154 / 363
第五章
行き先は
しおりを挟む「じゃあエリアス。私は母の元へ行こうと思う。」
「勿論、俺もついてくぜ?」
エリアスは私の左手首を掴む。
私は母の事を思い描く。
目の前の空間が歪みだし、目の前が真っ暗になる。
それから、何処かの場所が映し出されて、でもまた暗くなって、弾き出される様に元の場所へ戻って来た。
「えっ?!」
「なんだ?!帰って来ちまったぞ?!」
「もう一度やってみるっ!」
もう一度母を思い描く。
目の前が歪んで真っ暗になり、またさっきと同じ場所が映し出されて、でも弾き出される様にまた元の場所へ戻って来た。
「なんでっ?!」
「どういう事なんだ?これ……」
「分からない……」
「途中までは行ってる様だな。でも阻まれてる感じがする。」
「誰に?!なんでっ?!」
「いや……それは分かんねぇけど……」
「あ、ごめん…つい……」
「大丈夫だ。気にすんな。見えた場所に心当たりはあるか?」
見えた場所……
何処かの部屋の中……
宿屋とかじゃなくて…普通の部屋っぽくもなくて…
何処かの貴族の部屋みたいな……
「心当たりは……ない…」
「そうか……どうする?」
「もう一度!試してみる!」
その後何度も繰り返したが、やはり母の元には行けなかった。
レクスの時も行けなかったが、その時は空間が歪むと言うこともなったので、母が亡くなっていると言うことはない……はず……
不安そうにしていたのか、エリアスが頭をポンポンと手で弾まして
「まぁ、また試してみりゃあ良いよ。生活に苦労してそうな感じはなかっただろ?無理に焦らなくても良いかもしんねぇぜ?」
「エリアス……」
「あと、気になってたんだけどよ、アンタの持ってる短剣、まだ窪みがあっただろ?ってことは、まだ探す石があるって事だよな?」
「あぁ。そうなんだ。あと2つ。黒と白の石がある。……と思う……」
「思う?」
「存在が……確認出来ない……」
「どういう事だ?」
「いつも石が遠くにあっても、石のある方向が光って見えていたから、何となくでもその方向に向かって行けた。けど、今はその光が全く見えない……」
「それは……どういう事なんだ?」
「分からない……」
「じゃあ……どうする?」
「………」
「あ、まぁ、急ぐ事もねぇしな!ちょっとゆっくりしても良いんじゃねぇか?」
「あぁ……そうだな……」
「今まで行ったことのある国は何処なんだ?」
「え?あぁ、そうだな…アクシタス国、グリオルド国、オルギアン帝国、シアレパス国…だな。」
「結構行ってんな。」
「それがどうした?」
「いや、行ったことのねぇ国に行ってみるのも良いかもしんねぇって思ってな。」
「確かにそうかも知れないけど、そうなると徒歩で行ける範囲で考えると…マルティノア教国になる……」
「行ってみっか?」
「いやっ!それは止めておくっ!」
「俺の事気にしてんのか?」
「……そう言う訳じゃ……」
「俺の事は気にすんな。今は宛てもねぇんだ。アンタの力でいつでも引き返せんだろ?ここでウダウダしてるよりは行動してみる方が良いんじゃねぇか?」
「でもっ……」
「大丈夫だ。俺もあん時より強くなったからよ、今は怖いモンは何もねぇしな。」
「エリアス……」
「行ける範囲を拡げるって事も大事だぜ?人以外では、その場所を思い浮かべれば良いんだろ?それじゃあ行ったことがない場所には行けねぇって事だろ?」
「そうだな…」
「アクシタス国は行ったことあんだろ?じゃあ、そこは石の力で行って、そこからノンビリ歩いて行くか!」
「良いのか?」
「俺の事は気にすんなっつってんだろ?俺も行けねぇ場所があるのは気に食わねぇしな。」
「分かった。」
そう言う事で、私達はマルティノア教国に行く事になった……
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します
Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。
女性は従姉、男性は私の婚約者だった。
私は泣きながらその場を走り去った。
涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。
階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。
けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた!
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
悪役令嬢は処刑されました
菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる