慟哭の時

レクフル

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第六章

男の人って

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翌日、朝から外は太鼓の音が鳴っていた。

街が何やら賑やかで、出店の準備や祭の準備をする人達が慌ただしく動いていて、皆ソワソワしている感じだった。

私は窓からその様子を、お祭りの前ってこんな感じなんだな……なんて思いながら、まだ始まってもいないお祭りの前準備にも、普段とは違う様子を楽しく見ていた。


「アシュレイ、何ニコニコしてんだよ?」


私の目線を辿って、エリアスも顔を隣に寄せてきて同じ目線で窓から外を見るけど、何が楽しいのか分からない、と言った感じで不思議そうに聞いてくる。


「なんか、いつもと違う感じがするのが楽しいんだ。皆、祭りの前の準備であちこちに動きながら色んな指示を出したりしていて、これから始まる事を成功させようってのが見て取れる。ほら、あそこには兵達がいるだろ?持ち場の確認とかもしてるし、出店の人達が食材の準備をしてるけど、間に合わないって焦ってる!皆が何もトラブルが起こらない様に、一つの事を成し遂げ様と頑張ってるのが、見てるだけでも楽しくなってくるんだ。」

「……なんか、悔しいな……」

「ん?何が?」

「アシュレイを祭りに連れてってやれねぇ事がさ……」

「それは仕方がない。自分のせいだから。迂闊に色んな人に触ってしまって、また頭が情報だらけになって倒れたら、エリアスに迷惑かけちゃうし。」

「自分のせいとか……そんなんじゃねぇだろ……俺、やっぱり、アンナって子と出掛けるの、やめる。」

「え?!何で!?そんな事しちゃダメだ!きっと楽しみにしてる筈だ!絶対に行かないとダメだ!」

「いや、でもよ……」

「どたきゃんってのはダメだって、女の子達が言ってた!何でどたきゃんって言うか分からないけど、その日に行かないって言うのはダメなんだって!だから、エリアスも絶対にダメだからな!ちゃんと約束は守らないといけないんだからな!」

「分かった、分かったよ……」

「今、こうして外を見てるだけでも、私は楽しいんだ。お祭りに行けなくても楽しめるから、エリアスは気にしないで楽しんで来て!」

「ったく……分かったって……相変わらず言い出したら聞かねぇんだから……」


そう言って、私の頬にキスをした。


「えっ!?ちょっと……!何?!」

「飯でも食いに行こうぜ。」


ビックリする私の手を取って、一階にある食堂まで連れていく。



最近、エリアスと距離が近くなり過ぎてる感じがする……

こう言うのはきっと、あまりダメな事なんだ……

あまり頼り過ぎてもいけないだろうし、エリアスにもプライベートってのは必要だろうし……

そう言えば、前に母から聞いた事がある。

男の人は、たまに欲求を吐き出さないといけないんだって。

女の子と違って、男の人はそう言う事が必要なんだって。

それに、男の人は、誰とでもそんな事が出来るんだって。

だからエリアスは、私に抱きついたりするんだろうか……

多分そうなんだろうな……

だからあの時もあんな事……

ダメだっ!

考えたら急に恥ずかしくなってきた!

何も考えない様にしてたのにっ!

私……っ!

そう言えばエリアスに色々見られてたっ……!

ディルクにもまだあんな事されてないのにっ!

って、何またこんな事考えてるんだ!



「アシュレイ?どうした?何か顔が赤いぞ?」

「えっ?!あ、何でもないっ!」


一階のテーブル席で、隣に座ったエリアスが私の額に額をくっつけて来る。


「熱はねぇみたいだな……」

「エリアスっ!簡単にっ!そんな事しちゃ……」

「あ、すまねぇ、朝のおすすめの飯、二つ持ってきてくれ。」

「はーい、分かりました!」


何だか一人で焦ってるみたいだ……

私が何かした訳でもないのにっ!


「王都でも祭りはあるんだぜ?そん時、また帰ろうか?」

「えっ?あ、あぁ、うん……」

「ここの飯とかも旨いのがあったら、アイツ達に持って帰ってやろうか……ここはそんなに物価も高くねぇしな。」

「あ、うん、そうだな、あの子達も喜ぶと思うっ!」


エリアスが私を見て微笑んで、頭をポンポンしてくる。

最近本当に子供扱いされてる感が否めない……



食事が終わって、祭りが始まる前の様子を、エリアスと二人で見に行く事にした。

徐々に人が多くなってきてはいるが、まだ人と密着する程ではないので、ゆっくり見ながら歩いて行く。

お祭りが出来るって事は、国や街に余裕があるからだ。
それは、財政的にもそうだが、人々の心にも、だ。

勿論、祭りをすることで収益が上がるんだろうが、それは国民に還元されていく物だ。
国の収益と言うよりは、街の繁栄の為にしている事だろう。

オルギアン帝国の属国になるのは、そんなに悪い事ではなさそうだ。

とは言え、まだ良い所しか見えてないからそう感じるだけだけど……

そして、私達をこっそりつけているのは、恐らくオルギアン帝国の者だろう。
なぜ分かるのかと言われると説明しにくいが、そんな感じがする。
まぁ、危害を加えて来そうではないから、そのまま放置しているが……
Cランクになった私の実力を、こっそり確認でもしようとしているのだろうか……



歩いていると、あちこちに同じ様な格好をした女の子がいる。

あれが生け贄娘の衣装なのか……

因みに、生け贄娘の事を巫女と呼ぶらしい。

キレイに化粧して、頭にも飾りをつけて、巫女の姿の女の子は、誰もが凄くキレイだ。


「エリアス!巫女の格好した女の子がいっぱいいる!皆すごくキレイだな!」

「あぁ、あちこちにいっぱいいるな。」

「ほら!あそこにも!見て見て!可愛い!」

「そうか……?」

「えぇ?どこ見てるんだ?皆凄く可愛いじゃないか!」

「アシュレイの方が可愛いけどな。」

「……っ!そ、んな事っ!ないっ!」

「そんな事ある!」

「冗談っ、ばっかり言ってないでっ!あ、もうすぐ正午になるんじゃないか?!そろそろ向かった方が良いんじゃないかなっ!」

「まだ時間ありそうだけど?」

「人が多くなってきてるし、私はそろそろ宿屋へ帰る!エリアスはアンナと頑張ってきて!」

「なにを頑張るんだよ?!」

「あ、お母さんが言ってた!女の子は泣かしちゃダメなんだって!優しくしてあげなといけないんだって!」

「なんだそれ!何もしねぇよ!ってか、それを言うなら、アシュレイにもだろ!」

「じゃあな、エリアス!遅く帰って来ても良いからっ!遅くなっても何も聞かないからっ!」

「だから何もしねぇって!」


そうやって私はエリアスと別れて、宿屋へ向かったんだ。






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