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第七章
幻術師と呪術師
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グレゴールと密会した部屋を綺麗にした後、空間移動で馬車を置いてた場所まで戻ってきた。
客が一人いなくなったところで、あの宿屋であれば金さえ問題なければ気にも止めないだろう。
ゾランと馬車の中で、これからどうするかを決めていく事にする。
「まず、リンデグレン邸に行かせている者達から、再度話を聞きましょう。ですが、リドディルク様は直接お会いされない方がよろしいかと思われます。」
「そうだな……その者達に呪いがかけられている可能性があるからな。ゾランも直接会わない様にして貰えるか?」
「畏まりました。恐らく、ニコラウス様は外出したり帰宅は平気でされてると思います。幻術等でそれが分からない様にされていると推測できます。」
「だろうな。さて……どうするか……」
「幻術師と呪術師……我が帝国にも高度な使い手がおります。しかし、それを防御出来るかどうかは……」
「幻術師……イングヴァルに、呪術師のヴァルデマだな……」
「そうです。……連れて来ますか?」
「そうだな。ゾラン、宿は取っているか?」
「既におさえております。問題ありません。」
「ではまずはそこに向かう。」
「畏まりました。」
馬車を走らせ、港町ラブニルにある宿屋へと向かう。
最上階を貸切りにしてあり、人が増えても問題なくここで宿泊することができる。
ゾランのする事にはいつも抜かりがない。
部屋に入り、すぐにオルギアン帝国まで空間移動でゾランと戻った。
いつもの部屋にやって来ると、すぐにゾランは行動に移した。
俺はひとまず執務室へ行って、ヴェンツェルの様子を確認する。
ここの業務も大事な仕事だからな。
「リドディルク兄様!いつお戻りになられたんですか?!」
「今だ。すぐにまた出ていく。それより……滞りなく進んでいるか?」
「そうですね……気になるところがありますが、今の段階ではまだ問題ないかと。兄様がこちらに戻ってこられたら、相談させて頂けますか?」
「勿論だ。ヴェンツェルの読みはゾランにも劣らん。頼もしい限りだ。」
「私等まだまだです。もっと兄様にご教示頂きたく思っております。」
「そんな堅苦しくせずとも良い。血を分けた兄弟なんだ。もっと気楽にするが良い。」
「兄様と呼ばせて頂けるだけでも、私には恐れ多い事なんです!気楽に等……!」
「俺がそうして欲しいと言っている。まだ幼いのにヴェンツェルを業務に携わらせる事自体を心苦しく思ってるんだ。何かあれば遠慮なく言って欲しい。」
「ありがとうございます!尊敬する兄様の力になれるよう、尽力致しますっ!」
「ハハハ…真面目だな。では、頼んだ。カルレスや皆も、ヴェンツェルの事をよろしく頼む。」
「「「畏まりました!」」」
執務室を出て自室へ戻る。
あの宿でゾランに体力を奪われたから、少し疲れたな……
ソファーに座っていると、部屋がノックされてミーシャがお茶を持って入ってきた。
「リディ様!おかえりなさいませっ!」
「ミーシャ、来るのが早いな。」
「ゾラン様が真っ先に来られて、リディ様にお茶をお出しするように言われましたので!お疲れだとお聞きしたので、オレンジピールティーをお持ちしましたよ!」
「そうか。気にしてくれてたんだな。ありがとう。またすぐに出ていく事になる。いつもゾランを連れ回してすまないな。」
「そんな……!大切なお仕事をされていらっしゃるんです!謝らないで下さい!」
「そうやって分かって貰えてるって事は、本当に有難い事なんだ。それと、ゾランに爵位を与えた。ゾランと結婚すれば、ミーシャも貴族になってしまう。勝手に決めて申し訳ない。」
「私になんて、何度もそうやって謝ってはいけません!リディ様がそうされたのは、そうする事が最善だと思われたからでしょう?それなら、私もそれに従います!」
「そうか……良い女になったな。ミーシャ。」
