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第一章
細道の先
しおりを挟むクオーツの話しはこうだ。
その日はタイミングを逃して、つい遅くまでダンジョンにいてしまった。
流石に疲れて、帰り道に休憩をしようと考えた。
少し拓けた行き止まりのある場所に行って、体を休めようとしていた。
地下3階では、クオーツが休憩するのは、大体がその場所だった。
その場所までたどり着いた時、ふと違和感に気づく。
行き止まりの右側に、人が一人通れる位の細い道が出来ていた。
何度もこの場所に来たことはあるが、こんな細道は見たことがなかった。
気になったら行動あるのみが冒険者だ。
クオーツはその細道を進んで行った。
暫く歩いたその先に、拓けた場所に出てきた。
あまり広くはなく、まぁ、ここでなら30人位で寝泊まり出来そうだと思った。
その一番奥の壁が、人の頭位の大きさで淡い緑色に光っていた。
それは、外側から光が当たっている様な感じではなく、岩壁の中からにじみ出て来る様に光っていた。
宝石か何かが埋まっているかも知れないな。
そう思って、まずは壁を触って様子を見た。
それから、手で叩いてみた。
それから、落ちている掌程の石を拾って叩いてもみた。
しかしそれくらいでは、岩壁には傷一つつかなかった。
緑色に光る場所以外では、軽く傷がついたりもしたが、光っている場所の壁が硬いのか、見た目は同じなのに、何かを守る様に他の岩壁とは性質が違うようだった。
持ってる武器の柄の部分でも叩いてみたが、結果は同じだった。
気にはなるが、今ある物でこの壁を叩き割ることは出来ないと思い、後日ツルハシでも持って来ようか等と考えて、そこで少し休憩をした。
それから細道を抜けて、元いた場所にたどり着く。
しかしこんな細道、いつ出来たんだ?と思いながら振り返って見ると、もうそこには細道がなかった。
何度も何度も確認したが、そこにはいつもの行き止まりの場所でしかなかった。
帰り道はいつもと同じ。
地下2階も地下1階も、いつもと何も変わることはなかった。
外に出るとすっかり夜になっていたが、空は雲1つない晴れた天気だったのに、星も無く、その日は外が異様に暗かった事を覚えている。
話しを聞いて、思い当たることがあった。
「それは5ヶ月程前の話しか?」
「あ、あぁ。よくわかったな。」
「その行き止まりの場所はどこになるか、教えて貰えるか?」
「それは構わねぇが……」
「ではまた、地図を持ってギルドに貴方を探しに行くよ。」
「そうか、まぁ、そうだな、もしいなけりゃ、受付に地図を預けてくれても良いぜ。」
「ありがとう。そうするよ。」
「そういや、アンタの名前はなんて言うんだ?」
「……アシュレイだ。」
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