方男三人は、この揺れに酔い始めていた。
「ゆ、揺れる揺れるぅぅ。気持ち悪い」
「も、もうちょっとゆっくり行かないか?」
「ふ、ふん、これくらいなんとも……、うぷ。くそが!」
それを見た真那は指パッチンで三人に魔法をかけた。
「お?軽くなった気がするな」
「真那先生ありがとう」
「ふん、礼は言わないぞ」
綺沙羅と来夢は笑いながら言う。
「全く情けないなぁ、ウチは全然平気やのに。男共ときたら」
「まぁまぁ、仕方ないよ」
「おっおっおっ、ここからもっと揺れるお。魔法をかけてても吐きたくなるかもしれないお。吐き気がしたら言うお」
そう言うと鞭で更にスピードをあげる。なるべく道を選んでるとはいえ、とんでもない揺れだった。
「この馬車は大丈夫なんですか?」
「馬車自体も魔法で強化してるから大丈夫だお」
「ならええけどな。こんだけ揺れたら壊れそうで心配やわ」
綺沙羅と来夢の心配とは別に体の心配をする男三人は、小一時間走ったところでギブアップを申し出た。
「仕方ないお、野営にして休憩するお。本当はもう少し先の街まで行きたかったお」
「すいません……」
「悪い……吐きそう」
「もっと魔法かけやがれってんだ」
「おっおっおっ、酔い止めの魔法にも限界はあるお」
野営を組んでる間、男三人は役に立たないので、綺沙羅と来夢が見張りについた。
するとハイエナのような動物が群れで現れた。
「狙われとんで!どないする?」
「ワタシの炎で追い払うわ!」
炎羅が出て、炎魔法で追い払おうとする。だが逃げ出さずに、襲ってきた。
ハイエナはなんと遠距離から魔法を使ってきた。
「なんやなんや?野生の動物は魔法も覚えとるんか?」
「動物にも魔法回路はあるお。でも、知能が低いと下級魔法くらいだと思うお」
「この程度なら敵にはならないわ。丸焼きにしていいかしら?」
「いいお。弱肉強食だお」
それを聞いてオーケイサインを出した炎羅は、ハイエナの群れに巨大な火の玉を当てた。辛うじて避けたハイエナも恐れおののき逃げていった。
「丸焼きになったハイエナは火葬するお」
「わかったわ」
骨まで燃やし尽くした炎羅は、手を合わせた。
「ご飯食べよう、炎羅」
「うん、優君。綺沙羅に戻るわ」
「たまには炎羅とも話がしたいかな」
「そう?なら話しましょ」
優と炎羅はそれから楽しそうに話をしていた。番樹はその中に入っていっていいのか迷っていたが、
「おいでよ、番ちゃん。ワタシは番ちゃんとも話がしたいな」
「いいのか?よーし!今夜は寝かさねーぜ!」
三人は夜遅くまで話し込んでいた。そして交代で見張りを代わり休む。
次の日再び出発した。少し速度を落として。
「また気分悪くなったら困るお。あと少しで中間の街だから少しゆっくり行くお」
「これでもゆっくりなの?十分速いんだけど……」
「結構揺れるな!まぁなんとか耐えるぞ……」
「ふ、ふん。これならなんとか……」
「男共はあかんなぁ。なぁ綺沙羅?」
「ふふふ、そうだね」
そこへ真那は馬車に乗ってやってきた。
「車じゃないんですか?」
「この国、天園王国みたいに整備された道を通らないからこっちの方が安全だお。道中は好戦的な野生の動物に襲われたりするから車だと不便なんだお」
「だからって馬車はねーだろ。この馬共は大丈夫なのか?」
「野生の動物が襲ってくるなら馬が慌てて逃げたりしないかな?」
「途中で馬が逃げたら徒歩になるのか?!」
「ウチ歩きっぱで行くなら危険でも車の方がええわ」
「おっおっおっ、大丈夫だお。この馬達は訓練された馬だお。あたいの言うことをしっかり聞いてくれるお」
そこで綺沙羅が素朴な疑問を投げかけた。
「魔法で飛んでいくのは駄目なんですか?」
「それも考えたお。でもそうすると突然現れたあたい達が不法入国者になる可能性があるお。皆がこの国に来た時のこと思い出すお」
「確かにそうですね……」
「それにこの二匹の馬、左がテイオー、右がシンオーと言うのだけど。テイオーとシンオーはあたいが世界を旅した時の二匹の馬の子供だお。しっかり訓練積んで度胸もだけど速さも抜群だお。大舟に乗ったつもりで乗り込むお」
真那にそう言われて、半信半疑で屋根付き荷台に乗り込む五人。真那が手綱を引きゆっくりと走り出した。
暫く国道をパカパカと走っていると綺沙羅は真那に言った。
「本当に速いですね!車よりは遅いけど」
