267 / 363
第七章
友人
しおりを挟む
エリアスから連絡がない。
いつも遠くに行っても、三日と空けずに連絡してくる。
俺がピンクの石が光ってる事に気づかない時もあるが、それでもエリアスはマメに連絡を入れてくれる。
それが、もう一週間経つのに何の連絡もしてこない。
どうしたんだ……?
何かあったのか……?
滅多な事でどうにかされる奴ではないが、だからこそ余計に気になるんだ。
「リドディルク様、どうされました?」
「え?あぁ、いや、ちょっとエリアスの事が気になってな。」
「そう言えば連絡が無いようですね。珍しいです。」
「カルレスもそう思うか?」
「えぇ。ざっくばらんって感じの方ですが、報告等はきちんとされますからね。どうされたんでしょうか……」
「そうだな。エリアスはあんな風だが、冒険者としてトップクラスだ。今まで連絡、報告を怠る事等無かったんだが……コルネール!」
「はい!何でございましょう?」
「ジルドを呼べ。」
「直ちに!」
少ししてジルドがやって来る。
「リドディルク様、いかがなさいましたか?」
「エリアスがシアレパス国へ言ってから、何の連絡もしてこない。消息を追って貰えるか。」
「畏まりました。」
ジルドは即座に行動に移した。
これで数日様子を見るか……
もしくは、俺がシアレパスまで行ってもいいが……
かなり前に一度行った事がある。
だから空間移動で行ける場所だが、明日から条約を結ぶ為にアクシタス国へ行かなければならない。
その用意等で、今は抜け出す訳にはいかない……
ひとまずはジルドに任せるしかないな。
そう考えていると、ゾランがやって来た。
「リドディルク様、ジルドにエリアスさんの事を頼みましたか?」
「え?あぁ、そうだ。ジルドに会ったのか?」
「はい、今すれ違いました。……実は、私も気になっていたんです。エリアスさんはいつも、私がリドディルク様に報告をする朝の時間に連絡をして来られるので、それが最近見受けられなかったものですから……」
「そうだな。よっぽどの事がない限り、ある程度決まった時間に連絡を入れてくれていたからな。」
「それで私も気になって、少し探っていたんですが……」
「流石だ。それで?」
「エリアスさんの事を調べている人がいました。」
「それは誰だ?」
「シアレパス国の商人で、ノエリア・オルカーニャと言う人です。彼女は若いながらも商才に長けており、今や貴族やヘタな王族よりも力を持つと言われております。」
「そんな者が、なぜエリアスの事を調べているんだ?」
「それが今はまだ分かっておりませんが……ただ……」
「ただ?」
「いえ、これは私の勝手な憶測ですが……」
「いい。言ってみろ。」
「シアレパス国は未だ奴隷制度が色濃く残っています。エリアスさんは昔、奴隷であったと聞いたことがあります。もし、何らかの事で奴隷だった事が知れて捕らえられたとか、そう言う事はないのかと考えまして……」
「そうだったな……エリアスは奴隷だった時期があったんだったな……」
「特にシアレパス国は、奴隷への扱いは酷いと聞いております。対して、ノエリア・オルカーニャは奴隷制度には反対しており、その活動も活発的に行っております。その者がエリアスさんのことを調べていると言うのが少し気になりまして……」
「なるほどな。こう言う時のゾランの読みは当たりやすいからな。ではそっち方面からも調べて貰えるか?」
「畏まりました。もしも……」
「もしも……なんだ?」
「エリアスさんが奴隷として捕らえられていて、拷問等を受けていたら……リドディルク様はどうされますか?」
「それが公に分かれば、オルギアン帝国として対象するしかなくなるな。……そうか。もしそうなっていたと仮定した場合……」
「えぇ。エリアスさんは自分の身元が分からない様にしている可能性があります。」
「そうだな。エリアスならそうするか。アイツは周りの事を考え過ぎる位考える奴だからな。しかし、エリアスが自分の事を政治に使われたくないと思っているのなら、俺はエリアスの意思を汲むつもりだ。」
「分かりました。では、早急に調べます!」
「あぁ。頼んだ。」
前に、エリアスの生い立ちを聞いたことがある。
孤児院でひどい扱いを受け、そこを逃げ出してアクシタス国の国境で盗賊に捕まり奴隷として売られ、魔眼が使える様になってからは捨てられて、それから自力で生きて来たと……
奴隷になったら奴隷紋をつけられ、それは傷をより痛く感じさせ、治りにくくし、治っても痛みが続くようになるのだと言う。
