220 / 363
第六章
囚われの身
しおりを挟む
気づくと、私は部屋で寝かされていた。
いい加減、こんな風にして倒れてしまう自分に苛立ってしまう……
服はまた法衣のドレスに着替えさせられていた。
ベッドから下りて、辺りを見渡す。
ここは何処なんだろう……?
部屋の家具や調度品等は、高級そうな物ばかりだった。
窓から外を見てみる。
見たこともない景色がそこにはあった。
大きな街で、大きな建物がいっぱいある。
ここは……お城?
かなり高い場所にある部屋だ……
下の広場では、兵達が訓練をしている。
中庭で、優雅にティータイムを楽しんでいる貴婦人が見える。
今になって気づいた。
私は左手にピンクの石を握り締めたままだった。
ディルクの事を想って握ってみた。
すると、すぐに声が聞こえた。
『アシュリー!』
「ディルク!」
『無事か?!何もされてないか?!』
「うん……大丈夫。」
『良かった……心配した……』
「ごめん……心配させて……」
『いや、良い。無事なら良いんだ。そこがどこか分かるか?』
「初めての場所だから分からないけど……お城にいると思う……」
『グリオルド国の王都か……』
「人質を取られたみたいなんだ。」
『人質?エリアスと言うAランクの冒険者か?!』
「違う……知り合った女の子で、アンナって言う子なんだ。」
『そんな子を人質に……?』
「私達と知り合ったから捕らわれてしまったんなら、放ってはおけない……」
『ひとまずアシュリーは大人しくしていて貰えるか?こちらで何とかしてみせる。』
「何とか出来るの?」
『俺は必ずアシュリーを守る。』
「無理はしないで!自分で出来ることはするから……」
『大丈夫だ。アシュリーは何も心配しなくて良い。』
「そんな事言って、いつもディルクは無理をする……」
『大丈夫だ。……アシュリー……』
「なに……?」
『俺の気持ちはずっと変わらないからな……』
「……ディルク……」
『また連絡する。』
「うん……」
握り締めていた首飾りを、自分の首にかける。
私の迂闊な行動が、また人に迷惑をかけてしまった……
アンナはなにも関係ないのに。
ただ、エリアスと街を歩いただけなのに……
そんな事を考えていると、扉が開いて人が入ってきた。
「聖女様!目が覚めたんだね!」
「貴方は……?」
「僕はニコラウス。この国の王子だよ。美しい聖女が見つかったって聞いて、いてもたってもいられなくて会いに来たんだ。聞いていた通り……いや、思ってた以上に美しいっ!」
「……私をここに連れて来るのに、人質を捕ったと聞いた。この国はそんな事をするんだな。」
「それは仕方がないんだ。許して欲しい……」
「アンナを……人質を解放して欲しい。」
「それはまだ出来ないよ。ごめんね?」
「どうすれば解放されるんだ?」
「そうだね、聖女様が何も抵抗せずに、この国の聖女として働いてくれるのが分かったら、解放する事が出来るんだけどな。」
「アンナはただ知り合っただけで、何も関係のない人なんだ!そんな曖昧な条件では、いつになったら解放されるか分からないじゃないか!」
「まぁ、落ち着いてよ。人質と言っても、何も拷問している訳じゃないよ。ここで当分の間、暮らして貰うだけさ。まぁ、聖女様の行動によっては対応が変わるかも知れないけどね。」
「………っ!」
「それよりさ、僕の妃にならないか?」
「は?何を言っている?」
「聖女様を一目で気に入っちゃったんだ。僕と結婚したらさ、王族になれて贅沢出来るんだよ。」
「そんな事には興味がない。」
「えー?!酷いな。こんなに良い条件なんて無いよ?僕は顔も良いし優しいし、王子だしさ。庶民からは考えられない存在なんだよ?!」
「私には約束した人がいる……」
「それは残念だね。ソイツとはもう会う事は出来ないよ。君は一生ここで暮らす事になるんだから。それよりさ、諦めて僕と結婚しちゃいなよ。」
「ふざけるな……」
「まぁさ、連れて来られたばっかりだから、そんな反応でも今は仕方ないよね。そのうち僕のモノにしちゃうからね。じゃあね。」
ニコラウス王子は片手をヒラヒラさせて、部屋から出ていった。
ふざけた男だ……
あんなのが王子なんて、この国の先が思いやられるな……
しかし、アンナが酷い扱いをされていなさそうだったので、それには安心した。
彼女に申し訳ない……
エリアスは私が帰って来ないから気になってるんじゃないかな。
つい喧嘩みたいになって出てきちゃったけど、本気でエリアスの事を怒ってた訳じゃないんだ。
エリアス……
夜になったらまた傷痕が痛むんじゃないかな……
一人で大丈夫だろうか……?