「なっ!な、何を言ってるんですか!あ、他に軽食もお持ちしますので、少しだけお待ち下さいね!」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら、ミーシャは慌てて出ていった。
暫くしてゾランがやってきた。
「リドディルク様、お待たせ致しました。幻術師のイングヴァルと呪術師のヴァルデマです。」
「リドディルク皇帝陛下、お呼び頂き感謝致します。」
「堅苦しい挨拶は良い。早速だが、グリオルド国の王族であるニコラウスに従事している、幻術師や呪術師がどんな者か分からないか?」
「グリオルド国……そこにいる幻術師は私の弟弟子でございます。その者が従事しているかどうかは分かりませんが……」
「グリオルド国には呪術師はおりません。が、隣国のアクシタス国であれば、一人知人がおります。」
「なるほどな。では早急にその者達の事を調べよう。イングヴァル、ヴァルデマ、これからシアレパス国へと向かう。ニコラウスについている幻術師と呪術師をどうにかしたくてな。力をかして貰えるか?」
「当然でございます!」
「ゾラン、あともう一人連れていく。」
「人形遣いウーログですね?」
「流石だな。」
「もうすぐこちらに参ります。それから、探していたピンクの石がもう一つ見つかりました。」
「そうか!……マルティンか?!」
「はい。それはジルドに渡されますか?」
「そうだな。今ジルドは……」
「アクシタス国の王都におります。マルティンよりジルドに受け取らせます。」
「ではアクシタス国に行ってから、シアレパス国へと向かう。」
「畏まりました。」
ウーログもやって来たところで、空間移動でまずはアクシタス国へ行き、ジルドに会って呪術師と幻術師の事を調べるよう伝え、石を一つ受け取り、すぐにシアレパス国へ戻る。
なるべく早くにニコラウスを止めないと、被害が拡大していく事になりかねない。
あの時、俺がニコラウスの悪事を暴いたが、それが悪かった事だとは思ってはいない。
けれど、それがニコラウスがああなった原因の一つとするならば、そのまま放っておく訳にはいかないんだ。
ニコラウスは、俺が何としてでも止める。
これ以上、アイツの良いようにはさせる訳にはいかない……!
客が一人いなくなったところで、あの宿屋であれば金さえ問題なければ気にも止めないだろう。
ゾランと馬車の中で、これからどうするかを決めていく事にする。
「まず、リンデグレン邸に行かせている者達から、再度話を聞きましょう。ですが、リドディルク様は直接お会いされない方がよろしいかと思われます。」
「そうだな……その者達に呪いがかけられている可能性があるからな。ゾランも直接会わない様にして貰えるか?」
「畏まりました。恐らく、ニコラウス様は外出したり帰宅は平気でされてると思います。幻術等でそれが分からない様にされていると推測できます。」
「だろうな。さて……どうするか……」
「幻術師と呪術師……我が帝国にも高度な使い手がおります。しかし、それを防御出来るかどうかは……」
「幻術師……イングヴァルに、呪術師のヴァルデマだな……」
「そうです。……連れて来ますか?」
「そうだな。ゾラン、宿は取っているか?」
「既におさえております。問題ありません。」
「ではまずはそこに向かう。」
「畏まりました。」
馬車を走らせ、港町ラブニルにある宿屋へと向かう。
最上階を貸切りにしてあり、人が増えても問題なくここで宿泊することができる。
ゾランのする事にはいつも抜かりがない。
部屋に入り、すぐにオルギアン帝国まで空間移動でゾランと戻った。
いつもの部屋にやって来ると、すぐにゾランは行動に移した。
俺はひとまず執務室へ行って、ヴェンツェルの様子を確認する。
ここの業務も大事な仕事だからな。
「リドディルク兄様!いつお戻りになられたんですか?!」
「今だ。すぐにまた出ていく。それより……滞りなく進んでいるか?」
「そうですね……気になるところがありますが、今の段階ではまだ問題ないかと。兄様がこちらに戻ってこられたら、相談させて頂けますか?」
「勿論だ。ヴェンツェルの読みはゾランにも劣らん。頼もしい限りだ。」