エリアスも同じ様に傷を受けたら痛みが長く続く様だったので、その奴隷紋を消そうかと何度も言ったが、これは自分の戒めだからこのままで良いといつも断られた。
エリアスは自分の母親を殺してしまったことを知ってからずっと気にしていて、今も自分で自分を罰しているんだ。
そんな必要はない、と言ったが、「そうだな。」と笑いながらいつも俺の言葉を躱わす。
アイツはどう思っているのか分からないが、俺はエリアスを友人だと思っている。
だから心配なんだ。
もう少し自分の事を考えて行動して欲しいんだが、いつも人の事を考えて過ぎて行動するからな。
今回はゾランの予測が外れればいいんだが……
今はゾランとジルドに任せるしかない。
明日はアクシタス国へ向かわなければならない。
それが終われば、俺もシアレパス国へ行くか……
奴隷……か……
エリアスからアシュリーとの旅であった事等を聞いたが、エリアスがいた孤児院から、エリアスと共に逃げ出した子供達が殺されていく話を聞いた時は、マルティノア教国の酷さに驚愕を覚えたものだ。
それからアデルの事も聞き、それでエリアスとアシュリーはマルティノアの教皇を倒しに行ったのだと納得出来た。
他にも、俺が知らないアシュリーとの旅の話をエリアスは楽しそうに話していたが、多分俺の悔しそうな顔を見たかったんだろうな。
全く、アイツは良い性格をしている。
けれど、言いにくい事も報告するように話してくれた。
だから自分はこう思っているんだと、堂々と俺に告げてくる。
竹を割ったような性格とは、エリアスの事を言うんだろうな。
もし何かでエリアスが困った事態に陥っているのなら、俺は全力で助けに行く。
国を挙げて助け出す事も厭わない。
それだけの価値のある男だと、俺は思っているんだ。
エリアス……
頼むから無事でいてくれ……
いつも遠くに行っても、三日と空けずに連絡してくる。
俺がピンクの石が光ってる事に気づかない時もあるが、それでもエリアスはマメに連絡を入れてくれる。
それが、もう一週間経つのに何の連絡もしてこない。
どうしたんだ……?
何かあったのか……?
滅多な事でどうにかされる奴ではないが、だからこそ余計に気になるんだ。
「リドディルク様、どうされました?」
「え?あぁ、いや、ちょっとエリアスの事が気になってな。」
「そう言えば連絡が無いようですね。珍しいです。」
「カルレスもそう思うか?」
「えぇ。ざっくばらんって感じの方ですが、報告等はきちんとされますからね。どうされたんでしょうか……」
「そうだな。エリアスはあんな風だが、冒険者としてトップクラスだ。今まで連絡、報告を怠る事等無かったんだが……コルネール!」
「はい!何でございましょう?」
「ジルドを呼べ。」
「直ちに!」
少ししてジルドがやって来る。
「リドディルク様、いかがなさいましたか?」
「エリアスがシアレパス国へ言ってから、何の連絡もしてこない。消息を追って貰えるか。」
「畏まりました。」
ジルドは即座に行動に移した。
これで数日様子を見るか……
もしくは、俺がシアレパスまで行ってもいいが……
かなり前に一度行った事がある。
だから空間移動で行ける場所だが、明日から条約を結ぶ為にアクシタス国へ行かなければならない。
その用意等で、今は抜け出す訳にはいかない……
ひとまずはジルドに任せるしかないな。
そう考えていると、ゾランがやって来た。
「リドディルク様、ジルドにエリアスさんの事を頼みましたか?」
「え?あぁ、そうだ。ジルドに会ったのか?」
「はい、今すれ違いました。……実は、私も気になっていたんです。エリアスさんはいつも、私がリドディルク様に報告をする朝の時間に連絡をして来られるので、それが最近見受けられなかったものですから……」
「そうだな。よっぽどの事がない限り、ある程度決まった時間に連絡を入れてくれていたからな。」
「それで私も気になって、少し探っていたんですが……」
「流石だ。それで?」
「エリアスさんの事を調べている人がいました。」
「それは誰だ?」
「シアレパス国の商人で、ノエリア・オルカーニャと言う人です。彼女は若いながらも商才に長けており、今や貴族やヘタな王族よりも力を持つと言われております。」
「そんな者が、なぜエリアスの事を調べているんだ?」
「それが今はまだ分かっておりませんが……ただ……」
「ただ?」
「いえ、これは私の勝手な憶測ですが……」
「いい。言ってみろ。」
「シアレパス国は未だ奴隷制度が色濃く残っています。エリアスさんは昔、奴隷であったと聞いたことがあります。もし、何らかの事で奴隷だった事が知れて捕らえられたとか、そう言う事はないのかと考えまして……」
