慟哭の時

レクフル

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第五章

繰り返す悲劇

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その日は街で一泊して、翌朝、マルティノア教国へ向かうべく、街道を歩く。

何日か歩いて、その間に魔物を倒して解体して素材を集めて、夜になったら野宿をして、それからまた歩いて行く。

エリアスとの旅は、魔物を程無く倒して行けて、たまに出合う盗賊も難なく倒せて、何とも快適に進んで行ける。

夜に私が料理を作ると、エリアスはどこまで褒めるんだ?と思うくらい、いつも私の料理を絶賛し、残さず平らげてくれる。

エリアスの話も楽しかった。

今までの冒険者としての仕事の話が多かったが、依頼を受ける事の無かった私には、そんな依頼もあるのか?!と思う程、様々な話を聞かせて貰った。

そんな話が楽しいのもあり、エリアスとの旅は順調に進んでいく。

しかし、レクスを見送ってから、ディルクとは一度も話せていなかった。
石は全く光らなくなったし、私がディルクを思って石を握りしめても、何の返答も無かった。

どうしたんだろうか……

また無理をして倒れているんじゃないだろうか……

そんな思いが頭を過る。

無事であればそれで良いんだ。

それだけでも知りたい。

夜になるといつもそんな事を思って、私は石を握り締めていた……




街道を外れて、森の中を進んでいく。
エリアスが、何故かこの道を進みたいって言ったからだ。

もうそろそろ野宿する場所でも探そうかと思っていた時、うっすらした子供が私達の横を、凄い勢いで走り抜けて行った。

驚いて2人で後ろを振り返る。

その霊は走って、それから突然首が飛んで行き、倒れた。


「ラルフ……?」


エリアスが倒れた霊を見つめて、そう呟いた。

「えっ?」

驚いてエリアスを見ると、エリアスの顔は青褪めていた。

霊は消えて、少しすると、また向こうから私達の横を走り抜けて、それから首が飛んで行って倒れる……

エリアスは何も言えずに、暫くその場に凍り付いた様に立ち尽くしていた。

何度もそうやって、逃げるように走って来て、それから首が飛んで行き、そして倒れて消えて行く……

思い立った様にエリアスが振り返り、また走って来ている霊に向かって

「ラルフ!」

と呼びかけた。

霊はやっと止まって、エリアスの方を見た。

「ラルフ、俺だ、エリアスだ、分かるか?!」

エリアスが膝をついて、目線をラルフに合わせた。

「エリアス?……エリアス!早く逃げよう!もうユーリもディータも皆殺された!早く逃げないと……」

言ってるそばから、ラルフの首がまた飛んだ。

血が吹き出し、エリアスの顔に飛び散る。

ラルフが消えると、エリアスの顔に着いた血も消えていた。

それからまた、ラルフが走って来た。

彼はずっとこうやって何年も、追いかけられて逃げて、それから殺される事を繰り返していたのか……!?

「ラルフ!」

エリアスがまた目線を合わせて、ラルフに訴える様に言う。

「エリアス!早く逃げないと……」

「大丈夫だ!もういいんだラルフ!もう逃げなくていいっ!」

「エリアス…?」

「助けに来たんだ!ラルフ、もう大丈夫だからっ!」

「助けに来てくれたのか……」

ラルフはそう言うと、涙を流した。

私はルキスを呼んで、ラルフを浄化させる。

幸せそうな顔をして、ラルフが空へと消えて行った。


膝をついたままその場で動けなくなって、顔を手で覆ったエリアスは「ありがとう……」と一言呟いた……






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