「私等まだまだです。もっと兄様にご教示頂きたく思っております。」
「そんな堅苦しくせずとも良い。血を分けた兄弟なんだ。もっと気楽にするが良い。」
「兄様と呼ばせて頂けるだけでも、私には恐れ多い事なんです!気楽に等……!」
「俺がそうして欲しいと言っている。まだ幼いのにヴェンツェルを業務に携わらせる事自体を心苦しく思ってるんだ。何かあれば遠慮なく言って欲しい。」
「ありがとうございます!尊敬する兄様の力になれるよう、尽力致しますっ!」
「ハハハ…真面目だな。では、頼んだ。カルレスや皆も、ヴェンツェルの事をよろしく頼む。」
「「「畏まりました!」」」
執務室を出て自室へ戻る。
あの宿でゾランに体力を奪われたから、少し疲れたな……
ソファーに座っていると、部屋がノックされてミーシャがお茶を持って入ってきた。
「リディ様!おかえりなさいませっ!」
「ミーシャ、来るのが早いな。」
「ゾラン様が真っ先に来られて、リディ様にお茶をお出しするように言われましたので!お疲れだとお聞きしたので、オレンジピールティーをお持ちしましたよ!」
「そうか。気にしてくれてたんだな。ありがとう。またすぐに出ていく事になる。いつもゾランを連れ回してすまないな。」
「そんな……!大切なお仕事をされていらっしゃるんです!謝らないで下さい!」
「そうやって分かって貰えてるって事は、本当に有難い事なんだ。それと、ゾランに爵位を与えた。ゾランと結婚すれば、ミーシャも貴族になってしまう。勝手に決めて申し訳ない。」
「私になんて、何度もそうやって謝ってはいけません!リディ様がそうされたのは、そうする事が最善だと思われたからでしょう?それなら、私もそれに従います!」
「そうか……良い女になったな。ミーシャ。」
「なっ!な、何を言ってるんですか!あ、他に軽食もお持ちしますので、少しだけお待ち下さいね!」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら、ミーシャは慌てて出ていった。
暫くしてゾランがやってきた。
「リドディルク様、お待たせ致しました。幻術師のイングヴァルと呪術師のヴァルデマです。」
「リドディルク皇帝陛下、お呼び頂き感謝致します。」
「堅苦しい挨拶は良い。早速だが、グリオルド国の王族であるニコラウスに従事している、幻術師や呪術師がどんな者か分からないか?」
「グリオルド国……そこにいる幻術師は私の弟弟子でございます。その者が従事しているかどうかは分かりませんが……」
「グリオルド国には呪術師はおりません。が、隣国のアクシタス国であれば、一人知人がおります。」
「なるほどな。では早急にその者達の事を調べよう。イングヴァル、ヴァルデマ、これからシアレパス国へと向かう。ニコラウスについている幻術師と呪術師をどうにかしたくてな。力をかして貰えるか?」
「当然でございます!」
「ゾラン、あともう一人連れていく。」
「人形遣いウーログですね?」
「流石だな。」
「もうすぐこちらに参ります。それから、探していたピンクの石がもう一つ見つかりました。」
「そうか!……マルティンか?!」
「はい。それはジルドに渡されますか?」
「そうだな。今ジルドは……」
「アクシタス国の王都におります。マルティンよりジルドに受け取らせます。」
「ではアクシタス国に行ってから、シアレパス国へと向かう。」
「畏まりました。」
ウーログもやって来たところで、空間移動でまずはアクシタス国へ行き、ジルドに会って呪術師と幻術師の事を調べるよう伝え、石を一つ受け取り、すぐにシアレパス国へ戻る。
なるべく早くにニコラウスを止めないと、被害が拡大していく事になりかねない。
あの時、俺がニコラウスの悪事を暴いたが、それが悪かった事だとは思ってはいない。
けれど、それがニコラウスがああなった原因の一つとするならば、そのまま放っておく訳にはいかないんだ。
ニコラウスは、俺が何としてでも止める。
これ以上、アイツの良いようにはさせる訳にはいかない……!
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