慟哭の時

レクフル

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第六章

お誘い

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宿屋の部屋で、そんな話をしていて、ふと外を見ると日が沈んで来ていたので、食事に出る事にした。

祭の前日だからか、どこも人が多く、凄く賑わっていた。
しかし、前日でこんなに人が多いのであれば、明日はどれだけの人がやって来るのか……やっぱり、窓から眺める位しかできないかもな、なんて思いながら、外にもテーブル席がある酒場に入った。

エリアスと二人で食事をしていると、若い女性が二人、声をかけてきた。


「あの……ちょっと良いですか?」

「え?あぁ、どうしたんだ?」

「あの、この街の方ではないですよね……?」

「あぁ、そうだけど……?」

「明日のお祭りは、何か予定とかありますか?」

「え?いや、別に何もねぇけど、なんだ?」


女性は二人でやった!とか、良かったね!とか言い合ってた。


「あ、あの!明日、私達と一緒に、お祭り回って下さい!」

「ん?え?何?」

「それから、夜にダンスパーティーがあるんですけど!それに一緒に行って欲しいです!」

「え?ダンスパーティー?」

「お願いします!」


ひとまず、どういう事か詳しく聞きたいので、一緒のテーブルについて貰う事にした。
私の横に座った娘が、ずっと私の顔を、ボーっとした顔で見詰めていた。

この街の未婚の女性は、祭りとなると、誰かパートナーとなる人と一緒に祭りを見に行くのが定例となっているらしい。
しかし街の男性は、祭りの運営やら手伝いやらで男手が必要とされる為、祭に参加できる者が少ない事から、パートナーを求める女性があぶれてしまう事になりがちだそうだ。

そこで、祭りを見に来た旅人等を誘うと言うことが、よくある事らしかった。

それから、祭りが終わった後に催されるダンスパーティーに参加する事が、女子の中ではステータスが高いと言われるそうなのだ。

しかし、ダンスパーティーの頃には、祭りから解放される男性達もいるので、密かに誘いを待っている者も多いらしいが、日中の祭りからダンスパーティーまで、同じパートナーでいられる事を望む女子からは、よっぽどの事がない限りはダンスパーティーのみ誘う、と言った事はないらしいのだ。


「そうなんだな……」

「色々あんだな……でも、悪いけど、俺達は無理だな。」

「えぇ?!どうしてですか?明日はお祭りを見て回られるんですよね?なら、そこに私達が一緒じゃダメなんですか?!」

「あ……私は無理なんだけど……エリアスなら行けるだろ?」

「何言ってんだよ、アシュレイ!」

「え?!貴方は無理なんですか?!」

「あ、あぁ、うん、そうなんだ……」

「あ、でも、この娘だけでも良いんです!私は最悪幼馴染みがいるから……」

「いや、最悪って……」

「この娘、アンナって言うんですけど、引っ込み思案で、人見知りも激しくて、自分では誰も探せそうにないから……エリアスさん…?お願い出来ませんか?!」

「え、いや、それは……」

「エリアス、良いじゃないか。付き合ってあげれば。」

「けどよ……っ!」

「私は明日、部屋から出られそうにないんだ。それにエリアスは付き合ってくれようとしてたんだけど、それは私も気が引けるから、君の誘いにのらせて貰いたいんだ。」

「是非!お願いします!」

「勝手に決めんなよ!」

「ダメですか……?」


アンナが目を潤わせて、エリアスを見詰める。


「エリアス、私の事は、本当に気にしなくて良いから。一緒にお祭り、楽しんで来て!」

「……分かったよ……けど、俺、ダンスとか出来ねぇからな……」

「それでも良いですっ!やったぁ!良かったね!アンナ!イケメンゲットだね!」

「ん?イケメン?ゲット?」

「あ、何でもないです!じゃあ、明日、正午にこの店の前で!」

「あぁ、分かった。」

「よろしくお願いします!」


彼女達は頭を下げて、良かったねー!ハイスペックだよー!って、キャッキャッしながら帰って行った。

なんか、仕草とかが全部、女の子だなぁーって思いながら、私は去っていく彼女達の後ろ姿を見ていた。

ふとエリアスを見ると、何だかムスッとした顔をしていた。


「どうしたんだ?エリアス?」

「ったく……俺の気持ちはどうでも良いのかよ……」

「え?嫌だったのか?」

「嫌とか、そんなんじゃねぇけど……俺、アシュレイと一緒に見て回りたかったからよ……」

「けど……行けないかも知れないから……」

「分かってるよ。アシュレイの気遣いって事くれぇ……」

「あ、そうだ!なんかお土産買ってきて!美味しそうなのとか、面白そうな物とか!」

「……あぁ、分かったよ……」


ちょっと不貞腐れた感じで、エリアスは呟いた。

それからも、何回か女性に、さっきと同じ様な感じで声をかけられた。

既に行く相手が決まっている、と言うと、凄く残念そうな感じで去っていく。

お祭りとは言え、女の子はなかなか大変なんだな、と感じたのだった……






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