「まだ危ないから全速出してないお。全速出せば車にも負けないお」
やがて関所に到着した真那は、門番に説明し通してもらう。その際何かを見せていた。
「皆手を出すお」
真那は一人一人に手をかざし呪文をかけていく。そしてある呪文を覚えさせた。
「これで個人証明ができるお。この国の人間である証明だお。はぐれた時はこれを使うお」
皆が呪文を唱えてみると、手の甲から青いデータのようなものが飛び出してきて自分の個人情報が映し出された。
「まぁ心配なのは番樹ちゃんくらいだけど」
「俺は子供じゃないぜ!心配ないさ。陸也の方が喧嘩とかしながらどっかいかないか心配だな!」
「ああ?おめーみたいな低脳じゃねぇから大丈夫だわ」
「ほらほら、喧嘩しない。僕もはぐれないようにしないとね」
「ウチもやわ、ちょっと不安になりそうやわ」
「大丈夫だよ!はぐれても皆が探すからね!」
「では、行くお。しっかり掴まってるお」
国境を出ると草原が広がっていた。テイオーとシンオーが速度を上げる。
風が心地よかった。かなりスピードが出ていたため荷台にもかなり揺れる。
「わぁ!凄い凄い!」
綺沙羅は楽しそうに外の景色を見ていた。来夢も隣ではしゃいでる。一方男三人は、この揺れに酔い始めていた。
「ゆ、揺れる揺れるぅぅ。気持ち悪い」
「も、もうちょっとゆっくり行かないか?」
「ふ、ふん、これくらいなんとも……、うぷ。くそが!」
それを見た真那は指パッチンで三人に魔法をかけた。
「お?軽くなった気がするな」
「真那先生ありがとう」
「ふん、礼は言わないぞ」
綺沙羅と来夢は笑いながら言う。
「全く情けないなぁ、ウチは全然平気やのに。男共ときたら」
「まぁまぁ、仕方ないよ」
「おっおっおっ、ここからもっと揺れるお。魔法をかけてても吐きたくなるかもしれないお。吐き気がしたら言うお」
そう言うと鞭で更にスピードをあげる。なるべく道を選んでるとはいえ、とんでもない揺れだった。
「この馬車は大丈夫なんですか?」
「馬車自体も魔法で強化してるから大丈夫だお」
「ならええけどな。こんだけ揺れたら壊れそうで心配やわ」
綺沙羅と来夢の心配とは別に体の心配をする男三人は、小一時間走ったところでギブアップを申し出た。
「仕方ないお、野営にして休憩するお。本当はもう少し先の街まで行きたかったお」
「すいません……」
「悪い……吐きそう」
「もっと魔法かけやがれってんだ」
「おっおっおっ、酔い止めの魔法にも限界はあるお」
野営を組んでる間、男三人は役に立たないので、綺沙羅と来夢が見張りについた。
するとハイエナのような動物が群れで現れた。
「狙われとんで!どないする?」
「ワタシの炎で追い払うわ!」
炎羅が出て、炎魔法で追い払おうとする。だが逃げ出さずに、襲ってきた。
ハイエナはなんと遠距離から魔法を使ってきた。
「なんやなんや?野生の動物は魔法も覚えとるんか?」
「動物にも魔法回路はあるお。でも、知能が低いと下級魔法くらいだと思うお」
「この程度なら敵にはならないわ。丸焼きにしていいかしら?」
「いいお。弱肉強食だお」
それを聞いてオーケイサインを出した炎羅は、ハイエナの群れに巨大な火の玉を当てた。辛うじて避けたハイエナも恐れおののき逃げていった。
「丸焼きになったハイエナは火葬するお」
「わかったわ」
骨まで燃やし尽くした炎羅は、手を合わせた。
「ご飯食べよう、炎羅」
「うん、優君。綺沙羅に戻るわ」
「たまには炎羅とも話がしたいかな」
「そう?なら話しましょ」
優と炎羅はそれから楽しそうに話をしていた。番樹はその中に入っていっていいのか迷っていたが、
「おいでよ、番ちゃん。ワタシは番ちゃんとも話がしたいな」
「いいのか?よーし!今夜は寝かさねーぜ!」
三人は夜遅くまで話し込んでいた。そして交代で見張りを代わり休む。
次の日再び出発した。少し速度を落として。
「また気分悪くなったら困るお。あと少しで中間の街だから少しゆっくり行くお」
「これでもゆっくりなの?十分速いんだけど……」
「結構揺れるな!まぁなんとか耐えるぞ……」
「ふ、ふん。これならなんとか……」
「男共はあかんなぁ。なぁ綺沙羅?」
「ふふふ、そうだね」
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