「そうだったな……エリアスは奴隷だった時期があったんだったな……」
「特にシアレパス国は、奴隷への扱いは酷いと聞いております。対して、ノエリア・オルカーニャは奴隷制度には反対しており、その活動も活発的に行っております。その者がエリアスさんのことを調べていると言うのが少し気になりまして……」
「なるほどな。こう言う時のゾランの読みは当たりやすいからな。ではそっち方面からも調べて貰えるか?」
「畏まりました。もしも……」
「もしも……なんだ?」
「エリアスさんが奴隷として捕らえられていて、拷問等を受けていたら……リドディルク様はどうされますか?」
「それが公に分かれば、オルギアン帝国として対象するしかなくなるな。……そうか。もしそうなっていたと仮定した場合……」
「えぇ。エリアスさんは自分の身元が分からない様にしている可能性があります。」
「そうだな。エリアスならそうするか。アイツは周りの事を考え過ぎる位考える奴だからな。しかし、エリアスが自分の事を政治に使われたくないと思っているのなら、俺はエリアスの意思を汲むつもりだ。」
「分かりました。では、早急に調べます!」
「あぁ。頼んだ。」
前に、エリアスの生い立ちを聞いたことがある。
孤児院でひどい扱いを受け、そこを逃げ出してアクシタス国の国境で盗賊に捕まり奴隷として売られ、魔眼が使える様になってからは捨てられて、それから自力で生きて来たと……
奴隷になったら奴隷紋をつけられ、それは傷をより痛く感じさせ、治りにくくし、治っても痛みが続くようになるのだと言う。
エリアスも同じ様に傷を受けたら痛みが長く続く様だったので、その奴隷紋を消そうかと何度も言ったが、これは自分の戒めだからこのままで良いといつも断られた。
エリアスは自分の母親を殺してしまったことを知ってからずっと気にしていて、今も自分で自分を罰しているんだ。
そんな必要はない、と言ったが、「そうだな。」と笑いながらいつも俺の言葉を躱わす。
アイツはどう思っているのか分からないが、俺はエリアスを友人だと思っている。
だから心配なんだ。
もう少し自分の事を考えて行動して欲しいんだが、いつも人の事を考えて過ぎて行動するからな。
今回はゾランの予測が外れればいいんだが……
今はゾランとジルドに任せるしかない。
明日はアクシタス国へ向かわなければならない。
それが終われば、俺もシアレパス国へ行くか……
奴隷……か……
エリアスからアシュリーとの旅であった事等を聞いたが、エリアスがいた孤児院から、エリアスと共に逃げ出した子供達が殺されていく話を聞いた時は、マルティノア教国の酷さに驚愕を覚えたものだ。
それからアデルの事も聞き、それでエリアスとアシュリーはマルティノアの教皇を倒しに行ったのだと納得出来た。
他にも、俺が知らないアシュリーとの旅の話をエリアスは楽しそうに話していたが、多分俺の悔しそうな顔を見たかったんだろうな。
全く、アイツは良い性格をしている。
けれど、言いにくい事も報告するように話してくれた。
だから自分はこう思っているんだと、堂々と俺に告げてくる。
竹を割ったような性格とは、エリアスの事を言うんだろうな。
もし何かでエリアスが困った事態に陥っているのなら、俺は全力で助けに行く。
国を挙げて助け出す事も厭わない。
それだけの価値のある男だと、俺は思っているんだ。
エリアス……
頼むから無事でいてくれ……
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します
Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。
女性は従姉、男性は私の婚約者だった。
私は泣きながらその場を走り去った。
涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。
階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。
けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた!
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
悪役令嬢は処刑されました
菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる