慟哭の時

レクフル

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第七章

友達

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エリアスが次は何処に行くんだ?って、いつもの感じで聞いてくる。

自分の能力に戸惑って、ユリウスに大きな影響を与えてしまった事を気にしている筈なのに、私が腕輪を外すと言ったことを後悔していると思ったからか、それからはもう大丈夫だって言って私に微笑む……

エリアスの優しさに心が痛む……

このまま私と一緒に旅をして、それで本当に良いんだろうか……?
私が傍にいることで、エリアスに嫌な事や悲しい事がまた起こるんじゃないだろうか……?
そんな事を考えていたら、エリアスが手を繋いできた。


「アシュレイ?気にしなくて良いから。俺、もう大丈夫って言ったろ?」

「でも……私と一緒にいたら、またエリアスに嫌な事が起こるかも知れない……」

「またって……なんか思い出したのか?!」

「え?!……いや、何も思い出せてはいないけど、前にもエリアスにそんな事があった気がして……でも、そう聞いたって事は、前もそんな事があったんだな?!」

「いや、そうじゃねぇ!何もねぇ!俺はアシュレイと楽しく旅をしてたんだ!だからアシュレイが気にすることは何もねぇから!」

「そんな風に言われると、余計に気になる……!」

「大丈夫だから!マジで!アシュレイのせいとか、そんな事は何もねぇ……!だから気にすんな!」

「そこまで言うんなら……うん……分かった……」

「分かったんならいい!で?次は何処に行く?」

「あ、うん……じゃあ移動する……」


向かった先は墓地。
ここに私に良くしてくれた人が眠っている……
途中花屋に寄って購入した花を墓石に添えて、膝を折って祈る。
エリアスも同じ様にしてくれた。


「リック……私を知っている人が現れたんだ。今度は本当だったんだ。エリアスって言って、私に剣を贈ってくれた人で、一緒に旅をしてた人なんだ。これからまた、エリアスと旅をする事になったんだ。」


お墓に向かって、そう報告した。

リックと知り合ったのは、海沿いの崖から海を眺めていた時だった。
風が気持ち良くって、何を考えるでもなく佇んでいたら、それを見て自殺でもするんじゃないかと思ったらしく、声をかけてきた人だった。

リックは初老の、身なりの良い服を着ていて、物腰も柔らかくてとても優しい目をした男の人だった。
私がいた場所は、リックの家の窓から見えるらしく、時々そうやって人がやって来て自殺をしようとするみたいなんだ。
その度にリックは急いで止めに行くんだ、と話していた。

その日から、私とリックは友達になった。
その崖に行くと、暫くしてリックが来てくれる。
不在等で会えない時もあったけど、誰かと話したくなったり寂しくなった時は、リックに会いに崖まで行ったんだ……
リックは何を話すでもなく、苦言を呈する訳でもなく、私の話をいつも微笑みながら聞いてくれていた。
話しをしなくてもただ側にいてくれて、それが私には凄く安心できる時間だったんだ……
私は勝手にリックの事を、自分の父親の様に感じていた。
私がリュカと名乗ったのも、リックの名前から貰ったんだ。

でも、ある日突然リックに会えなくなったんだ。
私が崖に行っても、リックがやって来る事がなくなって……
それでも暫く何度も崖まで行って、リックを待つ日々が続いた。
そんな事を繰り返していたある日、初老の女性が現れたんだ。
その人はリックの妻だと言った。
それから、リックが二ヶ月前に亡くなった事を教えてくれた。
悲しみに打ちひしがれていると、そんな私を彼女は慰めてくれた。
そして、私がリックって呼ぶのを聞いて、それはあの人の愛称だから、貴方は友達だったのね、と嬉しそうに微笑んだ。
彼女はロッティと名乗った。
これも愛称なのよ?って、微笑んで言った。
それから彼女とも、友達になったんだ。


「良い人だったんだな……」

「うん……優しくて穏やかで……一緒にいると凄く心が安いだんだ……ロッティも、同じ様な雰囲気を持っていて、素敵な夫婦だったと思う。最近はロッティと会えてなかったんだけど……」

「そっか……リック、アシュレイの友達になってくれてありがとな。これからは俺が傍にいるから、アシュレイの事は心配しないでくれ。」

「エリアス……」


そうやって暫く二人でリックを悼んでから、その場を後にした。

それから食事をするのと、旅に出る分の食材を買い込もう!ってなって、港町ラブニルまでやって来た。
ここは港町だから、常に色んな物が入ってくる。
食材もそうだけれど、雑貨や武器、防具等も、他国から色々な物がやって来る。
それを買いに、業者の人達も多くやって来る。

昨日スラムで魚を全部使ったから、また魚介類をいっぱい仕入れておこうって事で、エリアスと色んなお店を見て回った。

こうやって二人で買い物って、凄く楽しい!
露店で食べ物も買って、歩きながら食べたり飲んだりもして、ラブニルには船の出入りがあるから人が多くて活気があって、その雰囲気を味わうだけでも楽しくなってくるんだ。

そんな私を余所に、エリアスは何だか緊張した様な感じで、周りを何度も確認しながらゆっくり歩いていた。

代金を支払う時とか物を受け取る時は、エリアスが触れない様にぎこちなくしていたから、それは全て私が代わりにした。
人に触れない様にする事にすぐに慣れる訳もなく、まだユリウスにしてしまった事にも負い目を感じている状態で、エリアスが人が多い場所に戸惑って歩けなくなっているのを見て、エリアスの左手を取って、私が連れて行く様にして歩いた。

申し訳なく微笑むエリアスに、私の方が申し訳ない気持ちになってしまう……

早く慣れると良いんだけど……

買い出しも終わって、不意にエリアスが船に乗った事あるか?って聞いてきた。
私が無い、と伝えると、じゃあ今度乗るか?って言ってきた。
空間移動で知ってる人や行きたい場所には行けるから、今まで船に乗る必要なんて全く無かったんだけど、どんなのか体験してみたくなって、じゃあ、今度船で行ったことのない国に行ってみようか、なんて話しをしていた。

どこに行く船が出てるのか見に行こうって言って、乗船場に向かっている途中で見たことがある後ろ姿が遠くに見えた。
あれは……ノエリアだ。
その後を付ける様にしている男の姿が……
フラヴィオ……?

なんでそんな事をしてるんだろう?
フラヴィオはノエリアの婚約者なのに……

変に感じて暫く二人の様子を、エリアスと見る事にしたんだ……








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