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第四章
複雑な思い
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急いで部屋から出て、隣の部屋へ行ってみる。
部屋に入ると、ベッドにレクスが横たわって眠っていた。
その側に、前に見たことのある、ディルクについている精霊がいた。
「あら、貴女は以前会った事のある子かしら?」
「あぁ、そうだ。」
「随分と変わっちゃったのね。可愛らしいわ。」
「いや、これは……それより、レクスは?!」
「今は安心して眠っているわ。森から離れたから、自分を維持するのが難しかったようね。」
「そうなのか?」
「この子には、森の精霊の加護がついてるわ。でも霊体だから、その加護自体が弱いのよ。あまりこの世に留めてはいけないわ。なるべく早くに還してあげなさい?」
「……!」
「じゃあ私は帰るわね。」
ドリュアスは風を纏って消えていった。
私はレクスのことを何も分かっていなかった……
自分の側にいて欲しいだけで、レクスを縛りつけていたんだ。
レクスはきっと辛かったんだろう……
その事に、ディルクだけが気づいていた。
一番一緒にいた筈なのに、私は何も分かっていなかったんだ……
「アシュレイ、あんまり気にするな。」
「でも…レクスはきっと辛かった筈で……」
「これからをどうすれば良いか、一緒に考えていけば良い。アンタは1人で抱え込もうとするな。」
「エリアス……」
「俺の事も頼ってくれ。ディルクって奴程、俺は頼りになんねぇかも知れねぇけどな。」
エリアスは私に微笑んでみせる。
「ありがとう…エリアス。」
「俺は一旦帰るな。報告とかもあるしな。あ、後でアンタの服とか持ってきてやるよ。流石にずっとそのまんまじゃいられねぇだろ?」
「助かる。エリアス、本当にありがとう。」
「こんな事位、どうってことねぇよ。アンタはレクスの側にいてやんな。」
「うん、分かった……」
エリアスが出て行って、レクスと2人になった。
安心した顔をして、レクスは眠っている。
こんな安心した顔…最近は見ていなかった……
ごめんレクス…ごめん……
レクスの横に、私も横たわった。
今日は色んな事があった。
色んな事が分かった。
驚きや戸惑い、それから悔い……
複雑な気持ちが胸を締め付ける。
ディルクの事も
レクスの事も
私は何も分かっていなかった……
レクスの手に、重ねる様に手を置く。
決して触れられはしないけど、今はレクスを感じていたかった……
ーーーーーーーー
「アシュレイ、荷物持って来たぞ!」
勢いよく部屋に入ったが、アシュレイとレクスはベッドで2人寄り添う様に眠っていた。
アシュレイの目からは、うっすらと涙が滲んでいる。
そばまで行って、膝を折る。
「また泣いちゃったんだな……」
アシュレイの涙を優しく拭う。
髪をそっと撫でる……
愛しい気持ちが溢れて来る。
こんな気持ちになったのは初めてだ。
そっと顔を近づけて
俺はアシュレイの頬に口付けをした……
部屋に入ると、ベッドにレクスが横たわって眠っていた。
その側に、前に見たことのある、ディルクについている精霊がいた。
「あら、貴女は以前会った事のある子かしら?」
「あぁ、そうだ。」
「随分と変わっちゃったのね。可愛らしいわ。」
「いや、これは……それより、レクスは?!」
「今は安心して眠っているわ。森から離れたから、自分を維持するのが難しかったようね。」
「そうなのか?」
「この子には、森の精霊の加護がついてるわ。でも霊体だから、その加護自体が弱いのよ。あまりこの世に留めてはいけないわ。なるべく早くに還してあげなさい?」
「……!」
「じゃあ私は帰るわね。」
ドリュアスは風を纏って消えていった。
私はレクスのことを何も分かっていなかった……
自分の側にいて欲しいだけで、レクスを縛りつけていたんだ。
レクスはきっと辛かったんだろう……
その事に、ディルクだけが気づいていた。
一番一緒にいた筈なのに、私は何も分かっていなかったんだ……
「アシュレイ、あんまり気にするな。」
「でも…レクスはきっと辛かった筈で……」
「これからをどうすれば良いか、一緒に考えていけば良い。アンタは1人で抱え込もうとするな。」
「エリアス……」
「俺の事も頼ってくれ。ディルクって奴程、俺は頼りになんねぇかも知れねぇけどな。」
エリアスは私に微笑んでみせる。
「ありがとう…エリアス。」
「俺は一旦帰るな。報告とかもあるしな。あ、後でアンタの服とか持ってきてやるよ。流石にずっとそのまんまじゃいられねぇだろ?」
「助かる。エリアス、本当にありがとう。」
「こんな事位、どうってことねぇよ。アンタはレクスの側にいてやんな。」
「うん、分かった……」
エリアスが出て行って、レクスと2人になった。
安心した顔をして、レクスは眠っている。
こんな安心した顔…最近は見ていなかった……
ごめんレクス…ごめん……
レクスの横に、私も横たわった。
今日は色んな事があった。
色んな事が分かった。
驚きや戸惑い、それから悔い……
複雑な気持ちが胸を締め付ける。
ディルクの事も
レクスの事も
私は何も分かっていなかった……
レクスの手に、重ねる様に手を置く。
決して触れられはしないけど、今はレクスを感じていたかった……
ーーーーーーーー
「アシュレイ、荷物持って来たぞ!」
勢いよく部屋に入ったが、アシュレイとレクスはベッドで2人寄り添う様に眠っていた。
アシュレイの目からは、うっすらと涙が滲んでいる。
そばまで行って、膝を折る。
「また泣いちゃったんだな……」
アシュレイの涙を優しく拭う。
髪をそっと撫でる……
愛しい気持ちが溢れて来る。
こんな気持ちになったのは初めてだ。
そっと顔を近づけて
俺はアシュレイの頬に口付けをした……
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