慟哭の時

レクフル

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第六章

囚われの身

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気づくと、私は部屋で寝かされていた。
いい加減、こんな風にして倒れてしまう自分に苛立ってしまう……

服はまた法衣のドレスに着替えさせられていた。
ベッドから下りて、辺りを見渡す。

ここは何処なんだろう……?

部屋の家具や調度品等は、高級そうな物ばかりだった。

窓から外を見てみる。
見たこともない景色がそこにはあった。

大きな街で、大きな建物がいっぱいある。
ここは……お城?
かなり高い場所にある部屋だ……
下の広場では、兵達が訓練をしている。
中庭で、優雅にティータイムを楽しんでいる貴婦人が見える。

今になって気づいた。
私は左手にピンクの石を握り締めたままだった。

ディルクの事を想って握ってみた。
すると、すぐに声が聞こえた。


『アシュリー!』

「ディルク!」

『無事か?!何もされてないか?!』

「うん……大丈夫。」

『良かった……心配した……』

「ごめん……心配させて……」

『いや、良い。無事なら良いんだ。そこがどこか分かるか?』

「初めての場所だから分からないけど……お城にいると思う……」

『グリオルド国の王都か……』

「人質を取られたみたいなんだ。」

『人質?エリアスと言うAランクの冒険者か?!』

「違う……知り合った女の子で、アンナって言う子なんだ。」

『そんな子を人質に……?』

「私達と知り合ったから捕らわれてしまったんなら、放ってはおけない……」

『ひとまずアシュリーは大人しくしていて貰えるか?こちらで何とかしてみせる。』

「何とか出来るの?」

『俺は必ずアシュリーを守る。』

「無理はしないで!自分で出来ることはするから……」

『大丈夫だ。アシュリーは何も心配しなくて良い。』

「そんな事言って、いつもディルクは無理をする……」

『大丈夫だ。……アシュリー……』

「なに……?」

『俺の気持ちはずっと変わらないからな……』

「……ディルク……」

『また連絡する。』

「うん……」



握り締めていた首飾りを、自分の首にかける。

私の迂闊な行動が、また人に迷惑をかけてしまった……

アンナはなにも関係ないのに。

ただ、エリアスと街を歩いただけなのに……


そんな事を考えていると、扉が開いて人が入ってきた。


「聖女様!目が覚めたんだね!」

「貴方は……?」

「僕はニコラウス。この国の王子だよ。美しい聖女が見つかったって聞いて、いてもたってもいられなくて会いに来たんだ。聞いていた通り……いや、思ってた以上に美しいっ!」

「……私をここに連れて来るのに、人質を捕ったと聞いた。この国はそんな事をするんだな。」

「それは仕方がないんだ。許して欲しい……」

「アンナを……人質を解放して欲しい。」

「それはまだ出来ないよ。ごめんね?」

「どうすれば解放されるんだ?」

「そうだね、聖女様が何も抵抗せずに、この国の聖女として働いてくれるのが分かったら、解放する事が出来るんだけどな。」

「アンナはただ知り合っただけで、何も関係のない人なんだ!そんな曖昧な条件では、いつになったら解放されるか分からないじゃないか!」

「まぁ、落ち着いてよ。人質と言っても、何も拷問している訳じゃないよ。ここで当分の間、暮らして貰うだけさ。まぁ、聖女様の行動によっては対応が変わるかも知れないけどね。」

「………っ!」

「それよりさ、僕の妃にならないか?」

「は?何を言っている?」

「聖女様を一目で気に入っちゃったんだ。僕と結婚したらさ、王族になれて贅沢出来るんだよ。」

「そんな事には興味がない。」

「えー?!酷いな。こんなに良い条件なんて無いよ?僕は顔も良いし優しいし、王子だしさ。庶民からは考えられない存在なんだよ?!」

「私には約束した人がいる……」

「それは残念だね。ソイツとはもう会う事は出来ないよ。君は一生ここで暮らす事になるんだから。それよりさ、諦めて僕と結婚しちゃいなよ。」

「ふざけるな……」

「まぁさ、連れて来られたばっかりだから、そんな反応でも今は仕方ないよね。そのうち僕のモノにしちゃうからね。じゃあね。」


ニコラウス王子は片手をヒラヒラさせて、部屋から出ていった。

ふざけた男だ……

あんなのが王子なんて、この国の先が思いやられるな……

しかし、アンナが酷い扱いをされていなさそうだったので、それには安心した。

彼女に申し訳ない……

エリアスは私が帰って来ないから気になってるんじゃないかな。

つい喧嘩みたいになって出てきちゃったけど、本気でエリアスの事を怒ってた訳じゃないんだ。


エリアス……


夜になったらまた傷痕が痛むんじゃないかな……


一人で大丈夫だろうか……?


私は無事だから心配しないで


勝手な行動しちゃってごめんなさい……









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