私は無事だから心配しないで
勝手な行動しちゃってごめんなさい……
いい加減、こんな風にして倒れてしまう自分に苛立ってしまう……
服はまた法衣のドレスに着替えさせられていた。
ベッドから下りて、辺りを見渡す。
ここは何処なんだろう……?
部屋の家具や調度品等は、高級そうな物ばかりだった。
窓から外を見てみる。
見たこともない景色がそこにはあった。
大きな街で、大きな建物がいっぱいある。
ここは……お城?
かなり高い場所にある部屋だ……
下の広場では、兵達が訓練をしている。
中庭で、優雅にティータイムを楽しんでいる貴婦人が見える。
今になって気づいた。
私は左手にピンクの石を握り締めたままだった。
ディルクの事を想って握ってみた。
すると、すぐに声が聞こえた。
『アシュリー!』
「ディルク!」
『無事か?!何もされてないか?!』
「うん……大丈夫。」
『良かった……心配した……』
「ごめん……心配させて……」
『いや、良い。無事なら良いんだ。そこがどこか分かるか?』
「初めての場所だから分からないけど……お城にいると思う……」
『グリオルド国の王都か……』
「人質を取られたみたいなんだ。」
『人質?エリアスと言うAランクの冒険者か?!』
「違う……知り合った女の子で、アンナって言う子なんだ。」
『そんな子を人質に……?』
「私達と知り合ったから捕らわれてしまったんなら、放ってはおけない……」
『ひとまずアシュリーは大人しくしていて貰えるか?こちらで何とかしてみせる。』
「何とか出来るの?」
『俺は必ずアシュリーを守る。』
「無理はしないで!自分で出来ることはするから……」
『大丈夫だ。アシュリーは何も心配しなくて良い。』
「そんな事言って、いつもディルクは無理をする……」
『大丈夫だ。……アシュリー……』
「なに……?」
『俺の気持ちはずっと変わらないからな……』
「……ディルク……」
『また連絡する。』
「うん……」
握り締めていた首飾りを、自分の首にかける。
私の迂闊な行動が、また人に迷惑をかけてしまった……
アンナはなにも関係ないのに。
ただ、エリアスと街を歩いただけなのに……
そんな事を考えていると、扉が開いて人が入ってきた。
「聖女様!目が覚めたんだね!」
「貴方は……?」
「僕はニコラウス。この国の王子だよ。美しい聖女が見つかったって聞いて、いてもたってもいられなくて会いに来たんだ。聞いていた通り……いや、思ってた以上に美しいっ!」
「……私をここに連れて来るのに、人質を捕ったと聞いた。この国はそんな事をするんだな。」
「それは仕方がないんだ。許して欲しい……」
「アンナを……人質を解放して欲しい。」
「それはまだ出来ないよ。ごめんね?」
「どうすれば解放されるんだ?」
「そうだね、聖女様が何も抵抗せずに、この国の聖女として働いてくれるのが分かったら、解放する事が出来るんだけどな。」
「アンナはただ知り合っただけで、何も関係のない人なんだ!そんな曖昧な条件では、いつになったら解放されるか分からないじゃないか!」
「まぁ、落ち着いてよ。人質と言っても、何も拷問している訳じゃないよ。ここで当分の間、暮らして貰うだけさ。まぁ、聖女様の行動によっては対応が変わるかも知れないけどね。」
「………っ!」
「それよりさ、僕の妃にならないか?」
「は?何を言っている?」
「聖女様を一目で気に入っちゃったんだ。僕と結婚したらさ、王族になれて贅沢出来るんだよ。」
「そんな事には興味がない。」
「えー?!酷いな。こんなに良い条件なんて無いよ?僕は顔も良いし優しいし、王子だしさ。庶民からは考えられない存在なんだよ?!」
「私には約束した人がいる……」
「それは残念だね。ソイツとはもう会う事は出来ないよ。君は一生ここで暮らす事になるんだから。それよりさ、諦めて僕と結婚しちゃいなよ。」
「ふざけるな……」
「まぁさ、連れて来られたばっかりだから、そんな反応でも今は仕方ないよね。そのうち僕のモノにしちゃうからね。じゃあね。」
ニコラウス王子は片手をヒラヒラさせて、部屋から出ていった。
ふざけた男だ……
あんなのが王子なんて、この国の先が思いやられるな……
しかし、アンナが酷い扱いをされていなさそうだったので、それには安心した。
彼女に申し訳ない……
エリアスは私が帰って来ないから気になってるんじゃないかな。
つい喧嘩みたいになって出てきちゃったけど、本気でエリアスの事を怒ってた訳じゃないんだ。
エリアス……
夜になったらまた傷痕が痛むんじゃないかな……
一人で大丈夫だろうか……?
私は無事だから心配しないで
勝手な行動しちゃってごめんなさい……
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる