慟哭の時

レクフル

文字の大きさ
上 下
126 / 363
第四章

光る石

しおりを挟む

採寸が終わって外に出ると、またエリアスに色んな店に連れて行かれた。


「エリアス!自分の物を購入するのだから、自分で支払う!」

「俺が連れて来たんだから、俺が支払うんだよ!」

「良いって言ってるじゃないか!」

「アンタをこの作戦に加える事には俺が折れたんだ!今回はアンタが折れるべきだろ!」


そんな感じで、エリアスは一切私から金を受け取らなかった。

なんとも歯痒い感じがする。

「俺にもちょっとは格好位つけさせろよ…」

ボソッと呟く様に言う。

なぜ格好をつける必要があるんだ?

まだまだ私は人と言うのが分かっていないのかも知れないな……



それから、この2日間で必要だった物が揃った。

招待状はギルド経由でどうにかできた様だ。

出入り業者は、酒を搬入する業者を装う事が出来る。

会場の屋内地図で、全ての場所を把握した。

あとは入念に計画を立てる。

今回はギルドが全面的に協力してくれている。

編成されたチームには、ギルドから報酬が出る様になっている。

必要経費も全てギルド持ちだ。

が、エリアスが私に必要だと購入した物は、全てエリアスが支払っていた。

本当に何がしたいのか分からない…

それから紫の石だが、現在この王都近く迄来ている様だ。
これはかなり有難たかった。




いよいよ、明日潜入することになる。

しっかり打合せをした後、宿屋に帰った。

食堂で夕食をとる。

おかみはやつれて、目の下にクマがあり、かなり疲れている様だった。

まだエレーヌは見つからないんだろう。

宿屋の主人に風呂を貸し切る様に頼み、1人浴場に来た。

いつもの様に結界を張り、着ていた物を脱ぎ、浴場に風呂を作り出し入浴する。

湯船に浸かり、左肩を撫でる。

計画を練っている間、エリアスは私に無理をさせなかった。

食事も、しっかり摂る様にした。

お陰で体調は良くなり、左肩も、ある程度問題なく使える様になっている。

明日の作戦は、失敗する訳にはいかない。

失敗すれば、自分達だけがどうにかなるのではなく、拐われた人達が、もう二度と帰って来れなくなるかも知れない。

そう考えると、少し怖くなってくる。

自分の失敗で、犠牲になる人が出るかも知れない。

今までは自分の身を守る為だけだったが、明日はそうではない。

こんな事は初めての事だ。



浴場から出て、部屋に戻って来た。

レクスはベッドで、既に眠っていた。

最近よく眠る様になった。

そして、時々レクスが薄く見える。

それにも不安がよぎる。

レクスの横にそっと寄り添い触ろうとするが、やはり体をすり抜ける。


レクス、大丈夫かな…


あれからまだ、石は光らない。


ディルク、大丈夫?


明日の事、レクスの事、ディルクの事を考えると不安に押し潰されそうになる。


ディルク、早く目を覚まして…


会いたい……


寝る前に、首飾りの石を無意識に握り締めて、今日もディルクに話し掛けながら眠りについて行った。


暫くしてその石が光った事は、眠りについた私は気づかなかったんだ……





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

あなたへの想いを終わりにします

四折 柊
恋愛
 シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)

婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します

Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。 女性は従姉、男性は私の婚約者だった。 私は泣きながらその場を走り去った。 涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。 階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。 けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた! ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

処理中です...