慟哭の時

レクフル

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第二章

魔法の街

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朝の光が優しく照らす。

目を覚ましたら、私は結界に守られていた。

ゆっくりと体を起こすと、徐々に結界が消えていく。

そこにはもう誰もいなかった。

昨日の事は夢だったのか?

そんな気がしたが、自分の体には大きめの外套がかけられてあった。

これはディルクの外套。

夢じゃない。

立ち上がり、光魔法で自身と着ている物を浄化させる。

ディルクの外套を空間魔法で収納する。

寒い季節なのに、彼は大丈夫なのか。

今度彼に会ったら返さなくては。




東に行って 探している物を見つけておいで



眠りに落ちる前、ディルクは私にそう告げた。

彼は何者なんだろう。

不思議な人だった。

優しい瞳をしていた。

包み込むように語りかけた。

何も聞かずそばにいてくれた。



考えると暖かい気持ちが甦ってくる。



顔を上げて深呼吸すると、なんだかスッキリした気分になった。




さあ 東へ行こう。




そこには、青い石があるだろう。




東へ進むにつれて、反応が強くなっていく。

3日程歩いた先に、街を見つけた。

久しぶりの街。

少し怖くなる。

しかし、石がこの辺りにあるのは間違いなさそうだ。



門へと近づく。

門番がいる。

街に入るには身分証明書がいるようだ。

イルナミの街よりも大きめで、ちゃんと警備もされていた。

外壁は4m程で、頑丈そうな造りをしていた。

ここに来る道中で出合った魔物は、イルナミの街と比べるとかなり強かった。

街に近づくと、魔物と戦う冒険者をあちらこちらで見かけたものだ。

冒険者以外の者が外に出るときは、護衛をつけて馬車で移動するのが殆どで、一人で旅をしている者が歩いて来る事はほぼ無い事のようだ。

その事もあって、門番は私が差し出したギルドカードを見て納得がいかない顔をしていたが、
この近くで馬車から降りたと言うと、意外とあっさり入ることができた。




イルナミの街と比べると、活気があり、大きな建物が多かった。

石で出来た建物も多く、沢山の店がそこかしこに並んでる。

店は武器屋が多く、特に杖がよく目に入る。

ここは魔法が盛んな街なのだろうか。

あちらこちらへと目を向けると、至るところで魔法の練習をしている子供や若者がいる。

少し歩くと、大きな建物が見えた。



立ち止まって、大きな建物を見上げていると

「ここは魔法学園なんですよ。」

と、声をかけられた。


見ると、白髪の初老の男性が、ニコニコした顔で話しかけてきた。

「ここは魔法の街って言われるくらい、魔法使いや、魔法を勉強しにくる子達が集まる街なんですよ。」

「そうなんですね。」

「珍しいものを見るような顔で見ていたものですから。この街の事は知らずに来たのですか?」

「はい。私は旅人なので、街を見つけたから寄っただけです。」

「少しの間だけでも、この街を楽しんで下さいね。」

彼はそう言って立ち去った。



魔法の街 ヘクセレイ



それがこの街の名前。



この街に、青の石がある。






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